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金沢の危険運転致死と、共謀共同正犯。「冗談だった」は無理筋。

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まあ、危険運転致死と共謀共同正犯が成立するという判決なわけですが、

 

赤信号無視で男性はねる「悪質とまではいえない」危険運転致死罪で男女2人に懲役6年(MRO北陸放送) - Yahoo!ニュース
2022年6月、金沢市内の交差点で赤信号を無視し、自転車の男性をはねて死亡させたとして、危険運転致死罪に問われた47歳の女と31歳の男の裁判員裁判で、金沢地裁は21日、2人にそれぞれ懲役6年の判決を

 

この事件、注目度が高いこともあるのか判決文が公開されています。

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危険運転致死と共謀共同正犯

なぜかこちらで判決文が公開されています。

 

判決要旨 金沢・増泉の危険運転致死事件|社会|石川のニュース|北國新聞
【被告人】長谷川玲子、寺崎太尊【事件名】危険運転致死被告事件…

 

若干気になった点を引用します。

前記ア、イを併せると、被告人Tにおいて、被告人Tに赤色信号を殊更に無視する意思があったと推認できる。
エ これに対し、被告人Tの弁護人は、被告人Tの発言はあくまで「徹夜明けの酔っ払い」の冗談であり、被告人Tに赤色信号を殊更に無視する意思はなかった旨主張する。しかしながら、被告人Tは、「止まらんでいいから」という指示の後に、拒否する被告人Hに対して「早く、急いで、時間ないから」、「ここから来んから、ここから」と述べ、赤色信号を無視すべき理由を伝えたり、赤色信号を無視して進行しても危険はない旨伝えたりするなど、その場その場の状況に応じた言葉遣いをしているし、本件信号機の停止線が迫りくる中で、これらの発言が一体となって、赤色信号を無視して進行することを強く促しており、到底冗談とは考えられない。被告人Tの本件事故発生直後の発言(「行こ行こ」、「やっちまったね」)についても、被告人Tに赤色信号を殊更に無視する意思があったこととは整合するが、被告人Tの弁護人の主張とは整合しない。
したがって、被告人Tの発言が冗談にすぎないということはできず、被告人Tの弁護人の前記主張は採用できない。
オ 以上から、被告人Tに赤色信号を殊更に無視する意思があったと認められる。

金沢地裁 令和5年6月21日

冗談だったとの主張ですか…
殊更無視や共謀共同正犯の成立についての認定は判決文にあるように何ら疑いがないとしても、冗談だったなんて主張を聞くはめになったご遺族の気持ちを察するとね。

 

しかも「赤色信号を無視すべき理由を伝えたり、赤色信号を無視して進行しても危険はない旨伝えたりするなど、その場その場の状況に応じた言葉遣いをしているし、本件信号機の停止線が迫りくる中で、これらの発言が一体となって、赤色信号を無視して進行することを強く促しており」とあるように、冗談だったとの主張が通りそうな見込みすらないわけで。

 

被告人が何を主張しようと自由でしょうけど、ちょっとないな。

初事例か

危険運転致死の共謀共同正犯を認めたのはおそらく初の事例とも報道されてますが、信号を守ることは道路交通法の中でも最も基本的なルールであって、ここが遵守されなくなるともうメチャクチャです。

 

控訴するのかは知りませんが、「冗談だった」で人が死ぬのだからたまったもんじゃないですね。

 

あえて書いておきますが、こちらの記事。

 

赤信号無視で男性はねる「悪質とまではいえない」危険運転致死罪で男女2人に懲役6年(MRO北陸放送) - Yahoo!ニュース
2022年6月、金沢市内の交差点で赤信号を無視し、自転車の男性をはねて死亡させたとして、危険運転致死罪に問われた47歳の女と31歳の男の裁判員裁判で、金沢地裁は21日、2人にそれぞれ懲役6年の判決を

 

記事タイトルが「悪質とまではいえない」とありますが、判決文ではこうです。

本件危険運転行為の態様は、市街地に位置する交通量の多い交差点の赤色信号を無視したという点、何ら落ち度のない自転車の運転手に対する犯行である点に悪質さはあるが、同種事案と比較すると、悪質な部類とまではいえない。
被害結果はそれ自体重大であり、被害者遺族らが意見陳述において、大事な家族を失った辛い気持ちを吐露し、厳しい処罰感情を示しているのは当然というほかなく、その心情は十分理解できる。仕事に遅刻しないためという本件犯行の動機は誠に身勝手で、その動機や経緯に酌むべき点は全くない。

 

金沢地裁 令和5年6月21日

記事本文でも「他の事案と比較して」と書いてますが、記事タイトルだけをみたら絶対的な悪質性の話だと誤解しうる表現になってます。

 

「市街地に位置する交通量の多い交差点の赤色信号を無視したという点、何ら落ち度のない自転車の運転手に対する犯行である点に悪質さはあるが同種事案と比較すると悪質な部類とまではいえない」とした判決から抜き出して「悪質とまではいえない」というタイトルにするのも違和感を感じますが、マスコミの記事ってなんでこうなるのかな。

判決文 記事タイトル
悪質さはあるが、同種事案と比較すると、悪質な部類とまではいえない 悪質とまではいえない

 

マスコミ報道をフルに信用するといいことがない。
記事タイトルだけをみたら、裁判官が「悪質じゃねーよな」と語ったかのように誤解しうるけど、量刑判断の中で、悪質さを認めながらも同種事案と比較しての悪質性について述べているわけで、意味合いとしては「同種事案における量刑と差をつけるほどの悪質性までは認めなかった」という意味でしょう。

 

どの文脈で、どのような意図を以て発したのかを理解しないと、とんでもない誤解に繋がるような気がする。
メディアの報道ってどうしても切り取り切り抜きされちゃうから難しいけど、量刑判断として同種事案よりも重い刑罰を課すには相応の理由が必要なわけで、その意味においての発言だと理解できます。
なにせ「悪質さはある」と認めているのだから。

 

報道の仕方次第で意味が変わりかねないので、こういうのって判決文見ないとわからんのよね。
特にインターネットって誤解を生みやすいからアレなんだけど。


コメント

  1. noName より:

    民事の賠償は被告人Tの賠償分も加入している任意保険の対象に含まれるのかな?

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      たぶんですが、被害者は運転者に全額請求した後、運転者(が契約していた保険会社)と同乗者(が契約していた保険会社)での争いになるのではないでしょうか?
      被害者からすると、加害者:被害者は100:0で動きようがないので、無駄に同乗者の保険会社を介入させるとややこしいですし。

      • noName より:

        返信ありがとうございます

        >被害者は運転者に全額請求
        ここはそうだと思います。

        自動車保険は車両単位での加入なので保険を加入した車両の起こした被害はすべてその自動車保険での補償対象になるのか、
        加入した車両を運転した運転者の起こした被害のみ車保険での補償対象になるのか?(約款によるとは思いますが)
        同乗者は運転していたわけではないので保険適用になるか疑問だったので・・・

        適用外の場合は示唆したほうが(経済的に)重い責任を取らされるのかなと?

        • roadbikenavi より:

          コメントありがとうございます。

          うーん、詳しいことはわかりませんが、意味合いとしては

          ①被害者ー運転者(が契約する保険会社)間での弁済
          ②運転者が契約していた保険会社が、被害者に支払った限度において代位取得した分を同乗者に請求
          ③同乗者が契約していた保険会社が、運転者と同乗者間での過失割合に応じて支払い(約款による)

          同乗者が契約していた保険会社の契約内容次第になると思いますが、どうなっているのかはわかりません。

          • noName より:

            たびたび、ありがとうございます

            >どうなっているのかはわかりません。
            ま~、ですよね!

          • roadbikenavi より:

            そもそも、危険運転でも保険の対象なのか?という疑問がありますが、契約内容次第でしょうね。

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