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私設の「一時停止」にどのような効力があるか?

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道路交通法上、「一時停止」の規制は公安委員会が設置した標識がないと無効になりますが、

たまに「看板」や「路面表示」として「止まれ」「一時停止」などと書いてある場合があります。
道路交通法上は、公安委員会が設置した標識じゃないと無効ですが、判例ではどのように見られるかを検討します。

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警察署が設置した「一時停止」(法定外)

まずは公安委員会ではなく警察署が注意喚起のために「一時停止」という看板を立てた場合の効力から。
十字路の全方向に一時停止という看板を立てた事例。

本件当時本件交差点の東、西、南、北の各角付近に「危険、一時停止、浪速警察署」と大書した相当大きな立て標示板がそれぞれ設置されていたことが認められるが、右標示板は、公安委員会が正規に設置した法2条15号にいう道路標識ではなく、所轄警察署において危険を防止するため法的根拠なしに設置したもので、それは、同交差点に進入する車両に対し、同所が危険な箇所であることを警告し、その注意を促す程度の意味しか有しないものと解するのが相当であり(もし、右標示板設置によつて、明らかに広い道路である南北道路を進行する車両にも、一時停止すべき法的義務が生ずるものとすれば、なんらそのような権限のない警察署に、法36条の認める優先通行権を否定するような一般的規制措置をとり得ることを認める結果となり、極めて不合理である)

 

大阪高裁 昭和45年9月17日(刑事)

この判例は刑事事件(業務上過失致死傷)ですが、仮に法定外の一時停止標識に効力があるとすると優先通行権を否定してしまい不合理だとしています。

町内会が警察署の許可を得て立てた一時停止(法定外)

こちらは民事の判例。
町内会が警察署の許可を得て立てた一時停止(法定外)に従わなかったことを過失とするかの判断をしています。

原告は、被告には一時停止義務違反がある旨主張し、本件交差点の加害車の進入口に本件立看板があつたことは前記のとおりであるが、右看板は町会が作成設置したものであり一時停止等の道路標識の様式、設置場所その他道路標識について必要な事項が法令によつて厳格に定められている(道交法9条、43条、同法施行令7条、道路標識、区画線及び道路標示に関する命令2条、3条、4条2項等)趣旨に鑑みれば、仮に町会が右看板を作成設置するについて富坂警察署の許可を得ていたとしても、それに一時停止規制の効果をもたせることはできないというべく――それはせいぜい交差点に進入する車両に対して安全確認の注意をうながすものにすぎないとみるべきである――その他被告が本件交差点に進入するに際して一時停止をすべき義務があることを認めるに足りる証拠はないから、原告の右主張は理由がない。

 

東京地裁 昭和45年4月3日(民事)

法定外の標識だから一時停止義務はなかったとして過失とはしていません。

自転車同士の場合

幅員が狭い生活道路で、原告(赤自転車)側には公安委員会が設置したものではないですが「止まれ」と書かれた看板があります。

右検討の結果によれば、本件事故は、原告が交差点の手前で減速して本件交差点に進入し、曲がり切つた後ペダルを踏み込んだ時に原告自転車の前輪が被告自転車の前輪右側に衝突し、その結果、原告が前かがみで被告自転車の前輪を覆うようにして倒れた結果生じたものであると認めるのが相当である。なお、本件事故時の被告の行動は、大袋駅からの道路の右側を減速しながら通行し、原告を発見して直ちにブレーキをかけ、被告自転車が停止した途端に原告自転車と衝突したものであると認めるのが相当である。そして、被告は、本人尋問において「大袋駅方面から道路の左側を自転車で通行し、本件交差点で停止した上で右折して恩間方面に向かう方法をとれば、交差点での停止時に後続の自転車による追突を受けるので、内回りのほうが行い易い」と供述していることから、本件事故時において、歩行者をよけようとして大袋駅からの道路の右側を通行することになつたものの、右側通行を自ら容認して走行したものと推認される。右認定に反する原被告の各供述は前示検討の結果に照らして採用しない。

 

そうすると、本件事故は、被告が大袋駅からの道路を通行するに当たり、左側を走行すべきところを右側を走行し、本件交差点も右側から進入したことのため、原告自転車との衝突を招来したものであつて、被告の右義務違反による過失責任は免れない。

 

他方、原告も、直線道路に進入するに当たり、「止まれ」と大きく書かれた看板にもかかわらず、減速をしたのみで本件交差点に進入し、その後、前方の道路事情の確認を不十分のままペダルを踏み込んだものと言わざるを得ず、このような停止義務違反、前方注視義務違反も本件事故の原因となつていることは明らかである。

 

そして、被告の過失と原告の過失の双方を対比して勘案し、また、前認定の本件交差点付近の自転車や歩行者の通行状況も斟酌すると、被告は明示で主張はしていないが、本件事故で原告の被つた損害については、その75パーセントを過失相殺によつて減ずるのが相当である。

 

東京地裁 平成6年10月18日

原告(赤、一時不停止) 被告(青、逆走)
75 25

こちらは法定外の一時停止標識に従わなかったことを過失としています。

結局のところ

民事は道路交通法違反ではなく注意義務違反(不注意)の程度を争うので、法定外の「止まれ」を大きく評価するか、全く評価しないかは判例次第なのかもしれません。
自転車同士の場合は、なせかそれなりに過失認定されているような気がするのですが、たぶん、自転車は免許制ではないので法定標識を理解してないことを前提にしているのかもしれません。

 

若干疑問なのは、一応はこのような規定があるので、勝手に「標識風」のものを作るのは違法じゃないか?という疑問。

(禁止行為)
第七十六条 何人も、信号機若しくは道路標識等又はこれらに類似する工作物若しくは物件をみだりに設置してはならない。

「みだりに」ではないからOKなんですかね?

 

また、交差道路の車両が、私人の交通整理(旗振り)に従うことを信頼して通行してもよいとした最高裁判例もあるわけで(最高裁昭和48年3月22日、大阪高裁昭和62年5月1日)、

 

旗振りオッサンと38条違反。
個人的にはどうでもいい話題だと思うのですが、このような質問を頂きました。 たぶんこんなイメージかと。 ちょっと話が長くなるのでこちらから回答します。 普通に考えて 絶対に違反にならないと断言はしませんが、きちんと一時停止した上で確認し、小学...

 

私人の交通整理に従って行動してもよいとしながらも、私人が設置した標識(風)に従うことは信頼しちゃダメなのか?
いろいろ謎はありますが、道路交通法上は効力がないけど注意義務として検討されうるというところでしょうか。
もちろん勝手に標識風の構造を作るのはやめましょう。

 

コメント

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