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蛇行する二輪車を追い越しする際に、1mの側方間隔では足りないとした判例。

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二輪車を追い越し、追い抜きする際には十分な側方間隔と減速、注視義務があると考えられますが、二輪車を追い越し、追い抜きする際の後続車の注意義務について検討された判例はまあまああります。

 

今回は蛇行する二輪車を追い越しする際に起きた事故判例です。

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蛇行する二輪車を追い越しする際に事故

判例は大阪高裁 昭和44年10月9日。
業務上過失傷害罪の判例です。

 

まずは事故の態様。

被告人は、普通乗用自動車を運転し、時速約30キロメートルで、南進中、その前方を同一方向に被害者運転の自動二輪車が、道路左側をセンターラインに近接して蛇行状態で南進しているのを認めた。そこで、これを追い越そうと考え、その背後を、約4ないし5mほどの距離を保って、約50mぐらい追尾しながら、警音器を二個ずつ、3、4回鳴らしてその避譲を求めたが、被害者は依然として蛇行運転を繰り返し、容易にこれに応ずる気配が認められなかった。
ところで、被告人が警音器を鳴らしおわった直後、被害者が、センターラインより一たん左へ1mぐらい寄ったのを認めたので、被告人は、被害車両において避譲を開始したものと軽信し、同車との間隔を約1mに保持して、同車の右側を安全に追い越し得るものと即断し、その後の被害者の動静に注視せず直ちに時速を40キロメートルぐらいに加速し、右にハンドルを切りつつ、原判示の場所でセンターラインの右側に出た。ところが被害者は被告人のかかる追い越しに気付かず、かえってセンターラインの左約1m寄りから、さらにセンターライン寄りに右に蛇行したため、左側部をセンターラインに接して追い越し並進中の被告人車両の左側後部ドア付近に、自動二輪車右ハンドル右端部が接触、被害者をその付近に転倒せしめ、同人に対し原判決判示の如き傷害を負わせたことが認められ、また被害者の右蛇行運転は、当時同人が酒気を帯びながら運転していたものであることによるものであることが明らかである。

飲酒運転で蛇行しているオートバイを追い越ししようとしたけど、クラクションを何度か鳴らしてオートバイが左側に寄ったと思って加速したところ、蛇行して戻ってきた状況です。

本件事故は、被害者が後続車両に留意しないで、センターライン付近を蛇行進行した酒気帯び運転に、その一因のあることはもちろんであるが、自動車運転者である被告人においても、先行車が異常な蛇行運転を繰り返しているのであるから、かかる運転者が時に不測の行動に出ることを十分配慮し、これを追い越そうとするには特に先行車の動静に十分留意しつつ、安全な間隔を保って追い越すなど、危険の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務を有することはもちろんである。しかるに、被告人は、前記のように警音器を鳴らしおわった直後、被害者が一たん1mぐらいセンターラインから左寄りに離れたからというだけで、その後における同人の動静を引き続き注視せず、同人が自己の警音器の音により避譲したものと軽信し、しかもこの場合先行車との安全な間隔とはいえない僅か1mぐらいの間隔しか見込まないで(右側道路幅員は1.49mであるから、もっとも大幅に間隔を保つことができる。)、その右側を追い越そうとして本件事故を起こしたのであるから、被告人にも右注意義務を尽くさなかった業務上の過失があったものというべきである。

 

大阪高裁 昭和44年10月9日

やや似たような状況で、やはり飲酒運転していた自転車を追い越しする際には側方間隔1.3mでは不十分とした判例があります。

被告人がトラックを運転して時速約25キロで進行中、前方約30mの地点に自転車に乗っていく被害者の後姿を発見したので、時速を約20キロに減じ、警笛を鳴らしたが、避譲する様子もなく道路のほぼ中央を進行していたこと、約5mの距離に接近した際初めて後方を振向いたのでトラックの追進していることを気付いた筈であるのに、僅かに左側に寄ったのみでなおも避譲する気配もなく、そのふらつく様子からみて同人は酒に酔っていることが認められたこと、殊に同乗していた運転助手は被害者の自転車に乗っている様子がふらふらしていたので、運転者の被告人に対し酒に酔っているから危ないなあと話すと、被告人はそうかもしれないなあと答えたこと、以上の各事実が認められ、記録に徴しても右認定に誤りがあることは認められない。

 

ところで、進行中の自転車とその後から進行してくるトラックとの間隔(両者並行した場合の間隔)が1.30m程度の場合には、時速20キロという速度で車体の巨大なトラックが自転車を追越せば、自転車の搭乗者はトラック通過のあおりを喰い、周章して運転を誤り易く、ためにその際自転車をトラックに接触乃至衝突せしめ、その結果人の死傷を惹起することのあることは睹易い道理で、殊に本件の如く自転車の搭乗者が酒に酔っていた場合には右の危険は一層大きいことは勿論であるから、追越すトラック運転者としては警笛を十分鳴らしてトラックの接近乃至通過を熟知せしめるとともに、その自転車が停止又は十分な距離の個所に避譲して前記の危険の発生することがなくなったことを確かめた後に通過するか、さもなくば何時でも接触又は衝突を避け得るように速力を減じ、且つ助手をして自転車搭乗者の動静に注目せしめる等の措置を講じて通過する注意義務のあることは条理上当然であって、(中略)トラックと自転車の間隔を約1.30mにした程度のみを以て事足るものというを得ない。

 

昭和29年4月15日 仙台高裁

追い越し、追い抜き時の側方間隔

改めて追い抜き、追い越し時の側方間隔についてまとめるとこう。

裁判所 二輪車の動静 車の速度 側方間隔 判決
広島高裁S43.7.19 安定 40キロ 約1m 無罪
東京高裁S45.3.5 安定 30キロ 1~1.5m 無罪
最高裁S60.4.30 不安定 約5キロ 60~70センチ 有罪
高松高裁S42.12.22 傘さし 50キロ 1m 有罪
東京高裁 S48.2.5 原付二種 65キロ 0.3m 有罪
仙台高裁S29.4.15 酒酔い 20キロ 1.3m 有罪
札幌高裁S36.12.21 安定 35キロ 1.5m 無罪
高松高裁S38.6.19 子供載せ 約42センチ 有罪
仙台高裁秋田支部S46.6.1 45キロ 20~40センチ 有罪
白河簡裁S43.6.1 安定 40キロ 70センチ 無罪
大阪地裁S42.11.21 55キロ 1m 有罪
金沢地裁S41.12.16 ふらつき 30キロ 1m 無罪
広島高裁S32.1.16 安定 10キロ 50センチ 無罪
大阪高裁S44.10.9 酒気帯び蛇行 40キロ 1m 有罪

側方間隔だけを見ると一貫性がないように見えますが、結局のところ側方間隔だけを判断材料にしているわけじゃなく、道路幅、交通量、見通し、先行自転車の様子、追い越し(追い抜き)する速度などを総合的に判断していると言えます。

 

結局、民事責任まで考えると1.5m以上になりますが、余計なものに関わらないためにはとにかく側方間隔を取るのがベターとしか言えませんね。


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