まあまあどうでもいい話なんですが、先日ちょっと触れた件。
そもそもこの人さ、「普通自転車専用通行帯」の法的意義すら知らなかったらしい。
自転車専用レーン、標識があれば法的拘束力があるのね。
自転車乗りのくせに知らなかったよ。— 田中@花粉症の根治療法2年目 (@yousukeYT) July 10, 2022
判例がどうのこうの語る以前の問題なので、さすがにドン引き。
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知らないことの恐ろしさ
この方が運転免許を保有しているのかは知らないけど、仮に免許持ちで普通自転車専用通行帯すら知らない場合、どこかでトラブルを起こしかねないのね。
道路上で自転車と車がトラブっている案件って、見ている範囲だと片方もしくは両方が法律を理解していないことが一要因になっていることが普通にある。
理解している人と理解していない人が感情をぶつけ合ったところで、何も生まれないのよ。
自転車乗りなのに普通自転車専用通行帯すら知らないとなるとさすがにドン引きするけど、知らない人が通行帯に関する判例をきちんと読みもせずにグダグダ語るとか、さすがに無い。
知らないのが悪なのではなく、知ろうとしないことが悪だと考えてますが、法律上の要件を理解した上で判例を読まないとお話にならない。
一応、うちを読んでいる方のようなので、忠告しておきます。
判例の読み方も理解してないみたいだし。
議論する能力に乏しい人って、最終的には「承認欲求ガー!」とかクソどうでもいいことを持ち出して話を逸らす傾向にある場合があるのですが、大なり小なり誰でも持つ承認欲求というワード。
そんなもんを使って話を逸らす暇があるなら、勉強した方がいいと思う。
判例の意味
例えばこの判例。
この判例は、第一通行帯がバスレーン。
お客さん先に配送しにいく車両が、左折すべき交差点を間違えて、さらに先の交差点を左折しようとしたら通行禁止になっていたから第二通行帯に戻った。
2交差点を越えてバスレーンを通行したとのことから、通行帯違反になるのかを争った判例です。
裁判所の認定はこちら。
左折すべき路地の位置を明確に認識していない以上、あらかじめ余裕をもって車線変更をし、左折すべき路地を深しつつ走行した場合、その距離が100メートル程度であるときには、その走行は、左折するために相当な範囲で第一通行帯を走行したものということができる。
したがって、少なくとも客観的に第一通行帯の走行距離において短い原告の走行が、被告の通行帯指定に違反するということはできないから、本件通行帯違反の事実はなかったというべきである。
東京地裁 平成13年1月31日
当たり前だけど、追い越し目的でバスレーンを通行したなら違反。
左折目的でバスレーンを80m通行したけど結果的に失敗した話。
前提を理解していないと、意味を取り違える。
ただまあこの判例、以下のように示された関係により、
被告は、道路交通法施行令21条において、左折をするときは、左折をしょうとする地点から30メートル手前の地点に達したときに合図を行うものと定められていることから、左折のために通行を禁止されている通行帯を走行することができる距離は30メートルであるとの解釈に基づき、本件道路の第一通行帯を30メートルを超えて走行した原告の行為は通行帯違反となる旨主張する。
しかし、「30メートル手前の地点に達したとき」とは、走行中の通行帯から直接左折する場合に、あらかじめ左折の合図をすべき時期として道路交通法施行令21条が定めるものであり、いわば規定の対象を異にするものであるから、この規定があることから、直ちに、被告主張の解釈を導くことは困難である。
東京地裁 平成13年1月31日
従来の解釈、つまりは「左折目的で通行禁止の通行帯を通行可能な限度は概ね30m程度」は取れなくなっています。
こういうのも、きちんと条文で規定しないまま解釈するから問題が起こると思うのですが。
けどこういうこと理解してない自転車乗りがいると、無駄にトラブル起こすだけなんだよね。
左折前に自転車通行帯まで寄せるのは義務(一部を除く)。
その際、車が自転車通行帯を通行可能なのは100m程度なら違法性があるとは言えない。
普通自転車専用通行帯すら理解してない人の場合、どんなトラブルが勃発するおそれがあるのか想像しにくいけど、自転車乗りは車を、車は自転車乗りを「本来の法の規定を越えて」エア違反を認定する輩が一定数いるのでね。
エア道路交通法違反を認定する人、普通に存在します。
違反にならないものを違反扱いしてまで糾弾したがる心理はわからん。
これもそう。
車が26条の2第2項の違反だと盛んに主張していた自転車乗りとかいるけど、
このチャリカスは完全悪やろ
捕まればよい pic.twitter.com/rqMfqDwl7h— infant rider-sho (@InfantSho) July 29, 2021
第二十六条の二
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。
左折時に後続車との車間距離が約14m、時速30キロの関係では該当しないとしています。
道路交通法26条の2の2項、34条5項の趣旨から考え、後進車は、すでに左折合図をしている先行車との間に適当な距離があつて、左折により自車の速度または方向を急に変更させられることがないときは、あえてこれを追抜きその左折を妨げることは許されないと解される
(中略)
左後方から追随してくる被害原付との間の距離は約14m、当時の被害原付の速度は時速約30キロメートル程度であるから、経験則上、被害原付の速度に照らして、必ずしも左折により同車の速度または方向が急に変更させられる関係にあつたとはいえない。
昭和50年11月13日 大阪高裁
26条の2第2項って、急ブレーキや急旋回しないと衝突を回避できないような危険な進路変更を禁止する趣旨なので、動画にあるような位置関係と速度では違反にならない。
違反になりようもない行為を違反だと盛んに主張する暇があるなら、勉強しましょう。
判例うんぬん以前の問題。
自転車についても、歩道の逆走は違反だと言う奴が現れたり、第一通行帯から直進するのを違反だと言う人とかいますが、どちらも違反にはならない。
違反にはならないとはいえ、ルール自体が知られていない以上はドライバーが理解していると信頼して通行するにはリスクがありすぎるので、ダブル左折レーンはそのまま左折することをオススメしてます。
結局どっちもどっち的な無意味な争いとかもよく見かける。
車「自転車は車道外側線の外側を走れ」
自転車「車道外側線の外側を走る義務はない」
俺「車道外側線は道路交通法上、何の意味も持たないので、そんな線の内側外側という議論自体が無意味。18条で言うところの左側端がどこなのかだけが問題。」
ということで
普通自転車専用通行帯も知らない人に「判例ガー!」と言われてしまう珍事を味わいましたが、知らないことはトラブルの元。
法律を知り、疑問があるときは他の解説書や立法当時の資料を確認し、さらに実務として判例を見ることはトラブル回避と理解に繋がります。
無意味な判例もあるので、見極める必要はあるけど。
けどこういう無価値なツッコミする奴は、そもそもちゃんと読まないのかな。
そっちの方が不思議で、読めばこの人のような無価値な感想が出る余地はないのだが。
よくわからんわ。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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