だいぶ前からこういう意見を出す人については疑問視してました。
これが横断歩行での車両と歩行者の関係性だと
「横断しようとする歩行者」
という表現になる。まだ横断を始めていなくても優先なわけだね。明確に区別されているんだよね。— あにす (@anis774) March 8, 2022
「進行妨害」と「妨げてはならない(妨げないようにしなければならない)」は違うのか?という話。
Contents
進行妨害
道路交通法2条1項22号に「進行妨害」という定義ができたのは、昭和46年道路交通法改正です。
37条を例にしましょうか。
まずは現行37条。
昭和46年改正前の37条。
第三十七条 車両等は、交差点で 右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、第三十五条第一項の規定にかかわらず、当該車両等の進行を妨げてはならない。
2 車両等は、交差点で直進し、 又は左折しようとするときは、当該交差点において既に右折している車両等の進行を妨げてはならない。
※旧37条2項は昭和46年に削除されました。35条にかかわらずという項目はあまり意味がないので気にしなくていいです(交差点先入優先の規定で昭和46年に削除)。
昭和46年改正内容(37条)。
第三十七条の見出しを削り、 同条第一項中「、第三十五条第一項の規定にかかわらず」を削り、「進行を妨げ」を「進行妨害をし」に改め、同条第二項を削る。
「当該車両等の進行を妨げてはならない」から「当該車両等の進行妨害をしてはならない」に変更され、2条1項22号には進行妨害の定義が新設されたことになります。
さて、昭和46年道路交通法改正により、「進行を妨げてはならない」→「進行妨害をしてはならない」になり37条の意味が変わったのか?という話。
いろいろ調べた限りですが、意味が変わったわけではなくて、従来の解釈を明文化した感じのよう。
「進行を妨げてはならない」の解説として註釈道路交通法(昭和40年)はこのように説明しています。
この「進行を妨げてはならない」とは、一般に相手方の車両等の進行を妨害し、その進行を遅らせてはならないということである。この点、「進路を譲らなければならない」の意義とは異なり、相手方の車両が動き出さない限りはそのまま進行してもさしつかえないが、相手が進行を始めた以上はこれを妨げてはならない。
註釈道路交通法、横井大三、木宮高彦、有斐閣、1965
この時代に直進車が右折車に「譲る」行為があり右折車が先に進行したとしても、「進行を妨げてはならない」に抵触することはなかったわけです(同旨、注解道路交通法)。
「譲らなければならない」とは異なることを明確にしている。
なので昭和46年以降の2条1項22号「進行妨害」と「進行を妨げてはならない」(旧規定)は意味が変わったわけではなく、単に明確にしたものと考えてよい。
後述しますが、昭和46年改正は「わかりやすくする」ことが一つのテーマだったのかと。
「進行妨害」という用語ですが、交差点に関わる規定以外には使われていません。
これも理由があります。
当時の資料をみても、進行妨害という単語は交差点で他の進行方向から来る車両との関係で優先関係を合理化するために新設したとあります。
今回の改正では、第2条第1項第22号に「進行妨害」の規定を設け、交差点における優先関係について規定する場合には、「進行妨害してはならない」という表現を用いることとした。「進行妨害」とは、「車両等が、進行を継続し、又は始めた場合においては危険を防止するため他の車両等がその速度又は方向を急に変更しなければならないこととなるおそれがあるときに、その進行を継続し、又は始めること」をいうが、この定義は、交差点における車両等の優先関係を合理的に規定するため設けられたものである。
月間交通、警察庁交通企画課、東京法令出版、1971年8月
今回の改正では、交差点における交通方法を簡潔かつ合理的なものとし、これを車両等の運転者にとってわかりやすいものとするため、交差点における優先関係については、従来から問題があった先入車両等の優先およびすでに右折している車両等の優先を廃止し、左方の車両等の優先、優先道路または幅員が明らかに広い道路を通行する車両等の優先、直進および左折車両等の優先に限ることにしたのである。また、今回の改正では2条1項22号に「進行妨害」の定義を設け、交差点における優先関係について規定する場合には、「進行妨害をしてはならない」という用語を用いている。
判例タイムズ284号、小野寺規夫(東京地裁判事)
進行妨害という用語は36条1項および2項、37条、37条の2、43条、75条の6第1項に使われてます。
交差点において違う進路から進入してくる車両との関係性を規定した条文。
進行妨害という用語は、交差点にのみ使うものと昭和46年に決めたわけ。
ちなみに後述しますが昭和46年改正では交差点と関係ない規定についても「その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き」を追加してわかりやすくしてます。
例えば37条を進行妨害という単語を使わずに分かりやすくしようとすると、こうか?
○進行妨害を使わずに記した例
このようにイチイチ交差点の優先関係に関わる全ての条文に「速度又は進路を急に変更させるようになるおそれがあるときは」なんて付け加えたら、くどいし面倒なのよ。
しかも分かりにくい。
36条とかにも同じように「急に速度ガー!」と加筆してもいいんだけどさ、定義として「進行妨害」を決めて、条文規定では「進行妨害をしてはならない」にまとめたほうがわかりやすいよね。
単にそれだけのこと。
それ以外にも、不要な先入優先や37条2項を削除して合理化。
46年道路交通法改正時には交差点以外の条文にも「その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き」が追加されたり、条文が新設されてます。
○例
第二十五条の見出しを「(道路外に出る場合の方法)」に改め、同条第二項中「右に横断」を「道路外に出るため左折又は右折を」に改め、「(軽車両及びトロリーバスを除く。)」を削り、「前項」を「前 二項」に、「道路の中央」を「それぞれ道路の左側端、中央又は右側端」に、「したときは」を「した場合においては」に改め、「車両は」の下に「、その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き」を加え、「進行」を「進路の変更」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項中「右に横断する」を「道路外に出るため右折す る」に改め、「道路の中央」の下に「(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路の右側端)」を加え、同項を同条第二項とし、同条に第一項として次の一項を加え、同 条の付記中「第一項については」を「第一項及び第二項については」に、「第二項」を「第三項」に改める。
25条でも「その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き」を加えているけど、改正前にこの文言がなかったことにより意味が変わった・・・というわけでもなくて、昭和46年改正は今までの解釈をより分かりやすく条文で示しただけ。
元々37条等にあった「進行を妨げてはならない」という意味は、現行規定の「進行妨害をしてはならない」と意味は同じ。
46年改正ではより分かりやすくするために「その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き」みたいなのを追加した条文があったり、37条や36条のように「進行を妨げてはならない」の意味を明確にするために「進行妨害」にまとめただけ。
冒頭の件に戻ります。
「進行妨害」と「妨げてはならない」が別の概念なんだという前提に立って検討するならば、進行妨害という用語が誕生した前後にて法解釈が変わったのかを判例や解説書その他で確認しないと意味がない。
こちらの調べによると、旧37条1項と現行37条は何ら意味が変わっていない。
つまり、「進行妨害をしてはならない」(46年以降)と「進行を妨げてはならない」(46年以前)は意味を変えたわけではない。
旧37条を確認します。
分かりにくい2項は割愛。
第三十七条 車両等は、交差点で 右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、第三十五条第一項又は第二項の規定にかかわらず、当該車両等の進行を妨げてはならない。
この時代に、例えば直進車が「お先にどうぞ」と右折車に譲ったとして、右折車が直進車より先に進むことが「進行を妨げてはならない」に該当して違反だった、なんてことは全くない。
そもそも、優先規定は車両間で順位付けすることにより安全と円滑を実現するわけですが、仮に先順位の車両が後順位に譲ったとしても、安全と円滑が実現出来ているなら取り締まる理由がない。
先順位車両が必ず先に行けという規定でもない。
後順位に譲ることにより違反になるから進行妨害の定義を新設した・・・というわけでもなくて、今まで通りの解釈を交差点関係について分かりやすくしましょうねというだけ。
46年改正は交差点の事故が多発し、現行36条4項(交差点内安全進行義務)を作ったり、優先関係で評判が悪かった37条2項(既に右折している車両を直進車等が妨害することを禁止)や35条1項(交差点先入優先)などを削除し合理化。
事実、「進行妨害」って交差点の他の進行方向から進行してくる車両関係にしか使われてないでしょ。
進行妨害の定義は「車両等は」なので、当たり前だけど歩行者は含まれない。
車両の場合、急ブレーキや急に進路変更させられることによる二次被害が予想されるけど(車は急に止まれない)、歩行者については制動距離があるわけでもないし規定する必要もない。
「歩行者が急に速度や進路を変えないといけない場合を除き」なんて無意味だし不要。
とりあえず、「進行妨害」は交差点において使うと決めたわけなので、横断歩道の規定に使われてないのは当たり前としか。
従来からの解釈を明文化し、単にわかりやすくしただけ。
「進行妨害」は交差点における車両間でのみ使うと決めた関係で、交差点ではない他の条文では使われていない。
横断「しようとする」歩行者
他の視点から。
38条1項後段の義務発生要件はこれ。
「進路の前方」は車両が横断歩道を通過し終わるときに、車幅+安全間隔と解釈されます。
※ビミョーにイラストが間違っているけど、進路の前方=車幅+安全側方間隔。
この「進路の前方」を「現に」横断している歩行者と、「これから」横断しようとする歩行者の存在を対象にしている。
38条には「横断しようとする歩行者」が含まれている!というのも、他の規定でも変わらんし。
意味合いとしては、「直進しようとする」又は「左折しようとする」が義務の発生要件。
「進行妨害をしてはならない」と「進行を妨げてはならない」が意味として同じな上、他の規定でも「しようとする」は使われている。
36条2項の場合は、最終的な対象を交差点に限定せずに「道路」にしている。
「当該交差道路を通行する車両等」なので、実際に問題となる交差点ベースで検討すれば、「当該交差点を通行し、又は通行しようとする車両等」にしてもいいんだけど、単に「道路ベース」で記述したに過ぎない。
なので38条1項に「横断しようとする」が含まれているから、というのも特別な意味があるわけでもない。
38条
さて、ここからが問題。
38条1項後段。
旧規定による「進行を妨げてはならない」と46年以降の「進行妨害」は意味が変わったわけではなく、単に明確にしただけと書きました。
ここからが問題。
○38条1項後段→「通行を妨げないようにしなければならない」
※一時停止は当たり前なので割愛。
旧37条等が「進行を妨げてはならない」なのに対し、38条が「通行を妨げないようにしなければならない」にしている点はちょっと考えなければならないポイント。
進行の場合には停止状態を含まないけど、通行となると概念としては広くなるから。
執務資料ではこのように説明しています。
「かつ、その通行を妨げないようにしなければならない」とは
歩行者等が自分の通行の速さを変えるとか、立ち止まるとか、あるいはその車両等が歩行者等の前面に停止したため、その車両等の前又は後の方に大回りして横断しなければならなくなるような場合のことをいう。
車両等は、本項の規定によって、歩行者等が横断歩道等により車両等の進路前方を横断し、又は横断しようとしているときは、歩行者等の進行を妨げると否とに関係なく、必ず車両等は横断歩道等の直前で一時停止しなければならないことは前述したとおりであるが、一時停止したのちそれらの歩行者等の進行を妨げることがないと客観的に認められるときは、その横断歩道等を通過できるのである。しかし、右のように通過している段階で再び歩行者等の通行を妨げるおそれが生じたときは、徐行するか、又は一時停止してその通行を妨げないようにしなければならない。いかに一時停止したとしても、結果的に歩行者等の通行を妨げれば、本項の違反となる。
執務執務道路交通法解説(18訂版)、東京法令出版
まず、「歩行者等が自分の通行の速さを変えるとか、立ち止まるとか」について。
これが意図するところは、車両の行為により「させられる」ことであって、車両が一時停止した後に「歩行者が勝手に」歩行速度を変えたり、立ち止まることが含まれないのは明らかかと。
仮に歩行者が勝手に立ち止まることを「妨げ」だと解釈するなら、車両が一時停止した状況から歩行者が勝手に横断歩道上で立ち止まることだけで違反が成立してしまう。
それこそ、これも「歩行速度を変えた」になりますが、これを「妨げた」と解釈するのは相当なアホかと。
明らかに横断歩道上で歩行速度を変えて小走りになっているけど、これを妨害とみなすのは当然あり得ない。
運転者に何ら落ち度がなく、運転者がコントロールできない範囲のことだから。
つまり「歩行速度を変えたり立ち止まらせる」というのは、歩行者がそのような行動をしないと危険を回避できない事情(車が急発進した等)の話だと理解できる。
そうなると、歩行者が勝手に立ち止まり譲る行為が「一時停止したのちそれらの歩行者等の進行を妨げることがないと客観的に認められるとき」に該当するかどうかの話なのね。
判例上は、横断意思の一時放棄そのものは否定してませんし。
右法条にいわゆる「横断しようとしているとき」とは、所論のように、歩行者の動作その他の状況から見て、その者に横断しようとする意思のあることが外見上からも見受けられる場合を指称するものであるが、論旨第一点において説示したとおり、老人が横断歩道で立ちどまつたのは、そのまま横断すれば危険であると考え、その安全を見極めるためにしたものにすぎず、横断の意思を外見上明らかに一時放棄したものとはいえないから、この場合は、前記法条にいわゆる「横断しようとしているとき」に該当するものというべきである。そこで右主張もまたこれを容れることができない。論旨は理由がない。
東京高裁 昭和42年10月12日
38条1項後段にいう「横断しようとする歩行者」は、当然「今から」横断しようとする歩行者の話。
10分後に横断しようとする歩行者とか、明日横断しようとする歩行者なんて含まないのはバカでもわかる。
歩行者が譲る行為=車両が通過した後に横断しようとする歩行者なわけで、きちんと確認したならどこらへんが「妨害」になるのかさっぱりわからない。
歩行者が「何ら危険がない状態(車が一時停止)で自主的に車両に譲り」車両が先に進行することを、妨害とみなすことには果てしなく疑問。
「通行を譲らなければならない」ならまだわかるけど、「通行を妨げないようにしなければならない」だし。
道路交通法は「譲らなければならない」と「妨げてないようにしなければならない」は分けて規定しているので、譲るよりも緩やかな概念なわけだし。
まあ、「進行妨害」の定義にできた前後を考えても、「進行を妨げてはならない」と「進行妨害してはならない」は意味が同じなんで、「妨げる」という意味をもう少し検討したほうがいいと思う。
「歩行者が譲った状態」を妨げるとは、いかなる状況なのかはわかりそうなもんだけどな。
歩行者が何ら危険がない状態(車が一時停止している)で、歩行者の自由意思により「先に行け」と促した。
一時停止している以上、何ら妨害してはいない。
「歩行者が先に行きたいのに横断歩道を塞がれた」=妨害というのは理解できる。
「歩行者が後から渡りたいと意思表示した状態」を妨害するとなると、無意味に歩行者に向けて進路を変えてわざと突っ込むような状態(衝突しにいく)でしかない。
進行妨害には譲る行為で進むことが許されて、「通行を妨げないようにしなければならない」では譲る行為から先に行くことが許されないと解釈するのは、かなり疑問。
執務資料でも一時停止後に「歩行者等の進行を妨げることがないと客観的に認められるとき」には進行することを許容しているけど、客観的に認められるときは、
・歩行者が車両に先に行くよう促した
↓
・運転者が歩行者に対し先に行くよう促した
↓
・それでも歩行者が先に行くよう促した
これで客観的に明らかですから。
東京高裁も「横断意思の一時放棄」自体は否定してませんし。
まあ、加罰的違法性がないとも解釈できるし、本質的にはくだらない話だけど、根拠として進行妨害との対比という概念は違うかと。
○旧規定の「進行を妨げてはならない」は「譲らなければならない」ではないから、先順位の車両が後順位に譲り後順位の車両が先に進行しても、違反ではなかった。
○「進行妨害」は交差点でのみ使うと46年に決めた。
○46年改正は全体的に「わかりやすくする」ことが一つのテーマと理解できる。
けど、車が一時停止後に歩行者が先に行けと車に促した場合に、先に行くことを妨害と捉えるセンスについては理解に苦しむ。
妨害=邪魔すること。
歩行者が車の存在により危険回避のため停止せざるを得ない状況に追い込まれたとか、歩行速度を変えないと事故を回避できない状況に追い込まれたなら妨害でいいんだけど、何ら危険がない状態(車が一時停止している)で歩行者が車に対し「先に行け」と促すのは、妨害ではなく歩行者の自由意思でしかないのだから。
歩行者はすぐに横断しなければならないわけでもなくて、自由に横断して構わない。
すぐに横断する権利もあるし、後から横断する権利も保証されてるのな。
違反だ違反だという人は、歩行者の権利をむしろ蔑ろにしているだけなんだが。
時々耳にする「みんなが止まらないから」とか「38条を知らない歩行者が気を遣っているに過ぎない」とかも、関係ないのね。
歩行者は自由に横断して構わないのだから。
後から横断しようと自由。
もちろん先に横断することも自由。
とりあえず言いたいこととしては、「進行妨害をしてはならない」と「進行を妨げてはならない」は元々意味が同じ。
分かりやすくする段階で、交差点においては「進行妨害」にまとめようと決めただけ。
昭和46年改正時にやたらといろんな条文に「急に速度や進路ガー!」と加えられたのも単に分かりやすくするだけの意図しかないけど、それ以上の意味を求めるならお門違いとしか。
ちょっと前に、38条1項は横断歩道が赤信号でも義務があると主張する人がいましたが、横断歩行者保護の規定を道路交通取締法時代から検討してみれば、120%あり得ない。
なぜ37条や38条1項に信号機の有無が書いてないのかというと、「当たり前過ぎて書く必要がないから」。
不明な点があるときは、立法経緯から当時の資料を引っ張り出して考えるしかないのね。
どちらにせよ、この話は事実上争えないから警察もテキトーな取り締まりになる。
ついでに
ちなみに昭和46年改正というと、38条1項に「前段の義務」が規定された年でもあります。
前段の義務が明文化されてなかった昭和46年以前も、業務上過失致死傷においては減速義務があるという判例があり、車は急に止まれないことからしても、減速義務が当然のようにあると考えられてきました。
けどわかりやすくするために、道路交通法に明文化したのが46年改正。
46年改正って、わかりやすくすることを一つの目標にしていたの理解できる。
他にも38条2項。
昭和42年改正により誕生したのはこれ。
46年改正。
第三十八条第二項中「交通整理の行なわれていない横断歩道の直前で停止」を「横断歩道(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道による歩行者の横断が 禁止されているものを除く。次項において同じ。)又はその手前の直前で停止」に、「当該横断歩道の直前で」を「その前方に出る前に」に改め、同条第三項中「交通整理の行な われていない」を削り、同条の付記中「第二号の二」を「第二号、同条第二項」に改める。
「交通整理の行なわれていない横断歩道の直前で停止」
↓
「横断歩道(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道による歩行者の横断が禁止されているものを除く。次項において同じ。)又はその手前の直前で停止」
「交通整理が行われていない横断歩道」という表現から、「当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道による歩行者の横断が禁止されているもの」に変更されてます。
これ、何ら意味が変わったわけではない。
「交通整理の行なわれていない横断歩道」というのは、車両等からみて、その車両等が通過するときに歩行者が通行できるようになっている横断歩道のことである。信号機の信号または手信号等によって、その車両等が通過するときには、歩行者の通行が禁止され、歩行者が通行するときは、その車両等の通過が禁止されている場合は、「交通整理が行われている横断歩道」の場合あって、今回の改正によるこれらの規定の適用がない。したがって、信号機の設けられていない(もちろん警察官の手信号等も行われていない)横断歩道の場合はすべて「交通整理の行なわれていない横断歩道」ということになるが、信号機が設けられていても車両等が左折または右折するときに、歩行者が通行できるようになっている横断歩道を通過する場合には、「交通整理の行なわれていない横断歩道」として今回の改正によるこれらの規定の適用があるのである。(注3)
(注3)この場合には、交差点そのものは「交通整理の行われている交差点」になるのであるが(第35条、第36条等)、横断歩道は、左折または右折する車両等からみた場合は、「交通整理の行われていない横断歩道」になるのである。
警察学論集、浅野信二郎(警察庁交通企画課)、立花書房、1967年12月
交差点で見ると「交通整理が行われている」でも、横断歩道でみれば「交通整理が行われていない」になるので、意味が分かりにくい。
46年改正によりわかりやすくしただけ。
46年改正って、分かりにくい部分を直したり、条文上は明らかではないけど実務上は当然のように捉えていた部分を明らかにしたりした痕跡が多々あるのが特徴。
まあ、最終的には解釈が割れうる面も多々あるのが道路交通法ですし、一回バラバラにしてからやり直したほうがマシなのかもしれません。
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