先日の記事なんですが、本題はこちら。
添付画像の①は、ダブル左折レーンで国道14号線に出る場所です。
ここは試験コースになっているのですが、左側は緑地帯を挟んで歩道になっております。
なので、外側線を踏んで1メートル以内に寄せるべきである!(と指導している教習所がある)。
しかし添付画像②を見てもらうとわかると思いますが、左折する場所にはゼブラの導流帯があり、そこを踏みながら走行するとおかしな通行方法になってしまいます(左折後、そのまま外側線の中を走行してしまう)。
もちろん、一般車両はゼブラを踏まずに走行していますので、あまり寄せすぎると試験車両が一般車の左折にまくられながら同時左折するという非常に危険な事態が発生しています。先ほどの教習所では、ゼブラを踏んでも罰則は無いのでオッケーという解釈らしいです。
そんなアホなことが・・・と思い試験場(免許課)に問い合わせをした結果、いつもは試験コースの内容は答えられないとしているのに、この場所での左折は外側線を踏んでも、踏まなくてもどちらでも構わない。という回答でした。
どちらでも構わないとは??と聞くと、本来は歩道があるので出来る限り左側端に寄る(外側線の中に入るべき)のだが、実状にそぐわない(一般車は導流帯を走行していない)ので、危険防止のため導流帯に入らず、線に沿って左折することが望ましい。
しかし、コース初見の受験者は、交差点の直近まで進行しないと導流帯があることを知り得ないので、
左折直前に慌てて外側線から出られても危ない。という理由から「どちらでも構わない」らしいです。
うーむ。
35条と外側線
第三十四条 車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿つて(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない。
第三十五条 車両(軽車両及び右折につき原動機付自転車が前条第五項本文の規定によることとされる交差点において左折又は右折をする原動機付自転車を除く。)は、車両通行帯の設けられた道路において、道路標識等により交差点で進行する方向に関する通行の区分が指定されているときは、前条第一項、第二項及び第四項の規定にかかわらず、当該通行の区分に従い当該車両通行帯を通行しなければならない。ただし、第四十条の規定に従うため、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のためやむを得ないときは、この限りでない。
35条によると、進行方向別通行区分があるときは34条1項の規定(できる限り左側端)を無視して通行帯の中を通ることになってます。
ちょっと簡略化してこんな交差点で考えてみます。
35条に従い左折するなら、こうなる。
左折レーンの中から左折しろという規定ですから。
ところが冒頭の話では、要はこれを問題無しとしてます。
通行帯からはみ出してますが。
(あくまでも歩道がある前提ね)
これなんですが、たぶん。
二輪車も通行帯違反になりますが、現実的にはこんな自転車や原付はいます。
この場合、左側端にスペースがある以上、二輪車が左側端からすり抜けて来ること自体は予見可能。
予見可能なものは防ぐ義務があるため(安全運転義務、過失運転致死傷での注意義務)、左折レーンの中から左折する場合には、左後方を注視する義務があります。
なので、仮にこのように左折レーンからはみ出して左側端まで寄せたとしても、加罰的違法性があるとも言えないから事実上容認されているのではないかと考えています。
なので、こんな感じで運用されているのではないかと。
②左折レーンからはみ出して左側端まで寄せたなら、左後方をチラ見程度で十分になる。
けど、ここ。
左折する場所にはゼブラの導流帯があり、そこを踏みながら走行するとおかしな通行方法になってしまいます(左折後、そのまま外側線の中を走行してしまう)。
もちろん、一般車両はゼブラを踏まずに走行していますので、あまり寄せすぎると試験車両が一般車の左折にまくられながら同時左折するという非常に危険な事態が発生しています。
ゼブラがかなり広いので、確かにおかしな事態が発生しうる。
まあ、交差点の構造自体に問題があるような気もしますが、実務上、左折レーンから左側にはみ出したとしても35条の違反とまではしてないようです。
ちょっと話は変わりますが、ここ。
以前、「車両通行帯ガー!」と寝惚けた発言をして社会に迷惑を掛けていた方が通行していた道路ですが、交差点手前のイエローラインがあるところ(進行方向別通行区分があるところ)のみが車両通行帯(規制標示)で、それ以外の片側二車線部分は車線境界線(区画線)。
自転車ナビラインが車両通行帯最外側線を越えてます。
厳密に解釈すれば、車線境界線区間は車道外側線を越えて左側端を通行しても違反になりませんが、車両通行帯区間は最外側線を越えたら通行帯違反じゃないですか。
けど、事実上そんなもん取り締まり対象ではないので(特に自転車は)、最外側線を越えて自転車ナビラインが描いてあるわけです。
つまり行政は、自転車が車両通行帯最外側線を越えても違反とは考えていない。
そうなると左折車両は、左折する前に最外側線を越えて左側端まで寄せたほうが安全だったりする。
車両通行帯の話の時に、チラホラ出ていた意見がこれ。
実際のところ、外側線の外側を通行している自転車について、違反だとして警察に怒られた経験がある人はいないだろうし、肌感覚としても違反切符の対象にならないことはわかるかと。
結局のところ、法定の車両通行帯がある場所において、オートバイが最外側線を越えて違法追い越しをしたようなケース以外は取り締まり対象ではない。
条文の規定と、実務を総合的に考える必要があります。
話を戻しますが、進行方向別通行区分があるところにおいて、最外側線を越えて左側端まで寄せたとしても、即座に違反とするような加罰的違法性はないと考えているのかと思われます。
ただし最外側線と歩道の間が広い場合、二台並んでおかしな光景が勃発する可能性もあるため、冒頭のようにゼブラがかなり広い場所は左後方を注視しつつ、車線に沿って徐行しながら左折する方が好ましいのかと。
ついでに
こちらで判例をいくつか挙げてますが、
東京高裁昭和46年2月8日だけは、ちょっと特殊。
この判例、左側端1m開けて左折合図をして信号待ちをしていた状況から、信号待ちの間に自転車がすり抜けて左側端に進入した判例です。
これとかなり似た事例は、昭和45年3月31日最高裁判例。
こちらは左折合図をしながら赤信号で停止した瞬間に青信号に変わり、ミラーで一瞥してから左折したところ、後続二輪車が突っ込んできた判例。
東京高裁昭和46年2月8日は有罪、最高裁昭和45年3月31日は無罪。
東京高裁判例、このように判断しています。
左折の方向指示をしたからといつて、後ろから進入してくる直進車両や左折車両が交差点に進入するのを防ぐことができないばかりでなく、後進してきた軽車両等か被告人車両の左側から進めの信号に従つて直進しもしくは左折することは交通法規上なんらさまたげないところであり、この場合はむしろ被告人車両のほうでまず左側の車両に道を譲るべきものと解されるからである。
東京高裁 昭和46年2月8日
先行車が左折の合図をしている以上、後続車は左折の妨害をしてはいけないはず。
これ、何でこのように判断が割れたのか、理由がきちんと書いてあるのですが、そこをすっ飛ばして都合よく引用する人もいるので。
この点に関しては、昭和43年(あ)第483号同45年3月31日最高裁判所第三小法廷判決が、本件ときわめて類似した事案において、「本件のように技術的に道路左端に寄つて進行することが困難なため、他の車両が自己の車両と道路左端との中間に入りこむおそれがある場合にも、道路交通法規所定の左折の合図をし、かつ、できる限り道路の左側に寄つて徐行をし、更に後写鏡を見て後続車両の有無を確認したうえ左折を開始すれば足り、それ以上に、たとえば、車両の右側にある運転席を離れて車体の左側に寄り、その側窓から首を出す等して左後方のいわゆる死角にある他車両の有無を確認するまでの義務があるとは解せられない」として一、二審の有罪判決を破棄し、無罪を言い渡しているところである。そこで右判例の事案における事実関係と本件の事実関係と対比検討してみると、前者は車幅1.65mの普通貨物自動車であるのに対し、後者は2.46mの車幅を有する前記のような長大かつ車高の高い大型貨物自動車であるから、したがつて死角の大きさにも著しい相違があると推測されること、前者は信号まちのため瞬時停止したに過ぎないのに対し、後者は信号まちのため約30秒間停止したものであるから、その間に後進の軽車両等が進入してくる可能性はより大きいといえること、したがつてバツクミラーによつて後ろから進入してくる軽車両等を死角に達するまでに発見して適切な措置をとる必要性がより大きいことにおいて事実関係に差異があると認められる。そして、以上の諸点と、本件のような長大な車両と軽車両とが同じ路面を通行する場合において、両者が接触すれば被害を被むるのは必らず軽車両側であることに思いをいたせば、本件の場合長大かつ死角の大きい車両の運転者に死角に入る以前において他の車両を発見する業務上の注意義務を課することは、公平の観念に照らしても均衡を失するものとはいえず、所論いわゆる信頼の原則に副わないものではなく、また前記第三小法廷の判例に反するものでもないと判断される。したがつて、原判決が安全確認の義務を怠つたとする判断は結局正当であるから、この点の論旨は理由がない。
昭和46年2月8日 東京高裁
信号待ちで停止していた「時間」の違いと、車の大きさによる「死角」の違いが原因。
先行車が左折合図して停止している以上、本来は二輪車は後方待機すべき注意義務があります。
何でもかんでも二輪車が優先するわけではない。
結局のところ、進行方向別通行区分がある場合でも、左側端から二輪車がすり抜けて来ること自体は「予見可能」。
なので、仮に最外側線を越えて左側端まで寄せたとしても、それを35条の違反とまではしてないのが実務。
しかし、冒頭のような最外側線の外側がかなり広い場合、左側端まで寄せるとやっぱりおかしくなるから、注意義務は二者択一なのかと考えます。
②左折レーンからはみ出して左側端まで寄せたなら、左後方をチラ見程度で十分になる。
仮に最外側線を越えて左側端まで寄せても加罰的違法性はない。
そういう理解なのかと思ってますが、たぶん、冒頭のダブル左折レーンの交差点については、そもそも自転車が第一レーンから直進(右折)することなんて全く想定してない作りなんじゃないですかね。
ちなみに35条違反の判例を探しましたが、右折レーンから直進した事例とかそんなもんしか見つかりませんでした。
とはいえ
先日の横断歩行者妨害の検挙取消もそうですが、
警察官がきちんと理解して切符を切るとも期待できないし、ジャパンお得意の「臨機応変に」という曖昧な形なのかと思っています。
「臨機応変に」というのは悪いこととは思いませんが、とりあえず言えるのは左折レーンから自転車は直進するし、左折する際は左後方を注視しつつ徐行する義務を負う。
左折直前に自転車を追い抜きしつつ被せながら左折する車とか論外だし、左折する時に徐行しない車も事故リスクを上げるだけなので、いろいろ注意すべきことは注意しましょうとしかならないのかな。
これは自転車も同様。
先行車が適切に左折態勢に入ったのに、左側から追い抜きしようとする自転車とかヤバすぎ。
これもそう。
このチャリカスは完全悪やろ
捕まればよい pic.twitter.com/rqMfqDwl7h— infant rider-sho (@InfantSho) July 29, 2021
交差点直前で歩道に乗り上げて横断歩道を使っているから分かりにくいけど。
これ、車が26条の2第2項の違反だと言う人が数名いたけどさ、
道路交通法26条の2の2項、34条5項の趣旨から考え、後進車は、すでに左折合図をしている先行車との間に適当な距離があつて、左折により自車の速度または方向を急に変更させられることがないときは、あえてこれを追抜きその左折を妨げることは許されないと解される
(中略)
左後方から追随してくる被害原付との間の距離は約14m、当時の被害原付の速度は時速約30キロメートル程度であるから、経験則上、被害原付の速度に照らして、必ずしも左折により同車の速度または方向が急に変更させられる関係にあつたとはいえない。
昭和50年11月13日 大阪高裁
時速30キロ、車間距離14mの関係性は26の2第2項の違反とは言えないとしています。
Twitterの自転車はせいぜい時速20キロ程度か?
左折直前の距離も後方カメラはないけど時間経過や速度から推測するに10m以上はありそうだし十分でしょ。
ちゃんと判例とか確認しないまま、テキトーなことを語るからおかしくなる。
個人的にはゼブラ踏んで寄せる指導については疑問ですが、結局のところ、道路交通法はよくわからない面がある。
よくわからない場面ほど、本来は注意義務が加重されると解釈して徐行と左後方注視を念入りにすれば十分な気もします。
迷ったら、いろいろ確認しながら進行する義務がある。
ということで、正解は一つではないのかもしれませんね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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