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右折禁止の交差点を二段階右折するクルマは違反なのか?

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右折禁止の交差点を二段階右折、というよりも直進→後退→直進のスイッチバック式右折をしたとも言えますが、

これを「結局交差点を右折したから違反」とみなすかは悩ましい。

 

これについての直接的な判例はありませんが、類似事例を挙げます。
被告人は転回禁止道路にて転回したかった。
しかし転回は禁止なので、

まず直進し、

後退し小道に入り右折笑。

弁護人の主張はこちら。

第一点本件は東京都特別区公安委員会が「転回禁止No. U Turn」と表示した場所で「一旦小路にスイッチバツクしてから転回」したことが道路交通取締法第12条第2項の転回運転に該当するか否かというテストケースなのである。而して現在東京都に於ては直接のUターンは右法条に該当するが右のような方向転換は該法条に触れず禁止ないものと多くの運転手から解釈せられ現に本件実地検証の際にも僅か10分間位の間に判検事弁護士の眼の前で官庁用自動車である二台が相次いで併し何の連絡もなくその通り実演してスマシタ顔で平然と過ぎ去つたことが示す通り行われている点にテストケースたる所以があるのである。形式的に之を論ずるならばその禁止の表示が「No. Uターン」となつていてとはなつていないこと同法第12条が「併進し又は後退し若くは転回」となつているので、ここに所謂「転回」とは「一度でやる∩型転回行為」を意味するのであるから何等違反しないといつて差支ない更に実質的に之を論ずるならば一旦車が停車して後続の車のいないことを確めてからスイッチバックして車の尻を小路につき込み、交通の安全を確めてから方向転換をするのである。この場合停車することも後退することも「他の交通の妨害にはならぬ限り」(同法12条第1項)差支ないのである。然るにスイッチバックは右にいう後退ではないので傾後方に尻を突込ことであるから「交通を妨害する虞」なき限り固より差支ない、運転手はスイッチバックの時、後続車の無いのを確めてからやるから固より何の交通上の危険もない。ここで車がスイッチバックして尻を小路に入れた時の状態から「転回」する時の状態を見れば車がその小路の奥から出て来て新に右転回をしようと思つて車の先を小路の先にノゾカセタ状態と少しも違いはないのである。右のように小路の奥から進行して来た車がその小路を出て右転回することが禁止されていないのに本件のようなスイッチバックの後に転回することを禁するという理由は毫も存在しないのである。交通安全を実質的に何等妨害するものでない点に於て両者差異はない。警視庁が之を変型的転回と称して運転手の教養講習に用いることは良い併しながら断じて違反事件として処罰することはできないのである。

 

昭和27年6月13日 東京高裁

転回はしてない、あくまでもスイッチバック式転回風プレイに過ぎないのだから転回禁止違反にならないと主張
裁判所の判断はこちら。

道路交通取締法が禁じて居る転回行為とは車馬が従来の進行方向とは逆の方向に進行する目的を以て為す同一路上に於ける方向転換の行為を汎称するものであつて、型に為す所謂ユー・ターンを最も其の典型的なものとし、之を一回の操作により短時間内に完了するのを通常とするけれども、該方向転換の途上-主として前後左右の交通状況等を確認し其の安全を図る等のため-一旦停止、改めて進行を開始して方向転換行為を終るが如きものも之を其の目的から観察して一の転回行為と解するのを相当とするのみならず、更に、従来の進行方向の路上に於て一旦停止し附近の小路の出口等に後退の上改めて直進横断して右折し、其の進行方向を転換して逆方向に進行するが如きものも亦、其の目的の「転回」せんがためのみである以上之を転回行為と謂うに妨げなく、況んや其の路面の転回禁止区域内なることを知り乍ら敢て該地点に於て転回せんとし、右の後退、横断右折等合法的方法によつて右禁止を回避せんとするが如きは同法所定の転回禁止に触れる行為であると謂わねばならない。
而も同法第12条第2項による転回禁止区域内に於ては同法条第1項に於ける場合と異り、該区域内に於ける転回行為を絶対に禁止する趣意であり、該行為当時具体的に他の交通を妨害する虞れがあつたか否か、之に対応する措置が講ぜられたか否か等は毫も右違反罪の成立に影響を及ぼすものではないと解するのを妥当とする。

 

昭和27年6月13日 東京高裁

裁判所は「うっせバーカ」として一蹴。

 

似たような話として25条の2第1項でいう転回とは、未遂なのか既遂なのか?という問題がある。

 

25条の2第1項はこちら。

(横断等の禁止)
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。

次の判例は転回初期に対向車と衝突した件について、転回未遂だから転回ではないし、横断する意思もなかったから横断ではない以上、25条の2第1項違反の罪は成立しないと主張したもの。
最高裁の判断はこちら。

 なお、道路交通法25条の2の1項は、横断、転回および後退の如き、交通の流れに沿わない車両の運転操作を放任するときは、歩行者又は他の車両の正常な交通を妨げ事故を発生させる危険が多いので、これを防止するためそれらの行為を規制しようとする趣旨であることから考察すれば、同条項にいう「転回」とは、同一路上において車両の進行方向を逆に転ずる目的でおこなう運転操作の開始から終了までの一連の行為を指称し、かかる目的で運転行為を開始すれば、方向転換が完了するにいたらなくても、同条項にいう「転回」に該当するものと解すべきである

最高裁判所第二小法廷 昭和46年7月2日

転回目的でプレイを開始したなら、未遂だろうと25条の2第1項の転回にあたるとする。

 

さて冒頭の件に戻しますが、「右折禁止」というのはおそらく「指定方向外進行禁止」ですよね。
指定方向外進行禁止違反の成立はこちら。

 

指定方向外進行禁止として右折禁止になってます。

違反が成立するのはどの時点でしょうか?

 

①右折することを決意しウインカーを出した時点で違反
②右折を開始した時点で違反
③車体が右折方向に完全に向いた時点で違反
④右折先の交差道路に車体が進入した時点で違反

問 指定方向外進行禁止(右方向進行禁止)の標識がある図示交差点で、車両が右に向きを変えている「A」時点で取締りができるか。

答 指定方向外進行禁止違反として検挙することはできない。
指定方向外進行禁止は、過去に行われていた「右折禁止」とはその成立時期において差があると考えられる。
すなわち指定方向外進行禁止とは、「交差点において指定された方向以外の道路に進行することを禁止するもの」と解されるので、交差点を過ぎて進行を禁止された方向の道路(斜線部分)に到達した「B」時点ではじめて既遂となる。
したがって、設問の時点ではいまだ未遂の状態にあるので、指定方向外進行禁止違反を行ったことにはならない。
実務上は既遂に達するまで待っていることなく、積極的に違反行為をしないように指導すべきである(交通関係質疑回答集)。

関東管区警察学校教官室 編、「実務に直結した新交通違反措置要領」、立花書房、1987年9月

指定方向外進行禁止の標識令の規定をみると、あくまでも禁止しているのは右折ではなく、交差点においてその方向に進行することを禁止している。

交通法第八条第一項の道路標識により、標示板の矢印の示す方向以外の方向への車両の進行を禁止すること。

冒頭の件は交差点から出ることもなく右折方向の道路に進行したので、結局違反は成立するとみなすべきなんじゃないですかね。
若干疑問は残りますが…

 

東京高裁の事例にしても、事案が違うのでそのまま趣旨を適用することは出来ませんが、道路交通法の解釈ってなんでこんな屁理屈野郎が次から次へと登場するのか不思議です。
ちなみに指定方向外進行禁止の規制では、車両の横断や転回は規制できません。

問 指定方向外進行禁止交差点における「A車」の横断転回行為①、②、③は違反になるか?

答 指定方向外進行禁止違反にはならない。
指定方向外進行禁止の規制の道路標識は、交差点において一定方向の道路に進行することを禁止するもので、ガソリンスタンドや駐車場等の道路外の施設に出入するための横断や転回を禁止するものとは意味が異なる。
したがって交差点もしくはその付近で、あたかも指定方向外に進行するような形態で進行しても、路外の施設に入る行為や、転回行為は指定方向外に進行したことにはならない。
交通上の危険を防止するため、このような進行車両を禁止するためには、車両横断禁止又は転回禁止の規制をしなければならない。

関東管区警察学校教官室 編、「実務に直結した新交通違反措置要領」、立花書房、1987年9月

まあ、違反になるかならないかよりも安全を最優先すれば、こんなスイッチバック式右折なんてしないと思う。

 

ちなみに若干疑問なのは、右折禁止の指定方向外進行禁止がある交差点で、車道通行自転車が横断歩道を使って横断→横断して右折先道路に進行した場合。
あくまでも指定方向外に進行したとして違反が成立する気がするけど、歩道通行自転車は規制対象にならないわけで…そこを分ける理由が見いだせないような。
なお「実務に直結した新交通違反措置要領」は警察が取締する観点から解説していて、チラホラ興味深い記述もあるので、気になる方は是非。

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