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電動キックボードの押し歩きは電源を切るべき?

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この質問はまあまあ奥が深いと思います。

読者様
読者様
電動キックボードを押して歩くと歩行者になると思いますが、電源はオフにする必要があるのでしょうか?

「押して歩いている者」

まだ特定小型原付が施行されていないのですが、どちらにせよ同じこと。
道路交通法2条3項2号では、自転車やオートバイなどを「押して歩いている者」を歩行者だとしています。
この規定について、「交通の方法に関する教則(道路交通法108条の28)」では、

2 押して歩くとき
二輪車を押して歩くときは、歩行者として扱われます。しかし、エンジンを掛けているものやほかの車をけん引しているものや側車付きのものを押しているときは、歩行者としては扱われません。

このように書いてあるので、電動キックボードについても同様です。
ただし、なぜこのように書いてあるかを考察する必要があります。

 

「押して歩く」にしても、アクセルを回しての押し歩きについては、歩行者とは言えない。
エンジンが掛かっていても、アクセルを回してない状態で押して歩く分には本来は「歩行者」とみなすべきなんでしょうけど、簡単にいえば

外見上、わからん!

なので一律でエンジンを切ることを求めているのだろうと思われます。

 

道路交通法には「運転」の定義があります。

十七 運転 道路において、車両又は路面電車(以下「車両等」という。)をその本来の用い方に従つて用いること(自動運行装置を使用する場合を含む。)をいう。

これ、いくつか判例があるのですが、その前に。
「運転」⇔「歩行者」の対比で考える人が多い気がしますが、「車両」⇔「歩行者」で見るべきだと思うのですよ。
道路交通法の規定を見る限り、「歩行者は」、「車両は」と規定しているわけで、歩行者と車両(等)で区分しているわけだし。
「車両は」という表現は、車両を擬人化したものとされます。

 

押して歩いている者を歩行者とする規定は、昭和46年道路交通法改正時に出来ました。
この当時の資料に興味深い記述があります。

自転車等を押して歩く場合の通行方法について、従来は、自転車等を押して歩くことは自転車等の運転とはいえないとしても、なお車両の通行とみるべきであるとして、車両の通行方法によるべきとされていた。しかし、二輪の車両を押して歩いている場合は、その通行の態様からみても、車両の通行というよりは歩行者の通行に近く、押して歩いている者の通行の安全を図るためには、これを歩行者と同様に扱うことが必要と考えられる

 

月間交通(1971年8月)、警察庁交通企画課、東京法令出版

「押して歩いている者を歩行者とする」規定ができる前までは、押して歩いている者は「運転」とは言えないけど「車両」と見なしていた。
運転とみなすにはこういう判例があります。

 しかしながら、道路交通法2条17号によると、改正前の道路交通法117条の2第1号にいう「運転した」とは、「道路において車両等をその本来の用い方に従つて用いた」との意味であるところ、自動車の本来的機能および道路交通法の立法趣旨に徴すると、駐車中の自動車を新たに発進させようとする場合において、右にいう自動車を「本来の用い方に従つて用いた」とは、単にエンジンを始動させただけでは足りず、いわゆる発進操作を完了することを要し、かつ、それをもつて足りるものと解するのが相当である。本件において、第一審判決および原判決の認定した被告人の前記所為は、自動車の発進操作を完了するまでには至つていないものと認められるから、被告人の右所為は、自動車を運転したことにはならないものというべきである。

 

最高裁判所第三小法廷 昭和48年4月10日

これに倣うと、エンジンを掛けずに跨がって下り坂を下るオートバイは運転なのか?という疑問が出てしまう。
かといって押して歩いている者ではないので、「法区分としては車両だけど、運転ではない」という状態に見なすのが適切なんだと思う。

 

エンジンを掛け、アクセルを回し押して歩いている者は「運転」なのかは疑問ですが、おそらくは「運転ではないけど車両」。
なのであくまでも車両の通行区分に従うことになるので、歩道通行が違反となる。

 

検挙対象になるかは別として、電動キックボードを「歩行者」とするには電動オフにする必要がある。

ところで

まあまあ不思議なんですが、自転車は「降りたら歩行者」という人が多い。
ちょっと前に某警察本部の人も言ってましたが、

 

歩行者性の獲得。
自転車は押して歩けば歩行者という規定があります。 3 この法律の規定の適用については、次に掲げる者は、歩行者とする。 二 次条の大型自動二輪車又は普通自動二輪車、二輪の原動機付自転車、二輪又は三輪の自転車その他車体の大きさ及び構造が他の...

 

○自転車から降りたらすぐに歩行者として扱うのは問題がある。
○法の規定はあくまでも「押して歩く者」だから、降りた瞬間に歩行者とみなして38条違反とするのは…
○だけど判例として確立しているわけでもない。
○誰かが裁判で争ったときには、どうなるかは未知数

この規定は、そもそも車両なのか歩行者なのか、法律上の区分を分ける規定だと理解できます。
なので、降りて押して歩いて(歩行者)、そのまま信号待ちで停止している人は歩行者なんだと理解できます。

 

2条3項2号の歩行者に当たるかどうかを争った判例ってほとんどないのが実情。

状況 歩行者?
福岡高裁H30.1. 18 自転車から降りて横断歩道手前で待ち、乗って横断 降りていたことについて38条1項の「大幅に減速する義務」を否定しているので歩行者性を認めていない
名古屋地裁H28.10.8 自転車から降りて横断歩道から少し離れた位置で待ち、乗って横断 「道路交通法において歩行者とは、文字通り道路を歩いて通行する者をいい」と説示(ただし理由は別)
神戸地裁H5.4.28 自転車に乗ったまま歩行者同等の速度で横断歩道を横断 自転車

 

自転車と横断歩道の関係性。道路交通法38条の判例とケーススタディ。
この記事は過去に書いた判例など、まとめたものになります。 いろんな記事に散らかっている判例をまとめました。 横断歩道と自転車の関係をメインにします。 ○横断歩道を横断する自転車には38条による優先権はない。...

 

自転車による優先道路進行妨害。
以前、横断歩道を横断した自転車を「優先道路進行妨害(36条2項)」とした判例は紹介していますが、他に似たような判例を。 自転車による優先道路進行妨害 判例は平成28年8月10日、名古屋地裁。 交差点の状況はこん...

 

原告において、同人は本件事故当時横断歩道上を進行していたのであるから、横断歩道上の歩行者と同視し、同人に過失相殺はなし得ない旨主張する。

 

確かに、本件事故発生場所が南北道路横断歩道上であることは、前記認定のとおりである。

 

しかしながら、道路交通法が、自転車をもつて軽車両とし(2条1項11号)、歩行者とは異なつた法条の適用を定めていること、特に、自転車を押して歩いている者を同法の適用上歩行者として取扱う旨明示(2条3項)していて、自転車搭乗者と自転車を押して歩いている者とを明確に区別していること、自転車について、横断歩道とは別に自転車横断帯の設置や自転車の横断の方法を各規定(2条1項4号の2・63条の6)していることに徴すると、本件のように、自転車に搭乗して横断歩道上を走行する者を歩行者と同視することはできない。

 

神戸地裁 平成5年4月28日

まあ、降りた瞬間を歩行者とみなすのは無理があるようにしか思えないけど、結局のところ自転車が横断歩道手前で乗ったままだろうと待っていたら、そのまま横断することは予見可能。
予見可能な事故は回避する義務がある以上、減速して様子見しながら進行するしかないわけで、分ける意味なんて無いと言えばない。
得意の「譲り合い」なんですかね。

 

現実的に歩行者なのか車両なのかについては、民事の過失割合でしか検討されない要素とも言えますし、電動キックボードについても降りて押して歩いている以上は電源のオンオフにかかわらず歩行者同等なんだとは思いますが、警察庁の方針としては

歩行者とみなすにはエンジンを切れ。

このようになってます。
持って歩く人は電源の有無にかかわらず歩行者です。

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