パリでは住民投票の結果、シェア電動キックボードが終了になるという報道は見た人も多いと思いますが、ある面では日本の今後とも関係するかもしれません。
ちょっとそんな話を。
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いろいろ不思議
フランスでの電動キックボードのルールはこのようになっています。
対象年齢 | 13歳以上 |
最高速度 | 25キロ |
通行可能な場所 | 車道、自転車道 |
歩道通行 | ✕ |
ヘルメット | 任意 |
ちなみに「速度違反」が罰金対象になっているので、日本でやっていたような「スピードリミッター」は付いてない(?)のかもしれません。
反対論の背景には、ルール無視の乗り方で歩行者を死傷させた痛ましい事故の数々がある。21年6月、パリのレストランで働く30代のイタリア人女性がセーヌ川のほとりで電動ボードにひき逃げされ、搬送先の病院で死亡した。報道によれば、運転していたのは看護師の20代女性で、事故時に友人の看護師と違反行為の2人乗りをしていた。
パリ・オペラ座のピアニスト、イザベル・バンブラバンさんは19年5月、市内の公園で電動ボードにひき逃げされて転倒。腕を2カ所骨折した。高速の電動ボードが乳児を抱いた母親に衝突し、乳児が路上に投げ出されたケースもある。
地元紙が報じたパリ警視庁の集計によると、電動ボードが絡んだ事故の負傷者は19年に203人だったが、22年は426人となり、3年間で倍増した。死者は19年が2人、22年は3人。
他都市も含めたフランス国内全体で見ると、同様のサービスは約200カ所で提供されているほか、個人の電動ボード所有者も250万人に上る。別の統計によれば、電動ボードによる事故で、21年に国内で1万1256人が負傷し、24人が死亡した。
Yahoo!ニュースYahoo!ニュースは、新聞・通信社が配信するニュースのほか、映像、雑誌や個人の書き手が執筆する記事など多種多様なニュースを掲載しています。
その他、多くは「自損事故」であることや、危険な運転が横行したことなどが原因に挙げられています。
イヤホンで音楽を聴いたり、スマホの画面を見たりしながらの危険運転が横行している。飲酒後や薬物の服用後に運転した者もおり、非常識な振る舞いが事故を招いているようだ。公衆衛生に関する仏政府の諮問機関、医学アカデミーは「ルールを守れば事故は減らせる」と結論付けている。
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ところで。
ちょっと気になるポイントなんですが、パリってコロナをきっかけにして自転車レーンを作りまくって安全になったぜ!という話もあります。
その結果がこれ、なんですかね。
インフラ整備して安全だぜ!というわりにはこの結末になるのがよくわかりませんが、「ルールを守れば事故は減らせる」と結論付けた点や無謀な運転が相次いだ点から見ても、そのまんまなのかと。
インフラが整備されようと、使う人がアホなら話にならないというところでしょうか。
歩道を爆走する電動キックボードの話なんかも聞いてますが、結局は人がメチャクチャすればこうなる。
逆に日本の場合は、インフラについてはお粗末ですがどうなるのかなと思ってまして。
日本の場合、「実証実験」を繰り返した結果として「特定小型原付」が誕生しています。
実証実験の電動キックボードについては、特例として電動キックボードを「小型特殊自動車」とみなしていたため、免許保有者のみでの実験になっていましたが、違反件数として最も多いのは「通行区分違反」。
つまりは歩道通行です。
2021年9月から22年6月のデータは公表されてます。
※整備不良というのは、実証実験以外の「原付扱いの電動キックボード」の保安装備やナンバープレートの話だと思います。
事故件数はこちら。
事故の相手方はこんな感じ(令和2~4年の総計)。
相手方 | 割合 |
四輪 | 31件(42%) |
単独事故 | 18件(24%) |
自転車 | 14件(19%) |
歩行者 | 8件(11%) |
二輪 | 3件(4%) |
パリって自転車レーンが大規模に整備されて電動キックボードが走りやすい環境になったみたいな記事を読んだことがありますが、それがあったからこの事故件数で収まったと見るのか、結局は「人」がメチャクチャすればそんなもんだと見るのかはわかりません。
どちらにせよ、パリではシェア電動キックボードが終了しますが、個人所有の電動キックボードは継続します。
日本の「特定小型原付」との違い
もうすぐ特定小型原付が解禁されますが、日本とフランスの違いを見てみます。
日本の特定小型原付 | フランスの電動キックボード | |
最高速度 | 20キロ(リミッターあり) | 25キロ(リミッターなし?) |
対象年齢 | 16歳以上 | 13歳以上 |
歩道通行 | 時速6キロモード&自転車通行可の歩道のみOK | ✕ |
ヘルメット | 努力義務 | 任意(推奨) |
保険 | 自賠責必須 | ? |
大きく違う点を挙げるならば、このあたりでしょうか。
○歩道通行モード(時速6キロ)がある
○モードの違いが最高速度表示灯で外見上明らか
なお、時速20キロモードと6キロモードの切り替えは、速度ゼロにしないと変更できません。
歩道通行を可能にしてますが、時速6キロであれば電動車椅子と変わらないので、歩道をビュンビュン走る自転車より「対歩行者リスク」は小さい。
ただし問題なのは、モードチェンジがきちんと遵守されるかどうか。
実証実験でも最も多い違反は「通行区分違反(歩道通行)」。
速い速度で歩道を違法通行されるよりも、時速6キロで解禁したほうがマシという考え方なんだろうと思いますが、モードチェンジをしない無法者が横行すれば結局は対歩行者リスクが大きくなる。
モードが最高速度表示灯で明らかなので、取締りしやすいメリットはあると思いますが、取締りがどの程度されるかはわかりません。
特定小型原付は自転車道を通行可能ですが、通行「義務」はありません。
例によって自転車道の構造が「歩道の中」にあるので、電動キックボードの人には歩道部分と自転車道部分でモードチェンジすることになるなど面倒な構造になっています。
「自転車道に入る前の歩道部分」で時速6キロモードに切り替える人がいるとは到底期待できませんし、その僅かな部分の違反を取る警察官がいるとも思えませんが、歩道通行時の「モードチェンジ」がナアナアになればメチャクチャになって行くのはある程度予想されます。
実際にどうなるかは蓋を開けてみないとわかりませんが、パリでも明らかなように、「人」がダメならメチャクチャになるのは自明。
インフラがどうとかも大切ですが、どうなるかは人次第としか言えませんな。
ただし、自転車のルールが分かりにくいのと同様に、特定小型原付の通行方法にしても、きちんと理解している人は少ないと思う。
分かりやすいルールじゃないと非免許制の乗り物は成立しませんが、警察が分かりやすい解説サイトなりきちんと作って欲しいんですけどね。
あとは、やる気がない自転車レーンを何とかするなど、インフラについても改善が必要ですが、
そもそも、電動キックボードってそんなに乗りたい人がいるのか不思議です。
けど、電動キックボードって自転車とほぼ同じルールなわけで、電動キックボードが増えた時には自転車が抱えているルール上の矛盾に必ずぶちあたります。
ダブル左折レーンとか、左折レーンから直進するとか、歩行者自転車専用信号だとか、二段階右折のラインがわからない交差点だとか…
特定小型原付は限定的にしか歩道通行できないので、自転車と違って「困ったら歩道へ」も限定的にしか使えない。
なので電動キックボードが増えたときにはこういう問題にぶち当たるわけですが、国レベルの議論にならないと解決しない。
そういう面で電動キックボードが増えたときには必ず議論になるはずだと思っているのですが、どうなることやら。
日本でも電動キックボードが流行るのかはわかりませんが、ルールが遵守されるかについては未知数です。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
自転車より乗り降りが楽って推進派の人も言ってるので押し歩きで解決ですよ!
コメントありがとうございます。
押し歩きが期待できるのかは怪しい気がします笑
電動キックボードって駆動系直結なのでしょうか?直結だと押して歩くとモーターの抵抗が掛かるのでしょうか?電動アシスト自転車と違ってフリーハブなんて無いですよね。
コメントありがとうございます。
正直なところわかりません笑
駐車区分がバイク(原付)扱いでは置き場がなく普及は無理でしょう
コメントありがとうございます。
違法駐輪が増えそうです。