こちらについて質問を頂いたのですが、
この場合、道路交通法38条1項による優先(一時停止義務)の対象になるでしょうか?
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道路交通法38条
もうお馴染みの道路交通法38条1項ですが
第三十八条 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。
このルールは横断歩道ー歩行者、自転車横断帯ー自転車の関係性のみが対象なので、横断歩道を横断しようとする自転車がいても一時停止義務はありません。
ただしこの場合、「小児用の車」に該当する可能性が高く、小児用の車は歩行者なので一時停止義務があります。
一 移動用小型車、身体障害者用の車、遠隔操作型小型車、小児用の車又は歩行補助車等を通行させている者(遠隔操作型小型車にあつては、遠隔操作により通行させている者を除く。)
小児用の車については明確な基準はありません。
おおむね6歳未満、16インチ以下、時速8キロ程度以下などとも言われますが、
なので車両側としては子供が乗る自転車を小児用の車(歩行者)とみなすべきだし、仮に小児用の車に該当しないにしてもそれは結果論かと。
道路交通法2条1項11号が「小児用の車」を軽車両から除外し、同条3項1号が「小児用の車を通行させている者」を歩行者とした所以を考えるのに、同じく自転車の類型に入るものであつても、「小児用の車」にあたれば、これに乗つて進行している者は歩行者とされ
福岡高裁 昭和49年5月29日
正直なところ明確な基準はないけど、仮に小児用の車(歩行者)じゃないとしても大人の責務としては子供を最大限保護することは必要でしょう。
判例 | 年齢 | 自転車サイズ・速度 | 裁判所の判断 |
東京高裁S52.11.30 | 5才7ヶ月 | ハンドル高80センチ、車輪直径40センチ | 軽車両 |
東京地裁S53.12.14 | 4才11ヶ月 | 補助輪付幼児用自転車(7、8キロ) | 小児用の車(歩行者) |
岐阜地裁H19.3.9 | 6才2ヶ月 | 16インチ | 軽車両 |
東京高裁H26.12.24 | 6才 | 18インチ | 軽車両 |
福岡高裁S49.5.29 | 9歳8か月 | 22インチ | 軽車両※ |
浦和地裁S57.3.31 | 7才8ヶ月 | 16インチ | 自転車 |
※一審は「小児用の車」としたものの、二審は軽車両と認定。
あまり知られていない「小児用の車」
押して歩く者は歩行者(2条3項2号)はまあまあ知られてますが、小児用の車を歩行者とみなす規定はなぜか知られていない。
「横断歩道を横断しようとする自転車が38条1項による優先の対象ではない」ことは知られていても、おおむね6歳未満が乗る自転車を歩行者とみなす規定は知られていませんが、そもそも判断することは不可能に近い。
なので大人側としては子供が乗る自転車を小児用の車(歩行者)とみなすべきだし、そういう目的であえて作ったルールなんだと思われます。
見分けがつかない以上、小児用の車として扱うのが大人の役目。
ちなみに読者様からの質問は「誰も小児用の車を指摘してないけど実際どうなの?」という内容。
小児用の車=歩行者というルールはほとんど知られていないようなので、頑張って啓蒙中です笑。
そして小児用の車に該当するかしないかは裁判しないとわからんので、大人としては子供が乗る自転車は小児用の車とみなすしかないでしょう。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
自転車にまたがってると思ったら降りていた場合、止まらないと歩行者扱いでアウトなんですかね。
コメントありがとうございます。
本来は降りてまだ歩いてなければ歩行者じゃないのですが、実態としては歩行者とみなされてますね。