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マスコミがいう「優先道路」と、道路交通法の「優先道路」は違うのかもしれない。

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まあまあ不思議な報道ですが、

22日午前10時50分頃、仙台市太白区柳生6丁目の市道交差点で、乗用車同士が衝突し、このうち1台が横転しました。警察と消防によりますと、この事故で、横転した乗用車に乗っていた20代の女性と未就学の女の子の合わせて2人がけがをして病院に運ばれました。どちらも会話は可能だということです。もう一方の乗用車を運転していた40代の女性にけがはありませんでした。

現場は住宅街の中にある信号機のない交差点です。警察によりますと当時、横転した方の乗用車が優先道路を走行していて、もう一方の乗用車が走る道路に一時停止の標識があったということです。警察が当時の状況を調べています。

「横転した車が優先道路、もう一方の車側に一時停止標識」乗用車同士が衝突し1台横転 20代女性と未就学の女の子2人がけが 仙台・太白区 | TBS NEWS DIG (1ページ)
22日午前、仙台市太白区の市道交差点で、乗用車同士が衝突し2人がけがをしました。千葉陽太記者:「柳生6丁目の交通事故の現場です。車同士の交通事故があり、そうちの1台は横転しています。横転した車両の前には… (1ページ)

優先道路とは交差点内にセンターラインがある道路ですが(36条2項参照)、何回みても交差点内にセンターラインはない。

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結構勘違いしやすいポイントですが「優先権がある道路」と「優先道路」は別。
優先道路は交差点内にセンターラインか車両通行帯がある道路のこと。

道路標示(中央線または車両通行帯境界線)による優先道路は、交差点の中まで中央線等が表示されている道路のことをいい

東京地方検察庁交通部研究会、「最新道路交通法事典」、東京法令出版、1974

※優先道路の定義は昭和46年改正以降は変更なし

 

マスコミの報道なんて警察発表そのまんまでしょうけど、マスコミが語る「優先道路」って道路交通法の「優先道路」と一致しないことがあるから要注意。
この場合、非一時停止側に「優先権」はありますが、優先道路がない交差点&左右の見通しが悪いので徐行義務がある。

(徐行すべき場所)
第四十二条
車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。

ところで、報道をみてもどっちが悪いかはさっぱりわからない事故です。
一時停止側には「交差道路の進行妨害禁止」がありますが、判例では一時停止後に非一時停止側が著しい高速度で突っ込んできたときに、非一時停止側の責任を重視したものもある。

・優先道路は無し
・東西道路に一時停止規制
・交差点の全方向にブロック塀があり見通しは悪い
・南北道路の制限速度は40キロ
・道路幅は同程度

被告人車(青)は一時停止規制に従い一時停止した後、左方道路の見通しが悪いため徐行前進。
左方道路から進行してくる車との距離が約37mだったことから進行したところ、北進する車の速度が速く衝突した事故です。

被告人車は同乗者に怪我をさせたとのことで業務上過失傷害罪に問われています。
最高裁は以下の理由から信頼の原則を適用。

 ところで、右交差点は、交通整理の行なわれていない、左右の見とおしの悪い交差点であり、東西道路と南北道路の幅員はほほ等しく、かつ、南北道路は優先道路ではないから、A車のように南北道路を北進して交差点に進入しようとする車両は、東西道路に一時停止の標識があつたとしても、本件当時施行の道路交通法42条に従い、交差点において徐行しなければならないのである(最高裁昭和43年7月16日第三小法廷判決・刑集22巻7号813頁参照。)。
しかるに、原判決の確定した事実によれば、Aは、制限速度を超えた時速約50キロメートルで進行し、交差点手前約20. 5メートルに至り、初めて被告人車を発見し、急制動の措置をとつたが間にあわず、交差点内で被告人車に衝突したというものであつて、本件事故は、主としてAの法規違反による重大な過失によつて生じたものというべきであり、このことは、原判決も認めているところである。
しかし、進んで、原判決が説示しているように、被告人にも過失があつたかどうかを検討してみると、本件のように交通整理の行なわれていない、見とおしの悪い交差点で、交差する双方の道路の幅員がほぼ等しいような場合において、一時停止の標識に従つて停止線上で一時停止した車両が発進進行しようとする際には、自動車運転者としては、特別な事情がないかぎり、これと交差する道路から交差点に進入しようとする他の車両が交通法規を守り、交差点で徐行することを信頼して運転すれば足りるのであつて、本件A車のように、あえて交通法規に違反し、高速度で交差点に進入しようとする車両のありうることまでも予想してこれと交差する道路の交通の安全を確認し、もつて事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務はないものと解するのが相当である。

最高裁判所第三小法廷  昭和48年12月25日

報道をみてもどっちがどうかはさっぱりわかりませんが、相手がどうなのかは結果論に過ぎないので、一時停止側は停止して確認する、非一時停止側は徐行するというそれぞれに課された義務を果たすしかないのよね。
民事の過失割合にしてもちょっとの違いが大きな差になるし。

 

ちなみにちょっと前に書いた記事にご意見を頂いたのですが、徐行義務と一時停止義務は道路交通法上の刑罰は同じで軽重はありません。

第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
五 第三十条(追越しを禁止する場所)、第三十三条(踏切の通過)第一項若しくは第二項、第三十八条(横断歩道等における歩行者等の優先)、第四十二条(徐行すべき場所)又は第四十三条(指定場所における一時停止)の規定の違反となるような行為をした者
3 過失により第一項第二号、第五号(第四十三条後段に係る部分を除く。)、第十四号、第十六号若しくは第十九号又は前項第二号の罪を犯した者は、十万円以下の罰金に処する

徐行義務と一時停止義務は刑罰が同じ。
故意犯は三月以下の懲役又は五万円以下の罰金、過失犯は十万円以下の罰金ですが、43条後段(交差道路の進行妨害禁止)は過失犯の処罰規定はありません。

 

なんで交差道路の進行妨害禁止義務に過失犯の処罰規定がないかというと、過失により交差道路の進行妨害をして事故を起こしたときは「過失運転致死傷罪」で処理すれば足りるという考え方らしい。
徐行義務も一時停止義務も、道路交通法上は同等なのよね。

 

まあ、一時停止側は一時停止し、徐行側はきちんと徐行していれば事故に至る可能性は皆無に思えますが…

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