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その判例は緊急避難です。

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ついでになんですが、執務資料に掲載されている横断歩道関係(38条関係)の判例について質問を受けましたので。

最高裁判例

読者様
読者様
執務資料の38条のページに掲載されている最高裁 昭和39年5月21日。
裁判所のホームページでは見つからないけどどのような判例なのかわかりませんか?

結論から言いますと、なぜか見つかりません。
最高裁判例って基本的に全部公開されていると思うのですが、さっぱりわからないです。

 

けどエア判例ではなさそう。
警察庁が出している判例集に掲載されてますが、一部のみなので具体的に何を争った判例なのかはわからず。
とは言え、昭和39年最高裁判例なので、恐らくは昭和38年改正前の71条3号だと思われます。
この当時は、一時停止又は徐行の二者択一で妨害さえしなければ良かったようです。

三 歩行者が横断歩道を通行し ているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行を妨げないようにすること。

ついでなので

執務資料に掲載されている判例のうち、東京高裁 昭和45年11月26日判決。
執務資料に掲載されている内容だと、路面が湿潤して滑りやすいにも関わらず横断歩道を時速45キロで通行したとなっているらしいですが、この判例は何を争っているのか?とも質問されましたので。

 

自分で探しましょう!笑

 

というのが本音ですが、調べたら意外だったのであえて書きます。

 

この判例ですが、争っているのは刑法の緊急避難に当たるかどうかです。
大型車に乗り、雨で濡れて滑りやすい状況。

所論は、(中略)従って、前記対向車の走行状況、歩道上の歩行者の存在、被告人車両の大きさ、本件道路状況を考慮したときは、若し、被告人が急ブレーキをかけたりしたならば、被告人車両は滑走して横転、横向き又は歩道に乗りあげ、或いは対向車線内に乗り入れたりすることは経験上明らかな事実であり、被告人は、急ブレーキをかけることにより発生するであろう、左側歩道上の三名の歩行者の生命身体に対する損傷、対向車との衝突という、本件事故に比して、より大なる現在の危機(現在の危機とは、法益に対する被害が現実に生じている場合に限らず、法益に対する被害のおそれが間近に切迫している場合をも含むことは最判裁判例も認めているところである。)を避けるために、被告人が急ブレーキをかけなかったのはやむことを得ざるに出た行為であって、本件は緊急避難行為であるというのである。

被告人の主張は当然棄却されたのですが、理由としては70条安全運転義務。
滑りやすくて急ブレーキかけたら横転したりすることがわかっているなら、それに応じた速度と方法で進行するのが当たり前なのに、何を時速45キロで横断歩道に向かって進行してるんだ?という話。
なお、この道路の制限速度は40キロです。

 

被害者を発見したのは30m手前となってますが、警音器で警告しただけで直前までブレーキをかけなかったみたい。

 

判決文には「自らが招いたもの」とあります。
急ブレーキで横転するリスクがあるとしても、それは自分自身が招いた状況でしかなくて、最初から「できる限り安全な速度と方法で運転」していれば急ブレーキの必要すらない。

 

「被告人車両は滑走して横転、横向き又は歩道に乗りあげ、或いは対向車線内に乗り入れたりすることは経験上明らかな事実」だと言うなら、そうならないように注意して進行しろという判例です。

 

最初からそのようなリスクを踏まえた速度で進行していれば、横断歩道で急ブレーキを強いられることすらない。
当時の38条には前段の義務はまだ明文化されていませんが、業務上の注意義務としてはあると考えられていました。
けど、それ以前の問題というわけです。

 

執務資料に掲載されている内容を見せてもらいましたが、あれだけ見ても「ふーん」くらいにしか思わないかもしれません。
業務上過失傷害の事件なので、そもそも道路交通法違反ではなく業務上の注意義務違反を争っているわけですが、中身としては70条の判例に近いかもしれません。

それ以外は

それ以外の判例はこちらに多少載せてます。

 

横断歩道を横断する歩行者と38条の関係。判例を元に。
前回、横断歩道を横断する自転車についての判例をまとめましたが、歩行者についてもまとめておきます。道路交通法38条1項とは道路交通法では、横断歩道を横断する歩行者について極めて強い優先権を与えています。(横断歩道等における歩行者等の優先)第三...

 

対向車線と38条2項。なぜ対向車線に停止車両があるときに適用されない?
道路交通法38条2項は、横断歩道手前に停止車両があるときには、一時停止して確認してから進行せよというルールです。2 車両等は、横断歩道等(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道等による歩行者等の...

 

自転車と横断歩道の関係性。道路交通法38条の判例とケーススタディ。
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いくつか見つからない判例については、高等裁判所刑事裁判速報集に掲載されているものもあるみたい。
国会図書館にでもいけば探せるとは思いますが、あとはご自身でどうぞ笑。

 

執務資料に掲載されている判例って、当然だけど著者が重要だと思う部分のみ抜粋してあります。
正直なところ、全体見ないと何がどのように大事だと著者が判断したのかさっぱりわからない。
全体を見ると、むしろ今の時代にはふさわしくない判例とかもあるし。

 

ちょっと前に取り上げた民事の判例についても、掲載されている部分だけを見ても何の話なのかさっぱりわからない。

 

対向車線と38条2項。なぜ対向車線に停止車両があるときに適用されない?
道路交通法38条2項は、横断歩道手前に停止車両があるときには、一時停止して確認してから進行せよというルールです。2 車両等は、横断歩道等(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道等による歩行者等の...

 

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