道路交通法の義務の問題と民事の過失割合は必ずしも関係しませんが、一般的には自転車に乗って横断歩道・自転車横断帯がある場所を青信号で渡る場合、横断歩道上を進行しても自転車横断帯を進行したものと同視されます(民事の場合)。
自転車横断帯を青信号で進行した自転車と、交差点を右左折した車両が事故になった場合、基本過失割合はこちら。
自転車 | 右左折車両 |
5 | 95 |
とはいえ、必ずこうなるわけではありません。
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自転車の責任
判例は名古屋地裁 平成27年3月27日。
事故の態様です。
○第1事故
衝突部位はクルマの左後方側面と自転車の前部。
○第2事故(2日後)
衝突部位はクルマの左前方側面と自転車の前部。
原告は3日間で2件のほぼ同様の事故に遭った形ですが、それぞれについて損害賠償請求を提起したもの。
一般的には自転車過失は0~10%程度になりますが、2つの事故について裁判所は原告の請求を棄却し確定しています。
以上を総合するに、本件事故はいずれも原告の故意によるものというべきである。
名古屋地裁 平成27年3月27日
いったいなぜこのような判決になるのでしょうか?
理由を挙げればいくつもありますが、事故態様と負傷部位について不自然、不合理な点があることや供述の不自然性、本件事故以前にも同様の自転車事故で少なくとも5回の自賠責保険金の支払い履歴があること、同じ日の休業損害を重複請求したり、過去の事故における賠償請求の内容などを総合的にみて故意による事故と判断。
被害者の故意と判断された事故はまあまあありまして、例えば歩道を通行する自転車と道路外に左折するクルマの事故について、自転車の損害賠償請求を棄却した判例(名古屋地裁 令和3年11月8日)など被害者が故意に事故を起こしたと見なされた判例があります。

故意に起こした事故については損害賠償責任を負わないのは当たり前ですが、そこそこ見かけます。
自転車横断帯があるから道路交通法38条1項により自転車が優先権があるとしても、それは道路交通法上の問題なので民事責任と必ずしもリンクするわけではありません。
刑事責任としても
同様に自転車横断帯を進行した自転車と左折しようとしたクルマの非接触事故について、自転車が故意に起こした事故として無罪(過失運転致傷罪)としたものがあります。

本件被害者のように2年間に5件の交通人身事故に遭う確率は概算58億3958万0953分の1という極めて低い確率となり、これは巷間で言われている「ジャンボ宝くじ」の1等に当たる当選確率である「1000万分の1」と比べても比較にならないくらい極めて低い確率であって、(中略)通常の常識ではちょっと考えられない、異常な交通事故遭遇頻度である。
平成28年7月25日 和歌山簡裁
事故による傷害保険金等目当てに、自ら作為的に仕組んで転倒した偽装事故の疑いが極めて高く
平成28年7月25日 和歌山簡裁
そもそも、被告人はきちんと一時停止していたにもかかわらず被害者が不自然に転倒したという事故。
警察や検察の捜査について苦言を呈する判決になっていますが、そもそもなぜ検察官の略式請求について裁判所が略式不相当として正式裁判になったのかは謎です。
裁判所はどこに疑問を感じたのだろうか。
横断歩道・自転車横断帯では道路交通法38条1項によりそれぞれ歩行者・自転車が優先権を持ちますが、それが遵守されないことはいかがなものかと思う。
しかし故意に事故を起こしたら、その責任は故意に起こした被害者になるのが当たり前。
ほかには、歩行者が横断歩道の手前で一時停止し確認してから通過したクルマを蹴り飛ばした事件について、歩行者の一方的な問題としてクルマの修理費について満額を認めた判例など。

故意の立証は難しいので、それを期待することは間違いですが。
当たり前ですが無減速で横断歩道・自転車横断帯に進行して「被害者は当たり屋なんです!」と言ったところで無意味です。
「まずはお前に減速接近義務があるだろが!」で終了します。
そもそも、当たり屋さんは無減速で横断歩道・自転車横断帯に進行するクルマには突っ込みません。
死んでしまったら意味がないので。
軽めに当たり、大きく怪我をするのが当たり屋さんの基本でしょう。
まあ、何の話を書いているんだ?という話になりますが。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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