PVアクセスランキング にほんブログ村 当サイトはAmazonアソシエイト等各種アフィリエイトプログラムに参加しています。
スポンサーリンク

自転車を側方間隔0.8mで追い抜きして事故…過失割合は?

blog
スポンサーリンク

今回の判例はかなり特殊です。

 

適法に通行する自転車を追い抜きする際に接触事故が起きた場合、自転車過失は0~10%。
例えば東京地裁 昭和50年1月21日判決では、トンネル内で約60センチメートル以下の至近距離追い抜きをして起きた事故について、過失割合は以下と判示。

先行自転車 後続追い抜き車
0 100

自転車からすれば回避しようがないので当然ですよね。
ただし、必ずこのような過失割合になるわけではありません。

スポンサーリンク

自転車を0.8mで追い抜き

判例は大阪地裁 令和元年6月20日。
自転車を0.8mの側方間隔で追い抜き中に起きた事故ですが、過失割合は以下。

先行自転車 後続追い抜き車
90 10

自転車の過失が90%になるのは珍しいですが、なぜでしょうか?

 

この判例ですが、先行する自転車はなんのふらつきなどもなく進行していました。
後続車は約0.7mイエローラインをはみ出して自転車を追い抜きしようとしたところ(側方間隔は0.81m)、自転車はなんの前触れもなく転倒。

 

驚愕転倒ではなく突如転倒したものですが、ふらつきなどもなく進行していたので予見困難、回避困難とのことから、主な事故の原因は自転車にあるとしています。
ただしクルマに10%の過失を認めた理由はさらに側方間隔を取り減速するなど「他人に危害を及ぼさないような速度と方法」を怠った過失を認定したからです。

 

ちょっと前に歩道から突如自転車が車道に転倒して起きた事故判例を挙げましたが、このような事故って状況次第でいくらでも過失割合なんて変わるわけ。
基本過失割合なんてちょっと状況が違えば逆転することすらあります。

 

そう考えると、やはり「義務・注意義務ベース」でどのような義務・注意義務を負っていたかを考えないと意味がない。

 

例えば以前挙げた判例で、このような事故があります。

自転車追い抜き時に非接触事故の判例。
自転車を追い越し、追い抜きする際には側方間隔が問題になりますが、接触してないものの事故になった判例を。 非接触事故の判例 非接触事故の判例としてますが、事故態様には争いがあります。 判例は東京地裁 平成27年10月6日。 まずは大雑把に状況...

側方間隔1.2m空けた追い抜き時に起きた非接触事故ですが、過失割合はこちら。

自転車 後続車
40 60

状況が違うなら過失割合なんていくらでも変わるけど、この場合、後続車は「十分な側方間隔を取り減速して追い抜きする義務」があり、自転車は「ハンドル等をきちんと保持して安全運転する義務」を負っていたことになります。
自転車に40%ついたからと言って、側方間隔を40%減してよいわけもない。

 

過失割合で評価すると、義務・注意義務がなんなのかに目が行かなくなる人もいるのですが、過失割合なんていくらでも変わるものです。

ところで

今回挙げた判例では自転車過失が90%。
裁判所が認定した損害賠償額の合計は約4800万なので10%にあたる約480万の支払い命令…というわけではありません。

 

判決主文は「請求棄却」になります。

 

なぜでしょうか?

 

この件は死亡事故ですが、自賠責保険から約3024万の支払いを受けている。
なので既払い分が約3024万あるので、裁判で認められた約480万は「支払い済み」という扱いになります。

 

判決主文が「請求棄却」だから義務が帳消しになるわけじゃないし、単に民事法上の概念に過ぎない。

 

結局、過失割合がどうなるか?なんて事故が起きない限りはわからんし、ちょっとした違いで過失割合は逆転します。
見方によっては、約1.2m空けた非接触事故(東京地裁)と、今回挙げた大阪地裁判決でそこまで過失割合が違う理由にはならない気もしますが、過失割合がどうであったにせよ、追い抜き時に十分な側方間隔を取り安全に進行すべき義務は変わらないのよね。

 

数字で軽重を見ると勘違いしやすくなるけど。

 

それこそ横断歩行者とクルマが衝突して歩行者過失が100%になった判例もいくつかありますが、

歩行者の直前横断と38条の2。
いきなりですが質問です。 深夜、クルマは法定速度以下の時速56~57キロで片側二車線道路(幹線道路)を進行していたところ、塀があり見通しが効かない非舗装の市道から歩行者が横断。 歩行者が車道に進出したとき、両者の距離は約13.4mしかありま...

クルマの過失が0%になったのはあくまでも結果論なので、横断歩行者に注意すべき義務を免除したわけではありません。
注意していても回避不可能だったから0%になったわけで、意味を取り違えるととんでもない勘違いに陥るかと。

 

結局、義務・注意義務としてどうすべきだったかに目がいかない限りは事故が起きるし、至近距離通過して偶然事故が起きなかったから側方間隔を取り減速すべき注意義務が遡ってなくなるわけではないですよね。
当たり前な話なのに、過失割合で数値化すると義務・注意義務が蔑ろにされる気がしてます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました