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警視庁解釈の問題点②。38条2項を対向車にも適用すると、だいぶ珍事が起きる。

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こちらの続きです。

警視庁の解釈には重大な問題がある。
なんかこれが話題になっているようですが、38条2項でいう「停止している車両」に対向車を含むか?の問題ですよね。 (横断歩道等における歩行者等の優先) 第三十八条 2 車両等は、横断歩道等(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察...

警視庁の解釈だと、38条2項でいう「横断歩道等のその手前の直前で停止している車両等」に対向車も含めているらしい。

つまり「B」の話ですよね。
この解釈をすると、3項の解釈がおかしくなり、52条2項で「他の車両等と行き違う場合」と分けている点も整合性が取れないのですが、それ以外にも問題があります。

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交差点の右左折の場合

38条2項と3項は、「当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道等による歩行者等の横断が禁止されているものを除く」としている。

(横断歩道等における歩行者等の優先)
第三十八条
2 車両等は、横断歩道等(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道等による歩行者等の横断が禁止されているものを除く。次項において同じ。)又はその手前の直前で停止している車両等がある場合において、当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、その前方に出る前に一時停止しなければならない。

交差点の右左折を考えます。
歩行者の横断が禁止されている横断歩道が2項・3項の除外。

つまり、下図のように右左折車両にも2項と3項の義務があるのよね。
青信号の横断歩道は歩行者の横断が禁止されていないのだから、2項の除外にはならない(東京地方検察庁交通部、「最新道路交通法事典」、1974)。

3項(30m以内の追い抜き禁止)、30条3号(30m以内の追い越し禁止)も同様。

さて、警視庁は対向車も含めているそうですが、警視庁解釈だとこれが違反だという話になる(間違ってT字路にしましたが十字路とお考えください)。

「側方を通過」については追い越しの定義(2条1項21号)や追い抜き禁止(38条3項)にも出てきますが、第1車線を通行する車両を第3車線から抜いても「側方を通過」なので、2項だけ「すぐ傍を通過」と解釈するのはムリがある。

 

これが2項の違反になるなら、世の中違反だらけ過ぎて笑えない。
なお、1項前段(減速接近義務)があることは言うまでもない。

条文上は単路にも限定してないし、2輪車が38条2項に違反して事故るパターンはこれ。

対向車も含めるの??

無理筋だなぁ…

昭和42年に38条2項を新設した経緯

改正時の前提

昭和42年に38条2項を新設した経緯については、もう2年前にいろいろ調べて納得していたので今さら感しかないのですが、いろんな記事に根拠が散らばっているのでまとめます。

 

まず、昭和42年改正時の前提から。

 

①38条1項前段(減速接近義務)はまだ無い(昭和46年新設)

②駐停車禁止エリア(44条3号)は「横断歩道の前5m」で、昭和46年に「横断歩道の前後」に改正

③30条(追い越し禁止場所)は、昭和46年改正で「追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない」になった。それ以前は「追越してはならない」だったため、追い越しの4要件(追い付く、進路を変える、側方通過、前に出る)の全てが横断歩道30m手前で完了しないと違反にはならなかった。

その自転車は何の違反?「追い越し禁止(30条)」の解釈について。
ちょっと前に挙げたこちら。 来日したての外国人(チームスカイ)だろうと日本のルールを守る義務があるのは当然ですが、来日したての外国人が日本のルールをわかってない可能性が高いのだから「しょうがない面」はあるし、しかも矛先を「競輪選手」に向けて...

④横断歩行者妨害の過失犯の処罰規定がなく、「歩行者に気がつかなかった」と弁解して故意がないアピールする人が多かった(過失の処罰規定は46年新設)。

 

これらが前提。

昭和42年警察庁の解説

前提を踏まえてまずは国会に改正案を提出した理由から。

 

○道路交通法の一部を改正する法律案要綱(案)について(警察庁)

現行法において既に、歩行者が横断歩道により道路の左側部分を横断し、または横断しようとしているときは、車両等は、その横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならないことになっており(第71条第3号)、また横断歩道の手前の30m以内の部分における追越しが禁止されていて(第30条第3号)、横断歩道における歩行者の保護はそれでじゅうぶん確保されていると考えられていた。しかし、交通事故の実態をみると、横断歩道の直前に他の車両が停止している場合に歩行者に気づかず、停止車両の側方を通過して横断歩道上で事故を起こす車両や、横断歩道の手前で前車の側方を通過してその前方に出たため歩行者の発見が遅れ横断歩道上で事故を起こす車両が少なくない。
(1)もともと横断歩道の手前の側端から前に5m以内の部分は駐停車禁止の場所であって、このような場合は、歩行者の通行を妨げないように一時停止しているものと考えてしかるべきである。
したがって、今回の改正では、横断歩道の直前で停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとする車両等は、歩行者の有無を確認するため、その横断歩道の直前で一時停止しなければならないこととしようとしている。

警察学論集、「道路交通法の一部を改正する法律案要綱(案)について(警察庁)」、立花書房、1967年5月

改正法案成立後の警察庁の解説。

 

○道路交通法の一部を改正する法律(警察庁交通企画課、浅野信二郎)

しかしながら、横断歩道において事故にあう歩行者は、跡を絶たず、これらの交通事故の中には、車両が横断歩道附近で停止中または進行中の前車の側方を通過してその前方に出たため、前車の陰になっていた歩行者の発見が遅れて起こしたものが少なからず見受けられた。今回の改正は、このような交通事故を防止し、横断歩道における歩行者の保護を一そう徹底しようとしたものである。

 

まず、第38条第2項は、「車両等は、交通整理の行なわれていない横断歩道の直前で停止している車両等がある場合において、当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、当該横断歩道の直前で一時停止しなければならない」こととしている。

 

もともと横断歩道の手前の側端から前に5m以内の部分においては、法令の規定もしくは警察官の命令により、または危険を防止するために一時停止する場合のほかは停止および駐車が禁止されている(第44条第3号)のであるから、交通整理の行われていない横断歩道の直前で車両等が停止しているのは、通常の場合は、第38条第1項の規定により歩行者の通行を妨げないようにするため一時停止しているものと考えてしかるべきである。したがって、このような場合には、後方から来る車両等は、たとえ歩行者が見えなくとも注意して進行するのが当然であると考えられるにかかわらず、現実には、歩行者を横断させるため横断歩道の直前で停止している車両等の側方を通過してその前方に出たため、その歩行者に衝突するという交通事故を起こす車両が少なくなかったのである。
そこで、今回の改正では、第38条第2項の規定を設けて、交通整理の行われていない横断歩道の直前で停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとする車両等は、横断歩道を通行し、または通行しようとしている歩行者の存在を認識していない場合であっても、必ずその横断歩道の直前で一時停止しなければならないこととし、歩行者の有無を確認させることにしたのである。車両等が最初から歩行者の存在を認識している場合には、今回の改正によるこの規定をまつまでもなく、第38条第1項の規定により一時停止しなければならないことになる。
「一時停止」するというのは、文字通り一時・停止することであって、前車が停止している間停止しなければならないというのではない。この一時停止は、歩行者の有無を確認するためのものであるから、この一時停止した後は、第38条第1項の規定により歩行者の通行を妨げないようにしなければならないことになる。また、一時停止した結果、歩行者の通行を妨げるおそれがないときは、そのまま進行してよいことになる。

 

警察学論集、浅野信二郎(警察庁交通企画課)、立花書房、1967年12月

当時の駐停車禁止エリアはこれ。

このエリアに停止車両がいる場合は横断歩行者優先中だという前提で説明している。
普通に読めば、対向車の停止状態を全く考えていないことが読み取れます。
立法に至った経緯は、横断歩道手前に停止している車両がいたら横断歩行者優先中だとわかるはずなのに、空気を読めない方々が側方通過して事故りまくったから。

なお、警察学論集で浅野氏が説明した内容は札幌高裁判決でも引用されている。

右規定の新設された立法の趣旨、目的は、従前、横断歩道の直前で他の車両等が停止している場合に、その側方を通過して前方へ出たため前車のかげになつていた歩行者の発見がおくれ、横断歩道上で事故を惹起する車両が少なくなかつた道路交通の実情にかんがみ、とくに歩行者の保護を徹底する趣旨で設けられたものである。すなわち、右規定は、本来駐停車禁止区域である横断歩道直前において車両等が停止しているのは、多くの場合、歩行者の通行を妨げないように一時停止しているものであり、また、具体的場合に、当該車両等が歩行者の横断待ちのため一時停止しているのかそうでないかが、必ずしもその外観のみからは、一見して明らかでないことが多い等の理由から、いやしくも横断歩道の直前に停止中の車両等が存在する場合にその側方を通過しようとする者に対しては、それが横断中の歩行者の存在を強く推測させる一時停止中の場合であると、かかる歩行者の存在の高度の蓋然性と直接結びつかない駐車中の場合であるとを問わず、いずれの場合にも一律に、横断歩道の直前における一時停止の義務を課し、歩行者の保護のよりいつそうの強化を図つたものと解されるのである。(浅野信二郎・警察研究38巻10号34頁。なお弁護人の論旨は、右「停止」中の車両の中には「駐車」中の車両が含まれないとの趣旨の主張をしているが、法2条18号、19号によれば、「停止」とは「駐車」と「停車」の双方を含む概念であることが明らかであるから、右の主張にはにわかに賛同できない。)

 

昭和45年8月20日 札幌高裁

次に国会での説明。
改正時に「故障車の停止状態なら一時停止しなくてもいいのは?」と質問が出てますが、横断歩行者優先中の一時停止と、故障車の駐停車は見分けがつかないとしている。

第55回国会 参議院 地方行政委員会 第24号 昭和42年7月18日

○原田立君 今度は車を運転する者のほうの側で一応いろいろ考えるわけですけれども、いまお聞きしているのは、具体的な問題になるとどういうことになるのですか。ちょっとこれは愚問かと思いますけれども、横断歩道の直前で、しかも、歩行者もなくて、故障のために停止している車両があると、当然、常識上三十メートル以内であってものけていってもいいんじゃないか、こう思うんですがね。実際問題どうなりますか。

○政府委員(鈴木光一君) 今度新たにこの規定を設けましたのは、横断歩道の直前で停止している車の陰に隠れて歩行者が見えないということがありまして、そのために事故が起こるというケースが非常に多うございましたので、横断歩道の直前でとまっている車があった場合には、一時停止して、歩行者の有無を確認するという意味で一時停止しなさいということになっておるのでございまして、したがいまして、かりに横断歩道の直前で故障している場合でも、やはりとまることを期待しております。

○原田立君 そうなると、そこいら辺が、たとえば後続車がずっと続いているような場合ですね、たいへん混乱するんじゃないですか、交通関係で。

○説明員(片岡誠君) 故障車の場合は、私そうケースが多いとも思いませんし、いま局長が申しましたように、故障車でありましても、やはり横断歩道を歩行者が渡っているかどうか、故障車の陰になって、ちょうど死角になりましてわからない。危険性においては全く同じではないだろうか。したがいまして、故障車であろうと、横断歩道の手前に車がとまっておった場合には、とりあえず一時とまって、歩行者が横断しているかどうかを確認していくというやり方が合理性があるんではなかろうか。先生おっしゃいましたように、故障車が非常にたくさん横断歩道の手前にある場合には、若干円滑を阻害する問題もあろうかと思いますが、実態として故障車が横断歩道の手前にとまっているということはそう多くないのではなかろうか、そのように思っております。

次。

第58回国会 参議院 法務委員会 第20号 昭和43年5月23日

歩行者保護の観点から、三十八条の二項に、その前の条文と一緒につけ加わったわけでありますが、交通整理の行なわれておらない横断歩道におきまして、横断歩行者が渡ろうとして車が横断歩道の直前にとまっておるときには、うしろから行った車もとまりなさいという規定と一緒に、そういう横断歩行者の保護を確保する意味において、その手前三十メートルでは追い抜かないようにということで、こういう類型の事故が非常に多いという観点からこの条文ができたわけであります。その条項に触れたわけでございます。

「後ろからいった車」としている。
ところで、現在の運転免許採点基準にはこのような記述がある。

5 横断歩道等又はその手前の直近で停止している車両等がある場合に、その側方を通過して前方に出る前に一時停止せず又は一時停止しようとしないとき。ただし、信号機の表示等により歩行者等の横断が禁止されている場合又は歩行者等を横断させるために停止しているものでないことが明らかな車両等の側方を通過する場合には適用しない。[停車](38)

「横断歩行者優先中の一時停止車両」の場合には一時停止義務があるとし、「横断歩行者優先中ではない違法駐停車車両であることが明らかな場合」には一時停止を適用しないとしている。
これもあくまで、38条2項の前提は「横断歩道手前の停止車両は、横断歩行者優先中だから後続車は問答無用にとまれ」だからでしょうね。

少なくとも立法時には対向車の停止状態を全く考えていない。

判例での扱い

昭和42年改正道路交通法成立以降の事故ですが、有名な東京高裁46年5月31日判決。

減速すべき注意義務違反を認定して有罪にしてますが(まだ1項前段が規定される前の判例です)、この判例の一審は無罪にしている(東京地裁 昭和45年4月14日)。
東京高裁が原判決を破棄して有罪にしてますが、対向車に対して2項の義務があるならこんな盛大に揉める理由がないし、何より東京高裁は対向車の停止状態での一時停止を否定している。

検察官の控訴趣意中に、横断歩行者の有無が明確でない場合にも一時停止義務があると主張する部分があるが、この点は採用しがたい

 

東京高裁 昭和46年5月31日

次に対向車の渋滞停止状態についての大阪高裁54年11月22日判決。
事故の概要です。

対向車が渋滞停止している状況で、被告人車は徐行進行。

渋滞停止車両の隙間から少女が横断してきたものの、危険を感じて立ち止まった。

少女が立ち止まったことから被告人車はそのまま進行したところ、少女の後ろにいた弟がスキップしながら横断して衝突。
これに対し、大阪高裁は「立ち止まった少女」に対して一時停止義務(38条1項後段)を認定。

このように横断歩道上を横断しようとしてその中央付近手前まで歩んできた歩行者が、進行してくる被告人車をみて危険を感じ、同歩道の中央付近手前で一旦立ち止まったとしても、横断歩道における歩行者の優先を保護しようとする道路交通法38条の規定の趣旨にかんがみると、右は同条1項後段にいう「横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者」にあたるというべきである。
そして、同女が横断歩道上の前記地点で立ち止まったとしても、前記認定のような当時の状況に徴すると、同女の後方からさらに横断者のあり得ることが予想される状況にあったのであるから、自動車運転者である被告人としては、同女の姿を認めるや直ちに、右横断歩道の手前の停止線の直前で(仮に、被告人が同女の姿を最初に発見した時点が、所論のように被告人車の運転席が停止線付近まで来たときであったとしても、事理は全く同様であって、その時点で直ちに)一時停止し、横断者の通行を妨げないようにしなければならなかったのである。

 

所論は、しきりに、横断歩道上、右側への見通しがきかない状態にあった点を強調し、一時停止しても、結果は同じだった旨主張するが、そこが、歩行者優先の横断歩道である以上、前記のとおり見通しが困難であれば、一層、安全確認のため一時停止すべきであり、更に進行するに際しても、最徐行するなどして横断歩道上の右方の安全を慎重に見極めつつ進行すべき業務上の注意義務があった

 

大阪高裁 昭和54年11月22日

横断歩道上で立ち止まった少女が「横断しようとする歩行者」(1項後段)なのか争われましたが、対向車の渋滞停止に2項の適用があるなら1項後段を争う理由もない。

 

1項後段「横断しようとする歩行者」なのか争うより、2項の対象なら2項の注意義務違反を認定すれば早いよね…

そのほか、民事判例でも対向車の渋滞停止状態については「1項前段(減速接近義務)」を問題にしているけど、2項を問題にしていない。

○大阪地裁 平成28年2月3日

○大阪地裁 平成25年6月27日

刑事判例/民事判例についても2項を争点にしておらず、「対向車は適用外」として運用してきたのがわかります。
なお、名古屋高裁判決にしても、あくまで判断したのは「道路左側」の停止車両のみ。

所論は、原判示の横断歩道直前に停止していた自動車は、一時停止していたものではなく、「駐車」していたものであるから、本件において、被告人は、道路交通法38条2項にいう「その前方に出る前に一時停止しなければならない」義務を負わないのに、その義務があるとした原判決の認定は失当であると主張する。しかし、被告人の立会のもとに作成された実況見分調書によつて明らかなとおり、原判示道路は、道路標識等によつて駐車が禁止されているし、原判示自動車の停止位置は、道路交通法44条2号、3号によつても停車及び駐車が禁止されている場所であるから、かかる場所に敢えて駐車するが如きことは通常考えられない事柄であるのみならず、同法38条2項にいう「横断歩道の直前で停止している車両等」とは、その停止している原因、理由を問わず、ともかく横断歩道の直前で停止している一切の車両を意味するものと解すべきであるから、本件の場合、被告人の進路前方の横断歩道直前の道路左側寄りに停止していた自動車が、一時停止による場合であると停車或いは駐車による場合であるとにかかわりなく、被告人としては、右停止車両の側方を通過してその前方に出ようとするときは、出る前に一時停止しなければならないのである。従つて、右措置をとらないまま横断歩道に進入した被告人に過失があるとした原判決に誤りはない。論旨は理由がない。

 

名古屋高裁 昭和49年3月26日

これらから考えると

さらに補足すると、昭和46年改正時に駐停車禁止エリアを「手前5m」から「前後5m」にした理由はこれ。

横断歩道の先方5メートル以内の部分を停車および駐車を禁止する場所とした(第44条第3号等の改正)

現行規定においては、横断歩道の手前の側端から5メートル以内の部分が停車および駐車を禁止する場所とされているが、横断歩道の先方5メートル以内の部分に車両が駐停車している場合であっても、対向の車両の運転者が、その横断歩道により道路を横断している歩行者の発見が困難になり、歩行者に危険を生じさせるおそれがあるので、今回の改正により、横断歩道の手前だけでなく先方についても、横断歩道の側端から5メートル以内の部分を停車および駐車を禁止する場所としたのである。

道路交通法の一部を改正する法律(警察庁交通企画課)、月刊交通、道路交通法研究会、東京法令出版、昭和46年8月

対向車にも2項の義務があるなら、わざわざ駐停車禁止エリアを拡大する理由が薄い。
そして昭和46年改正時には38条違反に「過失犯」の処罰規定を新設してますが、理由はこれ。

車両等が横断歩道に接近する場合の義務に違反した場合には、それだけで第38条第1項の違反となる。また、横断歩道の直前で停止できるような速度で進行してきた車両等が、横断歩道の直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げないようにする義務に違反した場合も同様である。

 

今回の改正により、横断歩道における歩行者保護のための車両等の義務の違反については、新たに過失をも罰することとした。
横断歩道における歩行者の事故において、車両等の運転者が横断歩道あるいは歩行者に気がつかなかったと弁解する場合が多いが、この種の違反については過失をも罰することにより、歩行者保護の徹底を図ることとしたのである。
車両等が横断歩道に接近する場合において、十分確認しないでその進路の前方を横断しようとする歩行者がないと軽信したり、横断歩道の直前で停止することができないような速度で進行した場合には、過失により、第38条第1項前段の横断歩道に接近する場合の義務に違反することになる。また、車両等が横断歩道の直前で停止できるような速度で横断歩道に接近した場合において、その進路の前方を横断し、または横断しようとする歩行者がいることに気がつかなかったため、横断歩道の直前で一時停止せず、歩行者の通行を妨げたときは、過失により、第38条第1項後段の横断歩道の直前の一時停止等の義務に違反することになる。

道路交通法の一部を改正する法律(警察庁交通企画課)、月刊交通、道路交通法研究会、東京法令出版、昭和46年8月

過失犯の処罰規定も減速接近義務もなかった時代は、

「横断歩行者に気がつかなかった」(故意がない)と弁解して違反から逃れようとする人が横行。
そして警察学論集にあるように、空気を読めない方々が大量発生。

もともと横断歩道の手前の側端から前に5m以内の部分においては、法令の規定もしくは警察官の命令により、または危険を防止するために一時停止する場合のほかは停止および駐車が禁止されている(第44条第3号)のであるから、交通整理の行われていない横断歩道の直前で車両等が停止しているのは、通常の場合は、第38条第1項の規定により歩行者の通行を妨げないようにするため一時停止しているものと考えてしかるべきである。したがって、このような場合には、後方から来る車両等は、たとえ歩行者が見えなくとも注意して進行するのが当然であると考えられるにかかわらず、現実には、歩行者を横断させるため横断歩道の直前で停止している車両等の側方を通過してその前方に出たため、その歩行者に衝突するという交通事故を起こす車両が少なくなかったのである。

「横断歩行者に気がつかなかった(故意がない)」という言い訳を封じ、しかも横断歩道手前に停止車両があるなら横断歩行者優先中の可能性が高いから2項を新設して強制一時停止にしたとみなすほうが、立法経緯や趣旨、判例での扱いなど整合性が取れるのよね。

 

横断歩道のルールの改正史は複雑なので、一つ一つ確認しながら当時改正した理由を探すしかないけど、以前書いたように本来は減速接近義務がきちんと履行されるなら2項は不要な規定。
なお、警察庁の解説書(道路交通法ハンドブック)はこう。

「停止している車両等」についてはもちろんその停止していることの原因、理由を問わないから、およそ横断歩道等又は横断歩道等の直前で停止している車両等はすべて含まれることになる。

「側方を通過して」とは、停止している車両等の側方を通過してということであって、その右、左いずれの側を通過してもよい。

「前方に出る前に」とは、歩行者等保護の本項の趣旨から考えると停止している車両等の先端線とほぼ同一の位置の側方を厳格に解することがよいであろう。

警察庁交通企画課、道路交通法ハンドブック

あらゆる観点から考えても対向車を含んでないように思うけど、条文、改正史、立法経緯、立法趣旨、判例を辻褄合わせると対向車は含まないかと。

 

そしてくどいけど、対向車の渋滞停止について「最徐行義務」を認定した判例があります。

本件交通事故現場は前記のとおり交通整理の行われていない交差点で左右の見通しのきかないところであるから、道路交通法42条により徐行すべきことももとよりであるが、この点は公訴事実に鑑み論外とするも、この交差点の東側に接して横断歩道が設けられてある以上、歩行者がこの横断歩道によって被告人の進路前方を横切ることは当然予測すべき事柄に属し、更に対向自動車が連続して渋滞停車しその一部が横断歩道にもかかっていたという特殊な状況に加えて、それらの車両の間に完全に姿を没する程小柄な児童が、車両の間から小走りで突如現われたという状況のもとにおいても、一方において、道路交通法13条1項は歩行者に対し、車両等の直前又は直後で横断するという極めて危険発生の虞が多い横断方法すら、横断歩道による限りは容認しているのに対し、他方において、運転者には道路交通法71条3号により、右歩行者のために横断歩道の直前で一時停止しかつその通行を妨げないようにすべきことになっているのであるから、たとえ歩行者が渋滞車両の間から飛び出して来たとしても、そしてそれが実際に往々にしてあり得ることであろうと或は偶然稀有のことであろうと、運転者にはそのような歩行者の通行を妨げないように横断歩道の直前で直ちに一時停止できるような方法と速度で運転する注意義務が要請されるといわざるをえず、もとより右の如き渋滞車両の間隙から突然に飛び出すような歩行者の横断方法が不注意として咎められることのあるのはいうまでもないが、歩行者に責められるべき過失があることを故に、運転者に右注意義務が免ぜられるものでないことは勿論である。
しからば、被告人は本件横断歩道を通過する際に、右側に渋滞して停車していた自動車の間から横断歩道によって突然にでも被告人の進路前方に現われるやもはかり難い歩行者のありうることを思に致して前方左右を注視すると共に、かかる場合に備えて横断歩道の直前において一時停止することができる程度に減速徐行すべき注意義務があることは多言を要しないところであって、原判決がこのような最徐行を義務付けることは過当であるとしたのは、判決に影響を及ぼすこと明らかな根本的且つ重大な事実誤認であって、この点において既に論旨は理由があり原判決は破棄を免れない。

 

昭和42年2月10日 東京高裁

 

対向車の渋滞停止には最徐行して確認しろ、というのが通説ですが、警察庁はなぜ歴史を無視するのか謎ですね。
なお、改正史や改正理由は警察学論集や月刊交通が詳しい。

 


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