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転回2輪車と後続2輪車が衝突。過失割合は?

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転回による事故は時々報道がありますが、2輪車が転回して後続2輪車と衝突した事故があります。

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2輪車同士が転回により衝突

判例は東京地裁 平成元年12月22日。
事故の態様です。

指定最高速度が40キロに規制された道路を、時速60キロで進行。
2輪車同士の車間距離は約10m。

先行2輪車が左に寄りながら減速したのをみて、後続2輪車は追い越ししようとしたところ、

先行2輪車が転回してきたため衝突。
転回2輪車が重篤なケガをしたことについて、後続2輪車に損害賠償請求したもの。

被告は、被告車を運転して本件道路を観音崎レストハウス方面から鴨居方面に向けて、A車に追従して、同車の約10メートル後方を約60キロメートル毎時の速度で走行していたところ、A車が一旦減速して道路の左側に寄つた後、急に右に転回を開始したので、急制動したが間に合わず、これと衝突した。

Aは、A車を運転して本件道路を被告車と同じ方向に向けて約60キロメートル毎時の速度で走行し、一旦減速して道路の左側に寄つた後、後方の被告車を確認したが、同車との距離が十分あるものと判断し、そのまま右に転回を開始したところ、前記のとおりこれと衝突した。

右事実によれば、被告は、A車に追従して走行するに当たり、安全な速度で、同車との車間距離を十分に保ち、かつ、同車の動静に注意して走行すべき注意義務があるのに、これを怠り、同車の約10メートル後方を約60キロメートル毎時の速度(同速度は、前記車間距離に照らし、速すぎるものといわなければならない。)で同車の動静に十分注意しないまま走行した過失により本件事故を惹起したものであり、民法709条に基づき、本件事故によりAが被つた損害を賠償する責任があるものといわなければならない。

(中略)

ところで、前記事実関係によれば、Aには、右に転回するに際して、後方から被告車が進行してくるのを確認しているのであるから、同車の動静に注意し、同車と衝突しないように転回すべき注意義務があるのに、これを怠り、同車との距離が十分ではないのにこれが十分にあるものと軽信して転回を開始した過失があるものといわなければならず、原告及びAの過失の程度にかんがみ、過失相殺としてAの前記損害額から65パーセントを減額するのが相当である。

東京地裁 平成元年12月22日

転回2輪車が65%、後続2輪車が35%。
こういう事故はどっちもどっちな面があり、後方確認不十分なまま転回しちゃいけないし、時速60キロで車間距離が10mもかなりヤバイ。
ところで。

直進車は絶対優先なのか?

転回車と直進車の関係だと直進車が優先しますが(25条の2第1項)、直進車が大幅に速度超過していたときにも優先なのか?という問題がある。
刑事責任では、転回車はおおむね「30キロ超過程度(ただし状況次第なので具体的数値は状況による)」を予見して注意する義務があるとしている。

右のような注意義務が転回車の運転者に課せられるとしても、これがいかなる場合においても対向車が転回車に優先する趣旨を含むものでないことはもとより当然である。すなわち、対向車が制限速度をはるかに超える異常な高速度で進行するような場合にまで、転回車の運転者をしてそうした車両の存在を予想してその進行を妨げてはならないとすると、転回行為が許される場合が極限され、交通渋滞を招く反面、暴走行為を許容する結果にもなり、道路交通法の目的である安全円滑な道路交通の維持も困難となるからである。したがつて、通常予測すべき程度の速度を超える速度は異常な高速度というべきであるから、転回車の運転者としては、転回を開始するに当たつて、特段の事情がない限り、このような高速度で接近してくる対向車のあることまで予想して、転回の際の安全を確認すべき注意義務はないというべきである。

そこで、転回車の運転者が、転回開始に当たつて、「通常予測すべき程度の速度」とはどの範囲のものとなるのかについて検討するに、まず、予測すべき速度の上限を、一律に時速何キロメートルと確定することができないことは、交通頻繁な幹線道路と住宅街の生活道路とを比べてみるまでもなく明らかであり、結局、具体的事案ごとに、道路状況や交通状況、また、最高指定速度等の交通規制等諸般の事情を考慮して決するほかはないというべきである。

そこで、これを本件について見ると、前認定のとおり、本件道路は、店舗、マンション等の連なる商業地域にあり、最高速度が時速50キロメートルと制限されており、本件事故現場付近は、路肩にパーキングゾーンがあり、本件事故当時には衝突地点の歩道寄り車線に数台の車両が駐停車しており、実質的に走行に利用しうる車線は、片側二車線のうちの中央寄りの一車線にすぎなかつたこと、そして、本件事故現場から約100メートル池袋駅寄り付近には都電荒川線の線路が道路を斜めに横断していて、そこには信号機が設置され、また、反対方向、すなわち、本件事故現場から約100メートル護国寺寄り付近から右にカーブし、さらにその先方で左にカーブしている状況であつたこと、また、司法警察員作成の速度測定に関する報告書及び弁護士高山俊吉作成の本件事故現場における走行車両の速度分布に関する調査報告書によれば、本件道路の交通状況は、本件事故現場付近を走行する車両の平均速度はおよそ時速55キロメートル程度であつて、制限速度を遵守して走行している車両が多く、時速80キロメートル未満の速度で走行している車両が全体の95パーセント以上を占めていることが認められ、時速80キロメートル以上の高速度で走行する車両は極めて稀であるということができ、そして、右の交通状況は、本件事故から3年余り経過した時点で実際に計測されたものであるけれども、本件事故当時における本件道路の交通状況を推認させるものと考えてよいと思われること、さらに、道路交通法が、時速30キロメートル未満の速度超過を反則行為として反則金の納付をもつて刑事罰の対象から除外していることをも勘案すると、本件道路において、転回車の運転者が予測すべき対向車の速度の範囲は、その上限を最大限に見ても、制限速度を時速30キロメートル超過する時速80キロメートル程度と考えることが合理的でであると思われる。したがつて、本件道路においては、転回者の運転者としては、転回を開始するに当たつて、特段の事情がない限り、時速80キロメートルを超える異常な高速度のまま接近してくる対向車のあることまで予想して、転回の際の安全を確認すべき注意義務はないことになる。

東京地裁 平成6年1月31日

あくまでも非転回車を「優先」としているわけではなく、転回車に「正常な交通を妨害するおそれがあるときは転回禁止」としているので、著しい速度超過車に優先権を与えたものではない。

 

どの判例もそうだけど、一方的過失のケースもあれぱ両者に重大な過失がある場合もあるけど、それぞれやることをやるしかないのよね。

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