さてさて、改正道路交通法18条3項、4項、20条3項の話。
新設される18条4項について「できる限り」の勘違いが多い。
真逆の意味に捉える人が続出している点が、最大の問題点なのかもしれません。
無論その時の状況によっては、一旦停止するなり歩道に退避するなり自分の身は自分で守ることを第一に考えなければなりません。
願いたいのは、クラクションや幅寄せで煽られないことですので。。— ラルケ (@FJA0LETCUlEnhP3) March 6, 2024
道路交通法における「できる限り」とは、こういう意味。
「できる限り道路の左側端に寄り」とは
(イ)「できる限り」とは
その場の状況に応じ、他に支障のない範囲で可能な限り、行えばよいとの趣旨である<同旨 法総研125ページ 横井・木宮175ページ>。
左側に車両等が連続していたり、停車中の車両等があって、あらかじめ道路の左側に寄れなかった場合には、たとえ直進の位置から左折進行したとしても、本項の違反とはならないことになる<横井・木宮175ページ>。東京地方検察庁交通部研究会、「最新道路交通法事典」、東京法令出版、1974
「できる限り左側端に寄って通行しなければならない」とは、「左側端に寄って、ただし道路状況により寄れない場合は安全上可能な範囲で」という意味。
つまりは左側端寄り通行の「除外」として「できる限り」としている。
「左側端に寄って通行しなければならない」だと、陥没があっても左側端寄り通行を解除できなくなるし、
「左側端に寄って通行しなければならない」だと、左側端に傾斜や側溝がある場合でも傾斜や側溝上を通行しなければならなくなる。
しかし「できる限り左側端に寄って通行しなければならない」なので、陥没や側溝、傾斜など安全な走行には適してない部分を除いた上で左側に寄っていれば済む。
「できる限り道路の左側端に寄り」とは
(イ)「できる限り」とは
その場の状況に応じ、他に支障のない範囲で可能な限り、行えばよいとの趣旨である<同旨 法総研125ページ 横井・木宮175ページ>。
左側に車両等が連続していたり、停車中の車両等があって、あらかじめ道路の左側に寄れなかった場合には、たとえ直進の位置から左折進行したとしても、本項の違反とはならないことになる<横井・木宮175ページ>。東京地方検察庁交通部研究会、「最新道路交通法事典」、東京法令出版、1974
真逆の意味に捉える人がまあまあ散見されるので、すでに失敗なのかもしれません。
ちなみに、やたらと青切符制度を「厳罰化」と捉える人も多いけど、普通に左側通行して信号や標識を守って走る自転車は基本的に関係がありません。
厳罰化ではなくて、単に手続き上の話でしかないので。
実効性のある指導警告
運転に免許を必要としない自転車利用者に対して交通ルールを認識させる機会でもあることから、違反者自らの違反行為の危険性や交通ルールを遵守することの重要性について理解できるよう実効性のある指導警告を行う。
取り締まりの推進
警察官の警告に従わずに違反行為を継続したときや、違反行為により通行車両や歩行者に具体的危険を生じさせたときなどには、積極的に取締りを行う。
https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/kentokai/04/chuukanhoukokusyo-honbun.pdf
国家公安委員会委員長記者会見要旨
令和5年12月26日(火)11:02~11:09
問 自転車運転の青切符を盛り込んだ報告書が国家公安委員にも報告されたと思います。そこでお伺いしたいのは今後の教育の問題です。特定小型原付でも具体的な教育があまりなされている様子がなくて、今後、警察庁だけではなくて文科省とか総務省とも連携しなければならないと思います。閣僚としてどのように働きかけるおつもりかお願いします。
答 まずご指摘の自転車につきましては、近年、対歩行者との事故が増加傾向にあるとこういうふうにまず認識をしております。そのことを踏まえまして、警察庁においては、本年の8月以降、有識者検討会を開催してきたところでございます。お尋ねのとおり、このたび、有識者検討会においては、安全教育、違反の処理、交通規制の3点に関して、今後の取組の方向性について提言をする中間報告書が取りまとめられ、提言いただいたところでございます。
このうち、交通安全教育につきましては、官民の知見により、それぞれの年齢層、ライフステージに応じた安全教育に係るガイドラインの策定をいたしまして、安全教育の質の担保をすることが提案されているところでございます。これを実現するためには、教育現場や自治体との連携が非常に重要であるため、関係省庁に対して必要な働き掛けを行っていくよう、警察庁を指導してまいりたいと考えております。
そのようにしっかりと連携をいたしまして、やってまいりたいと思っておりますが、違反の処理につきましては、自転車利用者による交通違反を交通反則通告制度の対象とすることが提言をされておりますが、制度の運用に当たっては、指導警告をまず原則といたします。これに従わないなどの特に悪質、あるいは危険な違反に限っては青切符による取締りを行うことにより、目的である違反者の行動改善を促すこと、こういった取組をしっかりとやってまいりたいと考えております。問 取締りについては、まず切符を切るということではないということですね。
答 申し上げたとおり、まずはやはり指導警告これを原則といたしておりますので、報道等では即青切符というイメージが残っておりますが、やはり交通ルールを守っていただき、結果的に事故が起こらないことが私どもの目的でございますから、その点については、申し上げたとおりでございます。
国家公安委員会委員長記者会見要旨
改正条文の意味を真逆に捉え、青切符制度を必要以上に捉える人がそれなりにいてビックリしますが、この分だとろくなことにならないのかも。
「一時停止標識があるときは、一時停止しなければならない」と、「一時停止標識があるときは、できる限り一時停止しなければならない」では、後者は一時停止しなくてもいい場合が存在することになりますよね。
真逆に捉える人が続出し、側方間隔が規定されなかった点を見ると、すでに失敗なのかもしれません。
18条3項は「安全な速度」とありますが、「できる限り安全な速度」となっていない点がまあまあ重要なのですが、そもそも「できる限り」の意味を混同している人が続出している状況下ではろくな結果にならないかと。
そもそも、昨年末に報道されたときから懸念してましたが、
報道内容からは側方間隔を義務付けしたとは読み取れない。
しかしインターネット上では「側方間隔が義務付け」みたいに読み取る人が多くだいぶ心配していたのですが、結局報道内容そのまんまな改正案が出てきて…
物理的に左側端に寄れない場合や、安全上左側端に寄れない場合を除外するために「できる限り…しなければならない」としているのに、「何がなんでも左側端じゃないと違反」という真逆の意味に捉える人が多い点では、すでに失敗なんでしょうね。
以前書いたように、普通に左側端寄り通行している自転車には改正道路交通法は何の関係もありません。
状況次第では、「できる限り左側端に寄って」がむしろ右寄りになる場合すらあります。
なのでトータルで言うと、ほとんどの自転車にとって新しく義務ができるわけではありません。
しかし、冷静に考えれば「できる限り」の意味を混同しない気がするのですが…
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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