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「明らかに広い道路」の関係に「隅切り」を含むか?

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こちらで書いた内容について質問を頂いたのですが、

見通しが悪い交差点で自転車とクルマが衝突!?悪いのはどちらか?
出会いは突然ですよね… なぜこうなってしまうのでしょうか? 問題は双方にある これって要は見通しが悪い交差点、かつ優先道路もなければ信号もないので双方ともに徐行義務違反なんですよね。 (徐行すべき場所) 第四十二条 車両等は、道路標識等によ...

「明らかに広い道路」の計測に、隅切り部分を含めて判断するのか?という話。

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隅切りは含まない

これですが、実測道路幅としては「隅切りは含まない」で考えることになります(ただし後述しますがそれが全てではない)。
そもそも隅切り部分は既に交差点内なので、交差点に入る前に判断すべきものだからなんだと思う。

なお、道路交通法2条5号にいう道路の交わる部分とは、本件のように、車道と車道とが交わる十字路の四つかどに、いわゆるすみ切りがある場合には、各車道の両側のすみ切り部分の始端を結ぶ線によつて囲まれた部分――別紙図面斜線部分――をいうものと解するのが相当である。

最高裁判所第三小法廷  昭和43年12月24日

 

判例 道路幅 明らかに広いか?
最高裁s45.11.17 5.6m対2m
最高裁s45.12.22 9.6m対3m
最高裁s46.6.23 14+10+14m対3.95(4.8)m
東京高裁s41.8.9 8.9m対4.4m
高松高裁s43.8.8 7m対3.5m
大阪高裁s43.9.1 10.07m対6.4m
福岡高裁s43.11.16 6m対4.2m
福岡高裁s45.1.26 10.5m対7.2m
東京高裁S44.4.22 15.9m対6.5m
最高裁s43.7.16 7.7m対7.6m
最高裁s45.11.10 7m対6.4ないし5.8m
最高裁s47.1.21 9m対7.9ないし5.8m
東京高裁s40.1.18 7.3m対5.5m
東京高裁s41.3.9 3.3m対2.7m
福岡地裁小倉支部s45.1.16 17.8m対14.6m
東京高裁S44.4.15 5.4m対4.8m

ところで、いくつか実例を挙げてますが、これらのほとんどは優先権として「明らかに広い道路か?」を争ったわけではありません。
昭和46年改正以前は、優先道路と「明らかに広い道路」であれば徐行義務がない(最高裁S43.7.16)。
36条2項は狭路から広路に進入する車両に対し進行妨害禁止義務を定めているので狭路車に対する義務。
しかし昭和46年改正以前は広路通行車には徐行義務が免除されるという解釈なので、ほとんどの判例は「徐行義務を負っていたか」の判断として広狭関係を判断しているので、狭路車に対する義務としてではなく広路車が徐行義務を免除されるか?として判断する材料にされてます。

 

例えば最高裁S43.7.16。
この判例は道路交通法違反事件です。

被告人が徐行せずに交差点を進行し徐行義務違反として検挙されたもの。
被告人の主張としては「交差道路に一時停止規制があるときは42条徐行義務の除外と解するべき」としてます。

 

最高裁S43.7.16は「交差道路に一時停止規制があるときでも徐行義務は免除されない」としつつも、下記関係では「明らかに広い道路」に該当する可能性があり、審理を尽くしてないとして東京高裁に差戻ししている。

裁判所 事件番号 判決
墨田簡裁S42.3.17 昭和41年(ろ)867号 有罪
東京高裁S42.11.14 昭和42年(う)883号 控訴棄却
最高裁S43.7.16 昭和42年(あ)211号 破棄差戻し
東京高裁S44.3.26 昭和43年(う)2549号 控訴棄却(有罪)
最高裁S45.11.10 昭和44年(あ)878号 上告棄却

記録ならびに差戻前の第二審および差戻後の当審における各事実取調べの結果によれば、
(イ)本件交差点は、被告人運転の軽四輪自動車の進行していた南方中原街道方面から北方洗足駅方面に通ずる幅員7mの歩車道の区別のない道路(以下、本件道路という。)が、東京都品川区旗の台6丁目3番13号先において、東方昭和医大方面から西方北千束方面に通ずる歩車道の区別のない道路とほぼ十字型に交わる地域であること、
(ロ)本件交差点に通ずる右各道路における車両の制限速度は、時速30キロメートルと指定されていること、
(ハ)本件交差点の南西隅と南東隅には、それぞれ切り落し個所があり、前者の切り落し個所は長さ3.9m、後者のそれは2.4mであること、
(ニ)右交差点より西方北千束方面に通ずる道路(以下、北千束側道路という。)の右交差点に接する部分を除く本来の幅員は5.8m、右交差点より東方昭和医大方面に通ずる道路(以下、昭和医大側道路という。)の右交差点に接する部分を除く本来の幅員は6.4mであつて、実測上は、本件道路の幅員より前者において1.2m、後者において0.6m狭くなつていること、
(ホ)しかし、主として本件交差点の中原街道寄りの手前10mの本件道路上の右交差点に向つて左側部分の中央線寄りの地点から観察すれば、北千束側道路の幅員として現認される右道路の本件交差点に入る部分は、本件道路の交差点に向つて左端の線が右交差点に入る地点と北千束側道路の交差点に向つて左端の線が右交差点に入る地点を結ぶ実測8.15mの線(以下、甲線という。)を含んだ部分であり、また、昭和医大道路の幅員として現認される右道路の本件交差点に入る部分は、本件道路の交差点に向つて右端の線が右交差点に入る地点と昭和医大側道路の交差点に向つて右端の線が右交差点に入る地点を結ぶ実測9.15mの線(以下、乙線という。)を含んだ部分であるが、甲線および乙線の両者はこれを遠近の関係において、また、本件道路の幅員線は右甲線の各前記観察地点に最も接近した地点を結んだ線を水平の関係においてそれぞれ現認することとなるため、実測と視覚の間に誤差が生じて、本件道路の実測7mの幅員線の長さより甲線の実測8.15mおよび乙線の実測9.15mの各長さのほうが短いもののごとくに現認されること、
(ヘ)他面、本件交差点の北千束寄りおよび昭和医大寄りの各手前10mの北千束側道路および昭和医大側道路の各右交差点に向つて左側部分の中央線寄りの地点から観察すれば、いずれの場合においても、本件道路の幅員として現認されるその右交差点に入る部分の長さは、その幅員線が実測7mであるにかかわらず、北千束側道路の幅員線の実測5.8mの部分および昭和医大側道路の幅員線の実測6.4mの部分の各長さより短いもののごとくに現認されることが明らかである。

東京高裁 昭和44年3月26日

実測道路幅としては隅切り部分を含めずに判断してますが、要は実測幅だけでなく目測上の部分も修正してから判断してます。
そして被告人から見て左右の道路幅が異なりますが、そのうち広いほうの6.4mのほうを基準にして「明らかに広いとは言えない」と判断している。

優先通行権につき規定した道路交通法第36条第2項にいう車両等の通行している道路の幅員よりもこれと交差する道路の幅員が明らかに広いものとは、交差点に入ろうとする車両等の運転者が、交差点より少なくとも当該車両等の速度に対する制動距離に相当する距離だけ手前の地点から現認した右各道路の幅員線につき、前記のごとき実測と視覚の誤差を修正して判断した結果、車両等の通行している道路の実測上の幅員線の長さよりもこれと交差する道路の実測上の幅員線の長さが長いことが明らかに認められる場合をいい、かかる場合右交差する道路を通行している車両等に優先通行権が認められる反面、右の判断により、車両等の通行している道路の実測上の幅員線の長さがこれと交差する道路の実測上の幅員の長さより長いことが明らかであつて、後者の幅員より前者の幅員が広いと明らかに認められる場合においては、前者の道路を通行している当該車両等に優先通行権が認められるものと解するのを相当とするから、前記のごとき事実関係においては、本件道路の幅員が、これと本件交差点において交差する北千束方面から昭和医大方面に通ずる道路の幅員より明らかに広いものとはいうことができないので、被告人運転の自動車に本件交差点における優先通行権があるものとは認め難く、また、本件道路が同法第36条第1項により公安委員会の指定した優先道路であつたことの証拠は存しないばかりでなく、かえつて、差戻後の当審における事実取調べの結果によれば、かかる指定のかつてなされた事実のないことが明らかであるから、被告人運転の自動車には、本件の場合、優先道路の指定に基づく優先通行権もなかつたことが明らかである。はたしてしからば、本件交差点が交通整理の行なわれていない、左右の見とおしのきかないものであることはすでに説示したとおりであるから、被告人運転の自動車が本件交差点を通行するに当つて同法第42条に従い徐行する義務のあることも明らかであつて

 

東京高裁 昭和44年3月26日

最高裁もこのように示してます。

なお、道路交通法36条2項にいう「道路の幅員が明らかに広いもの」とは、交差点の入口から、交差点の入口で徐行状態になるために必要な制動距離だけ手前の地点において、自動車を運転中の通常の自動車運転者が、その判断により、道路の幅員が客観的にかなり広いと一見して見分けられるものをいうものと解するのが相当である。

 

最高裁判所第三小法廷 昭和45年11月10日

徐行になるために必要な制動距離以前に見分けることとしてます。

 

徐行義務を負っていたか?(広路車だったか?)で揉めている判例が多いので、だから昭和46年改正時に徐行義務の免除を「優先道路の場合」に限定したのかも。

 

ところで、この道路を下から上に進行する際に

「隅切り」があるため、交差道路が「より広く見える」。
交差点よりも10m以上前で判断すると、隅切り部分が広かっている分だけ「より広く見える」のでそれらも含めての判断なのかと。
交差点に建物があり、左右の見通しが悪いと道路実測幅ではなく隅切り部分を含んだ広さを現認して判断するしかない。

そもそもの話

こちらでも書いたように、あの動画は「左方優先か?」「広路車優先か?」は関係なくて、両者ともに徐行義務違反でしかない。

「明らかに広い道路」の判例が持つ意味。
先日、こちらにて「明らかに広い道路」(36条2項)の判例を挙げましたが、 元ネタは削除されてますが、 という低レベルな争いが… あえて低レベルと書きますが、そもそも「明らかに広いか?」「左方優先か?」は関係ないのよ。 「明らかに広い道路」の...

優先権を登場させる以前の問題なのですが、どっちが優先か?なんて争っている時点で事故は減らないでしょうね。

 

最高裁判決を受けて42条を見直した際に、優先道路の場合のみを徐行義務の除外にした理由を考えると、全ての通行者に分かりやすくないと成り立たないと考えた結果なんでしょうし。

 

ちなみに、あの動画を投稿した方は実際にあの道路を観察しているから広路狭路の関係なんだと判断しているわけですが、上空からカメラ映像でしか見てない立場だと「明らかに広い道路だ!」とも「明らかに広い道路ではない!」とも本来は判断できない。
上の判例にしても、実測値0.6m差「だけ」で判断したわけではなく、実測値と目測上の部分を修正して決めていますし。

 

なので結局、広路狭路なのか、左方優先なのかは動画から判断できないし、徐行義務のみが問題。
まあ、自転車視点からすれば「明らかに広い道路」と見えているのは思いますが、それらを判断する以前に徐行義務違反なのよね。

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