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時速118キロ直進白バイと右折車の事故、判決は8月29日に。

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以前何度か取り上げた「時速118キロ直進白バイ」と「右折車」の事故。
右折車ドライバーは一度不起訴になったあと、検察審査会で不起訴不当の議決を受け、起訴されてます(過失運転致死)。

 

結審したようで、判決公判は8月29日に指定されました。
この事件、ネット上の論点がおかしくなっているように思う。
過失運転致死罪なので「どっちが悪いか?」ではなく、被告人(右折車)に過失があるか?が争点です。

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右折車は何キロまで予見する注意義務があるのか?

この事故は時速118キロ(88キロまで減速)で直進した白バイ(緊急走行ではない)と、おかしな右折方法をした被告人車の事故。
おかしな右折方法(右折先道路では逆走状態)は違反ですが、これ自体が事故と因果関係があるわけではなく、被告人が対向直進車に対し注意を払っていたか、そして高速度で直進する白バイを予見する注意義務があるのか?が争点です。

このあと検察は「被告の『見えた』という表現は信用できず、安全確認を果たしたとは言えない。過失はある。サイレンを鳴らさないまま、118キロ出していたのは、違反車両に白バイの存在を察知させないためとも言えて、違法性なく、責められることもない。被告は誠実に事故に向き合わず、刑事責任は重い」として、禁錮1年2か月を求刑。

これに対し弁護人は「結果は重大だが、右折車が進行を阻まない義務、制限速度を超えている車を予見することも争いはないが、限界はあって、今回の速度は、通常考えられる速度ではない。今回、サイレンは点いてないし、赤色灯もドラレコでははっきりと確認できない。右折対応には問題あったが、あくまでも交通法規違反にとどまり、道交法違反の刑事罰とは無関係。過失は認められない」として、あらためて無罪を主張しました。

Yahoo!ニュース
Yahoo!ニュースは、新聞・通信社が配信するニュースのほか、映像、雑誌や個人の書き手が執筆する記事など多種多様なニュースを掲載しています。

右直関係は直進車が優先(道路交通法37条)ですが、信頼の原則により、右折車は著しい高速度で直進する車両を予見する注意義務はない。
概ね制限速度から20キロオーバーくらいまでが直進優先の範囲とされますが、おかしな右折方法をした被告人がきちんと対向直進車を確認していたのか?についても疑問が残ります。

右折車は、対向直進車の速度超過を「どれくらいまで」予見する注意義務があるのか?
こちらの続きになります。道路交通法37条では右折車は直進車の進行妨害禁止になっています。その一方、信頼の原則という概念があります。行為者は、他者が適切な行動に出ることを信頼して行動してよく、他者の予想外の不適切な行動によって生じた法益侵害に...

報道を見る限り、検察は「被告人の安全確認不足」を主張し、弁護側は「信頼の原則」を主張しているように思われます。

谷口被告への被告人質問

<弁護人とのやりとり>

直進の車両を2~3回、確認する中で、遠くに自転車やバイクのような“影”が見えただけ
・あの距離なら曲がれると思って、右折した

・(白バイと認識は?)ありません
・(赤色灯は?)見えません
・(サイレンは?)聞こえません

・事故直後、気が動転していて、警察に「白バイに気づいてなかった」と話した
・帰宅して落ち着いたら、遠くに見えていたことを思い出したので、証言を変えた
・検察からは「見えなかったんだろ?見えた、見えないはどうでもいい」などとまくし立てられたが「最初は見えた」と話した
・事故直後の状況は、はっきりとは覚えていない

・あの日は仕事で、苫小牧市から雨竜町に向かっていた
・週に1回ほど通る道、時速60キロほどで走行し、右折時は40キロほど
・右折先の乗用車が停止線から出ていて、曲がり切れなさそうだと思い、やむなく内回りしたが、不適切だった

<検察とのやりとり>

・(影を確認してから、どれくらい?)4~5秒あった
・(影を見てから、ずっと影を見続けた?)ずっと見ていたわけではない
・(影が見えた場所は?)橋があって、カーブがあったところの先
・(対向車の速度は?)わからない
・(対向車との距離は?)わからない

・(実況見分で、白バイが2回見えた旨の説明した?)覚えていない
(先に曲がろうとしたのは、なぜ?)影が見えて、あの距離なら曲がれるだろうと思った

<裁判長とのやりとり>

・(影のようなものは、どのように確認?)パッと見ではなく、正面を見て
・(ハンドル切る直前の確認は?)記憶がないです…

Yahoo!ニュース
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被告人が注意を払って右折したかについては疑問が残りますが、そうであったとしても時速118キロという高速度で直進する2輪車を予見して右折する注意義務があるのかも疑問。
判決は8月29日だそうですが、報道を見る限りでは無罪に傾く予感がします。

時速118キロ白バイの問題

被告人の過失とは別ですが、そもそもこれ。

北海道警察が事故防止に向けて、白バイに「最高速度は100キロ」とするよう通達していたことも判明。

検察は、白バイの速度118キロについて、警ら中であり、法律上は問題ないとしているものの、通達を20キロも超える速度で走行するほどの緊急性が白バイにあったのかなどは、説明していません。

Yahoo!ニュース
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警ら中であっても白バイが時速118キロで走行していい法的な根拠はありませんが、やっと検察の主張根拠が見えてきました。

サイレンを鳴らさないまま、118キロ出していたのは、違反車両に白バイの存在を察知させないためとも言えて、違法性なく、責められることもない。

Yahoo!ニュース
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これはアレですかね。
速度超過車の追尾をしていたから時速118キロ&サイレン吹鳴無しが合法という主張をしていたのでしょうか?
確かに速度超過車の取締り目的で追尾していたなら、赤色灯&時速118キロは問題ないことになりますが、速度超過車を追尾していたなら速度超過車は被告人とすれ違っているはずで、若干不自然なような…

 

そもそも、白バイの速度が合法だったか?については被告人の過失とは関係ない話になりますが、もっと不思議なのは「北海道道路交通法施行細則」の意味を取り違える人がいること。

第3条の2
法第4条第2項の規定により交通規制の対象から除く車両は、道路標識等により表示するもののほか、次の各号に掲げるとおりとする。
最高速度の規制の対象から除く車両
専ら交通の取締りに従事する自動車(高速自動車国道の本線車道にあっては100キロメートル毎時、その他の道路にあっては60キロメートル毎時を超える最高速度の規制を除く。)

細則3条の2は、「専ら交通の取締りに従事する自動車」は「標識最高速度」に従う義務から除外し、標識最高速度が指定された道路でも法定最高速度まで出していいという規定です。

「専ら…取締車」は標識最高速度に従う義務がないとしただけ。

 

・標識最高速度に従う義務がない

・「専ら…取締車」にとっては標識最高速度がない道路になる

・法定最高速度(一般道60キロ)に従う義務

 

要は「専ら…取締車」は、標識最高速度が指定された道路でもサイレンや赤色灯無しで法定最高速度まで出してよいとするだけの規定なのに、なぜおかしな解釈をする人が出てくるのか不思議に思ってました。

「お前は何様か!」…白バイが速度超過していい根拠はありません…
こちらについて。下記記事について「検察の主張は誤り」と書きましたが、これを書くと抗議してくる方が。検察は、白バイの速度118キロについて、警ら中であり、法律上は問題ないとしているものの、通達を20キロも超える速度で走行するほどの緊急性が白バ...

他県にも同様の規定がありますが、解釈はこう。

 

○石川県警

2 最高速度の規制対象から除く車両

警察用車両の最高速度については、道路交通法(昭和35年法律第105号。以下「法」という。)では、専ら交通の取締りに従事する自動車(以下「交通取締車」という。)であっても、最高速度の違反の車両等を取締中の緊急自動車を除いては、最高速度の規定(法第22条)の適用を除外する規定がない。したがって、交通取締車であっても、公安委員会の最高速度の規制(以下「指定最高速度」という。)に従わなければならないので、これらの車両をあらかじめ指定最高速度の対象から除外し、道路交通法施行令(昭和35年政令第270号。以下「令」という。)第11条に定める60キロメートル毎時を最高速度とするただし、指定最高速度が60キロメートル毎時を超えているときは、指定最高速度を交通取締車にも適用するものである。
なお、交通取締車が指定最高速度の規制の対象から除かれたのは、指定最高速度の規制区間内において、速度違反の車両等を追尾する場合の適応性を担保するためのものである。

 

https://www2.police.pref.ishikawa.lg.jp/information/upload/kisei20150731-3_1.pdf

○愛知県警

2 交通規制の対象から除外する車両の指定(第1条の2関係)

交通規制の対象から除外する車両は、第1条の2に統合し、交通規制の種別ごとに除外する車両は「号」で区分し、それぞれの解釈は次のとおりであるが、愛知県道路交通法施行細則(以下「細則」という。)にいう交通規制の対象の除外は、道路交通法(以下「法」という。)第4条第1項の規定により公安委員会が道路標識又は道路標示(以下「道路標識等」という。)によつて行う交通規制(細則第1条の3に規定する警察署長の交通規制を含む。)について、その適用を除外するものであり、法において直接に禁止又は制限している法定規制まで効果が及ぶものではない。また、「当該用務のため使用しているものに限る」とは、それぞれの業務目的に応じて現に使用中のものをいう。

ウ 最高速度規制から除外する車両

第1項第4号の「令第13条第1項第1号の7に規定する警察用自動車のうち、交通の取締りのため使用するもの(指定されている最高速度が、高速自動車国道の本線車道にあっては令第27条、その他の道路にあっては令第11条に定める速度以下の場合に限る。)」とは、パトカー、白バイ等や緊急自動車として運転している以外で、交通取締りを目的としての警ら活動などに従事している場合が該当する。ただし、この場合においても法の定める最高速度を超えることはできない

 

愛知県道路交通法施行細則の制定

今回の報道によると、検察の主張根拠は「違反車の追尾中だから118キロは合法」としているようですが、解釈はともかくとして本当に違反車がいたのかは疑問が残ります。
ただし白バイが合法か違法かについては、被告人の注意義務とは無関係です。
「どっちが悪いか?」を決めるのではなく、「被告人に注意義務違反かあり、致死と因果関係があるか?」が過失運転致死罪の論点ですから。
ここを混同している人が多いのも気になる。

 

さて、判決はどうなるのでしょうか?
個人的にはこの裁判とは別に、北海道警の責任についても考えた方がいい気がする。
仮に速度超過車の取締中だったとしても、一般道で時速118キロを出すのはやめるように指導する職務上の義務があると思うのですが。
道警は時速100キロまでと通達を出していたともありますが、仮にそうだとして現に時速118キロで走行していたわけだし。

 

ついでにもう1つ。

事故の後「夫は警官である前に一人の人間なのに『金目当てで、検察審査会に申し立てた』などの心ないバッシングを受け、世間の注目を必要以上に浴びた。

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刑事事件の内容と民事責任は関係ないことは何度も書いてますが、有罪/無罪と賠償責任は関係ないのよね。
無知で叩く人たちについてもいかがなものかと。
有罪になったら賠償額が増えるとでも思っているのだろうか?

コメント

  1. カモがネギしょってる より:

    現地の方によれば事故現場は地形的に見通しが悪いそうで、緊急走行だとしても安全を確保できる速度ではないそうです。あの状況でも事故の過失が問われるなら、一生右折できないみたいです。あと裁判と関係ないですが、パトロール中にあの速度が必要だった理由を県警は説明する必要があると思います。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      個人的には予見不可能と考えますが、検察官は交差道路から右折しようとした車両の証言を過大評価した気がします。
      なお、検察官の主張はパトロール中ではなく違反車両の追尾中であるかのような話をしているように思いますが、ちょっと不自然です。

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