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質問とお返事。

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先日の記事について質問を頂きました。

 

先行車の状況に合わせた速度調整義務。
もう、さ。アホクサ現場はこのように40キロの指定最高速度の道路ですが、自転車の速度は51キロやら53キロやら…ところでこの件。左側端に寄せてない(25条1項)で、「できる限り」に該当するような特別な理由も無さそうな状況。「できる限り」の解釈...

 

読者様
読者様
1、道路外に右折する際に10~15キロの速度超過を予想する注意義務(25条の2、最高裁54年7月24日判例)を挙げてますが、この判例は「右事実関係のもとにおいては」と限定しています。場合によっては「正常な交通」の範囲が小さくなる可能性もありますか。

2、25条の2は優先規定だと思いますが、追いつかれた車両の義務(27条2項)も優先規定だと思います。追いつかれた車両の義務についても10~15キロの速度超過車に追いつかれたら譲る義務がありますか?

だいぶディープな内容…

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「正常な交通」の範囲

(横断等の禁止)
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。

そもそも論で言えば、道路交通法の優先規定は全て「適法に通行する車両が対象」。
なので厳格に解釈すれば、25条の2についても同様になりそうなものですが、ある程度実情を込みで「正常な交通」の範囲が決まるので、違反していたから優先権が消失するとも言えません。

 

最高裁昭和54年7月24日の原審は広島高裁松江支部昭和53年11月22日ですが、状況はこんな感じ。

 

・一審判決の変更部分

本件事故現場付近の道路には速度制限の指定はなく、従つて最高速度は法定の時速60キロメートルであつた。ところで、本件事故現場のように、交差点の外観も具えておらず、右折車の数が甚だ少いのに対し直進車が極めて頻繁その大部分が法定の速度を時速10ないし20キロメートルを超える高速度で走行している場合には、右折しようとする車両の運転者は、直進者が法定の速度を時速10ないし20キロメートル超過して走行していることをも予測したうえで、右折の際の安全を確認する義務があるというべきである(最高裁昭52・12・7判例時報875号参照)。

 

広島高裁松江支部 昭和53年11月22日

・二審の説示

一審被告の免責の抗弁について判断する。道路交通法25条の2第1項は、車両は、他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための右折をしてはならない旨規定しているところ、本件のような国道においては、車両が法定の最高速度を時速10ないし15キロメートル超過して進行することは通常予想しえないことではないから、右折車両の運転者としては、直進対向車が法定の最高速度を時速10ないし15キロメートル程度超過して走行している可能性のあることを予測にいれたうえで、右折の際の安全を確認すべき注意義務があるということができる

 

広島高裁松江支部 昭和53年11月22日

この手の「優先側の速度超過」についてはいろんな判例において、「現によくみられる状況」を加味して検討されています。
例えば交差点の右直関係(37条)についても、

 

道路交通法37条の直進車優先と判例。直進車が暴走しても直進優先?
ちょっと前にも書いたのですが、まとめておきます。第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。※直進車が違法走行した事例をメインに...

 

「何キロまで」と定説があるわけでもなく、その道路における実情から判断している。
本来の道路交通法で言えば、あのTwitterのように指定最高速度40キロの中、51~53キロで通行する自転車は優先権を主張できる立場だとは思いませんが、判例からすると

①+10キロ程度は「正常な交通」の範疇とみられる傾向にある。
②下り坂というスピードが出やすい状況

これらを考えると、甘めに見て「正常な交通の範疇」になりうるとは思います。
ただし、だからといって速度超過が許容されるわけもないのは言うまでもなく。

「正常な交通」の範囲は小さくも大きくもなり得ますが、+10キロ程度は概ね間違いない範囲かと。

追いつかれた車両の義務

読者様
読者様
2、25条の2は優先規定だと思いますが、追いつかれた車両の義務(27条2項)も優先規定だと思います。追いつかれた車両の義務についても10~15キロの速度超過車に追いつかれたら譲る義務がありますか?

確かにどちらも優先規定ですが、性質が異なるものなので、この考え方はちょっと難しいかと。
+10~15キロまで優先だとしたのはあくまでも上の判例での「状況」を加味しての話。
まあそれを言ったら追いつかれた車両の義務についても「状況」を加味して検討するのかという話になりますが…

 

追いつかれた車両の義務についてはそもそも判例も少なく、上位審が判断したものもないので「わからない」です。

 

道路交通法27条「追いつかれた車両の義務」は「徐行や一時停止義務」を負うのか?
ちょっと前の続きです。27条2項「追いつかれた車両の義務」は徐行や一時停止義務を負うのか?という話がありますが、ちょっとこれについて掘り下げてみます。なお、話は長いので興味がない人はスルー推奨。(他の車両に追いつかれた車両の義務)第二十七条...

 

そもそも「追いつかれた車両の義務」については、滅多に適用されないものだしあまり気にしなくていいと思います。

本来の意味合いは

道路交通法の優先規定って優先側が適法に通行していることを前提にしているので、速度超過して優先権を主張できる立場だとは思いませんが、優先権が消失しても注意義務までは消し去らない。

 

先行車の速度に合わせて速度を調整しながら進行することは当たり前のこと。
あのTwitter動画、仮に車が自転車を先に行かせるために一時停止したとして、自転車は時速50キロ(もしくは近い速度)のまま左側を通過するつもりだったのでしょうかね。

 

なお、こちらの判例にもあるように、

 

左折する直前に自転車を追い抜きしてはならない③。
先日の記事。この中で引用した、東京高裁 昭和50年10月8日判決について質問がありましたので。東京高裁 昭和50年10月8日判決この判例は道路外に左折する大型車と、後続直進車の衝突事故。若干特殊な事情があります。まず事故態様。大型車は道路外...

 

左折する直前に自転車を追い抜きしてはならない④。後続2輪車の注意義務。
前回の続きです。後続2輪車の注意義務前回挙げた判例のおさらいから。まず事故態様。大型車は道路外に左折するために、車道左側端から1.5mの位置で停止してました。対向右折車を先に行かせてから左折しようとしたようです。後続直進オートバイは車道左側...

 

A車が被告人車に接近しても被告人車が停止を続けていた以上、前記のとおりA車は被告人車の左側を通過することが許されたというべきであるが、かような場合でも、視野を妨げられた被告人車の前方に横断歩行者又は他の車両のありうることが十分予想されるのであるから、A車は相当に減速し、安全な速度で被告人車の左側を通過すべきであつた。したがつて、被害者にも相当大きな注意義務違反があつたというべきである。

 

東京高裁 昭和50年10月8日

このように先行車が左折待ちで停止したとしても、速度超過のまま突破することも無減速のまま突破することも注意義務違反。
たまたま停止車両の前に横断歩行者等が何もいなかった(事故が起きなかった)から結果論でOK…みたいなしょーもない発想ならアレですが、そもそも速度を調整しながら進行することは当たり前の義務。

 

なので、双方の過失が競合した結果でしかない。
左折前の確認などに問題はありますが、だからといってクルマの一方的過失にはなり得ない事例かと。


コメント

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