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「歩行者を横断させるため停止している車両の側方を通過してその前方に出ようとするときは、その前方に出る前に一時停止すること」とは?

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なかなかマニアックなところに疑問を持つ方もいらっしゃるようですが、山梨県道路交通法施行細則にこのような規定があります。

(運転者の遵守事項)
第十条 法第七十一条第六号の規定により、車両等の運転者が守らなければならない事項は、次の各号に掲げるとおりとする。
一 歩行者を横断させるため停止している車両の側方を通過してその前方に出ようとするときは、その前方に出る前に一時停止すること

これの解釈について、現に歩行者が横断中なのを視認できた場合に義務があるのか、歩行者を視認できなくても停止車両があるときには義務ありと捉えるのか?という話。

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公安委員会遵守事項

この規定は公安委員会遵守事項ですが、道路交通法71条6号なので刑罰規定です。
この規定、ちょっと調べた範囲では東京都にも類似の規定がありますが、ほとんどの県には無さそう。

 

東京都

(運転者の遵守事項)
第8条 法第71条第6号の規定により、車両又は路面電車(以下「車両等」という。)の運転者が遵守しなければならない事項は、次に掲げるとおりとする。
(1) 前方にある車両が歩行者を横断させるため停止しているときは、その後方にある車両は、一時停止し、又は徐行して、その歩行者を安全に横断させること

要は停止している先行車の影に歩行者が隠れて見えない、つまり歩行者が横断中なのか違う要件で停止したのかがわからない場合にも「一時停止」(山梨県)、「一時停止又は徐行」(東京都)の義務があると解釈するのか、現に横断歩行者が横断しているのを視認できた場合なのか?という話。

 

正直なところあまり自信はありませんが、故意犯の処罰規定しかないので、先行車が「歩行者を横断させるため停止している」のだと認識出来なければ義務として成り立たないように思います。

 

ちょっと前に挙げたこちら。

 

死角から飛び出た「ひょっこり原付」を回避可能なのか?
ちょっと前にこれが報道されてましたが、何か類似の判例があったよな…とずっと考えてまして。 動画のケースは優先道路の進行妨害事案になりますが、確かにそこからひょっこりされたら回避は難しいし、原付が注意すべき話でしかないのですが、似て非なる事例...

 

既に動画が削除されているのですが、例えばこういう場面。

青車両からすれば、先行車が何目的で停止しているのか死角になり視認できない。
たまたま歩行者が横断中かもしれないし、たまたま飛び出してきた車両との接触を避けるためかもしれないし、違う目的で停止したのかもしれない。
おそらく山梨県や東京都の公安委員会遵守事項については、「現に歩行者が横断中で先行車が停止したと認識した場合」についての規定なんじゃないかと思いますが、要はどのみち先行車が謎の停止をした以上は「何かある」可能性が高い。

 

その「何か」に対応できる程度に速度を落として警戒すべき注意義務(安全運転義務)はあるわけなので、警戒して速度を落としながら進行すれば十分な気がするし、だから他県ではこれに類する規定がないのではないかと思います。

 

例えばこれ。

助けに行った方の対向車は全て停止しましたが、こういう状況なのを認識していたら一時停止することは当たり前(安全運転義務)。
しかし、「歩行者が横断中」だと認識しながらも突破する車両がいると事故るリスクが高いわけで、認識した以上は「一時停止」(山梨県)、「一時停止し、又は徐行して、その歩行者を安全に横断させること」(東京都)とあえて定めたのかもしれません。

 

実際にこの規定での検挙事例があるのかわかりません。

 

ちなみに以前も挙げたこれ。

 

死角から飛び出た「ひょっこり原付」を回避可能なのか?
ちょっと前にこれが報道されてましたが、何か類似の判例があったよな…とずっと考えてまして。 動画のケースは優先道路の進行妨害事案になりますが、確かにそこからひょっこりされたら回避は難しいし、原付が注意すべき話でしかないのですが、似て非なる事例...

 

左側道路は私有地の通路に過ぎず交差点ではないと判断されてますが、信頼の原則を否定して有罪にしています。
結局、死角に何がいるかわからなくても一定の注意義務があるわけだし、安全運転義務があれば足りるような気もしますが、内容からすると二輪車が犯しやすい違反とも言えるので注意が必要です。

 

歩行者が横断中なのを認識し先行車が停止したのだから、後続車が停止するのは当たり前な気もしますが、わさと突破するアホ対策なのかもしれません。

「ぼく、知らなかったもん」は通用しない

公安委員会遵守事項なんて一般には知られていないものもありますが、刑法上は「ぼく、知らなかったもん」が通用しません。

 

「ぼく、知らなかったもん!」は通用するのか?
先日のこちら。 路側帯を通行する自転車も一時停止義務がありますが、そもそも。 路側帯には停止線もないし、一般人の感覚だと歩道と路側帯の違いがわかってないなんてザラ。 43条は停止線自体は必須要件ではありませんが、一般人の感覚だと路側帯通行自...

 

違法の認識が犯意成立の要件でないことについては、従来大審院の判例としたところであつたが、新憲法施行後においても最高裁判所は、刑法第38条第3項の解釈として有毒飲食物等取締令違反被告事件につき、犯罪の構成に必要な事実の認識に欠けるところがなければ、その事実が法律上禁ぜられていることを知らなかつたとしても、犯意の成立を妨げるものではない旨の説示をして、従前の判例を維持し(昭和23年(れ)第203号、同年7月14日大法廷判決、刑集2巻8号889頁参照)、その後も同裁判所は、「自然犯たると法定犯たるとを問わず、犯意の成立には、違法の認識を必要としない。」とし(昭和24年(れ)第2276号同年11月28日第三小法廷判決、刑集4巻12号2463頁参照)「犯意があるとするためには、犯罪構成要件に該当する具体的事実を認識すれば足り、その行為の違法を認識することを要しないし、またその違法の認識を欠いたことにつき過失の有無を要しない。」として(昭和24年(れ)第1694号同26年11月15日第一小法廷判決刑集5巻12号2354頁参照)、右大法廷判例の趣旨に従つた判決をしており、当裁判所も、右各判例の見解に従うのが正当であると思料する。
本件において、昭和35年福島県公安委員会第14号福島県道路交通規則第11条第3号は、道路交通法第71条第7号の規定に基づき車輌等の運転者が守らなければならない事項として「運転の妨げとなるような服装をし、又は下駄、スリツパ、サンダルその他これらに類するものをはいて自動車又は原動機付自転車を運転しないこと」と規定しているところ、被告人の原審第1回公判調書中の供述記載、司法警察員作成の犯罪事実現認報告書および被告人の当審公判廷における供述によれば、被告人は、昭和37年9月13日午後4時40分頃福島県双葉郡富岡町大字本岡字前谷地内道路において、サンダルをはいて普通自動車を運転した事実を認識しており、ただ、右規則第11条第3号の規定を知らなかつたにすぎないものであることが認められるから、右各判例の趣旨に徴し被告人の本件所為は、刑法第38条第3項にいわゆる法の不知に該当し、その犯意を欠くものではないといわなければならない。

 

東京高裁 昭和38年12月11日

当時、被告人が住んでいた県にはこの規定がなく、インターネットもない時代に福島県公安委員会遵守事項違反に問うのは酷な気もしますが…

 

冒頭の公安委員会遵守事項については、たぶん横断歩道がない交差点とかだと起こりうる。
先行車が謎の停止をしたときに、無警戒で突破する人がいるからわざわざ規定しているのかもしれません。

 

まあ、違反になるかならないかという観点も大事ですが、死角に何かいるかもしれないしいないかもしれないという時点で大幅に減速して警戒することは必要かと。
事故が起きてから「違反か違反ではないか」を争うよりも、争いが起きない方向を考えたほうが正解。


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