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道路交通法25条の2の正しい読み方。

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えーと、時々「読み方が違う」とクレームが来るのですが、道路交通法25条の2第1項の読み方

(横断等の禁止)
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。

この規定、「道路外の施設若しくは場所に出入するための横断」とか「道路外の施設若しくは場所に出入するための後退」ではないです。

 

正しくは↓

「車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは」

①道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をしてはならない。
②横断してはならない。
③転回してはならない。
④後退してはならない。

結構困るのは「なぜなんだホワイ?」みたいな話。
なぜこのように読むかについてですが、元々この規定は昭和35年時点ではこうなんですよ(当時は25条1項)。

 (横断等の禁止)
第二十五条
車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、横断し、転回し、又は後退してはならない。

昭和35年道路交通法では「道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし」がない。
なぜなら、昭和35~46年については道路外への右左折という言葉がなく、交差点以外の右左折は「横断」としていたから。

 

左横断、右横断と呼んでいたわけです。

 

これが昭和39年改正で道路外への右横断という規定が25条に誕生し、旧25条が25条の2に変更。

昭和39年道路交通法の一部を改正する法律

第三節中第二十五条を第二十五条の二とし、同条の前に次の一条を加える。
(横断の方法)
第二十五条 車両(軽車両及びトロリーバスを除く。)は、右に横断するときは、あらかじめその前からできる限り道路の中央に寄り、かつ、徐行しなければならない。
2 右に横断しようとする車両(軽車両及びトロリーバスを除く。)が、前項の規定により、道路の中央に寄ろうとして手又は方向指示器による合図をしたときは、その後方にある車両は、当該合図をした車両(軽車両及びトロリーバスを除く。)の進行を妨げてはならない。

あくまでも「右に横断」なので、25条の2はこのまま。

 (横断等の禁止)
第二十五条の二
車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、横断し、転回し、又は後退してはならない。

昭和39年改正で「右に横断」という規定が25条に新設されても、あくまでも「横断」なので25条の2は変更なし。

 

昭和46年改正時に左横断、右横断を「道路外への右左折」と呼ぶことにした関係から独立。

昭和46年道路交通法の一部を改正する法律

第二十五条の見出しを「(道路外に出る場合の方法)」に改め、同条第二項中「右に横断」を「道路外に出るため左折又は右折を」に改め、「(軽車両及びトロリーバスを除く。)」を削り、「前項」を「前二項」に、「道路の中央」を「それぞれ道路の左側端、中央又は右側端」に、「したときは」を「した場合においては」に改め、「車両は」の下に「、その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き」を加え、「進行」を「進路の変更」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項中「右に横断する」を「道路外に出るため右折する」に改め、「道路の中央」の下に「(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路の右側端)」を加え、同項を同条第二項とし、同条に第一項として次の一項を加え、同条の付記中「第一項については」を「第一項及び第二項については」に、「第二項」を「第三項」に改める。

車両は、道路外に出るため左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、徐行しなければならない。

第二十五条の二第一項中「あるときは」の下に「、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし」を加え、同条第二項を次のように改める。

2 車両は、道路標識等により横断、転回又は後退が禁止されている道路の部分においては、当該禁止された行為をしてはならない。

こういう経緯から25条の2第1項の「道路外の施設若しくは場所に出入するための」は後付けなんです。
だからこのように解釈する。↓

 

「車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは」

①道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をしてはならない。
②横断してはならない。
③転回してはならない。
④後退してはならない。

道路交通法の解釈って改正史を探れば理由がわかるものはいくつもありますが、納得いかないときは昭和35年からの改正をひたすら追ってみたり、改正理由を探ればわかると思います。
例えば38条2項がなぜ対向車の停止状態に関係しないかというと、昭和42年に38条2項を新設した経緯や理由があるからです。
新設した理由は、横断歩道の手前で車両が停止している意味を理解できずにかっ飛ばして事故を起こすアホが少なくなかったからです。

もともと横断歩道の手前の側端から前に5m以内の部分においては、法令の規定もしくは警察官の命令により、または危険を防止するために一時停止する場合のほかは停止および駐車が禁止されている(第44条第3号)のであるから、交通整理の行われていない横断歩道の直前で車両等が停止しているのは、通常の場合は、第38条第1項の規定により歩行者の通行を妨げないようにするため一時停止しているものと考えてしかるべきであるしたがって、このような場合には、後方から来る車両等は、たとえ歩行者が見えなくとも注意して進行するのが当然であると考えられるにかかわらず、現実には、歩行者を横断させるため横断歩道の直前で停止している車両等の側方を通過してその前方に出たため、その歩行者に衝突するという交通事故を起こす車両が少なくなかったのである。
そこで、今回の改正では、第38条第2項の規定を設けて、交通整理の行われていない横断歩道の直前で停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとする車両等は、横断歩道を通行し、または通行しようとしている歩行者の存在を認識していない場合であっても、必ずその横断歩道の直前で一時停止しなければならないこととし、歩行者の有無を確認させることにしたのである。車両等が最初から歩行者の存在を認識している場合には、今回の改正によるこの規定をまつまでもなく、第38条第1項の規定により一時停止しなければならないことになる。
「一時停止」するというのは、文字通り一時・停止することであって、前車が停止している間停止しなければならないというのではない。この一時停止は、歩行者の有無を確認するためのものであるから、この一時停止した後は、第38条第1項の規定により歩行者の通行を妨げないようにしなければならないことになる。また、一時停止した結果、歩行者の通行を妨げるおそれがないときは、そのまま進行してよいことになる。

 

警察学論集、浅野信二郎(警察庁交通企画課)、立花書房、1967年12月

死角解消というのは目的ではなく結果でして、メインの目的は「空気を読めない方々が大量発生したから」ですね。
どのみち「先行車が横断歩行者のために停止中の可能性が極めて高い」から、問答無用に一時停止にしただけ。

 

改正した際や新設した際に警察庁交通企画課が何らかの解説をしてますし、納得いかないときにはそういうのを調べたほうが解決すると思います。
追いつかれた車両の義務にしても、ホンキで理解しようとすれば道路交通取締法時代からの流れや18条(左側寄り通行等)、19条(並進)なども含め考えないと意味がわからないと思いますが、少なくとも現在の道路交通法は条文を見ただけでは意味がわからないものはいくつもあるし、改正したタイミングで警察庁交通企画課が解説していたりする。

 

以前も書いたように、「普通自転車の交差点進入禁止」にしても、立法した昭和53年に警察庁交通企画課が解説している内容を見て、ちょっと驚きました。

 

普通自転車の交差点進入禁止の話。
こちらの続きです。 普通自転車の交差点進入禁止 (交差点における自転車の通行方法) 第六十三条の七 2 普通自転車は、交差点又はその手前の直近において、当該交差点への進入の禁止を表示する道路標示があるときは、当該道路標示を越えて当該交差点に...

 

条文を見たところで読み取れないわな笑。

 

なぜそのように解釈するかにしても理由があることがほとんど。
それこそ、徐行義務(42条1号)から優先道路の場合が除外されているのにも理由があるし、理由もなく決めたわけではない。
元々は優先道路だろうと左右の見通しが悪いなら徐行義務を課していたのに、最高裁が違う解釈を取り慌てて法改正により解決したというのが理由。

 

なぜ?優先道路を進行中なら見通しが悪い交差点でも徐行義務がない理由。
読者様から質問を頂きました。 だいぶマニアックな話ですね。 見通しが悪い交差点での徐行義務 左右の見通しが悪い交差点では徐行義務がありますが、42条1号では交通整理と優先道路の場合が除外されています。 (徐行すべき場所) 第四十二条 車両等...

 

25条の2にしても確かに誤読可能にも取れますが、歴史を見ればそれが誤読だと理解できると思います。
どうしても納得できないなら、「最新道路交通法事典」(東京地方検察庁交通部、1974、116~117頁)に警視庁の質疑回答として掲載されてますし、そちらをどうぞ。
たぶん執務資料などにも書いてあるはず。

 

要は条文を見たところでわからないルールが多々ある以上、複数の解説書や判例と付き合わせないとわからないものはいくつもあるし、時には条文の改正史を検討しないとわからんのです。
法律独特の表現もあるので、なおさら。

コメント

  1. upmoon より:

    25条の2は条文だけ読んだとしても、道路外に出ないなら自由に横断、転回、後退して良いんかい、そりゃおかしいだろとなりそうですけどね

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      道路外に出るための転回とか、意味不明過ぎるんですよね笑。
      なんでそんなマニアックなプレイを規制するのか…

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