PVアクセスランキング にほんブログ村
スポンサーリンク

福岡の暴走事故、容疑者にてんかんの持病。

blog
スポンサーリンク

先日も書いた件ですが、

 

福岡の8人をはねた事故、危険運転致傷の疑いも視野に捜査。
こちらの件。 容疑者運転の車両は、事故の約2分前までは他の車両との車間距離を保ち信号では停止するなど普通に運転していた様子が捉えられている。 同署は、軽乗用車を運転していた同県須恵町、自称派遣社員の男性(66)を自動車運転処罰法違反(過失運...

 

やっぱりというか、容疑者にはてんかんの持病があったそうな。

その後の捜査関係者への取材で、関係者への聞き取りから、男がてんかんの持病を抱えていたことが新たに分かりました。

事故現場にブレーキ痕はなく、防犯カメラの映像でも減速する様子がないことなどから、警察は男が運転中に意識を失っていた可能性もあるとみて、てんかんと事故との関連を詳しく調べています。

高校生の列に車8人重軽傷  運転の男に「てんかん」の持病 運転中に意識失った可能性も | TBS NEWS DIG (2ページ)
21日、福岡県宇美町で歩行者の列に軽乗用車が突っ込み、8人が重軽傷を負った事故で、車を運転していた男がてんかんの持病を抱えていたことが捜査関係者への取材で新たにわかりました。 この事故は21日、福岡… (2ページ)

前回記事では、事故の2分前には先行車との車間距離を取り、赤信号に従って停止するなど通常通りに運転出来ていた映像を紹介しましたが、その2分後にはノーブレーキで暴走していたので、てんかん発作による意識障害が起きていた可能性が高いのかなと思われます。
周囲の人から促されてようやく自ら降りてきたあたりからも、意識障害に陥っていた可能性がありそうです。

スポンサーリンク

危険運転致傷

前回記事でも書いたように、警察は危険運転致傷の疑いを視野に捜査しているとのこと。
いわゆる準危険運転致傷(自動車運転処罰法3条)の話だと思うと書きましたが、これ。

第三条 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。
2 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。

自転車運転処罰法施行令

(自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気)
第三条 法第三条第二項の政令で定める病気は、次に掲げるものとする。
二 意識障害又は運動障害をもたらす発作が再発するおそれがあるてんかん(発作が睡眠中に限り再発するものを除く。)

法3条2項、令3条2号の疑いかと思われます。

 

この規定ですが、てんかんの影響で「その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」であることを認識していたことが要件になり、運転操作のミスではなくてんかんの影響で暴走したことを立証する必要があります。

 

既に暴走している映像が公開されていますが、ブレーキ操作もなく、ブレーキ痕もなく運転操作のミスとは見なされないだろうし、あとはてんかんの影響で「その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」であることを認識していたか、が問題になるのかと。

 

あまりいい判例はありませんが、参考になる事例としてはこちら。

原判決が認定した罪となるべき事実の要旨は,「被告人は,平成27年8月16日午後9時30分頃,普通乗用自動車を運転し,東京都豊島区ab丁目所在のc公共地下駐車場から発進して東京都北区d所在の被告人方に向かい進行するに当たり,てんかんの影響により,その走行中に発作の影響によって意識障害に陥るおそれのある状態で同車を運転し,もって自動車の運転に支障を及ぼすおそれのある病気の影響により,その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し,よって,その頃,同駐車場料金所付近において,自車を一時停止させた際,てんかんの発作により意識障害の状態に陥り,その状態のまま同駐車場出口に向かい進行し,同日午後9時34分頃,同駐車場出口付近道路において,自車を急発進させて時速約50キロメートルに加速させた上,東京都豊島区ef丁目g番先歩道上を暴走させ,折から同歩道上にちょ立していたA(当時41歳)ら5名に自車を順次衝突させて同人らを路上に転倒させ,よって,Aに頭蓋底骨折及び骨盤骨折等の傷害を負わせ,同月17日午前1時53分頃,東京都板橋区所在の病院において,同人を上記傷害による出血性ショックにより死亡させるとともに,B(当時27歳)ら4名にそれぞれ加療約2週間ないし約6か月間を要する傷害を負わせた。」というものである。

一審(東京地裁 平成29年6月27日)は、以下の理由で故意を認定。

危険運転致死傷罪の故意を基礎付ける事実としては、個々のエピソードの詳細を記憶していることは必ずしも必要ではなく、複雑部分発作が起こって意識障害が生じていたこと、それゆえ、複雑部分発作が起きうることを認識していれば十分である。そして、意識障害を伴う複雑部分発作というのは、被告人自身の身体への危険を伴うものであるから、自身が複雑部分発作を起こしたか否か、今後複雑部分発作を起こす可能性があるか否かは、被告人にとっても関心が深い事柄のはずであり、被告人は、これを診察時に申告し、医師の診察や指導を受けるなどしていたのであるから、処方が決まってからも複雑部分発作が起こって意識障害が生じていたこと、それゆえ、抗てんかん薬を処方どおりに飲んでいても、疲労時の要因によって複雑部分発作が起きうることを認識していたものと認められる。さらに、被告人は、自身の過去の発作の経験に加え、精神科医として稼働し、過去には自身で抗てんかん薬を処方するなど、てんかんの知識を通常人より有していたことからすれば、てんかん発作が疲労している場合に起こりやすいことは、十分に理解していたと認められる。

 

東京地裁 平成29年6月27日

控訴審はこちら。

しかし,直接診察した医師が複雑部分発作と診断したとはカルテ上読み取れないとの主張については,本件における問題の本質から目を背けるものである。問題の本質は,てんかんにより意識の混濁やもうろう状態を含む意識障害が生じたかである。複雑部分発作が起きたと認定できるかどうかは,所詮被告人の申出に基づく事実経過を前提に判断するほかない上,複雑部分発作が起き,あるいは厳密にはそうと認定できないまでも,意識混濁やもうろう状態に陥っている本人は,そのこと自体を直接認識することが困難ないしできないから,性質上その判断資料は,脆弱で限定的なものにならざるを得ないのであって,医師らが一様に複雑部分発作が起きたとの断定を避けるような表現をとっているのもそのような事情によるところが大きいと思われるが,厳密な意味では複雑部分発作が起きたとは断定し難いとしても,てんかんによって意識障害の状態に陥れば正常な運転に支障が生じることは明らかであるから,その状態が複雑部分発作と認定できるかどうかを論じてもさしたる意味はない。その意味で,①から④までのエピソードについても,正確には複雑部分発作が起きた可能性が高い意識障害が生じたと認めることで十分であったといえる。そして,この認定においては,被告人が診察の際に医師に自ら発作(意識障害を伴う複雑部分発作)と説明していることは極めて重要である。すなわち,てんかん患者の診察は,患者からてんかんに関連したエピソードを聴き取り,それに応じて生活等に関する指導を行うのを主眼とするものであり,被告人はこれに前向きに取り組んでいたのであるから,カルテに前兆とは明らかに異なる発作という記載がされている以上,被告人と医師との間でてんかんによって意識障害が出現したとの共通認識が持たれたとみるのが相当である(④のエピソードについて,意識障害はなかった可能性が高いとの主張は,既述のとおり採用できない。)。

 

東京高裁 平成30年2月22日

故意の認定では揉めることが多い危険運転ですが、このような判決もあります。

てんかんの影響で発作を起こす恐れがある状態で車を運転し、発作によって人身事故を起こしたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)の罪に問われた男性被告(66)に、福井地裁が無罪(求刑懲役10月)の判決を言い渡していたことが26日、分かった。25日付。

西谷大吾裁判官は判決理由で「自身が運転中にてんかんの影響で発作を起こす恐れがあると分かっていたとは認められず、危険運転の故意を欠く」と指摘した。

 

てんかん影響の事故で無罪判決
てんかんの影響で発作を起こす恐れがある状態で車を運転し、発作によって人身事故を起こしたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)の罪に問われた男性被告(66)に、福井地裁が無罪(求刑懲役10月)の判決を言い渡していたことが26日、分かった...

危険運転致死傷罪は故意の認定でややこしくなったり、構成要件の面でややこしくなるのが難点ですが、福岡の暴走事故についても容疑者がてんかんの影響で「その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」であることを認識していたかが問題になるのかと。

そもそも運転免許は

てんかんの場合、運転免許更新時にきちんと申告していないと罰則もありますが、要は本人の意識とは無関係なところで無差別テロのような事故が起きてしまうわけで、コントロールを失ったクルマは本人が制御不能なのはもちろんのこと、他人も何ら制御できません。

 

ケガで済んだのが不幸中の幸い…というよりも、このような事故を防ぐためには自動運転しかないのかもしれません。

 

そしていつも通り、危険運転致死傷罪の成立については揉めることが予想されますが、法の規定が民意とは異なるところにあるわけで…

 


コメント

  1. カモがネギしょってる より:

    てんかんは他の多くの病気と違って、本人が症状を直接体感できません。そのため、自分は病気でもないのに薬を飲ませられると不満を持つ人も多く、実際に薬を飲むのを止める人も多いようです。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      そこがネックというか、自覚がないなら罪にはなりませんから…

タイトルとURLをコピーしました