先日の記事で、19条の自転車並走違反は道路(歩道等と車道の区別がある場合は車道)と読み替える話を書きました。
ちょっとマニアックな話を。
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謎の法改正
昭和39年に並走禁止にしたとき、19条1項は並走禁止、2項は道路標識がある場合には並走OKという条文でした。
2 二輪の自転車は、公安委員会が道路又は交通の状況により支障がないと認めて指定した道路の区間においては、前項の規定にかかわらず、他の二輪の自転車と並進することができる。ただし、二輪の自転車が三台以上並進することとなる場合においては、この限りでない。
この当時、17条3項にはこのようにあります。
19条2項で「道路」とある部分は上のように「歩道と車道の区別がある場合は車道」と読み替えることになる。
1項が並走禁止、2項が並走の限定的許可。
2項が「道路(歩道と車道の区別がある場合は車道)」とあることの対比から、1項も同様に「道路(歩道と車道の区別がある場合は車道)」と捉えられなくもない。
2項との対比で、1項も道路(歩道と車道の区別がある場合は車道)と解釈する前提に立ってみます。
19条2項は、昭和53年改正時に63条の5に移動します。
昭和53年改正。
第十九条第二項を削り、同条の付記中「第一項については」を削る。
(略)第三章第十二節の次に次の一節を加える。
第十三節 自転車の交通方法の特例
(普通自転車の並進)第六十三条の五 普通自転車は、道路標識等により並進することができることとされている道路においては、第十九条の規定にかかわらず、他の普通自転車と並進することができる。ただし、普通自転車が三台以上並進することとなる場合においては、この限りでない。
現行の17条4項による「歩道等と車道の区別がある場合は車道」と読み替える規定は、第九節の二まで。
なので第13節に規定された並走OKの標識は、理屈の上では車道のみならず歩道まで効力が出るとも受け取れる。
63条の5から対比させれば、19条は歩道での並走も許してないのではないか?と疑問を持ってました。
ただね、どうもそのような解釈はされてなくて、19条は「道路(歩道と車道の区別のある道路においては車道」として、歩道での並走を禁止する趣旨ではないというのが通説のようです。
なぜ19条2項を63条の5まで飛ばしたのかについては、いろいろ調べても「合理化した」としか書いてないのでわかりません。
仮に19条自体を全部63条の5に持ってきていたなら、歩道上の並走も違反と解釈できます。
けど19条は19条のまま。
なので自転車の並走については、やはり車道での並走を禁止する趣旨で歩道での並走を禁止していないと考えるしかなさそうです。
もちろん、歩行者を妨げたら別の違反になるのは言うまでもなく。
道路交通法はよくわからないですよね。
条文を読んだだけではわからない。
合図の継続についても
上の件とは意味合いが違いますが、道路交通法はよくわからない一例。
もちろん誰もやってませんが、左折時には左折完了まで合図を継続する義務があります。
第五十三条 車両(自転車以外の軽車両を除く。次項及び第四項において同じ。)の運転者は、左折し、右折し、転回し、徐行し、停止し、後退し、又は同一方向に進行しながら進路を変えるときは、手、方向指示器又は灯火により合図をし、かつ、これらの行為が終わるまで当該合図を継続しなければならない。
除外規定がないので、自転車だろうと甘えることなく合図を継続しないと違反。
53条には故意も過失も処罰規定があるので、言い訳もダメ。
恋だとか愛だとか語ったところで、違反は違反になる。
これも
という説を見かけますが、安全運転義務で除外されるなら53条の中で除外規定を作るべき話でしかなくて、あんまり説得力がない。
安全運転義務は、具体的規定ではまかない切れない部分を補完する目的で作られたものなので、危険を伴うことが明らかな旋回動作+片手運転になるような場面は除外規定で対処すべきことでしかない。
単なる法の不備でしょ。
二輪車と片手運転は相性が悪い上、旋回動作のようにより注意が必要なタイミングで、法は片手運転を要求している。
確かに下記のような判例があることを考えると、交差点左折時にはちゃんとハンドルを握るべきとも捉えられなくはない。
左手で荷物を持ち片手運転していた原付が、安全運転義務違反に問われた判例です。
法70条は現実の具体的な状況が一つの構成要件要素となつていることを考えなければならない。すくなくとも、右70条にいういわゆる安全運転義務に反したというためには、道路交通及び当該車両等の具体的な状況からみて、他人の生命、身体に危害を及ぼすような虞れが、現に存在した場合でなければならない。従つて、まつたく人車の往来のない道路で、いかに乱暴な危険な運転をしたとしても、それだけでは本条違反とはならないのであり、他人に危害を及ぼす虞れのある客観的な状況を必要とするのである。もつとも本条は、現実に他人に危害を及ぼしたことも、具体的な危険が発生したことも必要としない。このような意味で本条は抽象的危険犯ということができる。
本件犯罪事実を認定した各証拠によれば、被告人が運転した原動機付自転車の左ハンドルには、ライトの切替スイツチとその下方にホーンボタンの装置のみがほどこされている。いわゆるノークラツチのもので、当時の状況としては、これらの装置を使用する必要はなかつたと考えられる。そうであれば、被告人には右装置の操作懈怠はなく、この点に義務違反はない。そこで被告人の左手離し運転の状態をみると平衡を失したり、ぐらつき、ジグザクな走行になつたわけではなく、免許証取得の年数からみてもとくに運転技術が拙劣であることもなく、また左手に下げた左官用の手板、こても1キロ程度の重量しかなく、道路も比較的平坦な、また狭隘という程でもなく、本件交差点附近をのぞきかなりまつすぐな状態にあり、すくなくとも判示交差点にさしかかるまでは人車の往来もさして頻繁でなかつたのであるから、かかる状況のもとでは、被告人の右行為をもつて他人に危害を及ぼす虞れがあつたとすることはできない。
ところが被告人はそのまま走行を続け、遠軽町大通り南四丁目附近の交差点を右折して、ここで当時交通違反者公開取締中の警察官の指示をうけ停止したのであるが、この交差点は、北見方面と紋別方面を結ぶ幹線と岩見通りと西町とを接続する道路とが変則的に交差する四叉路で、車の往来も頻繁であり、またこの交差点の附近には、信号機の設置されていない横断歩道が設けられていて、人の往来も頻繁である。被告人はこの交差点を判示のような状態で、約20キロの速度をもつて通過したのであるが、かような交通繁雑な路上では、同一方向の車両等、対向車両等および横断中の歩行者との近接の度合も一段と高くなるから、これら人車との接触回避を要する事態も容易に生じうべき状況にある。このような場合被告人としては、いつでも両ハンドルを把握できるような体勢をもつて進行しなければならない安全運転上の義務があつたのに、判示のような状態で原動機付自転車を運転したところに法70条の違反があつた。
遠軽簡裁 昭和40年11月27日
左手にモノを持って交差点を右折したことに対して「いつでも両ハンドルを把握できるような体勢をもつて進行しなければならない安全運転上の義務があつた」としている。
それと同時に交差点より前の部分の片手運転は安全運転義務違反にならないともしている。
「モノを持っている状態」はすぐにハンドルを握れないのに対して、合図目的で片手運転はすぐにハンドルを握れる。
なので同一に捉えるのも違うような。
まあ、左折完了まで合図を継続している自転車なんて見たことないし、信号待ちでも合図をひたすら継続しているほど順法精神もないので、そういう実態とは掛け離れた話は「法律を守る」と豪語するような人だけ頑張ればいいよね笑。
私は遠慮しますし、他人にも「ハンドル操作を優先して」と伝えます。
守る人は信号待ちで手がプルプルしようと下ろしたら違反。
過失犯の処罰規定もあるし。
五十肩の人は大変だ。
ぶっちゃけ、子供載せているお母さんとかは無理に手信号出さないでハンドルを両手で握って頂きたいし。
法を守った結果転倒したら…
結局のところ、自転車が道路交通法を全て守ること自体不可能だと思っているのですが、法自体がビミョーなんですよ。
どうせ取り締まりしてないという実情から曖昧にしているだけ。
合図をひたすら継続するよりも、横断歩行者に備えてハンドルを両手で持ちしっかりコントロールすべきだと考えますが、法はそうなってない。
合図を継続しながら徐行しコントロールする実力がない子は、押して歩いて歩行者として左折すべきなのかもしれません笑。
いや、車道だから通行区分違反か。
手信号出したらパトカーから怒られたなんて逸話すらあるのに、一体道路交通法は自転車乗りに何を求めているのやら。
パトカー「自転車の方、片手運転はやめてください」。
→日本国のドーロコーツーホーはやれと指示しながら、日本国の警察官はやめろと言う。
まあ、片手運転の結果爆死されたら目も当てられない。
08:10あたりからですが、停止の手信号出した結果落車してます。
片手運転(特に片手ブレーキング)と自転車の相性は最悪なのは言うまでもない。
私が特に初心者さんに手信号を無理に出さないほうがよいと伝えるのは、これです。
合図の履行義務を果たした結果怪我をしたり、下手すりゃ後続車に轢かれてしまいますが…
こういうのもテクニック的な問題にされちゃうけどさ、テク肉っの問題ではなくて法かシステムがおかしい。
馬鹿馬鹿しいよね。
結局のところ、「なるべく安全な方法を取る分には警察も文句のつけようがない」わけで、左折専用レーンの先出し左折信号についても、
日本語でいうところの「しょうがない」なんですよ。
ひたすら左折車を塞き止めることがモラルとして許容されないし、流れに合わせて一旦左折するにも高速の入口なら詰むし。
話が逸れましたが、なぜそのような解釈になるかは条文読んでもわからないことは普通にありますし、条文をそのまま読むと間違ってしまうこともあるので、なおさらわかんないのが日本の法律です。
19条についても、並走OKの標識の効力が歩道まで及ぶとも取れるため、反対解釈からすれば並走禁止は歩道まで及ぶと捉える余地もありそうな気がするけど、そうは解釈されてないみたいな。
とはいえ、マナー的には歩道で並走すべきではないとも言えます。
法の趣旨からすれば、歩道は歩行者の絶対領域であるのだから。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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