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23%のドライバーが自転車を追い越す際の「1.5mルール」を理解していなかった。

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ルールとして決めても、知らない人は知らないというところなんですかね。

サイクリング・スコットランドの調査では、ドライバーの23パーセントが、少なくとも1.5メートルの車間距離を空けずに自転車を追い越すと、不注意または危険運転の罪に問われる可能性があることを認識していなかったことが判明した。

 

Almost all drivers agree that close passes of cyclists put lives at risk
Campaign from Cycling Scotland urges drivers to Leave Space for a Life

ところで、日本では側方間隔に関する規定自体がありません。

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側方間隔に関する規定はない

以前も書いたように、日本では自転車を追い越し、追い抜きする際の側方間隔に関する規定はありません。
「状況に応じてできる限り安全な速度と方法」という雑なルール。

(追越しの方法)
第二十八条
4 前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条において「後車」という。)は、反対の方向又は後方からの交通及び前車又は路面電車の前方の交通にも十分に注意し、かつ、前車又は路面電車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない

で。
「事故未発生の道路交通法違反」の判例ってないの?と読者様から質問を受けていたのですが、気になってさらに調べてみました。
そもそも刑事事件の判例ってあまり公開されてない上に、事故未発生の道路交通法違反については裁判ではなく反則金制度なので、イマイチ見つかりません。
ただまあ、「左追い越し違反」の道路交通取締法違反の判例とかはあるので、探せばあるのかもしれませんが見つからない。

 

なので業務上過失致死傷罪(=事故発生)において「業務上の注意義務違反」とされたものをそのまま考えて差し支えないんじゃないかと思う。
刑事責任としては、先行2輪車に何ら動揺性もなければ「側方間隔1.0m+減速」が過失無しになるラインですが、諸判例を考慮して、さらに民事責任まで考えれば「1.5~2.0m+減速」になるのかと。

 

自転車への側方間隔はどれくらい空けるべき?判例を検討。
先行する自転車を追い越し、追い抜きするときに、側方間隔が近すぎて怖いという問題があります。 これについて、法律上は側方間隔の具体的規定はありません。 (追越しの方法) 第二十八条 4 前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条に...

 

例えば民事責任では、側方間隔1.2m、時速40キロで発生した非接触事故がありますが、

 

自転車追い抜き時に非接触事故の判例。
自転車を追い越し、追い抜きする際には側方間隔が問題になりますが、接触してないものの事故になった判例を。 非接触事故の判例 非接触事故の判例としてますが、事故態様には争いがあります。 判例は東京地裁 平成27年10月6日。 まずは大雑把に状況...

 

こういう非接触事故で刑事責任が問われるとは考えにくいけど、民事責任としてはまあまあ付く。
さらに下記も非接触事故ですが、こちらについては被告が白バイです。

 

自転車を追い抜きする際に非接触事故。
こういう判例って、車道を通行するロードバイクとしてもちょっと気になる。 今回は白バイが自転車を追い抜きした際に、非接触事故のあったという判例です。 非接触事故 今回のケースは判決文が見当たらず、警察学論集(1972年9月)に掲載されていた警...

 

こちらにしても無過失の主張は認めてないので、現実問題としては非接触だろうと事故が発生した以上は民事責任は免れないのかと。
民事責任まで考えるなら、「2.0m+かなり減速」がアンパイラインなんですが。

 

ところで冒頭の件。
ルールとして具体的数字を決めたところで遵守されなければ無意味なのか?というと、何も具体性がない日本よりははるかにマシとしか言えませんかね。

ところで

事故発生における業務上過失致死傷の判例をさらに調べたのですが、なかなか恐ろしいことに側方間隔70センチで十分だとして信頼の原則を適用しているものすらある。
いわゆる「ノールック横断」した事故。

被告人は、前記日時に、普通貨物自動車を運転して、時速約40キロメートルで(これ以上の速度であつたという証拠はない。)、前記場所付近に差しかかつたが、約12.3mないしそれ以上前方の地点にはじめて被害者が運転して同一方向に進行中の足踏二輪自転車を発見した。そのとき右自転車の中心は道路の左(以下左右は被告人の進行方向に向つていうものとする。)側端から約1.9m、被告人運転の自動車の左端は道路の左側端から約2.9mの位置にそれぞれあつたから、両者が左右へ寄ることなく、そのまま進行すれば、被告人の自動車が先行自転車を追抜く際、両者が衝突、接触するおそれはなかつた。(自転車のハンドルの端は、自転車の中心からせいぜい30センチメートル位であろうから、両者の追抜きの際の間隔は、2.9mから1.9mと30センチメートル位であろうから、両者の追抜きの際の間隔は、2.9mから1.9mと30センチメートルの和を差引いた70センチメートルとなる。)。

(中略)

そこで、右認定の事実に基づいて被告人に過失があつたかどうかを検討するに、本件被告人のように、そのまま進行すれば先行する自転車との間に十分な距離をおいた状態でこれを追抜きうる貨物自動車の運転者としては、右先行車に追従してこれを追抜こうとするに当り、特別な事情がない限り、右先行自転車が交通法規を守り、後方からの自動車との衝突の危険を未然に防止するため適切な行動に出ることを信頼して運転すれば足りるのであつて、本件被害者の自転車のように、あえて交通法規に違反し(道路交通法第53条、同法施行令第21条によれば、自転車を含む車両の運転者は、横断するときには、その地点から30メートル手前の地点に達したとき、右腕または右側方向指示器によつてその旨の合図をし、かつ横断行為が終わるまで当該合図を継続しなければならないのである。)、何らの合図をすることなく突然道路を横断する車両のありうることまで予想して常時これに備え、そのような場合でも直ちに急停車できる程度に減速徐行し、もつて事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務はないものと解するのが相当である。

 

白河簡裁 昭和43年6月1日

70センチを「十分な距離をおいた状態」としている点でも疑問はありますが、最高裁が信頼の原則を示した直後の時代。
昭和40年代頭に最高裁が信頼の原則を示した後、「ずいぶんと信頼しすぎじゃね?」と疑問に思う判例があるのも事実。
例えば「歩行者横断禁止道路」にて、スポーツ新聞を読みながら時速70キロで走行したクルマと歩行者が衝突した事故について信頼の原則を適用した判例(東京地裁 昭和47年3月18日)なんてものすらある。

 

「歩行者横断禁止」と責任。
読者様から質問を頂いたのですが、「歩行者横断禁止」の規制がある道路で、禁止規制を破って横断する歩行者と事故が起きた場合は過失責任がどうなるの?という話。 民事責任でいうなら、「歩行者横断禁止」の場所で歩行者が横断して事故になった場合、歩行者...

 

この判例については「信頼し過ぎ感」が強すぎてまあまあ意味不明なんですが、そういう時代背景から考えても白河簡裁の判例にしても価値はないでしょう。
こちらで挙げた東京高裁 昭和45年3月5日判決、最高裁判所第一小法廷 昭和60年4月30日判決、仙台高裁秋田支部 昭和46年6月1日判決あたりが刑事責任上は線引きになると思います。

 

自転車への側方間隔はどれくらい空けるべき?判例を検討。
先行する自転車を追い越し、追い抜きするときに、側方間隔が近すぎて怖いという問題があります。 これについて、法律上は側方間隔の具体的規定はありません。 (追越しの方法) 第二十八条 4 前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条に...

 

 なお、原判決の認定によると、被告人は、大型貨物自動車を運転して本件道路を走行中、先行する被害者運転の自転車を追い抜こうとして警笛を吹鳴したのに対し被害者が道路左側の有蓋側溝上に避譲して走行したので、同人を追い抜くことができるものと思つて追い抜きを始め、自車左側端と被害者の自転車の右ハンドルグリツプとの間に60ないし70センチメートルの間隔をあけて、その右側を徐行し、かつ、被害者の動向をサイドミラー等で確認しつつ、右自転車と並進したところ、被害者は、自転車走行の安定を失い自転車もろとも転倒して、被告人車左後輪に轢圧されたというのであるが、本件道路は大型貨物自動車の通行が禁止されている幅員4m弱の狭隘な道路であり、被害者走行の有蓋側溝に接して民家のブロツク塀が設置されていて、道路左端からブロツク塀までは約90センチメートルの間隔しかなかつたこと、側溝上は、蓋と蓋の間や側溝縁と蓋の間に隙間や高低差があつて自転車の安全走行に適さない状況であつたこと、被害者は72歳の老人であつたことなど原判決の判示する本件の状況下においては、被告人車が追い抜く際に被害者が走行の安定を失い転倒して事故に至る危険が大きいと認められるのであるから、たとえ、同人が被告人車の警笛に応じ避譲して走行していた場合であつても、大型貨物自動車の運転者たる被告人としては、被害者転倒による事故発生の危険を予測して、その追い抜きを差し控えるべき業務上の注意義務があつたというべきであり、これと同旨の見解に立つて被告人の過失を肯認した原判断は正当である。

 

昭和60年4月30日 最高裁判所第一小法廷

結局、具体性がないから揉めるだけですが、具体的な数字で規定したから遵守されるかはまた別問題。
ただまあ、取締りが出来るか否かという観点では具体的数字規定がないとなかなか警察も動かないでしょう。

 

ちなみにですが、読者様から頼まれていくつか判例を提供し、それをもって警察に被害申告したら受理されたそうな。
判例が全てとは思わないけど、そういうやり方もあるわけです。

 

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