子供を乗せた自転車と車の衝突事故の報道がありました。
きょう午前8時半まえ、宇都宮市下岡本町の交差点で「車と自転車の事故が起きた」と通報がありました。警察によりますと、信号機のない交差点を右折した乗用車が直進してきた自転車と衝突したということです。
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子供は重傷と出ていますが、ほかの報道では意識があるとも出ているので一安心ですが、怖い事故ですよね。
こういう報道があったときに、右直事故だから右折した車のほうが悪い!と決め付けがちですが、報道を見る限りでは詳細はわかりません。
安易に決め付けるのは早計。
明らかな事実としては
・歩道アリ
・双方が対向していて、自転車が直進方向、車が右折方向
・双方に一時停止義務がある
・横断歩道や自転車横断帯は無い
詳細は不明なので断定することは出来ませんが、事故を防ぐためという意味でも自転車に課された義務を見ていきます。
このケース、自転車が車道を通行していたのか、歩道を通行していたのかで厳密にいうと違います。
自転車が車道を通行していた場合
自転車が車道を通行していた場合、双方に一時停止義務があるのは明白。
その上で右折車は直進車の進行を妨害してはいけない義務があり、直進自転車はできる限り安全な速度と方法をが求められている。
第三十六条
4 車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。
右折車 | 直進自転車 |
一時停止義務 | |
直進車を妨害してはならない義務(37条) | できる限り安全な速度と方法(36条4項) |
自転車が歩道から歩道へ横断しようとした場合
自転車が歩道を通行していた場合、歩道から歩道へ横断という扱いになります。
交差点の定義は2以上の車道が交わる部分なので、自転車は交差点に進入していない扱いにもある。
そうなった場合、歩道だから一時停止義務が無いのか?というとそういうわけではなくて、横断禁止の規定が関わってくる。
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。
他の車両の正常な交通を妨げる恐れがあるときは横断禁止。
右折車 | 歩道から横断する自転車 |
一時停止義務 | 歩道での徐行義務 |
交差点内安全義務(36条4項) | 車道の正常な通行を妨げる恐れがある横断は禁止(25条の2第1項) |
本来の定義でいうならば、歩道から歩道に移るときは横断なので、自転車横断帯も無いので優先権がなく車道の通行を妨げてはいけないはず。
ただし実務上では、自転車と車は対向関係にあるので自転車の横断が予見されるということで、右折車のほうに交差点内安全運転義務のほうが強く出る(交通弱者うんぬんも込みで)。
けど本来の法の趣旨でいうなら、横断禁止のほうが問題なはず。
どちらにせよ報道では事故の詳細は出ていませんので、報道だけ読んで道路交通法上で誰が悪いとか言い出すのはちょっと無理があると思います。
報道を見る限り、車道には一時停止義務があることは明白ですが、双方が一時停止したのかどうかも不明ですし、自転車の通行位置すら不明。
その状態で右折車が必ず悪いとも言えないし、自転車が悪いとも言えない。
一般論で言うなら、双方に何らかの注意義務違反があったのではないかとは思いますが。
怪我をさせている以上、自動車運転処罰法での過失運転致傷に問われる可能性はありますが、こちらは運転に必要な注意を怠って怪我をさせれば成立します。
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
過失運転致死傷の場合、85%程度は不起訴になるようです。
公平に見ることが大切
本来、上で書いたような義務を双方ともに果たしていた場合、事故が起こることはまず無いと言ってもいいはず。
けど事故は起こる。
こういう事故報道の時、自転車側が叩かれることってそれなりにあるのですが、これは理由があると思っていて、世間で見かける自転車なんてほとんどが何らかの違反を犯しているという実情から来るものと思っています。
歩道では徐行義務があり、歩行者の往来を妨害してはいけない規定なので6-8キロ程度で進行すべきとされていますが、そんな人はほとんどいない。
一時停止線でキッチリ一時停止する自転車も残念ながら少ない。
ママチャリなんて逆走や信号無視、無灯火など違反の総合商社みたいなもんですし、車道を走るロードバイクでも左側端をわざと走らないという残念な人までいる始末。
車だって、おかしなドライバーはいますが、自転車の違反は毎日見かけるレベルで日常茶飯事。
そういう実情から、自転車が叩かれやすいのは間違いない事実です。
逆にいうと、そういう違反行為を平気でする自転車がいることも想定していないと、痛い目に遭う。
一般論として
冒頭の事故の件とは関係なく一般論としてですが、自転車側も道路交通法に基づいて通行していれば防げる事故は多いんじゃないかと思ってます。
私、普段自宅から駅までの4キロ弱を電動アシストのママチャリで行きます。
その途中、住宅街を通るときには一時停止箇所が何ヵ所かありますが、守る人は皆無と言っていいレベル。
バス通りの一方通行道路でもガンガン逆走していく自転車は毎日見かけますし、路側帯の逆走なども多い。
バス通りの一方通行の話はこちらでも書きましたが、

逆走が増えるのは、わずかですが逆走路のほうが距離が短いことが原因だろうとは思います。
危険なんてレベルではなく、バスは毎回苦労している。
逆走車相手でも、事故回避義務はありますから・・・
一時停止についても、

言い訳する人もいます。
漕ぎだしが大変だと思うなら、乗らなきゃいいのに。
誰かに強制されて乗っているわけではなくて、自分で選んで乗っているわけですから責任を持たないといけない。
一時停止を無視して車と衝突しても、車のほうが過失が大きくなる可能性だってあるわけですし・・・
いったい誰が被害者なんだろうと。
そりゃ、道交法でも難しいというか分かりづらいルールもあると言えばありますが、信号を守るとか、左側を走るとか、夜はライトをつけるとか、車道を横断するときは車道の通行を妨害してはいけないとか、誰でも分かりそうなルールってある。
しまいには、謎のポリシーを持って逆走するという人もいます。

今後自転車にも少額違反金制度が導入予定となってますが、こういうのが抑止力になればいいなと思いつつも、さほど期待できないんだろうなと思うこともある。
車でもそうですが、反則金の支払いは任意。
支払わないと起訴される可能性もあるわけですが、略式起訴に同意しないと宣言すると99%近くは不起訴になります。
正式な裁判で刑罰を課すには、それなりの証拠が無いと出来ないわけで公判維持が難しいと考えるのか、それとも訴訟するための手間がかかりすぎるほうなのかは知りません。
道交法的には二段階右折義務がありますが、左折禁止のT字路で二段階右折した場合とそうでない場合で何か差があるのか?みたいなところもありますが、

こういう規定も、例外を規定する方がややこしいことや、特殊な形状の交差点など規定不可能な場合もあるので一律で禁じているんだろうなとは理解できます。
そういうのまで責める気も無いですが、守るべき義務を果たさずして、都合よく交通弱者交通弱者と振舞うのはどうにも勘弁してほしいところです。
義務を果たしていない人を全力で守れと言われても、説得力が無い。
あと最後になりますが、子供にはヘルメットを被せる努力義務があります。
どれだけ義務を尽くしても、不注意で転倒することもあるわけで。
ヘルメットには事故を予防する効果はありませんが、転倒したときに怪我の程度を軽くできる可能性はある。
この違いを理解せずにヘルメットを批判するような人もいるわけで、もう少し整理して目的を考えたほうがいいと思う。
あっ、私は被りたくない人には強制するつもりは無いですよ。
強制力は持っていませんし、被りたくないというならしょうがない。
判断力が未熟な子供については、被せるのが責務だと思いますけどね。
私も被ってますよ。
頭も、それ以外もバッチリ被ってます。
被っていることは恥ではないんです。
けどまあ、大人になると被らなくなるというのは、ヘルメットだけの話ではないんだと思いました。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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