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シートベルトを装着していたか?は誰が立証するのか?

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ちょっと前になりますが、福岡地裁管内で「シートベルトをつけていたのに違反を取られた!違反を取り消してゴールド免許を返せ!」という裁判がありました。

みやま市に住む男性がシートベルトの違反行為で、運転免許証の更新の際、いわゆる「ゴールド免許」から「ブルー免許」になったことをめぐり、取り締まった警察官の見間違いだと訴えていた裁判で、福岡地方裁判所は警察官の見間違いなどの可能性があるとして、県に対して「ゴールド免許」にするよう命じる判決を言い渡しました。

シートベルトの違反は”見間違いなどの可能性” 福岡地裁 |NHK 福岡のニュース
【NHK】みやま市に住む男性がシートベルトの違反行為で、運転免許証の更新の際、いわゆる「ゴールド免許」から「ブルー免許」になったことをめぐり、取り締…

この事件は行政訴訟(民事訴訟)になりますが、ここで問題になるのは、

○原告
「いや、シートベルトはつけていた!」

○県警
「つけてねーよ」

この裁判に当たり、原告がシートベルトをつけていたことを立証しないと違反取消にならないのでしょうか?

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シートベルト装着の有無は誰が立証責任を負うか?

まず、「違反取消訴訟」は行政訴訟法ではできないため、あくまでも「ゴールド免許交付請求事件」になります。

 

では、判決文を確認しましょう。
違反切符を切った経緯から。

⑵ 本件当日の状況
ア 被告主張に係る本件違反行為の場所は、福岡県みやま市(住所省略)の西側を北西から南東に国道443号(以下「本件国道」という。)が走り、同所北側を北東方向から走る市道(以下「東側市道」という。)が同所西側で本件国道と合流し、同合流地点からやや南東にずれた地点から南西方向に抜ける市道が延びる、信号機による交通整理が行われていない変則交差点(以下「本件交差点」という。)である(別紙3「道路交通法違反現場見取図」参照)。
本件国道(道路幅員約6m)は、中央線が設置された片側1車線道路であり、東側市道(道路幅員約4m)は、中央線のない道路である。

イ 福岡県柳川警察署(以下「柳川署」という。)のA警部補は、本件当日午前11時頃、警ら用無線自動車(以下「本件パトカー」という。)を運転し、その助手席に柳川署のB巡査(以下A警部補と併せて「本件警察官ら」という。)を乗車させ、東側市道を北東方向から本件交差点に向けて警らしていたところ、本件交差点の西角に設置されたカーブミラーにより、原告が運転する軽四輪貨物自動車(以下「本件車両」という。)が、本件国道を北西方向から本件交差点に向けて進行して来る状況を認めた。本件車両は、午前11時22分頃、本件パトカーから北西方向約13mの本件国道上で、減速し、左折の合図を出して、本件交差点を東側市道に向けて左折した(同左折時における本件パトカーの動静については争いがある。)。

本件パトカーから降車したB巡査は、左折を完了して東側市道上に停車した本件車両に近づき、運転席にいた原告に対し、声を掛けた。声を掛けた時点では、原告はシートベルトを装着していた本件警察官らは、点数切符を作成し、原告に対しシートベルト装着義務違反(本件違反行為)があったと説明したところ、原告は、本件警察官らに対し、警察官の見間違いである、シートベルトはしていたので納得できないなどと申し入れ、点数切符への署名・押(指)印に応じなかった。

エ 福岡県警察本部(以下「福岡県警」という。)交通部運転免許管理課は、本件違反行為について、座席ベルト装着義務違反(基礎点数1点)として違反登録を行った。

被告(福岡県)の主張はこれ。

⑴ 被告の主張
ア 本件警察官らは、本件交差点手前の停止線で本件パトカーを一時停止させ、本件車両を注視していたところ、本件パトカーから北西方向約13mの本件国道上で本件車両を運転する原告がシートベルトを装着していない状況を認めた。本件車両が東側市道に左折を開始し、本件パトカーの右前部と本件車両の右前部がすれ違う位置関係となった時、A警部補は、原告が慌ててシートベルトを装着する状況(以下「事後装着」ということがある。)を現認した。

本件警察官らは、本件パトカーと本件車両との間に視界を遮るものが何もない状況において、本件パトカーの運転席と助手席から、原告がシートベルトを装着していない状況を現認した。さらに、原告が本件パトカーの近くを走行する際、原告が事後装着する状況をもA警部補が至近距離から現認しており、本件警察官らが本件違反行為を見間違ったとは到底考えられない。また、シートベルト装着の有無に係る現認行為については、専門的知識や技能が特に求められるものではなく、警察官による見間違いの可能性そのものが極めて低い。

福岡県警の言い分としては、シートベルト未装着をすれ違い時に現認し、しかも慌ててシートベルトをつけるのも現認しているし、何ら難しい問題ではないから見間違えの可能性なんてないでしょと主張。
原告は「いや、福岡県警の見間違いですね」と主張しています。

⑵ 原告の主張
原告が本件違反行為をした事実はなく、本件警察官らによる本件違反行為についての現認は見間違いである。
したがって、本件処分は、違法である。

つけていたからつけていた、というごくシンプルな主張ですが、それ以上主張することはないのよね。

 

さてそもそもですが、この事件は「ゴールド免許交付請求事件」。
つまり、「違反があったとしてゴールドから格下げ処分をした」ことが事実無根で違法なんだから、ゴールド免許を交付しろと求めてます。
「シートベルト装着義務違反があったから格下げは合法」と主張する福岡県と、「シートベルト装着義務違反なんてないのだから、ゴールド免許をよこせ」と主張する原告。

 

違反があったことを立証する責任については、基本的には行政側(福岡県警)にあります。
「違反がなかったこと」を立証することはそもそも困難ですし。

福岡地裁はなぜ「シートベルト装着義務違反はなかった」と判断したのでしょうか?

2 原告が本件違反行為をしたか否か(本件警察官らの供述の信用性)について
⑴ 本件車両が本件交差点に進入する前の時点での現認供述について
ア 証拠中には、本件警察官らにおいて、いずれも、本件車両が本件交差点に進入する手前(停止線付近)の時点で、原告がシートベルトを装着していないことを現認した旨の本件警察官らの供述部分(乙15、16、証人A警部補、証人B巡査)がある。

イ しかしながら、認定事実により指摘することができる次の事情によれば、本件警察官らの前記供述部分は、見間違い等の可能性を排除することができず、採用することができない。

(ア)本件警察官らの視認状況
本件交差点を左折中の本件パトカーの運転席からは、本件交差点に進入する直前(停止線の直前)の本件車両の運転席は、ハンドルにより運転者の胸元以上しか視認できない状況であった(認定事実⑵オ)。
しかも、②本件車両のシートベルトは、運転席横の支柱から伸びるものではなく、運転席背部、運転者の右肩口の直近から伸びる構造であり、かつ、当時の原告の上衣と同系色であった(認定事実⑴イ、ウ)のであ
り、③本件当日午前11時頃は、その付近で降雨も確認されるなど、雲の量は相当程度あり(認定事実⑴ア)、その視認状況がそれほど明るくなかった可能性がある。
以上によれば、本件警察官らにおいて、本件車両が本件交差点に進入する前の時点で、本件車両内にいる原告がシートベルトを装着していたかどうかを判別することは、容易でなかった可能性がある。とりわけ、運転席横の支柱から伸びるベルトの有無でシートベルトの装着の有無を判断しようとする場合には、運転者がシートベルトを装着していたとしても、装着していないと誤認する可能性があったことがうかがえる

(イ)本件検証の結果について
本件検証に係る検証調書には、肉眼では判別することが可能である旨の記載がある(認定事実⑵オ)が、前記(ア) の事情に照らすと、その信用性は乏しいといわざるを得ない。
そうすると、本件検証の結果(認定事実⑵オ)によっても、本件車両が本件交差点に進入する前の時点で、本件パトカーから、本件車両内にいる原告がシートベルトを装着していたかどうかを判別することが容易
であったとは認め難いというべきである。
仮に肉眼で判別することが可能であったとしても、本件検証の結果は、本件車両のシートベルトの位置関係等をあらかじめ把握した上で意識的に観察した結果と評価することもできるのであるから、本件警察官らが、本件当日、見間違いをした可能性を排除できるものではない。

(ウ)B巡査が原告に声をかけた際の原告のシートベルト装着状態との関係
B巡査は、本件警察官らが本件違反行為を現認したとされる時期の直後に原告に声をかけたところ、その時点で、原告は、シートベルトを装着していたものである(認定事実⑴エ。なお、事後装着を現認した旨のA警部補の供述部分を採用することができないことは、後記⑵ウのとおりである。)。
このことからしても、本件警察官らは、原告がシートベルトを装着しているのに、装着していないものと誤認した可能性が相当程度あるものといえる。

(エ)本件警察官らの供述内容の一致について
被告は、本件警察官らが、2名とも見間違いするとは考え難い旨を主張する。
しかしながら、本件警察官らの前記供述部分には、本件警察官らが、本件違反行為を現認したとする際、お互いに「ベルトしていないね」というような会話をした旨の供述部分もあることからすると、本件警察官らが、互いの影響を一切受けずに、独自に原告のシートベルトの装着の有無を観察し得たかどうかは定かではなく、その一方が、先に原告のシートベルト装着義務違反を速断し、他方がそれに迎合し、あるいはその影響を受けて先入観をもって原告を観察した可能性も否定できない。
また、前記 で指摘した各事情に照らすと、本件警察官らが2名とも見間違いをした可能性自体も排除することはできない。

⑵ 本件車両が本件交差点を左折する時点での現認供述について
ア 証拠中には、A警部補において、①本件車両が本件交差点を左折する中で、本件パトカーとの距離が約2.8mまで近づき、本件違反行為を近距離で現認し、②本件車両の左折中、原告の事後装着を現認した旨のA警部補の供述部分(甲15、証人A警部補)もある。

イ ①の点(近距離での現認)について
しかしながら、前記⑴イ(ア)~(ウ) で指摘した事情に加え、前記⑴アのとおり、本件警察官らは、本件車両が本件交差点に進入する手前の時点で、原告がシートベルトを装着していないと判断したというのであるから、そのように思い込み、あるいは本件車両を停止させ検挙することに気をとられ、改めてシートベルトの装着の有無を意識的に観察していなかった可能性もあることに照らすと、本件パトカーと本件車両との距離が約2.8mまで近づいたとしても、A警部補がその時点でシートベルト装着の有無を誤認した可能性があることは、否定し難い。
したがって、A警部補の供述部分①は、採用することができない。

ウ ②の点(事後装着の現認)について
また、認定事実により指摘することができる次の事情によれば、A警部補の供述部分②についても、採用することができない。

(ア)本件当日に作成した原告の供述調書等の記載との関係
仮に、A警部補が、原告の事後装着を現認したとすれば、当該事実は見間違えの可能性を排斥する重要な事実であったはずでありA警部補自身も、シートベルトの装着義務違反者が慌ててシートベルトを装着する状況を現認しておきながら、その事実を当該違反者に説明・追及しないということはあり得ないとする〔乙15〕。)、捜査を行う警察官としては、これを記録化するのが通常である。
しかしながら、本件当日作成された原告の供述調書には、事後装着の有無に関する問答等の記載はなく(認定事実⑴オ)、原告が本件違反行為を否認していることを踏まえて実施された実況見分に係る捜査報告書にも、原告の事後装着を現認した時点における本件車両と本件パトカーの位置関係等の記載はない(認定事実⑴カ)のである。
このような事情は、A警部補の供述部分②の信用性を著しく減殺するものといわざるを得ない。

(イ)審査請求時における本件警察官らの説明との関係
本件警察官らは、令和3年4月、福岡県警の職員から、原告の審査請求を受けて、本件車両を停車させた時に原告がシートベルトを装着していたのかどうかの確認を求められた際にもA警部補において原告の事後装着を現認した旨を説明した状況はうかがえない(認定事実⑵ア。なお、B巡査は、直接には現認していなかったとしても、本件当日、A警部補が原告に対し事後装着を現認した事実を説明し、追及していたとすれば、当然に認識していたはずである。)。
かえって、福岡県公安委員会の令和3年6月2日付け弁明書には、事後装着の事実が記載されていないばかりか、本件車両が左折を完了するまで原告がシートベルトを装着せずに運転していた旨の記載がある(認定事実⑵イ)。このような記載は、原告が本件交差点で左折中に事後装着をしたことと明らかに矛盾するものである。
そして、A警部補は、上記弁明書に対する原告の反論を受けて、改めて福岡県警の職員から聴取された時点に至って、ようやく事後装着について言及したのである(認定事実⑵ウ)。
以上の事実に照らすと、A警部補は、本件当日から、本件車両が左折を完了するまで原告がシートベルトを装着せずに運転していたとの認識を有していたことがうかがわれるのであり、B巡査が原告に声をかけた際の原告のシートベル装着状態(前記⑴イ )との整合性を保つために事後装着に言及し始めた可能性を否定し難いというべきである(したがって、A警部補が令和3年4月時点で事後装着を現認した事実を説明したはずであるとの供述部分〔証人A警部補〕は、採用し難い。)。

(ウ)証人尋問における供述内容との関係
また福岡県公安委員会の令和3年8月23日付け弁明書には、本件パトカーが左折進行中、A警部補が、原告の動向を注視し、事後着装を現認した旨の記載があるが(認定事実⑵エ)、A警部補は、本件訴訟の証人尋問期日において、車両を進行させながらよそを見るのは危険であるなどとして、事後着装を現認した時に本件パトカーは停止していたと供述した(証人A警部補)。
このような事実に照らしてみても、A警部補の供述部分②は、事後着装を現認した際の状況に関し、供述の変遷があるといわざるを得ない

(エ)供述内容の不自然さ

A警部補の供述部分②に係る原告による事後装着の態様は、本件車両を左折させながら、シートベルトを装着したというものである。
しかしながら、原告が本件交差点を左折するに当たっては、左折中、少なくとも片手でハンドルを把持しておく必要があり、原告が、もう片方の手のみで、シートベルトの着装を行うことは、容易であるとはいい難い(甲16、原告本人)。
そうすると、A警部補の供述部分②は、その内容自体にも不自然さがあるというほかない。

福岡地裁 令和6年5月22日

これはあれですね。
取締りした警察官の供述に矛盾があるし、事後着装を現認した状況についても変遷があるし、その他シートベルトの色が原告の服と同系色だとか、曇り空だったとか全て総合的にみると、

管理人
管理人
警察官が誤認した可能性が高いっす…
しかも辻褄合わせようとして事後着装を後付けしている段階で、矛盾まで作ってしまって…否認事件なんだから事後着装は大事なポイントなのに、調書に記載がないのもおかしいよね。

ということで、この事実認定の下では「違反はなかった」と判断した福岡地裁は妥当かと。

怪しい取締り

要はこれ、警察官は「シートベルト未装着」と現認したけど、停止させたら装着していたわけよね。
この時点で「見間違えた」可能性を考慮して切符を切らずに終わらせておけば済む話。

 

しかし諦めきれない原告が審査請求(不服申立)をした段階で「事後着装を現認した」などと付け加え、しまいには事後着装を現認したとする状況に矛盾まで作ってしまった。

仮に、A警部補が、原告の事後装着を現認したとすれば、当該事実は見間違えの可能性を排斥する重要な事実であったはずであり(A警部補自身も、シートベルトの装着義務違反者が慌ててシートベルトを装着する状況を現認しておきながら、その事実を当該違反者に説明・追及しないということはあり得ないとする〔乙15〕。)、捜査を行う警察官としては、これを記録化するのが通常である。
しかしながら、本件当日作成された原告の供述調書には、事後装着の有無に関する問答等の記載はなく(認定事実⑴オ)、原告が本件違反行為を否認していることを踏まえて実施された実況見分に係る捜査報告書にも、原告の事後装着を現認した時点における本件車両と本件パトカーの位置関係等の記載はない(認定事実⑴カ)のである。

かえって、福岡県公安委員会の令和3年6月2日付け弁明書には、事後装着の事実が記載されていないばかりか、本件車両が左折を完了するまで原告がシートベルトを装着せずに運転していた旨の記載がある(認定事実⑵イ)。このような記載は、原告が本件交差点で左折中に事後装着をしたことと明らかに矛盾するものである。
そして、A警部補は、上記弁明書に対する原告の反論を受けて、改めて福岡県警の職員から聴取された時点に至って、ようやく事後装着について言及したのである(認定事実⑵ウ)。

以上の事実に照らすと、A警部補は、本件当日から、本件車両が左折を完了するまで原告がシートベルトを装着せずに運転していたとの認識を有していたことがうかがわれるのであり、B巡査が原告に声をかけた際の原告のシートベル装着状態(前記⑴イ )との整合性を保つために事後装着に言及し始めた可能性を否定し難いというべきである

行政処分の妥当性が争点なので、行政処分の妥当性(違反事実の有無)は行政側が立証責任を負います。
しかし明らかに後付けの言い分を作成している上に、後付けの言い分に矛盾があるというグダグダな状況。

行政ってなかなか不思議なのは、こういう後付けの言い分に矛盾があることに気が付かずに押し通そうとすること。
こんなもん、見間違えた可能性から切符無しにしておけば済む話なのに、言い訳に言い訳を重ねると矛盾が生じるわけ。

 

原告からすれば、シートベルトをつけていた以上はつけていたことを立証しろと言われても出来ませんが(映像証拠があるなら争いにはならない)、行政側の主張に対し矛盾を指摘するしかないのよね。

 

下手な言い訳を重ねると、いつか矛盾が出てしまう典型例なのかもしれません。
警察官の現認は強く認められていますが、ここまでグダグダだと笑えない。

 

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