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ドライバーにも自転車乗りにも理解してもらいたい自転車のルール。僕たちは左折レーンから直進します。

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自転車のルールって、正直なところあまり理解されていません。
自転車乗りが理解していないことも多いので余計混乱を招いている原因だと思いますが・・・

自転車は第一通行帯以外は走れない

何度も引用して申し訳ないが、これ。

 

自転車は第1車線からしか直進できないことを知らないドライバーも多い。
これは昔からアルアル話なのかもしれませんが、多車線交差点において、自転車は最左車線からしか直進できないことを知らないドライバーはそれなりにいる。最も左端の車線が左折専用レーンだったとしても、自転車は左折レーンから直進するしかない規定です。(...

 

自転車は交差点を直進するときには、第一通行帯(最も左側のレーン)しか通行できません。
なので第一通行帯が「左折専用レーン」だろうと、軽車両は左折専用レーンから直進します。

 

例えばこんな交差点で自転車が左折、直進、右折する場合はこうなります。

これはこういう法律なので、仕方がない。
根拠は35条1項と20条1項。
軽車両は進行方向別通行区分に従う義務がなく(35条1項)、第一通行帯を通行する義務(20条1項)があるのでこうなる。

 

(指定通行区分)
第三十五条 車両(軽車両及び右折につき原動機付自転車が前条第五項本文の規定によることとされる交差点において左折又は右折をする原動機付自転車を除く。)は、車両通行帯の設けられた道路において、道路標識等により交差点で進行する方向に関する通行の区分が指定されているときは、前条第一項、第二項及び第四項の規定にかかわらず、当該通行の区分に従い当該車両通行帯を通行しなければならない。ただし、第四十条の規定に従うため、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のためやむを得ないときは、この限りでない。
(車両通行帯)
第二十条 車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車(小型特殊自動車及び道路標識等によつて指定された自動車を除く。)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。

ダブル左折レーンの優先順位

ダブル左折レーンがある場合について考えます。

ダブル左折レーンがあっても、自転車は第一通行帯から直進するしかありません。

ところで、このような状態になったときには、優先順位はどうなるのでしょうか。

これについては極めて曖昧です。
ダブル左折レーンではありませんが、以下のような判例があります。

道路交通法は、本件被告人車のように、交差点等で左折しようとする車両の運転者に対し、左折の合図をすること及びあらかじめその前からできる限り道路の左側に寄り、かつ、徐行することを要求している(道交法34条1項、53条、同法施行令21条)。これは、直進しようとする後続車両がその右側を追い抜けるようにするとともに、できる限りその左側に車両が入りこんでくる余地をなくしておくことにより、円滑に左折できるようにするためであると思われる。したがつて、左折しようとする車両が十分に道路の左側に寄らないため、他の車両が自己の車両と道路左端との中間に入り込むおそれがある場合には、前示道路交通法所定の注意義務のほか、さらに左後方の安全を確認すべき注意義務があるが、十分に道路左端に寄り、通常自車の左側に車両が入りこむ余地がないと考えられるような場合には、あえて左後方の安全を確認すべき注意義務があるものとは解せられない。

 

昭和45年6月16日 名古屋高裁

ダブル左折レーンに当てはめて考えると、第二通行帯から左折する車両は、軽車両が第一通行帯から直進するスペースがあるため、左折前に左後方を確認する義務を負う。

第一通行帯の自転車 第二通行帯の左折車
義務 適切な左折動作に入っている先行左折車の妨害禁止(35条2項) 直進自転車に急ブレーキを強いるようなら左折禁止
義務 交差点内安全進行(36条4項)

交差点内安全進行(36条4項)

左折時徐行(34条1項)

基本的な考え方はこんなイメージでしょうか。
このように十分な距離がある場合に、先行左折車が左折合図をしているなら左折車が優先。

こういう場合には、自転車が優先。

つまり、第二通行帯から左折する車両は、左後方の確認義務を負う。

いくつか判例を上げておきます。
ダブル左折レーンの判例というのは見たことがないのですが、基本的な考え方自体は同じかと。

 

左折車と直進二輪車の判例

全て大型車が左折した判例です。
大型車は左折前に左側端ギリギリまで寄せることが構造的に難しいため、左側端にスペースが生まれます。
なのでダブル左折レーンに近いような左側端のスペースが生まれることがあるため、参考に。

最高裁判所 昭和46年6月25日

この判例は交差点の少なくとも60m手前で自転車を追い抜きし、交差点の29m手前で左折合図した大型車に対し、自転車が強引に左側から追い抜きしたことによる事故。
ドライバーはミラーで左後方を確認したけど、自転車が強引に左側から追い抜きしたことが原因です。

 

イメージ図。

 

 しかしながら、交差点で左折しようとする車両の運転者は、その時の道路および交通の状態その他の具体的状況に応じた適切な左折準備態勢に入つたのちは、特別な事情がないかぎり、後進車があつても、その運転者が交通法規を守り追突等の事故を回避するよう適切な行動に出ることを信頼して運転すれば足り、それ以上に、あえて法規に違反し自車の左方を強引に突破しようとする車両のありうることまでも予想した上での周到な後方安全確認をなすべき注意義務はないものと解するのが相当であり、後進車が足踏自転車であつてもこれを例外とすべき理由はない。

 

昭和46年6月25日 最高裁判所第二小法廷

 

先行車が適切な左折動作に入っているなら後続自転車は左折車の妨害をしてはならないし、距離が詰まっているときは左折車が後続自転車に急ブレーキを掛けさせるような進路変更は禁止。
この事例では十分な距離があるため左折車が優先します。

最高裁判所 昭和45年3月31日

この判例は二審が大阪高裁昭和43年1月26日。
この判例は歩車道の区別がない道路で、先行車は道路左側端から2m空けていたもの(左折先道路の形状の問題)。
先行車は赤信号で停止すると同時に青信号になり発進した事例。

 

イメージ図。

※画像にある「手押し」は「停止」の間違いです笑。停止した瞬間に赤→青になった判例。

 

二審の大阪高裁は以下のように判断してます。

被告人の前記左折開始時において被告人の自動車と道路左端との間にはげんに2m余もの間隔があつたのであるから、たとえ被告人が前認定のごとく左折開始に先立ち左折の合図をしていたとしても、同自動車の運転者たる被告人としては、左折開始後短時間の間に自車の後続車輛がその左側方を通過するかもしれないことを予測し、これとの接触を避けるためあらかじめ左後方における他車輛の有無とその動静を確め、同車輛を先行せしめるなどして交通の安全をはからなければならない業務上の注意義務があるというべきである。けだし、道路交通法によれば、車輛が左折しようとするときは、燈火等によりその合図をするとともに、あらかじめできる限り道路の左側に寄り、かつ、徐行しなければならない旨規定し(道路交通法34条、53条)ているのは合図によるだけで、当該車輛と道路左側との間隔が大きいと、その中間に他の車輛が入りこみ、左折する車輛とその後続車輛とが衝突する恐れがあることを考慮し、できるだけあらかじめ左側に寄ることを要求していることがうかゞえるのであるから、所論のごとく本件の場合、交差点の道路の状況上あらかじめ自車をより左に寄せて左折することが技術的に困難であつたとすれば、自車と道路左側の中間に後続車が進入して来ることを考慮し、その有無を確認しそれとの接触を避けるべき注意義務を上述の如く被告人に負わしめることは当然であつてこれが苛酷に過ぎるとはいえない。また被害者にも所論の如き不注意な点があつたとしても、本件結果発生に対する右注意義務違反による被告人の過失責任を免れしめるものではないと解すべきである。

 

昭和43年1月26日 大阪高裁

二審は有罪としたものの、最高裁は破棄。

本件のように、技術的に道路左端に寄つて進行することが困難なため、他の車両が自己の車両と道路左端との中間に入りこむおそれがある場合にも、道路交通法規所定の左折の合図をし、かつ、できる限り道路の左側に寄つて徐行をし、更に後写鏡を見て後続車両の有無を確認したうえ左折を開始すれば足り、それ以上に、たとえば、車両の右側にある運転席を離れて車体の左側に寄り、その側窓から首を出す等して左後方のいわゆる死角にある他車両の有無を確認するまでの義務があるとは解せられない

 

昭和45年3月31日 最高裁判所第三小法廷

破棄した理由は、ミラーで確認した上で後続車がないことを確認していたから注意義務は果たしたから無罪。

 

東京高裁 昭和46年2月8日

この判例は交差点で左折前に30秒ほど信号待ちをしていた大型車と、信号待ちしている間に自転車が左側に進入していた事故。
左側端まで寄せきれてない大型車は、ミラーで一瞥しただけでは足りず、自転車を先に行かせるべきとした判例です。

 

イメージ図。

 

道路交通法34条によつて運転者に要求されているあらかじめ左折の前からできるかぎり道路の左側に寄らなければならないということにも運転技術上の限界があるため、被告人は自車の左側が道路の左側端から約1mの地点まで車を寄せるにとどめて進行し、赤信号によつて交差点の手前で約30秒の間一時停止したものであること、この運転方法は技術的にやむをえないところであるけれども、車幅は2.46mであるから、これによつて車両はかろうじて道路の中央線内に保持できるわけであるとともに、自車の左側1mの間に軽車両や原動機付自転車が進入してくる余地を残していたものであること、右位置において左折に入る場合においても一旦ハンドルをやや右にきりついでハンドルを左にきりかえして道路一杯になつて大曲りしなければ左折できない状況であつたことを認めることができる。そして、本件の足踏自転車が何時交差点の手前に進入してきたか、被告人車両との先後関係は記録上必ずしも明確でないところであるけれども、被告人が交差点の手前で一時停止するまでには先行車両を認めていないことに徴すると足踏自転車は被告人の車両が一時停止してから発進するまで約30秒の間に後ろから進入してきたものと推認されるところ、被告人は平素の運転経験から自車前部の左側部分に相当大きな死角(その状況は当裁判所の事実の取調としての検証調書のとおりである。)が存することは熟知していたのであり、しかもその停止時間が約30秒に及んでいるのであるから、その間に後ろから軽車両等が被告人車両の左側に進入しその死角にかくれることは十分予想されるところで、運転助手を同乗させていない本件のような場合は、右一時停止中は絶えず左側のバツクミラーを注視するなどして後ろから進入してくる軽車両等が死角にかくれる以前においてこれを捕捉し、これとの接触・衝突を回避するため適宜の措置をとりつつ発進、左折する業務上の注意義務があるのであつて、単に方向指示器をもつて自車の進路を示し、発進直前においてバツクミラーを一瞥するだけでは足らないものと解すべきである。
なぜならば、左折の方向指示をしたからといつて、後ろから進入してくる直進車両や左折車両が交差点に進入するのを防ぐことができないばかりでなく、後進してきた軽車両等か被告人車両の左側から進めの信号に従つて直進しもしくは左折することは交通法規上なんらさまたげないところであり、この場合はむしろ被告人車両のほうでまず左側の車両に道を譲るべきものと解されるからである。

 

昭和46年2月8日 東京高裁

 

適切な左折動作に入った後に信頼の原則を適用した最高裁判例との整合性が問題になりますが、以下のようにしています。

この点に関しては、昭和43年(あ)第483号同45年3月31日最高裁判所第三小法廷判決が、本件ときわめて類似した事案において、「本件のように技術的に道路左端に寄つて進行することが困難なため、他の車両が自己の車両と道路左端との中間に入りこむおそれがある場合にも、道路交通法規所定の左折の合図をし、かつ、できる限り道路の左側に寄つて徐行をし、更に後写鏡を見て後続車両の有無を確認したうえ左折を開始すれば足り、それ以上に、たとえば、車両の右側にある運転席を離れて車体の左側に寄り、その側窓から首を出す等して左後方のいわゆる死角にある他車両の有無を確認するまでの義務があるとは解せられない」として一、二審の有罪判決を破棄し、無罪を言い渡しているところである。そこで右判例の事案における事実関係と本件の事実関係と対比検討してみると、前者は車幅1.65mの普通貨物自動車であるのに対し、後者は2.46mの車幅を有する前記のような長大かつ車高の高い大型貨物自動車であるから、したがつて死角の大きさにも著しい相違があると推測されること、前者は信号まちのため瞬時停止したに過ぎないのに対し、後者は信号まちのため約30秒間停止したものであるから、その間に後進の軽車両等が進入してくる可能性はより大きいといえること、したがつてバツクミラーによつて後ろから進入してくる軽車両等を死角に達するまでに発見して適切な措置をとる必要性がより大きいことにおいて事実関係に差異があると認められる。そして、以上の諸点と、本件のような長大な車両と軽車両とが同じ路面を通行する場合において、両者が接触すれば被害を被むるのは必らず軽車両側であることに思いをいたせば、本件の場合長大かつ死角の大きい車両の運転者に死角に入る以前において他の車両を発見する業務上の注意義務を課することは、公平の観念に照らしても均衡を失するものとはいえず、所論いわゆる信頼の原則に副わないものではなく、また前記第三小法廷の判例に反するものでもないと判断される。したがつて、原判決が安全確認の義務を怠つたとする判断は結局正当であるから、この点の論旨は理由がない。

 

昭和46年2月8日 東京高裁

昭和45年3月31日最高裁との違いは、車幅の違いによる死角の差と、信号待ちで停止していた時間の差。
最高裁判例は赤信号で停止後に青に変わり、ミラーで確認してから発進したけど、東京高裁判決は長い信号待ちの間に左側端のスペースに二輪車が入り込むことが考えられた点で違いがあります。

大阪高裁 昭和50年11月13日

こちらの判例は交差点45m手前から左折合図を出していたものの、原付が左側から追い抜きしたことによる事故。
左折開始時に大型車と原付の間に14mほど距離があり、原付の速度が30キロだったことを考えると、原付が追い抜きを控えるべきとした判例です。

 

イメージ図。

交差点で左折しようとする車両の運転者は、交差点手前で左折の合図をしたのち、できる限り車道左側端に寄つて左折の態勢に入つた場合には、その時点において自車の左後方に後進車があつても、同車が自車を適法に追抜くことが許されない状況にあるときは、同車の運転者において追突等の危険防止のため適切な措置をとり、左折を妨害しないものと信頼して左折することができるものと解せられる。そして、道路交通法26条の2の2項、34条5項の趣旨から考え、後進車は、すでに左折合図をしている先行車との間に適当な距離があつて、左折により自車の速度または方向を急に変更させられることがないときは、あえてこれを追抜きその左折を妨げることは許されないと解されるから、この場合に先行車が左折したとしても運転者としての注意義務に違反するところはないというべきである。

 

(中略)

 

被告人が本件交差点西側横断歩道の手前約45mから左折の合図をしたのち同横断歩道の手前約8mで左折を開始した時点において、左後方から追随してくる被害原付との間の距離は約14m、当時の被害原付の速度は時速約30キロメートル程度であるから、経験則上、被害原付の速度に照らして、必ずしも左折により同車の速度または方向が急に変更させられる関係にあつたとはいえない。そうすると、すでに左折の合図をしている被告人が、被害原付において危険防止のため適切な措置をとるものと考えて左折したことについて業務上の注意義務違反があると断定することはできない。所論は被告人には被害原付の速度を確認する注意義務があるのに、原判決はこれを考慮していないというけれども、被告人の原審、当審の供述等を総合すれば、被告人が被害原付の進路のほか、その時速はほぼ30キロメートル程度であることを認識していたことが推認でき、この点の注意義務違反があるということもできない。なお所論は、被告人が左折に際し徐行する義務およびできる限り道路の左側端に寄る義務を怠つた過失があるともいうのであるが、右はいずれも公訴事実に記載されていない点であるばかりでなく、前者は本件死亡の結果と直接の因果関係が認められず、後者については、進入道路の幅員が片側約3.2m、被告人車の長さが7.27mであり、東行道路には路側帯があつて、その幅員を除けば被告人車は左側に約1.5m余りを残していたに過ぎないことなどを考えると、その義務を怠つたとも断定できない。

 

昭和50年11月13日 大阪高裁

これらをダブル左折レーンに当てはめて考えると、このように十分な距離があるときは自転車が第二通行帯の左折車を妨げてはならないし、

逆に両者の距離がない場合には、自転車の直進が優先する。

かなり曖昧なのが現状だし、さらにいうと直進意思を示す手信号なんてないので、意思を汲み取れないドライバーも出てくる。
自転車のほとんどは、左折前に手信号なんて出してませんから、「手信号が出てない=直進」と伝わる可能性は残念ながら低い。

 

ちなみに以前、下記Twitterについて、道路交通法26条の2第2項の違反だと主張する人がいましたが、

(進路の変更の禁止)
第二十六条の二
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない

昭和50年11月13日 大阪高裁では以下のようにしています。

道路交通法26条の2の2項、34条5項の趣旨から考え、後進車は、すでに左折合図をしている先行車との間に適当な距離があつて、左折により自車の速度または方向を急に変更させられることがないときは、あえてこれを追抜きその左折を妨げることは許されないと解される

 

(中略)

 

左後方から追随してくる被害原付との間の距離は約14m、当時の被害原付の速度は時速約30キロメートル程度であるから、経験則上、被害原付の速度に照らして、必ずしも左折により同車の速度または方向が急に変更させられる関係にあつたとはいえない

 

昭和50年11月13日 大阪高裁

時速30キロ、車間距離14mの関係性は26の2第2項の違反とは言えないとしています。
Twitterの件は自転車も低速ですし、左折車が交差点を左折する段階で14m以上は車間距離があったんじゃね?と思うし、「左折により同車の速度または方向が急に変更させられる関係にあったとはいえない」と思いますが、後方カメラがないので正確な距離はわかりません。

 

普通はこういうときに左側からすり抜けて横断歩道に行くプレイは危険なのでしません。

 

まあ、「追い越し方法違反」だなんてありもしない違反を認定する輩までいたので、Twitterは根拠がない話をする人の溜まり場なのか?とすら思うけど。

https://twitter.com/toro24f/status/1420647841312100354

名古屋高裁 昭和45年6月16日

この判例は左側端1m(50センチの側溝含む)まで左側に寄せて左折合図をしながら信号待ちしていた状況で、後方からやってきた原付がすり抜けて前に出ようとした事故。

 

まずは事実認定から。

一、 被告人は、昭和(略)ころ、軽四輪貨物自動車を運転北進して、信号機の設置されている十字路交差点にさしかかり、同交差点で左折するため、左折の合図をしたうえ、道路の左側に寄りながら、同交差点に接近中、対面信号が赤色を表示したので、信号待ちのため、同交差点南側横断歩道手前の停止線付近で、左折の合図を継続しながら一時停止した。その際、被告人の車の左側面と道路(車道)左側端との間隔は、約50センチメートル、左側歩道との間隔は、その間に設けられている幅約50センチメートルの側溝部分(コンクリートで蓋がされており、ゆるやかな傾斜がつけられているが、その上を車両等が通行することは不可能ではない。)を加えて約1mであつた。そして、信号が青になるや、格別左後方の安全を確認する措置をとることなく、前記停止位置から発進し、時速8キロメートル位で左折を開始したところ、後方から北進してきて、被告人車の左側を追い抜いて直進しようとした被害者運転の原動機付自転車の前輪が自車の左後側部に接触したため、本件事故の発生をみるに至つた。

 

二、 他方、本件被害者は、原動機付自転車を運転北進して、被告人車より大分遅れて本件交差点にさしかかつたが、おりから赤信号のため、右交差点入口付近に、被告人車を先頭として数台の先行車が連続して一時停止していて、右車の列と左側歩道との間には1m位の間隔しかなかつたにもかかわらず、その間をすり抜けて前進しようと考え、これに気を奪われて被告人車の左折の合図を見落したまま、その左後方に接近中、信号が青になつたので、そのまま直進して同交差点に進入したところ、被告人車が左折してきたため、これと接触するに至つた。

 

裁判所の判断です。

道路交通法は、本件被告人車のように、交差点等で左折しようとする車両の運転者に対し、左折の合図をすること及びあらかじめその前からできる限り道路の左側に寄り、かつ、徐行することを要求している(道交法34条1項、53条、同法施行令21条)。これは、直進しようとする後続車両がその右側を追い抜けるようにするとともに、できる限りその左側に車両が入りこんでくる余地をなくしておくことにより、円滑に左折できるようにするためであると思われる。したがつて、左折しようとする車両が十分に道路の左側に寄らないため、他の車両が自己の車両と道路左端との中間に入り込むおそれがある場合には、前示道路交通法所定の注意義務のほか、さらに左後方の安全を確認すべき注意義務があるが、十分に道路左端に寄り、通常自車の左側に車両が入りこむ余地がないと考えられるような場合には、あえて左後方の安全を確認すべき注意義務があるものとは解せられない。これを本件についてみるに、前段認定の事実関係に徴すれば、被告人車が本件交差点の手前で、赤信号によつて一時停止した際における同車の左側面と道路左側端との間隔は、わずかに約50センチメートル、側溝部分を含めても約1mしかなかつたことが明らかであるから、被告人車は、十分に道路の左側に寄つたものということができる。もつとも、前記側溝部分は、本来道路ではないが、車両の通行は不可能でないことは前示のとおりであるから、被告人車と左側歩道との間には約1mの余裕があり、原動機付自転車等の二輪車がそのせまい間隔に入りこんでくるおそれが全くないとはいえない。しかし、原動機付自転車等といつても、若干の幅があり(本件被害車の幅は、原審検証調書によると、68センチメートルであつて、被告人車の左側面と道路左側端との間隔約50センチメートルを約18センチも越えていることが明らかである。)右のようなせまい間隔をすり抜けて前方に進出することのきわめて危険であることは自明の理である。したがつて、右のようなせまい間隔に入りこんでくるような原動機付自転車等があることは、通常考えられないところであるというべきであり、時に本件被害者のように、右の危険をあえておかす者があるとしても、そのことの故に、本件被告人車が十分道路左端に寄らなかつたということはできない。(かような危険をあえておかす者は、自己の責任において、右側の車両の動静に細心の注意を払い、左折の合図を見落さないように務め、最大限徐行するなどして、万一にも接触事故を起こさないよう、万全の注意をなすべき注意義務があるものというべく、少しでもこの義務を怠り事故をひき起こしたような場合には、その責任を一身に負うものと知るべきであろう。)

 

かようにみてくると、被告人は、左折に際し、自車を十分に道路左端に寄せたものということができるから、前説示したところから明らかなように、本件被害者のごとく、自車と左側歩道との間に存するせまい間隔をすり抜け、しかも自車の左折の合図にも気付かないで暴進してくる後続車両のあり得ることまで予想して、左後方の安全を確認するまでの義務があるとは解せられない。

 

名古屋高裁 昭和45年6月16日

1mの隙間(うち50センチは側溝)に突っ込んでくることは通常想定できないとしています。
自転車が赤信号待ちで無理に突っ込んでくることは時々見かけますが、普通に危険なのでオススメしません。

 

なお、走行中の前車と道路左側の隙間1mを使って追い抜きしようとした自転車の事故について、前車の運転手には過失が認められないとして無罪にした判例があります。

 

自転車の左追い抜き事故の判例。
何年か前の話ですが、ロードバイクが左から追い抜きしたことにより接触事故が起こり、先行していた大型車が無罪になった判決がありました。確か読者様からメールで教えて頂いて、ネット上では「先行大型車が幅寄せしたのに無罪とは何事か!」みたいな意見がそ...

 

判例まとめ

左側端までの距離 状況 左折車の結果
最高裁S46.6.25 60m手前で自転車を追い抜き、29m手前で左折合図 無罪
最高裁S45.3.31 2m 左折合図しながら赤信号で停止したと同時に青信号に変わり、ミラーで確認後左折開始 無罪
東京高裁S46.2.8 1m 赤信号で30秒停止後、ミラーで一瞥し左折開始 有罪
大阪高裁S50.11.13 3m 45m手前から左折合図。左折開始時の後続二輪車は14m後方(時速30キロ) 無罪
名古屋高裁S45.6.16 1m(50センチは側溝) 赤信号で停止中に原付が左側からすり抜け。先行車の左折合図を見逃し。 無罪

どちらが優先?

大雑把にまとめるとこうなります。

先行左折車の義務 後続直進車の義務
条文 26条の2第2項 34条6項、35条2項
義務 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない 左折又は右折しようとする車両が、前各項の規定により、それぞれ道路の左側端、中央又は右側端に寄ろうとして手又は方向指示器による合図をした場合においては、その後方にある車両は、その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き当該合図をした車両の進路の変更を妨げてはならない。

Twitterの件は自転車が交差点直前まで先行していたため、直進自転車が優先。
とは言うものの、左折レーンから自転車が直進するルールが知られていない以上、たぶん大型車の頭の中には自転車が直進するなんて考えは全くないでしょう。
なのでまずは知ってもらうしかない。

 

この事例とは別に、信号待ちで自転車が強引にすり抜けることは全くオススメしません。
東京高裁判決をやたら過大評価する人もいますが、適法なことと適切なことは必ずしも一致しませんし。

 

交差点直前で自転車を追い抜きしながら被せて左折するプレイは本気でやめてください。
危険過ぎます。

なお、第一通行帯が「普通自転車専用通行帯」、第二通行帯が左折レーン、イエローラインで進路変更禁止の場合も、優先は同じです。
左折車は左側端には寄れないため、左後方を確認してから直進自転車に急ブレーキを掛けさせるような進路変更は禁止。

 

とは言うものの

そもそも、ダブル左折レーンから直進すること自体に「構造的不備」があるわけで、当サイトとしては無理せず自転車は左折して横断歩道等を使って安全に進行することをオススメしてます。
ドライバーに理解されていない現状と構造的不備を考えたら、初心者に左折レーンから直進することをオススメする気にはなれないので。

 

けど、ルール上そうなっていることは理解してもらえると。
もちろん、上の判例にあるように強引に左側から追い抜きする自転車はあり得ない。
要は直進車と左折車の優先順位は、状況次第で変わります。
Twitter動画のケースでいうと、優先は直進自転車。
第二通行帯から左折する車両は、徐行しながら左後方を確認して左折する義務があります。

 

けど判例でもあるように、ビミョーな位置関係では優先順位は曖昧でしかなく、双方が確認しながら進行するしかないのです。
ハッキリどっちが優先だったのかは、裁判しないとわからん場合すらある。

 

ちなみにこの記事で言いたいことは、一つだけです。

自転車は最も左側のレーンから直進するルールであることを知って頂きたい。

知ることがまず大事ですし、自転車乗りでもわかってない人はいるし、ルールがわかってない人が道路にいると混乱とトラブルしか生まないから。

 

けど、自転車乗りも不勉強で間違っている人はいるし、そもそも信号無視のように小学生でも理解していることをできないダメな大人もいるし。
逆走とかもあり得ない。
自ら学ぶ姿勢がないとダメだけど、信号無視する大人については滅亡してほしいと願います。

 

赤信号待ちですり抜けて前に出る自転車についても、それ自体が違反とは思いませんが、先行する左折車を先に行かせれば済む話。
先行車が直進でも、信号待ちですり抜けて前に出てもどうせ速度差から追い抜かれるだけだし、後方待機して青になったら順次スタートした方が安全ですし、無理に前に出ることはオススメしません。




コメント

  1. ナカムラトモカズ より:

    構造上の欠陥があると論じながら、自電車が優先だと言い切るところ、残念です。
    さまざま判例も用いてケース・バイ・ケースの説明が非常に有用なのものになっているのですが、欠陥のあるものの上での判例にルールを解いても何も意味がないように思います。
    感情論にバイアスをかけるような、火に油を注ぐような記事ではないでしょうか。
    いい例ではないですが、喫煙者がロードサイドにある喫煙所でタバコ吸っていて、周りが煙たがっている際に「ここ喫煙所だからしょうがないよね」と不用意な発言をしている喫煙者みたいに感じられます。
    どうあるべきかを考察して、そのような状況でない現状で全ての当事者がどのように思考、行動すべきかをフォローすべき記事であってほしいです。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      すみませんが、自転車が優先とは言い切っていませんけど・・・
      法律解釈と実態論は、ご覧のように分けております。

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