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青信号で横断歩道を横断しても、歩行者過失が20%。

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横断歩道を横断する歩行者は極めて強い優先権を持つため(道路交通法38条1項)、赤信号で横断開始したのでない限りは歩行者に過失がつくケースはあまり多くはありません。
ただし、歩行者が容易に事故を回避出来た事故については、令和の判例でも歩行者に過失をつけています。

 

横断歩道で歩行者に過失がつくケース。
横断歩道上で歩行者が事故に遭った場合、原則としては過失割合は車:歩行者=100:0。ただまあ、歩行者に過失がつくこともあります。歩行者に過失がつくケース例えばこんな事故。この場合、道路交通法の義務でいうとこうなります。○38条1項前段と後段...

 

青信号で横断歩道を横断したにもかかわらず、歩行者に過失を20%つけた判例もあります。

青信号で横断しても過失20%

判例はちょっと古く、東京地裁 昭和46年1月30日。
「都電」とか出てくるので、今の状況をGoogleマップで確認しても全く意味がわからない程度に状況が違います。
まあ、30年近く前の判例を挙げて「自転車横断帯もある!現場をみろ」などと語る人もいた気がしますが。

 

判決文から引用します。

本件事故発生地点及び被告車の進行方向が被告ら主張のとおりであること、並びに本件事故の直前原告が被告ら主張の安全地帯上において交差点南西部の歩行者専用信号機の表示が「青」になるのを待っていたこと、右信号機の表示が「青」になったため、原告が軌道敷内に降りたこと、以上の事実は当事者間に争いがなく、これといずれもその成立につき当事者間に争いがない〈証拠〉を総合すれば、つぎの事実を認定することができる。すなわち、被告が右のとおり本件交差点さしかかった際、その対面する信号機の表示は「青」であったため、同被告はそのまま右交差点に進入したが、当時同被告の進行方向と同一方向及びその逆方向の交通ともに極めて混雑し、車両の渋滞によって被告車が右交差点を通過し切れないうちに、すでに前記の信号は「黄」となり、被告車が右交差点を出ようとするころにはさらに「赤」に変ったのであるが、そのころ、被告は前記安全地帯の東端に学生三、四人と原告が佇立している姿を認めたが、被告車の進路である軌道敷内に原告が歩を踏み出すことはないものと考えてそのまま進行し、前記のとおり軌道敷に降り立った原告に被告車を接触せしめるにいたったこと他方原告は、前記安全地帯において都電を下車し、右安全地帯に接して設けられた横断歩道を通って被告車の進路を北から南に横断すべく右安全地帯の東端まで進み、前記のとおり、対面する歩行者専用の信号機の表示が「青」になるのを待ち、右信号が「青」になつて、道路反対側の歩行者も、右信号によつて横断を開始したため、右安全地帯から横断歩道上に歩を進めた際、前記のとおりに進行してきた被告車に接触されるにいたったこと、以上の事実が認められ、他にこの認定を左右する証拠がない。この事実によれば本件事故発生に関する被告の過失の態様が前方注視義務違反にあることは明らかであるが、他方原告としても、まさに横断せんとする道路の状況が前記のとおりであり、すでに交通も渋滞しているのであって、たとえ、対面信号機の信号の表示が「青」になったとしても、交差点内を通過し切れないでその内側に残留する車両があることは当然に予想し得るのであるから、さらに右方の安全をも確認してから横断を開始すべきであったにかかわらず、不用意に前記横断歩道上に進出したため、本件事故が発生したものとするほかなく、したがって、本件事故の発生について原告の過失もその一因をなしているものというべく、この過失を被告の過失と対比すれば、その寄与の割合は、大むね原告の2に対して被告8と認めるのが相当である。

 

東京地裁 昭和46年1月30日

要は交差点が渋滞しているのに被告車は交差点に進入し、交差点内にいるのに信号が赤に変わってしまった。
被告車は横断歩行者が進行しないだろと甘く見て進行したところ、青信号で横断開始した原告と衝突したわけです。

 

渋滞の状況から原告にも注意義務違反があるとして20%の過失としています。

 

ただまあ、若干考慮すべき事情があるとしたらこれ。

(交差点等への進入禁止)
第五十条 交通整理の行なわれている交差点に入ろうとする車両等は、その進行しようとする進路の前方の車両等の状況により、交差点(交差点内に道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線をこえた部分。以下この項において同じ。)に入つた場合においては当該交差点内で停止することとなり、よつて交差道路における車両等の通行の妨害となるおそれがあるときは、当該交差点に入つてはならない

50条は昭和46年改正時に新設された規定で、判例の事故当時はまだありません。
ちなみにこの規定、今の時代でも強引に交差点に進入しては交差点内で赤信号になり邪魔しているケースも見かけるので、ちゃんとしましょう。

 

あと、同条2項を理解せずに横断歩道上で渋滞停止している車両もよくみかけます。

2 車両等は、その進行しようとする進路の前方の車両等の状況により、横断歩道、自転車横断帯、踏切又は道路標示によつて区画された部分に入つた場合においてはその部分で停止することとなるおそれがあるときは、これらの部分に入つてはならない

むしろこっちのほうが深刻な問題な気がします。

過失とは

過失とは予見可能なことを回避しなかったこと(注意義務違反)なので、道路交通法違反がなくても過失にはなります。
道路交通法違反がなくても過失運転致死傷罪は成立しますし、民事上の過失は道路交通法違反がなくても過失認定されますし。

 

わかってない人だとSNSの事故映像をみて「道路交通法違反はないだろ!」と言いますが、過失は道路交通法違反だという運用ではないので。

 

横断歩道での歩行者事故の場合、基本的には赤信号じゃない限り歩行者に過失をつけない傾向にはありますが、夜間や、歩行者が容易に回避出来る場合、直前横断などは過失認定するケースがあります。
運転者のほうが責任が重いのは当たり前ですが。






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