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横断歩道の標示を広げることの是非。

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そういえばこれ。

警察庁が「生活道路」の法定速度を60キロ⇒30キロに引き下げへ。
警察庁が道路交通法施行令の改正案を公表しました。 目玉になるのは、速度標識がない生活道路の法定速度を60キロ⇒30キロに引き下げること。 では、改正案を見ていきましょう。 横断歩道標識の一部免除(令1条の2) 従来、信号がない横断歩道には標...

標識令の改正で、横断歩道標示の「隙間」が拡張されます。

0.45~0.5mのところ、0.45~0.9mとなる。

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予算の問題

横断歩道標示が消失した後の「書き直し問題」ってまあまあ深刻でして、昨年このような報道もありました。

過失運転致傷罪に問われた運転手の刑事裁判では、横浜地裁川崎支部が19年11月の判決で「車両進行方向の横断歩道は完全に消失し認識することは著しく困難」だったとして、無罪を言い渡した。これを受けて被害者と家族は20年10月、運転手の勤務先と県を相手取り、1億3900万円の損害賠償を求めて民事訴訟を起こした。

 

「消えた白線」が争点となった裁判で同支部は今年6月、総額6700万円の和解金の支払い案を提示。現場を繰り返し走行して横断歩道を認識できていたはずだとして、過失割合の9割(6030万円)は運転手の勤務先にあるとしたが、県にも1割(670万円)の過失があるとした。双方が受け入れ、和解が成立した。

「消えた横断歩道」ではねられた 摩耗を放置した神奈川県も一部責任を認め和解 劣化した白線は全国に:東京新聞 TOKYO Web
川崎市の横断歩道で歩行者が車にはねられた一因は「白線」が消えていたことにあると、道路標示を管理する責任を負う神奈川県が過失の一部を認め...

現場はここ。

事故以前から県に対し「横断歩道を書き直してくれ」と陳情があったものの、県は陳情から半年経っても一向に書き直ししなかった。
ざっくり言えば予算の問題でしょうけど、誰が被害を受けるかって歩行者なのよね。
このように完全消失でも県が動かないという…

 

他にも似たような判例があるし、予算を削りながら標示を確保する手段が必要だったのかと。

 

この問題ってさらに問題がある。

地方財政法28条の2

道路標示は都道府県公安委員会のお仕事なので、都道府県がカネを出す。
しかし都道府県に陳情してもなかなか動かないことから、市町村が費用を出すから「お願いだから書き直してくれ!」みたいなケースもあるわけよ。

 

ところが、それをすると問題になりうる。

(地方公共団体相互間における経費の負担関係)
第二十八条の二 地方公共団体は、法令の規定に基づき経費の負担区分が定められている事務について、他の地方公共団体に対し、当該事務の処理に要する経費の負担を転嫁し、その他地方公共団体相互の間における経費の負担区分をみだすようなことをしてはならない

地方財政法28条の2の問題から、市町村が費用負担すると問題になりうる。
実際、町が県に対しパトカーを寄付した件が違法とされた判例も。

原審の適法に確定した事実関係の下においては、a町が馬頭地区交通安全協会を経由して栃木県に対してした本件ミニパトカーの寄附は、法令の規定に基づき経費の負担区分が定められている事務について地方公共団体相互の間における経費の負担区分を乱すことに当たり、地方財政法二八条の二に違反するものであって、そのためにされた本件ミニパトカーの購入及び購入代金の支出も違法なものといわざるを得ない。

最高裁判所第二小法廷 平成8年4月26日

一方ではこのような判例も。

 地方財政法28条の2は,任意の寄附をすることについても規制の対象とするものと解されるが,「負担区分をみだすようなこと」という評価的要素を有する文言が用いられていることに照らしても,法令の規定と異なる地方公共団体が経費を負担する結果となる行為すべてを一律に禁じるものではなく,法令の規定と異なる地方公共団体が経費を負担する結果となるような行為は,原則として負担区分を乱すものとして禁じるが,実質的にみて地方財政の健全性を害するおそれのないものは例外的に許容していると解するのが相当である。

東京高裁 平成17年2月9日

市町村が費用負担して「横断歩道を書き直し」だと、法律的に問題になりうる。
結局、都道府県が費用負担するしかないけど、カネはない。

追い討ちを掛けた「標識漏れ」事件

そして追い討ちを掛けたのが「横断歩道標識漏れ事件」。

標識漏れが約2400カ所…大丈夫ですかね。
全国各地で横断歩道の標識漏れによる「架空の横断歩道」が問題になってますが、発端は青森県でしたよね。 ところで、佐賀県警では県内約2400ヵ所で標識漏れだそうな。 佐賀県警は27日、県内17カ所の信号のない横断歩道で標識に不備があり、22人を...

本気でカネがないのでしょうね。
施行令改正案に一部の標識を不要にするものが含まれてますが、どこかで費用負担を減らしながら安全性を落とさない政策が必要。
警察庁もバカじゃないので、横断歩道標示の幅を広げた場合の視認性など実験しているはずで、安全性を落とさない範囲で費用負担を減らすものだと理解できますが、現実的に横断歩道の書き直しが遅れた結果、事故が起きている以上、やむを得ないのかと。

 

書けない話をすると、これに付随しているのか無茶苦茶な話もありましてね…

 

どこかで費用負担を減らさないと回らないのですが、要はゾーン30を設定するコストよりも法定速度を引き下げたほうが早いし、一時停止標識と横断歩道標識をダブルで存在させても意味がない。

削れるところは削ろうとしたのが今回の改正案だと考えられますが、おそらく、横断歩道の標識漏れ事件が予算を圧迫したんじゃないですかね。
あれにしても、交差点を右左折する車両側には標識がなくても実務上は問題ない気がする(徐行義務があるので)。

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