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民事の考え方と過失割合。

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こちらについてですが、

 

民事判例の不思議。その横断歩道は優先道路とみなすべきなのか?
これってどう考えるの?という疑問がありますが、 全く同じような事故判例があります。 道路交通法で見た場合 その前に道路交通法の義務で見てみます。 ○クルマの義務 (指定場所における一時停止) 第四十三条 車両等は、交通整理が行なわれていない...

 

こんな判示をしている。

本件事故は、優先道路に併設された歩道を走行し、本件交差点を直進しようとした原告自転車と非優先道路から優先道路に左折進入するために本件交差点に進入しようとした被告車両との接触事故であるところ、双方に前方、左右の不注視等の過失が認められる。
そして、以上に加え、原告自転車が右側通行であり、被告車両から見て左方から本件交差点に進入してきたこと等に照らせば、本件事故の過失割合につき、原告15%、被告85%と認めるのが相当である。

 

名古屋地裁 平成30年9月5日

読者様
読者様
歩道を通行して横断歩道を横断したのに、優先道路とか右側通行で左側から進入とかメチャクチャに思える。

というご意見を頂きました。
一応、これはこれで筋が通っているとも言える理由があります。

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民事の過失とは

そもそも過失とは「不注意」を指すので道路交通法の義務と必ずしも連動しないんですね。
たまに「過失があるということは法律違反があった」みたいな話を見かけますが、法律違反がなくても過失になるのは当たり前。

 

それは業務上過失致死傷(過失運転致死傷)でも同じこと。

道路交通取締法が自動車を操縦する者に対し特定の義務を課しその違反に対して罰則を規定したのは行政的に道路交通の安全を確保せんとする趣旨に出たもので刑法211条に規定する業務上の注意義務とは別個の見地に立脚したものであるから道路交通取締法又は同法に基づく命令に違反した事実がないからといって被告人に過失がないとはいえない。

 

東京高裁 昭和32年3月26日

で。

非優先道路から優先道路に進入することには注意義務が加重されるし、曲がり角に進入するときに「右側通行vs左側通行」だと事故回避可能性が減るのも事実。
右側の歩道を通行しても違反じゃないけど、日本で左方優先が規定されている趣旨は「左側通行だから」ですよね。

 

なので右側の歩道を通行して曲がり角に進入する場合、右側通行車両により注意が加重されるという見方は成り立ちうるので、過失にはなる可能性があります。

 

違反割合ではなく過失割合なので。

原告自転車が右側通行であり、被告車両から見て左方から本件交差点に進入してきたこと等に照らせば

純粋に道路交通法でみたら支離滅裂な話に思えるけど、そもそも道路交通法の義務違反のみならず「不注意」について争っているわけだし、間違っているとも言えないわけです。

 

そもそも、自転車が横断歩道上で事故に遭ったときに、

具体的な説示内容はともかくとして、過失割合は車道通行自転車とほぼ同等に捉えているのが現実。
道路交通法違反を争うのではなく、不注意の程度を争うのだからそもそも価値観とか判断基準が違う。

なので

例えば福岡高裁判決にしても、

 

自転車と横断歩道の関係性。道路交通法38条の判例とケーススタディ。
この記事は過去に書いた判例など、まとめたものになります。 いろんな記事に散らかっている判例をまとめました。 横断歩道と自転車の関係をメインにします。 ○横断歩道を横断する自転車には38条による優先権はない。 ○横断歩道を横断しようとする自転...

 

自転車が車両である以上、優先道路を横切る上では注意義務が加重されるわけで。
横断歩道を横断したので「歩行者に向けた注意義務」があるので、横断歩道以外の部分を通行して優先道路の進行妨害をしたよりも過失割合は下がるけど、過失割合のベースはあくまでも優先道路の進行妨害になる。
だからこのように書いてある。

自転車が横断歩道上を通行する際は、車両等が他の歩行者と同様に注意を向けてくれるものと期待されることが通常であることの限度で考慮するのが相当である。

 

平成30年1月18日 福岡高裁

民事の不注意についての考え方ってこんな感じです。
違反があったかの話ではなく、その場における注意義務の差。
法律違反があっても無過失になることはあるし、法律違反がないけど過失になることはザラ。
横断歩道を横断する歩行者には道路交通法上は何ら義務を課してないけど、普通に過失はつく。

 

物事を考える基準の違いなので、道路交通法の義務違反とは必ずしも連動しないことになりますが、だからこういう判例が普通にあるのです。

 

普段、民事の判例よりも刑事事件の判例を重視してますが、理由はいろいろありまして。
刑事事件のほうが過失認定について深さが求められるので、より分かりやすいというか。

 

例えばこれ。

 

歩道を通行する自転車と、路外に出るために左折するクルマ。
このような事故は悲しいところですが、 県道を走っていた車がこちらの駐車場に入ろうと左折したところ走ってきた自転車と衝突したということです 要は歩道通行自転車と、路外に出るために左折したクルマが歩道上で衝突した事故になります。 一時停止 歩道...

 

広島高裁は一審判決を破棄してますが、確かに「一時停止を怠った過失」だと、一時停止しても見えないのだから偶然に頼ることになり、過失になるわけもない。
そこをきちんと「一時停止の目的は止まって確認することなんだから、一時停止しても見えないなら小刻みに発進と停止を繰り返す義務があるだろが!」としたわけですが、民事ってこんな細かくはしない。

 

そして民事は道路交通法の義務を正確に判断するとも言えないし、あくまでも不注意の程度を争った結果なんだと考えたほうがいいかと。

 

実際のところ、こうした判例もある。

 

自転車に対し、27条【追いつかれた車両の譲る義務】を認めた判例。
堅苦しい話が続いていますが、一つの参考になるかと思いまして。 自転車の場合、道路交通法27条の【追いつかれた車両の義務】は適用外です。 これは刑事事件として取り締ま利される対象ではないというだけで、民事では認めた判例もあります。 事例 判例...

 

これにしても、双方が27条の義務があると主張している上で、「義務を果たした」「いや、義務違反だ」という争い。
道路交通法の義務を正確に判断するならば18条1項の問題にすべきでしょうけど、民事ってこんな感じです。

 

なので判決文を見るときは、双方が何を主張していたのかから見ないと価値がわからない気がしてますが、そもそも道路交通法違反を争うわけではなく不注意の程度を争っていると考えると、下記も違和感なく読めると思う。

本件事故は、優先道路に併設された歩道を走行し、本件交差点を直進しようとした原告自転車と非優先道路から優先道路に左折進入するために本件交差点に進入しようとした被告車両との接触事故であるところ、双方に前方、左右の不注視等の過失が認められる。
そして、以上に加え、原告自転車が右側通行であり、被告車両から見て左方から本件交差点に進入してきたこと等に照らせば、本件事故の過失割合につき、原告15%、被告85%と認めるのが相当である。

 

名古屋地裁 平成30年9月5日

そもそも、当事者からすれば具体的な説示よりも過失割合が大事なので。
加速禁止が自転車に課されてないにしても、

 

27条1項の「加速禁止」は自転車には関係しない。
27条には「追いつかれた車両の義務」が規定されていますが、 正解から言えば、関係無しです。 加速禁止 27条1項の加速禁止義務は、昭和39年にジュネーブ条約加入を理由として新設されたもの。 ジュネーブ条約の12条2項後段を反映させたモノです...

 

加速してそれが事故の一因になったなら過失になるのはバカでもわかること。
刑法(道路交通法)上の義務違反と、過失は一致するわけじゃないので。
以前何かで「道路交通法しか守れないバカです」みたいに書いてあったのを見たことがありますが、そりゃ本物のバカなんだろうなとしか言えません。
道路交通法の義務は最低限のルールに過ぎず、注意義務は別にあるのだから。


コメント

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