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控訴審判決の読み方と、横断歩行者妨害の話。

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民事(行政)の控訴審判決を、一審判決を読まずに解説する人がいるのはなかなか凄い。

民事(行政)の控訴審判決って、一審判決を引用して補正する形になってますが、控訴審の判決文においては

当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり補正するほか,原判決「事実及び理由」中の第3の1ないし4記載のとおりであるから,これを引用する

「原判決のとおり」として判決文上は原判決の中身を引用するわけじゃないのよね。
要は原判決と控訴審判決を統合しないとわからない仕組み
控訴審判決からあれこれ推測して全く違うストーリーにするのが凄い。

 

ところで、この事件の中身は以前も挙げてますが、争点はどこにあるのでしょうか?

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横断歩行者妨害事故の中身

事故の概要です。
なお、一時停止規制は横道路にあるのでイラストに誤りがある点をご了承ください。

(ウ) 本件交差点から通称γ方面(原告進行方向の前方)に至る前方道路は,車道の幅員5.5mで,中央線が設けられておらず,原告進行方向の逆方向への通行が禁止されている道路であり,インターロッキングで舗装されているほか,前方道路の両側には,幅員2.7mの歩道が設けられている。また,前方道路は終日駐車禁止に指定されている。

イ 原告は,平成25年11月1日午前8時過ぎ頃,通勤のため,本件車両を運転し,後方道路を原告進行方向へ進行していたところ,前方道路の左側部分に本件駐車車両が駐車されていることを発見したことから,本件交差点の手前付近である本件停止位置において一時停止し,本件交差点及び本件横断歩道の左右方向を目視した。これにより,原告は,本件交差点の左右から本件交差点に進入しようとする車両や,本件横断歩道を通行しようとする歩行者はいないものと判断した。
原告は,本件交差点への進入を開始するに当たり,本件駐車車両の右側を通行するため,本件停止位置から本件車両のハンドルを右に切りながら発進し,本件見取図②の地点でハンドルを左に戻しつつ,本件見取図③の位置へと本件交差点を右寄りに進行した。本件交差点の通過中,原告は,主に前方の本件駐車車両の位置に注意しつつ,本件横断歩道の両側の歩道付近を見て,数名程度の歩行者はいたものの,本件横断歩道上を通行し,又は本件横断歩道上を通行しようとしている者は認識できなかったことから,本件横断歩道によって原告の進路の前方を横断し,又は横断しようとする歩行者はいないものと判断して,本件横断歩道の手前付近で一時停止することなく,本件横断歩道に進入した。
なお,原告が本件交差点を通過中,原告と本件横断歩道及びその両端の歩道との間の見通しを妨げるものはなかった。

原告は,平成25年11月1日午前8時7分頃,本件横断歩道に進入し,本件見取図④の位置へと進行したところ,本件横断歩道の左方から右方へと前方道路を横断していた本件被害者が,本件車両の左前部バンパーから約3.0m後方の位置の左後部に接触して転倒した。
本件車両と本件被害者が接触した本件接触地点(本件見取図 の地点)は,本件横断歩道の原告進行方向左端から右方に約3.2m,本件横断歩道の原告進行方向前端から後方に約1.0mの地点であった。また,本件事故発生時の本件車両の進行速度は約10kmであった。

かなり大雑把なイメージです。
なお一時停止規制は横道路にありますが、原告は横断歩道先の駐車車両を気にして交差点手前で一時停止し横断歩行者を確認し、「交差点通過時にも」横断歩行者を確認したとしている。

 

これについて、被害者(8歳)は脛腓骨骨折で加療約6ヶ月の重症を負ってますが、過失運転致傷は不起訴。
行政訴訟を提起した理由は大雑把に二つ。

①38条1項の義務を果たしていた。
②被害者にも過失(不注意)があることから、付加点数の「専ら運転者の不注意」が成立しない。

とりあえず①の件。
要は原告としては、きちんと横断歩行者を確認していたと主張する。
しかし、一審は一蹴。

前記1(3)ア及びイの認定事実のとおり,本件被害者は,C巡査部長に対し,本件事故当時の状況について,左,右,左の順で安全を確認したものの,少し前方を兄が歩いているのが見えたため,兄に追いつこうとして,少し走ってしまった旨を供述しているほか,本件聴取書にも,知り合いの上級生がいたため,小走りで横断歩道を通行しようとした旨の記載があるところ,これらの内容に特に不合理な点や,矛盾する点は見当たらないことからすると,本件被害者は,本件横断歩道を通行する際,前方を歩行していた兄を発見したことから,少し走った状態で本件横断歩道を通行していたものと認められる。
他方で,前記1(2)ウの認定事実のとおり,本件車両と本件被害者が接触した本件接触地点は,本件横断歩道の原告進行方向左端から右方に約3.2m,本件横断歩道の原告進行方向前端から後方に約1.0mの地点であり,かつ,本件被害者が接触したのは,本件車両の左前部バンパーから約3.0m後方の左後部であるから,本件横断歩道の幅員は3.7mであることを考慮すると,本件事故は,本件車両の前端が本件横断歩道への進入を開始してから約5.7m進行した地点で発生したものといえる。さらに,本件事故当時の本件車両の走行速度は時速約10km(秒速約2.78m)であるから,本件車両が本件横断歩道への進入を開始したのは,本件事故が発生する約2秒ないし3秒前であったものと考えられる。
そして,本件被害者が小走りで本件横断歩道を通行していたこと,本件被害者の年齢,本件接触地点が本件横断歩道の原告進行方向左端から右方に3.2mの地点であったことを考慮すれば,本件被害者は,遅くとも本件車両が本件横断歩道への進入を開始した時点(本件事故の約2秒ないし3秒前の時点)においては,本件横断歩道の通行を開始していたか,本件横断歩道の左方の歩道付近において本件横断歩道の通行を開始しようとしていたものと合理的に推認することができる。
この点に関し,原告は,本件被害者と同年齢の少年の走る速度は秒速約5mであると主張し,「各年齢群における測定項目の比較」と題する書面(甲14)を提出するが,同書面は,7歳から8歳の少年の50m走における最高速度が秒速約5m前後であることを示すものにすぎず,小走りの状態であった本件被害者が本件横断歩道上において秒速約5mで走っていたものとは考え難いし,他に上記推認を覆すに足りる証拠はない。
そうすると,原告が本件横断歩道に接近した時点において,本件車両をそのまま進行させた場合,本件横断歩道において本件被害者の進行を妨げることになることは明らかであったというべきであるから,本件被害者は,本件横断歩道によって,原告の進路の前方を横断しようとする歩行者に該当していたものというべきであり,原告としては,道交法38条1項に基づき,本件横断歩道の直前において一時停止し,本件被害者の通行を妨げないようにする義務を負っていたものと解すべきである。

ウ そして,前記1(2)イの認定事実のとおり,原告が本件交差点を通過中,原告と本件横断歩道及びその両端の歩道との間の見通しを妨げるものはなかったことからすると,原告としては,遅くとも本件横断歩道の直前に至った時点で本件横断歩道の左方を注視していれば,本件横断歩道の通行を開始し,又は通行しようとする本件被害者の存在を確認することが可能であり,本件車両を一時停止して本件被害者と接触することを避けることができたものといえる。
しかしながら,前記1(2)イの認定事実のとおり,原告は,本件交差点を進行中,本件横断歩道の両端の歩道付近を見たものの,本件被害者を発見することができず,本件車両を一時停止させずに本件横断歩道に進入した結果,本件被害者と接触して加療6か月を要する本件傷害を負わせるに至っているところ,原告が本件被害者を発見できなかった主な要因は,本件駐車車両を避けようとし,主に本件駐車車両及びその右側の道路上付近に注意を向けていたことから,本件横断歩道の両側の歩道付近の確認が不十分であったことによるものと考えられる(原告自身,その本人尋問におい
て,「私自身は,駐車車両がもちろんありましたから,通れる道幅が狭くなっていますから,余計にゆっくり行かないといけないということで,当然,前の方を注視して車を少しずつ進めていたわけです。」(原告本人調書7頁),「むしろ車が進んでいく進行方向を十分に注意しないと,別なところでぶつかってしまったりするわけですから,そこは注意せざるを得ないというふうに思っております。」(原告本人調書21頁)と供述していることに加え,前記1(2)オの認定事実のとおり,原告供述調書にも,本件駐車車両との間隔を気にしてしまい,前方を横断しようとしてしまった歩行者を見落としてしまった旨の記載がある。)
ことからすると,原告には,本件事故について,道交法38条1項後段の義務違反があり,かつ,このことにつき不注意があったものというべきである。

エ これに対し,原告は,本件停止位置及び本件交差点の通過中の各時点において,本件横断歩道を通行しようとする歩行者等の有無を確認していたとして,道交法が期待する程度に,本件横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者等の有無を確認したと主張する。
しかしながら,前記1(2)イの認定事実のとおり,原告は,本件停止位置に一時停止した上,本件歩道を通行しようとする歩行者等の有無を確認したことが認められるものの,その時点で本件横断歩道を通行しようとする歩行者等がいなかったとしても,本件横断歩道への進入を開始するまでの間に他の歩行者等が現れる可能性は当然にあり得るのであるから,本件停止位置において歩行者等の有無を確認したからといって,道交法上の義務が尽くされたと評価することはできない。また,前記ウで説示したとおり,原告の本件交差点の進行中における安全確認は,本件駐車車両及びその右側の前方道路上に注意が向けられていた結果,不十分なものであったといわざるを得ないから,原告の上記主張は採用できない。

東京地裁 平成27年9月29日

要は原告の主張としては「交差点手前で一時停止し横断歩行者を確認していた」し、

「交差点通過通過中も確認していた」というが、

実際には駐車車両に気をとられて横断歩行者の確認が不十分だったと裁判所が認定。
駐車車両を避けるために右寄りに進行し、被害者との接触地点は左端から3.2m。
両者の速度や位置関係を考えると、原告車両が横断歩道に進入した時点では被害者は横断を開始していたか、もしくは横断歩道横の歩道上で横断歩道を横断しようとしていたと推認できるとする。

 

要は駐車車両に気を取られ横断歩行者を見逃した事案なんですね。

控訴審の中身

控訴審は、原判決を不服とする控訴人(この場合は原告)が原判決を非難する仕組み。
原告は以下の主張を控訴審で追加している。

「道交法38条1項により,運転者は,横断歩道等に接近する場合に,横断歩道等の直前で停止することができるような速度で進行しなければならないところ,走行中の車両は制動後停止距離の分だけ走行するから,運転者が横断歩道に進入する際に左右を確認しなければならないのは,横断歩道に接近した時であり,具体的には,横断歩道より停止距離の分だけ手前の地点に至った時である。控訴人の運転する本件車両は時速約10kmで走行していたから,控訴人が本件横断歩道の左右を確認しなければならないのは,本件横断歩道直前(本件見取図③の地点)に至った時ではなく,それより約3m手前に至った時(以下「横断歩道接近時」という。)である。本件被害者は,小走りではなく駆け足をしていたから,本件車両の横断歩道接近時には,本件横断歩道の10数メートル手前におり,控訴人はその存在を把握することができなかったし,また,本件被害者が小走りをしていたにとどまるとしても,本件車両の横断歩道接近時には,本件被害者は衝突地点から約7.5m手前におり,モニュメントの陰にいた可能性が高く,いずれにしても,本件被害者は,本件横断歩道により進路の前方を横断しようとする歩行者等には当たらなかった。」

東京高裁は原判決を肯定し、原告の控訴審での主張に対し以下の判断。

控訴人は,運転者が横断歩道に進入する際に左右を確認しなければならないのは,横断歩道より停止距離の分だけ手前の地点に至った時であり,控訴人が本件横断歩道の左右を確認しなければならないのは,横断歩道に接近した時であるとした上で,本件被害者は,小走りではなく駆け足をしていたから,本件車両の横断歩道接近時には,本件横断歩道の10数メートル手前におり,控訴人はその存在を把握することができなかったし,また,本件被害者が小走りをしていたにとどまるとしても,本件車両の横断歩道接近時には,本件被害者は衝突地点から約7.5m手前におり,モニュメントの陰にいた可能性が高く,いずれにしても,本件被害者は,本件横断歩道により進路の前方を横断しようとする歩行者等には当たらなかった旨主張する。
しかし,横断歩道接近時に安全を確認すればその後は安全を確認しなくても免責されるとする根拠はなく前記認定(前記アないしウ)のとおり,本件被害者は,小走りで本件横断歩道を通行していたものと認められ,遅くとも本件車両が本件横断歩道への進入を開始した時点においては,本件横断歩道の通行を開始していたか,本件横断歩道の左方の歩道付近において本件横断歩道の通行を開始しようとしていたものと推認され,控訴人としては,遅くとも本件横断歩道の直前に至った時点で本件横断歩道の左方を注視していれば,本件被害者の存在を確認することが可能であり,本件車両を一時停止して本件被害者と接触することを避けることができたものであるから,控訴人の上記主張は,採用することができない。

東京高裁 平成28年2月17日

「前記認定(前記アないしウ)のとおり」とありますが、前記認定とは原判決の認定。
要はこれ、

 

原告「左右を確認しなければならないのは,横断歩道より停止距離の分だけ手前の地点に至った時であり,控訴人が本件横断歩道の左右を確認しなければならないのは,横断歩道に接近した時である」

 

というけど、原判決の認定だと「原告が本件交差点を通過中,原告と本件横断歩道及びその両端の歩道との間の見通しを妨げるものはなかった」し、速度と位置関係をみれば原告車両が横断歩道に進入するときには被害者は横断歩道を横断開始もしくは横断歩道横の歩道上にいて横断しようとしていた。
なので原告が控訴審で追加した主張がそもそも的外れだとしているのね。
「直前ではなく停止距離を考えれば3m手前で確認」と原告は主張するが、そもそも原告は3m手前(交差点通行中)でも駐車車両に気をとられて横断歩行者の確認が不十分だったわけで、3m手前だろうと確認が甘かったという原判決の判断通り。
なので控訴審で追加した主張は、そもそも意味を成していない。
原判決では「原告としては,遅くとも本件横断歩道の直前に至った時点で本件横断歩道の左方を注視していれば」とあるように、横断歩道直前まで被害者を視認できなかったわけでもない。

 

そして認定した事実によると、原告車両が横断歩道に進入した時点で被害者は「既に横断中」もしくは「横断歩道横の歩道にいた」のだから、原告が横断歩道に進入する以前に注視していれば被害者の発見は可能。
「モニュメント」については事実認定されてないし、横断歩道の見通しも良好との認定ですし。

 

動画主が説明している「直前の解釈」がどうのこうのではないのよね。
要は「原告がごちゃごちゃいっているけど、原判決の認定は原告が駐車車両に気をとられて横断歩行者を見逃したことが原因。
確認不十分を指摘しているのに、直前ではなくなんちゃら…は的外れですね」と指摘したわけ。

かなり疑問

そもそも、この控訴審判決は裁判所HPにありますが、ダウンロードしたPDFには原判決の事件番号が書いてあり、原判決についても裁判所HPにある。
なぜ確認しないまま全く違うストーリーにするのかわからない。
なお、動画主はなぜか原告を若者扱いしているけど、「原告は,昭和43年に運転免許を取得して以降」とあるように全然違うのよね…

 

民事(行政)の控訴審判決のみをみても、だいたいは意味がわからない。
原判決を引用して補正する形式なので、原判決と合わせて読まない限りわかるわけがない。

 

なお、「専ら運転者の不注意」についての解釈はこちら。

「交通事故が専ら当該違反行為をした者の不注意によって発生したものである場合」の解釈

施行令別表第2の3の表における「交通事故が専ら当該違反行為をした者の不注意によって発生したものである場合」とは,当該違反行為をした者の不注意以外に交通事故の原因となるべき事由がないとき,又は他に交通事故の原因となるべき事由がある場合において,その原因が当該交通事故の未然防止及び被害の拡大に影響を与える程度のものでないときをいうものと解するのが相当である。

(中略)

また,原告は,本件被害者がよそ見をして走っていたことも本件事故の一因であったと主張する。
前記(2)イで説示したとおり,本件被害者は,前方にいた兄に追い付くため,本件横断歩道を少し走って通行していたことが認められるほか,前記1(2)ウの認定事実のとおり,本件被害者が本件車両と接触したのは本件車両の左後部であったことからすると,本件被害者は,本件車両が目前に迫るまでその存在に気付いていなかったものといえ,本件横断歩道の通行中,本件横断歩道を横から通過しようとする本件車両の存在には注意を払っていなかったものと認められる。
しかしながら,前記(2)アで説示したとおり,道交法38条1項によれば,横断歩道に接近する車両の運転者は,横断歩道上の歩行者を優先し,その安全を確保する義務を負うものと解されるところ,上記義務は,自動車運転者にとって交通事故を防止する上で基本的なものであるということができるから,本件被害者としては,原告が上記義務を遵守することを十分に信頼することができる立場にあるものといえる。また,本件被害者は,道交法上,本件横断歩道の通行中に走ることが禁止されているわけではないし,本件横断報道を通過しようとする車両等の存在に注意を払う義務を負っているものでもないのであるから,原告としては,本件被害者が上記のような行動をとる可能性があることも踏まえた上で,本件被害者の通行を妨げないように行動する必要があったというべきである。
したがって,本件被害者が本件横断歩道の通行中に走っていたことや,本件横断歩道を通過しようとする本件車両の存在に注意を払っていなかったことは,道交法上,本件被害者の不注意として評価されるべきものではなく,本件事故の原因となるべき事由には当たらないというべきである。

東京地裁 平成27年9月29日

全然違う事故態様にし、原告のプロファイルも全然違うし、控訴審説示の意味も取り違えている。
民事(行政)の控訴審判決文なんて、原判決をみないと意味がわからないのが通常ですが、なぜこの人は容易に調べられることすら調べずに意味不明な解釈をするのだろ。

 

なお、原告が行政訴訟を提起した理由については、一審判決にあります。
「原告は交差点通過時にも横断歩行者を確認した」といっているけど「交差点通過中に横断歩道の見通しを妨げるものはなかった」、「交差点通過時に駐車車両に気をとられていた」、被害者の位置関係を考えると、確認不十分と判断するのが妥当。

 

判決文って先に事実認定がありますが、事実認定は基本的に一審。
認定した事実の元で判断するのだから、認定事実がなんなのか確認しなければ全く違うストーリーになるのよね…

 

横断歩道の直前とはどこか?という法律解釈を示した判例でもなく、控訴審判決がいう「直前」というのは「交差点内を通過中」の話を指すと考えられますが、原告がいうモニュメント死角云々にしてもそのような事実は認定されていない。
控訴審が指摘したのは、「原告がいろいろいっているけど、原判決の事実認定によると駐車車両に気をとられて横断歩行者を見逃したのが原因」と指摘しただけなのよね…

 

駐車車両が違法なのはいうまでもないけど、駐車車両に気をとられて横断歩行者の確認が甘くなることは許されないというだけの判例です。
ちなみに刑事不起訴の理由についてはわかりませんが、勝手な予想では加害者が横断歩道に接近する際の被害者の位置の立証に合理的な疑いを挟む余地があったとか?ですかね。
刑事と行政では立証の深さに差があるので(刑事は疑わしきは被告人に有利に解釈せざるを得ない)…
ちょっと前にも38条2項の名古屋高裁判決をおかしな読み方していた気がするけど、判決文の読み方がわからない人が解説すると、全然違うストーリーになってしまうわけで。

 

モニュメントの死角云々についても事実認定されてないし、東京高裁判決の判決要旨(裁判所ホームページ)はこれ。

信号機等による交通整理の行われていない交差点を直進しようとした自動車の運転者が,進行方向前方の道路上に違法に駐車されていた車両の存在に注意を払っていた結果,同交差点の出口付近の横断歩道を通行し又は通行しようとしていた被害者の存在に気付かずに横断歩道に進入し,横断歩道を走って通行していた被害者と接触してこれを負傷させた事故について,上記駐車車両の存在によって運転者と被害者との間の見通しは妨げられておらず,運転者が横断歩道の直前において横断歩道付近の歩行者の有無を十分に確認していれば,当該横断歩道の通行を開始し又は通行しようとする被害者の存在を確認し,自動車を一時停止させて被害者との接触を避けることが可能であったという判示の事実関係の下では,道路交通法施行令別表第2の3の適用に関し,違法な駐車車両の存在や,横断歩道を走って通行し,自動車の存在に注意を払っていなかったという被害者の行動を上記事故の原因となるべき事由と評価すべきではなく,上記事故は,専ら運転者が横断歩道上の歩行者を優先し,その安全を確保する義務を怠るという不注意によって発生したものに当たるというべきであり,このことを前提に道路交通法施行令の定める基準に従ってされた運転免許取消処分が裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるということもできないから,上記運転免許取消処分は適法である。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=86286

判決の基本になるのは事実認定。
どのような事実が認定されたか確認しなければ判決の意味がわからないという典型例なのかもしれません。
そして人間の推測なんて所詮は推測に過ぎなくて、推測に推測を重ねればこのように全く違うストーリーに変えられてしまう…

 

なお、この判例は「見通しが良好な横断歩道」にて「被害者が小走り」という事案ですが、「高度な死角から被害者が小走り」だと判断が変わる可能性があります(もちろんその場合は減速具合が問われる)。
要はこの事故の事例(事実認定の下)で判断したものなので、その意味でも事実認定を確認しないと何の意味もない。
ましてや、事件番号が書いてあり容易に原判決にアクセスできるわけで…根拠なく推測に推測を重ねて語っても意味がないのよね。

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