7月から新しいルールとして登場する特定小型原付(電動キックボード)ですが、以前にも書いたようになぜか「並走」が禁止されていません。

軽車両の並走を禁じた道路交通法19条は改正されないからです。
第十九条 軽車両は、軽車両が並進することとなる場合においては、他の軽車両と並進してはならない。
ところで。
Contents
じゃあ並走OKなのか?
じゃあ並走してもいいのか?というとそこまで単純な話ではなくて、
特定小型原付には追いつかれた車両の義務(27条2項、以下「進路避譲義務」)が課されているので、結局は事実上並走することはムリに近いのかと。
以前から書いていますが、軽車両(自転車)は進路避譲義務から除外されています。

自転車って昭和39年までは並走が禁止されておらず、進路避譲義務からも除外されていなかったのですが、昭和39年改正時に「原則として並走禁止」にしたので進路避譲義務からも除外されました。
要は並走が許されていた時代には追いつかれたら譲る義務を課しておかないとおかしくなるからだと考えられますが、
昭和39年改正時に並走を禁じたので、18条1項に基づいて左側端寄り通行をしている分にはそれ以上譲る場所がないから、あえて進路避譲義務を課す理由がなくなったからと考えられます。
18条1項には罰則がありませんが、罰則がない理由は「どこまでが左側端寄りと言えるかは道路状況によって変化するため、罰則で縛ることが困難」という考え方です。
そのような状況で自転車を27条の対象にした場合、実質的には18条1項に罰則があるのと変わらない形になる点でもムリがあったのかと。

特定小型原付が並走していたら?
実質的には進路避譲義務との関係から特定小型原付が並走しても問題ない場面はほとんどないような気がしますが、そもそも、原付も同じく「並走は禁止されてない&進路避譲義務の対象」。
原付が並走しているのってほとんど見かけないので、わざわざ特定小型原付で並走する人たちが出てくるのかはビミョーです。
けど一つ疑問なのは、特定小型原付が並走していて自転車に追い付かれても、条文上は進路避譲義務が発生しないこと。
軽車両は政令で最高速度の定めがない以上はそう解釈するしかない。
なお、軽車両の並走禁止(19条)ってなぜか勘違いされますが、17条4項で
と定めてある関係から、車道での並走を禁止した規定です。
もしくは歩道や路側帯がない道路での並走を禁止した規定。
例えば下記動画では、一台が「路側帯」、もう一台が「車道」なので19条違反にはなりません。
自転車のルールってきちんと把握している人は少ないので、並んで通行しているだけで「違反!」と発狂する人たちがいますが、自転車のルールって本当に難しいのです。
いまだに「自転車も27条の対象だと騒ぐ人」もいますが、問われるのは18条1項の左側端寄り通行か否かの問題。
特定小型原付の並走については、結局は進路避譲義務との関係からほとんど不可能と思われますが、新しいルールをツギハギしていった結果、どんどん分かりにくいルールになっている気がします。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント