PVアクセスランキング にほんブログ村 当サイトはAmazonアソシエイト等各種アフィリエイトプログラムに参加しています。
スポンサーリンク

見通しが悪い交差点で「徐行義務」を怠った結果、歩道を歩いていた歩行者が死亡。

blog
スポンサーリンク

信号がない見通しが悪い交差点を通過する際には、徐行義務がありますが(優先道路の場合を除く)、

(徐行すべき場所)
第四十二条 車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。

徐行義務を怠った結果、歩道を歩いていた歩行者が死亡するという痛ましい事故がありました。

スポンサーリンク

徐行義務を怠った結果

判例は札幌地裁  令和5年10月31日。
過失運転致死被告事件です。

 

事故の態様から(正確性は保証しません)。

高さ2.4mの植え込みがある交差点で見通しが悪い。
A車は自身が進行している道路を優先道路と思い込み、時速30キロで進行。
B車は交差道路に一時停止があると思い込み、時速30キロで進行。

※優先道路とは交差点内に中央線か車両通行帯がある場合。
※交差道路に一時停止があるとしても、優先道路ではない限り徐行義務は免除されない。

双方が徐行義務を怠った結果、衝突。

Aはハンドルを左に切りブレーキを踏もうとしたものの、誤ってブレーキ付近の床を踏んだために停止できず、歩道に進入。
その結果、歩道を歩いていただけの人が死亡したという事故になります。

AとB、双方が過失運転致死罪に問われていますが、Bの弁護人はBの過失と被害者の死亡の間に因果関係がないとして無罪を主張。
衝突後にAがブレーキ操作を誤ったことが原因だという話です。

 

確かに、被告人Bには徐行義務を怠ってA車と衝突事故を起こした過失はあるものの、その後に起きたAのブレーキ操作ミスについてはBがコントロールできる問題ではない。

 

では、裁判所の判断を。

(1)実行行為とおよそ関係のない事情によって発生した結果により被告人を処罰することを回避するという因果関係の機能に照らすと、被告人Bの過失行為と被害者の死亡との因果関係の成否は、被害者の死亡という結果が被告人Bの過失行為に内在する危険が実現したことにより生じたといえるかという観点から検討するべきであり、かつ、それで足りるというべきである。被告人Bの弁護人は、被告人Bとの関係で因果関係が成立するためには、被告人Bが被害者の死亡の具体的な経過を予見できた可能性が必要である旨主張するが、上記に述べた因果関係の機能に照らすと、過失行為に内在する危険が実現して結果が発生したといえるにもかかわらず、行為者に具体的な経過の予見可能性がないことを理由に因果関係を否定するのは、処罰範囲を不当に狭くするもので妥当でなく、採用できない。
(2)被害者が死亡した経過によれば、被害者が死亡した直接の原因は、被告人A車両が停止することなく歩道上に乗り上げ、歩道上にいた被害者と衝突し、被害者をれき過したことにあり、被告人Aが適切にハンドル・ブレーキを操作していれば、被害者との衝突やれき過を回避できた可能性がある。しかし、被告人A車両を進路左前方に逸走させ、適切にハンドル・ブレーキ操作をしなければ直ちに被害者と衝突するという状況を生じさせたのは、被告人両名の過失により、本件交差点で被告人両名の車両が衝突したからにほかならない。そうすると、被害者が死亡したのは、被告人両名の過失行為に内在する危険、すなわち、本件交差点の交差道路から走行する車両と衝突し、衝突した車両が逸走して周囲の歩道上にいた歩行者に衝突するという危険が実現したものというべきであるから、被告人Bの過失行為と被害者の死亡との間には因果関係が認められる。
被告人Bの弁護人は、①被告人B車両と被告人A車両の衝突箇所や衝突直前の被告人Aのハンドル操作等に照らせば、被告人A車両が被告人B車両と衝突した後に進路左前方に進行したのは、被告人Aのハンドル操作のみが原因である、②被告人Aは被害者を発見したにもかかわらず、被害者に向かって進行しており、被害者の死亡には異常な経過が介在しているなどという。しかし、①については、被告人Aがハンドルを左に切ったのは、被告人B車両との衝突を回避するためであったから、被告人A車両が進路左前方に進行した原因の一つが被告人Aのハンドル操作にあるとしても、被告人Bの過失行為と被害者の死亡との間に因果関係が認められるとの結論に影響はない(なお、前記ドライブレコーダーの映像によれば、被告人A車両は被告人B車両と衝突した直後に進路を左前方(東方向)に向けており、判示のとおり、その衝撃により被告人A車両を進路左前方に逸走させたと認められる。)。
また、②についても、被告人A車両のハンドル操作の誤りを指摘するものにすぎず、被告人A車両が被告人B車両と衝突したことにより、被告人A車両が適切にハンドル・ブレーキ操作をしなければ直ちに被害者と衝突するという状況を生じさせたとの認定を左右するものではない。

 

札幌地裁  令和5年10月31日

A、Bともに有罪です。
両被告人の過失行為に内在する危険が実現して結果が発生したといえるか?という観点で過失と死亡の因果関係を捉えています。

 

実際のところ、見通しが悪い交差点での徐行義務を守らなかったために起きた事故というのはいくらでもありますが、両者が徐行義務を守らなかったことが原因で全く無関係な歩道を歩いていただけの歩行者が死亡してしまう。
徐行義務ってかなり大事なのですが、なぜかテキトーになりやすい注意義務の一つです。

 

具体的な現場がわからないのですが、幅員5.1mなので生活道路なのかと。
細かい事情までは判決文にはありませんが、Aは「優先道路と思い込んだ」、Bは「自身に一時停止標識がないから交差道路に一時停止があると思い込んだ」。
これ、そもそも優先道路と一時停止を勘違いしていたのではないかと思いますが、優先道路とは「交差点内に中央線がある場合」なので、以下の画像のような交差点は「優先道路がない交差点」になります。

また、交差道路に一時停止標識があるかないかと徐行義務の有無は無関係。
見通しが悪い交差点で徐行義務がないのは、優先道路の場合と信号がある場合のみ。

被害者からすればテロ同然ですが

歩道を歩いていたらクルマが突っ込んできた…なんてことがあってはならないわけですが、最近、原因はそれぞれ違いますが「歩道に突っ込んだ」とか「路側帯に突っ込んだ」みたいな事故をしばしば見かける気がします。

 

やることをやらないと、事故るだけの話でしょうね。
けど、両者ともに「徐行義務」を誤解していたのではないでしょうか?


コメント

タイトルとURLをコピーしました