先日書いた長野県議が横断歩行者妨害による事故を起こした件。
まさかの無免許…というよりも「免許失効に気づいていなかった」というパターン。
免許の失効については期限を今年の3月までと勘違いしていたとしました。
高村県議:
「はがきを毎回更新のたびにいただいていましたので、来るものだと思っておりましたが、去年は私の目に触れなかったようで、私は『今年(の更新)だ』というふうに自分の中でも去年からずっと思っておりました」高村県議は免許の失効に気づかなかったいわゆる「うっかり失効」としました。
県警によりますと、「うっかり失効」も無免許運転にあたりますが、一般論として免許の失効に気づかず故意でなかった場合には刑事罰に問われる可能性は低いということです。
「雪が降って歩道に人がいる認識がなく…」共産党高村県議が「免許失効中」に車で女性はね大けが…26日に辞職へ「うっかり失効」で県警は過失運転傷害の罪で書類送検する方針 | SBC NEWS | 長野のニュース | SBC信越放送 (1ページ)千曲市で24日、高村京子(たかむら・きょうこ)県議会議員69歳が、横断歩道を渡っていた女性をはねた事故で、高村県議の運転免許が2023年の3月に失効していたことがわかり、高村議員は25日午後、議員を辞職する考… (1ページ)
免許更新の案内に気がつかない人なら、横断しようとする歩行者の存在にも気がつかないのもある意味納得だと揶揄されても仕方ない気がしますが。
「うっかり免許失効」は罪にならない…
無免許運転は道路交通法上違反なのは当然なのですが、
第六十四条 何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項又は同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は一般原動機付自転車を運転してはならない。
64条1項は故意の処罰規定しかなく、過失による無免許運転罪がありません。
本人は「免許更新は今年」と信じていた、つまり無免許である認識がないので無免許運転罪は成立しないことになります。
まあ、捜査段階で「実は免許失効を認識していた証拠」があれば別ですが、事件の本質は横断歩行者妨害事故のほうですからそこを執拗に捜査するとは思えませんが。
横断歩道があることは認識していた
高村県議:
「雪が降って周りの景色が灰色的な感じになっていて、横断歩道があることは認識しつつも左の歩道に人がいらっしゃるという認識はなくて」「雪が降って歩道に人がいる認識がなく…」共産党高村県議が「免許失効中」に車で女性はね大けが…26日に辞職へ「うっかり失効」で県警は過失運転傷害の罪で書類送検する方針 | SBC NEWS | 長野のニュース | SBC信越放送 (1ページ)千曲市で24日、高村京子(たかむら・きょうこ)県議会議員69歳が、横断歩道を渡っていた女性をはねた事故で、高村県議の運転免許が2023年の3月に失効していたことがわかり、高村議員は25日午後、議員を辞職する考… (1ページ)
事故現場は報道画像からするとこちらかなと思いますが、
普通に見通しが悪くない横断歩道ですが、このタイプの事故は大まかに分けるとこんな感じ。
①減速接近義務が甘く、横断歩行者を認識した時点では回避できなかった(減速接近義務違反による事故)
②減速接近していたが見落とした
ほとんど事故は①、減速接近義務違反による事故。
雪が降り視界不良で横断歩道に接近中だと理解していたら、だいぶスピードを抑えて慎重になるべき話。
雪が降って周りの景色が灰色的な感じになっていて、横断歩道があることは認識しつつも
減速接近がダメダメだった可能性が高そうです。
車両等の運転者はどのような状況があれば右の速度調節義務を負うものであろうか。それは、その際の道路およびその周辺ないし車両通行の状況、道路付近にいる歩行者の状況等により具体的、個々的に考えられるべきものであるけれども、一般的にいうならば、交通整理の行なわれていない横断歩道においては歩行者は強い優先権を有し、たとえ車両等がその横断歩道に近づいてきていてもこれを横断して差支えないものであり、これを車両等の運転者の側からみれば、一時停止しなければならぬ状況の発生をあらかじめ明確に予知することは困難な関係にあるわけであるから、車両等の運転者としては、一時停止を必要とする状況の発生がいやしくも予想されうる状態のもとにおいては、その状況がいつ発生するかわからないことを念頭に置いてこれに備え速度を調節すべきであり、いいかえるならば、速度調節を必要としないのは、そのような状況発生の蓋然性が認められない場合すなわち自車が横断歩道の手前に接近した際にその横断歩道の進路左側部分を横断し、又は横断しようとする歩行者のないであろうことが明らかな場合に限るというべきである。
このことは、横断歩道直前における一時停止義務の場合とを区別して考うべきであつて、右の一時停止義務は歩行者が現に「横断し、又は横断しようとしているとき」に発生すると解すべきこと道路交通法38条1項の規定上明らかであるのに対し(検察官の控訴趣意中に、横断歩行者の有無が明確でない場合にも一時停止義務があると主張する部分があるが、この点は採用しがたい。)、この速度調節義務は事前のことであり将来発生するかもしれない状況に対処するためのものであるから、その状況の発生しないであろうことが明確な場合に限つてその義務がないとされるのである。
東京高裁 昭和46年5月31日
道路交通法38条1項に規定する「横断歩道の直前で停止することができるような速度で進行しなければならない。」との注意義務は、急制動等の非常措置をとつてでも横断歩道の手前で停止することさえできる速度であればよいというようなものではなく、不測の事故を惹起するおそれのあるような急制動を講ずるまでもなく安全に停止し得るようあらかじめ十分に減速徐行することをも要するとする趣旨のものであり、したがつて、時速25キロメートルでは11m以上手前で制動すれば横断歩道上の歩行者との衝突が回避し得るからといつて右の速度で進行したことをもつて右の注意義務を尽したことにはならない、と主張する。
(中略)
横断歩道直前で直ちに停止できるような速度に減速する義務は、いわゆる急制動で停止できる限度までの減速でよいという趣旨ではなく、もつと安全・確実に停止できるような速度にまで減速すべき義務をいつていることは所論のとおりである。
大阪高裁 昭和56年11月24日
減速接近していればほとんどの場合事故にはならないのですが、どうしてもメディアの報道は無免許に傾きますわな。
それ自体はほめられたものではないにしろ、事故とは直接的な因果関係がないので。
横断歩道を認識しながら減速接近を怠った、もしくは横断歩道の左右を注視しなかったことが事故の原因と考えられますが、一時停止率85%を誇る長野県の県議とは、県民を代表しながらも85%側ではなく15%側だったという…
JAFの統計も真実に迫っているかやや疑わしいのですが、15%側が事故を起こしまくるのですかね。
人口がほとんど変わらない新潟県の一時停止率は長野県とは比較にならないほど低いけど、なぜか事故数は新潟県のほうが少ないという不思議。
◯令和4年中の長野県の交通事故について、違反別統計。
https://www.pref.nagano.lg.jp/police/toukei/koutsu/documents/r412-7ihan.pdf
長野県 | 新潟県 | |
人口(R4年8月) | 2,007,347 | 2,129,722 |
一時停止率(R5) | 84.4% | 23.2% |
一時停止率(R4) | 82.9% | 25.7% |
歩行者妨害事故(死亡者) | 246(2) | 204(2) |
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
自慢じゃないですが。いやちょっとだけ自慢ですが。
私の運転免許証は、平成31年4月28日更新で、期限が平成31年6月28日までです。更新日が、平成最後の日だったので(29日・30日は祝日で、運転免許の更新が休み)、けっこう最後の最後まで、平成で使える運転免許証です。
何もメリットはありませんが。
誕生日が5月30日か31日なら、6月30日まで使える平成最後の免許だったんですけど。残念ながら、誕生日は変えられないですね。
コメントありがとうございます。
誕生日の延期が可能になれば面白いのかもしれません笑
接近時に減速しない車多い気がしますね。何となくですが、歩行者が横断歩道に達する前に通り抜けてしまいたいのか、エンジン吹かせるも、結局歩行者が到達してしまい、直前ブレーキになるようなケースだったり、停まりたくなくて歩行者が通過したすぐ後ろを通り抜けたいようなスピードで横断歩道に接近する感じだったり、と言うによく遭遇します。前者はブレーキかけてるのがわかるのでまだマシですが、後者は何かの拍子で加速しそうで、とてもじゃないけど横断開始出来ないですね。後者については、あんまり良く無いですが、睨みながらゆっくり目に渡り始めて、強制的にブレーキ踏ませるようにはしてます。
コメントありがとうございます。
減速するだけの作業を怠るからややこしくなるだけなのに、いまだに果たさない人が多いですよね。