ちょっと前に、自転車で赤切符を切られたというニュースがありました。
これ、従うべき信号機を間違えたことと、横断歩行者妨害をしたことのダブルパンチで悪質と判断されて赤切符になっているようですが、なぜか自転車に対して同情的な意見を言い出す人もいる。
報道でも出ているように、スクランブル(歩車分離式)なのですが、従うべき信号機を間違えただけでは赤切符になるわけではないです。
信号無視&横断歩行者妨害のダブルで悪質と判断されてのこと。
さて、歩車分離式交差点での自転車が従うべき信号機の話。
歩車分離式交差点で自転車が従う信号機
自転車が歩道から横断歩道へ行く場合
まず一般的なママチャリのように、歩道から横断歩道へ向かうケース。
歩車分離式なので、4方向ある横断歩道の信号機は同時に青になります。
歩道から横断歩道に行く場合は、横断歩道用の信号機に従う。
施行令2条
信号の種類 | 信号の意味 |
人の形の記号を有する青色の灯火 | 一 歩行者は、進行することができること。 二 普通自転車(法第六十三条の三に規定する普通自転車をいう。以下この条及び第二十六条第三号において同じ。)は、横断歩道において直進をし、又は左折することができること。 |
あくまでも横断歩道は歩行者のものと規定されていることや、自転車に乗っている以上は車両なので横断歩行者の妨害をすると違反になる。
横断歩行者の妨害になる恐れがあるときは降りて歩行者として渡る義務があります。
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。
車道から交差点に入る場合
歩車分離式交差点に車道から入る場合には、車道の信号機に従う義務があります。
なのでこれだと信号無視になってしまう。
施行令2条
信号の種類 | 信号の意味 |
赤色の灯火 | 一 歩行者は、道路を横断してはならないこと。 二 車両等は、停止位置を越えて進行してはならないこと。 三 交差点において既に左折している車両等は、そのまま進行することができること。 四 交差点において既に右折している車両等(多通行帯道路等通行原動機付自転車及び軽車両を除く。)は、そのまま進行することができること。この場合において、当該車両等は、青色の灯火により進行することができることとされている車両等の進行妨害をしてはならない。 五 交差点において既に右折している多通行帯道路等通行原動機付自転車及び軽車両は、その右折している地点において停止しなければならないこと。 |
報道で出ていた方はこれに引っ掛かったのだと思います。
車両なので、車道から交差点に入る場合には車道の信号機に従う義務がある。
停止線を超えて進行するとアウト。
とはいえ、実はこれだけで話が終わりません。
仮に横断歩道の信号機に【自転車歩行者専用】と書いてある場合。
この場合、車道の信号機が自転車に対する効力を失うので、従うべきなのは横断歩道にある【歩行者自転車専用】のほうになる。
なのでこれだと信号無視になる。
5 特定の交通についてのみ意味が表示される信号が他の信号と同時に表示されている場合における当該他の信号の意味は、当該特定の交通について表示されないものとする。
4 公安委員会が、人の形の記号を有する青色の灯火、人の形の記号を有する青色の灯火の点滅又は人の形の記号を有する赤色の灯火の信号を表示する信号機について、当該信号機の信号が歩行者及び自転車に対して意味を表示するものである旨を内閣府令で定めるところにより表示した場合における当該信号の意味は、次の表の上欄に掲げる信号の種類に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げるとおりとする。
信号の種類 | 信号の意味 |
人の形の記号を有する青色の灯火 | 一 歩行者は、進行することができること。 二 自転車は、直進をし、又は左折することができること。 |
人の形の記号を有する赤色の灯火 | 一 歩行者は、道路を横断してはならないこと。 二 自転車は、道路の横断を始め、又は停止位置を越えて進行してはならないこと。 三 交差点において既に左折している自転車は、そのまま進行することができること。 四 交差点において既に右折している自転車は、その右折している地点において停止しなければならないこと。 |
なのでこれであれば信号無視にはなりません。
この際に、横断歩行者を妨害すると38条の違反になります(横断歩行者妨害)。
まとめ
つまりはこうなります。
状況 | 従うべき信号機 | |
歩道から横断歩道へ | 横断歩道の信号機 | |
車道から交差点に進入 | 横断歩道の信号機に表記なし | 車道の信号機 |
横断歩道の信号機に【歩行者自転車専用】と書いてある場合 | 横断歩道の信号機 |
報道で出ていた件
報道で出ていた件ですが、車道からスクランブル交差点に入り、信号無視と横断歩行者妨害を取られたということ。
これについても、停止線で一度止まって、降りて歩行者になれば何ら問題なかったはず。
降りて停止線を超えて、また乗ったとしても横断歩行者の妨害さえしていなければ問題視されるとは思いません。
降りて押して歩く分には歩行者ですし。
報道を見てもどの程度の速度で車道から交差点に進入したのかはわかりませんが、仮にですよ。
こうなったとしても、
法的にいいか悪いかは別として、一時停止に近いレベルまで減速して、横断歩行者の妨害をしていなかったら、赤切符はないと思いますよ。
せいぜい警告レベル。
この報道とかツイッターが流れたときに、自転車を無意味に擁護する人もいました。
自転車の違反って、悪質と認められるときくらいしか赤切符は切っていないのが現状。
こういうのってスクランブルとか歩車分離式の場合、自転車は横断歩道を渡れるというところから歩行者同然と勘違いしてこのように進行する自転車ってそれなりにいます。
なので実態として、十分減速して注意して車道から歩車分離式交差点に入る分には、いきなり赤切符を切るというのはたぶんやってない(無理がある)。
報道が出たときに、警察庁の通達を持ち出して謎の解説を始める人とか、
こういうしょうもない意見も出てました。
警察庁の通達は、スクランブル交差点を作るための規制基準の通達で、全く関係ないものでした。
どのような基準でスクランブルにするか、しないかの規制基準の通達に何の意味があるんだ?
自転車が不憫に思えると言っている人も、信号無視だけで赤切符になったと誤解しているようでしたが、報道を見ればわかる通り信号無視&横断歩行者妨害のダブルだから悪質と思われただけのこと。
もちろん、スクランブルではない普通の信号で赤無視すれば一発レッドの可能性もあるにせよ、このケースではダブルだから悪質と判断されての赤切符。
自転車を無駄に擁護する傾向があった結果、今のように自転車の無法地帯が広がったとしか思えないのですが。
先日の歩道で高齢者に衝突した事件もそう。
歩道を通行する自転車には、徐行義務があります。
目安は6-8キロ。
誰も守ってないです。
警察官すら守ってませんw
普通自転車通行指定部分が無い歩道では、歩行者の有無にかかわらず徐行義務があります。
結局自転車に甘くしてきた結果、今のような無法地帯が出来上がったと思っているので、適正な取り締まりとしか思えない。
ただね、道交法マニア以外にはよくわからないルールって自転車にはあるんです。
むしろ道交法マニアにすら一瞬で判断できないような信号もある。
こういうのって、仮に自転車が従うべき信号機を間違えたとしても、即座に切符を切ることはさすがに無いと思う。
だって車道を走っている分にはわからないし。
せいぜい注意警告止まりでしょう。
一般的にみて分かりづらいルールとかについてまで、道交法マニアのように正確に判断して法律を厳守すべきだとは思っていませんが、ちぇんとルールはルールで知っておく必要はあります。
目の前の信号機に従うとか、夜間はライトをつけるとか、歩道では徐行するとか、車道の逆走をしないとか、このあたりは何ら難しいことではない。
先ほど書いたこの件についても、
歩行者自転車専用と書かれた信号機が交差点から離れている場合、気が付かないのはしょうがないこと。
車道の信号機に従う意思は示しているのだから、悪質とは言えない。
そういうマニアックなところは置いといて、
・目の前の信号機に従う
・歩道は徐行する
・夜間やトンネルはライトをつける
・車道は左端を通行する
・歩行者の妨害をしてはいけない
・【止まれ】と書いてあれば止まる
・並走禁止
この程度のことを覚えておけば、本来は十分。
車道は左端ですよと覚えておけば、斜め横断が禁止なことも理解できる。
けどこういうのも、右折の手信号を出せば自転車が優先すると勘違いするアホまでいるので、困ったもんだな・・・
道路外の右折で手信号を出せば自転車が優先するなどととんでもないことを語り出せば、それを信じた人が大変危険な結果に陥るので社会悪そのものだと思うのですが。
けど、こんな単純な7項目すら守られていない状況が問題なわけで。
止まれと書いてあれば止まるとか、歩道では徐行するとかなんか難しいのかな?
難しいところについては、仮に間違えたとしても即座に赤切符ということは通常無いです。
悪質な違反をするから赤切符になるわけですが、問題なのはその違反が【悪質】だという認識が無いところにあるのかもしれません。
正直なところ、車道を走る自転車には守りたくても気が付けないような自転車横断帯や歩行者自転車専用信号機もあるので、悪質性が無い行動についてまで非難する気も無いです。
どうやったら気が付くんだ?という自転車横断帯もあるわけで。
車道を走っていて気が付くのか?という話。
何が何でも守ろうとすると、やたらと道路左側を注視する結果になるので前方不注視にしかならない。
こういうのについて仮に気が付かずに進行したとしても、悪質性があるとは通常見なされないです。
法律を守ると豪語する人については全力で守らないと嘘つきになりますが、それ以外の人は一般的注意義務で気が付けない構造について、仮に間違えたとしても非難するつもりもありません。
けど上で挙げた7項目って、何ら難しいことが無いレベルです。
それすら守れないなら、乗らないという選択を取るべきこと。
自転車最大の特権というか、分からなくなったら押して歩けば歩行者です。
法律面で不安があって分からないなら降りて歩行者にトランスフォームすれば済むし。
まあ、一部の特殊な自転車については降りても歩行者になりませんがw(側車・牽引車付きはダメ)
難しく考えると難しいけど、単純に考えればこの程度を厳守するだけでもほぼ問題ないはず。
・歩道は徐行する
・夜間やトンネルはライトをつける
・車道は左端を通行する
・歩行者の妨害をしてはいけない
・【止まれ】と書いてあれば止まる
・並走禁止
これって厳守するのが難しいですかね?
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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