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標識が不適法の横断歩道は法定外になる。

まーた、こんな報道が。

県警察本部によりますと5月2日、弘前警察署管内の横断歩道の標識設置に不備がある場所で、違反を摘発したことについて、妥当ではなかったとして、反則金や違反点数の抹消などの手続を進めていました。

不備のあった場所は、警察庁の交通規制基準に基づいて標識を設置するべきところを、県警の解釈の誤りで、車を運転するドライバーから見える位置に設置すべき標識を設置していなかったということです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/c62d9b3e68cb61ba157aefc926c960d851862080

標識の不備は5月2日に発覚した。弘前市駅前町の横断歩道(1995年3月に整備)で、通行人がいるのに一時停止せず走行した乗用車の運転手を弘前署員が横断歩行者等妨害等違反で摘発。その後の違反処理手続き中、同署交通課員が標識が設置されていないことに気付いた。現場には翌3日、街路灯に標識を設置した。

https://news.yahoo.co.jp/articles/c45f543d243743612436730c9146dcb42b73105c

なぜこうなるのかについて。

道路交通法の解釈

なぜこんなことが起きるのでしょうか?

まず、横断歩道とは「道路標識又は道路標示で示した部分」(2条1項4号)とあり、設置については施行令に定めがあります。

(公安委員会の交通規制)
第一条の二 法第四条第一項の規定により都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)が信号機又は道路標識若しくは道路標示を設置し、及び管理して交通の規制をするときは、歩行者、車両又は路面電車がその前方から見やすいように、かつ、道路又は交通の状況に応じ必要と認める数のものを設置し、及び管理してしなければならない。
(公安委員会の交通規制)
第一条の二
3 法第四条第一項の規定により公安委員会が横断歩道又は自転車横断帯(以下「横断歩道等」という。)を設けるときは、道路標識及び道路標示を設置してするものとする。ただし、次の各号に掲げる場合にあつては、それぞれ当該各号に定めるところによることができる。
一 横断歩道等を設けようとする場所に信号機が設置されている場合 道路標示のみを設置すること。
二 横断歩道等を設けようとする道路の部分が舗装されていないため、又は積雪その他の理由により第一項の規定に適合する道路標示の設置又は管理が困難である場合 内閣府令で定めるところにより、道路標識のみを設置すること。

報道内容からすると、他の報道では「標識自体が無かった」みたいなものもありますが、信号がない横断歩道については道路標識と道路標示がないと施行令1条の2第3項の要件を満たさないため、路面表示があっても法律上は「横断歩道がない」(道路に落書きあり)になります。
なので横断歩道が存在しないのに横断歩行者妨害を取り締まったということになり、違法な取り締まりになってしまう。

標識があったけど視認出来ない位置にある場合も同様です。
報道を見ると「標識自体無し」と「標識が見えない」が混ざっているのか?

なんでこういう規定があるのか考えてみると、アレですかね?
私人が横断歩道風の落書きをした場合に揉めるから?
ちょっと調べた限りでは、やはり「私設横断歩道」を作る馬鹿者(当然違法)がいた場合に、運転者も歩行者も従うべきなのかわからないからという理由らしい。

私人が勝手に横断歩道を作った場合、そもそも危険な位置に私設するようなことがあると、ドライバーがあり得ない罪を着せられてしまう可能性すらありますから。
予告表示もなく、見通しが悪いカーブの途中に横断歩道を私設されたら…
歩行者は横断歩道だと信頼して横断し、ドライバーは何の予告表示もなく突如現れた横断歩道で違反が成立する。

それが不合理かつ理不尽なのは言うまでもない。

(禁止行為)
第七十六条 何人も、信号機若しくは道路標識等又はこれらに類似する工作物若しくは物件をみだりに設置してはならない。

ちょっと前にも書きましたが、道路標識が「横断歩道と自転車横断帯」になっているけど、道路標示が横断歩道のみの場合にも、施行規則の要件を満たさない限りは自転車横断帯は無いものとして取り扱います。

以前書いた記事について、読者様からご指摘を頂きました。 1)管理人様の2021年10月12日付「歩行者に優先権が無い横断歩道。」( )の記...

あと、適法に横断歩道が設置されたけど何らかの理由で道路標識が破損して視認不可能になった場合も、法律上は「横断歩道がない」として取り扱うことになります。
まあ、それはおかしいだろと疑問を投げ掛けている裁判官もいますが、個人的には「誰がどう見ても横断歩道だと視認可能なら」横断歩道があるものとして扱っていいのでは?と思う。
下記意見に賛成です。

たとえば酔漢の悪戯で標識が破損された場合にも、道路標示のほうはゼブラ模様の標示であれば明確に認識できるはずであるから、それがわかっていて法38条所定の義務を怠った場合に、これを不可罰とするすこぶる疑問であると思う。要するに横断歩道であることが明示されていると客観的に認められれば足りるのではなかろうか。

判例タイムズ284号「横断歩行者に対する保護(東京地裁判事 和田保)

とはいえ

視認できない道路標識は無効という概念が示されている以上、やはり厳しい。

道路交通法施行令七条三項には、公安委員会が道路標識を設置するときは、歩行者、車両又は路面電車がその前方から見やすいように設置しなければならない旨を規定しており、このことに鑑みても、道路標識は、ただ見えさえすればよいというものではなく、歩行者、車両等の運転者が、いかなる通行を規制するのか容易に判別できる方法で設置すべきものであることはいうまでもない

最高裁判所第二小法廷  昭和41年4月15日

まあ、車両通行帯についても公安委員会の意思決定を忘れていて問題になった事例は多い。

さいたま簡易裁判所は,平成23年4月21日,「被告人は,平成20年11月18日午後4時35分頃,埼玉県三郷市栄1丁目386番地2東京外環自動車道内回り31.7キロポスト付近道路において,普通乗用自動車(軽四)を運転して,法定の車両通行帯以外の車両通行帯を通行した。」旨の事実を認定した上,道路交通法120条1項3号,20条1項本文,4条1項,同法施行令1条の2,刑法66条,71条,68条4号,18条,刑訴法348条を適用して,被告人を罰金6000円に処する旨の略式命令を発付し,同略式命令は,平成23年5月7日確定した。
しかしながら,一件記録によると,本件道路は,埼玉県公安委員会による車両通行帯とすることの意思決定がされておらず,道路交通法20条1項の「車両通行帯の設けられた道路」に該当しない。したがって,被告人が法定の車両通行帯以外の車両通行帯を通行したとはいえず,前記略式命令の認定事実は,罪とならなかったものといわなければならない。
そうすると,原略式命令は,法令に違反し,かつ,被告人のため不利益であることが明らかである。

最高裁判所第二小法廷 平成27年6月8日

ちゃんと管理しない警察に問題があると言えますが、交通規制課の人ってなかなか大変ですな。
福井県は毎月、新しく交通規制を作った場所を公表してます。

私が思うにですが、道路標識等の設置基準や公安委員会の意思決定について、結局はトラブルが起こらない限り表面化しない点に問題があるような気がする。
一般人が標識等をみて、「あれはおかしいのでは?」と指摘できるほど知識がある人はまずいません。
私もいまいちわからないので自信無し笑。

一般人によるチェック機能が働かないシステムって、あんまり好ましくないと思う。
ちなみに横断歩道の管轄は公安委員会なので、万が一路面表示が消えかけていたり、道路標識が破損していたなら管轄の警察署の「交通規制課」に電話して教えてあげたほうがよい。

理屈の上では、横断歩道の路面表示が消えていても法定要件を満たさなくなる可能性があり、誰にとっても利益がない。

まあ、警察も予算の関係からすぐに動けないことはあるだろうけど、予告表示消えかけとかもまあまあ見かけます。
電話して「消えかけている」と教えてあげたり、標識が破損していたなら通報。




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