「右側の車両通行帯を通行しなければならない。」
のは
「この場合」
=
「前二項の規定によらない」
「ことができる」
から
「前二項の規定によらない」
ことを選択した場合— あにす / 100🚲🔋🛴⚡🛵 (@anis0755) November 15, 2024
例えば幅3mの普通自転車専用通行帯内で自転車が他の自転車を追い越す場合、前の自転車が左端にいて十分な側方間隔が取れるなら通行帯内での追い越しも成立するし、それであっても普通自転車専用通行帯を出て隣の通行帯から追い越しても構わない。
— あにす / 100🚲🔋🛴⚡🛵 (@anis0755) November 15, 2024
普通自転車専用通行帯内で、自転車が自転車を「追い越し」したら違反ですが…
「幅3mの普通自転車専用通行帯内で自転車が他の自転車を追い越す場合、前の自転車が左端にいて十分な側方間隔が取れるなら通行帯内での追い越しも成立する」としてますが、そりゃ追い越しは追い越しとして成立するけど、違反なんだからあってはならないことなのよね。
さて、この人が法律を読み間違えたポイントはどこにあるのでしょうか?
20条3項は追い越し時において「前二項の規定によらないことができる」としている。
前二項とは、「自転車は第1通行帯を通行する義務」や「普通自転車専用通行帯の通行義務」を指しますが「前二項の規定によらないことができる」なので追い越し時には前二項の義務を打ち消す、つまり通行帯の指定がなくなる。
追い越し時には通行帯の指定を全てリセットし、20条1項も2項も存在しない前提にした上で(この場合において)、
として作為の義務付けをしてますが、「その通行している車両通行帯」とは、追い越し以前に通行していた通行帯のこと。
つまり第1通行帯や普通自転車専用通行帯のこと。
1項と2項を「よらないことができる」として「なかったこと」にし、その上で「直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない」なので、同一通行帯内での追い越しは自転車同士であっても違反なのよね…
まあ、しょうもない珍説よりも法律家の見解はこちら。
「通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない」とは
車両が本来通行しなければならないとされている車両通行帯の中で追い越した場合、その通行帯とその直近の右側の通行帯とにまたがって通行しながら追い越した場合、直近の右側の通行帯のさらに右側の通行帯で追い越した場合には、いずれも本項違反となる<同旨 法総研81ページ>
東京地方検察庁交通部研究会、最新道路交通法事典、東京法令出版、1974
この見解を否定する解説書は見たことないなあ…
通常の日本語能力さえあれば、その通りとしか言いようがないし。
ところで、追い越しとは以下の定義。
車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。
追い付いた場合とは、法26条でいう車間距離に迫った状態。
つまり追い付く前に進路を変更するプレイは道路交通法上は「追い越し」ではないので、追い付く前に進路を変更し同一通行帯内で追い抜きすることは20条3項に違反しないことになる。
なお追い越し(追い付いてから進路を変え)のみを規制対象にした理由は、追い付いた状態から進路変更するのと、追い付く前に進路変更する状態(進路が異なる状態)ではリスク違うからです。
まあ、ワケわからん独自日本語解釈を始める暇があるなら、解説書を5冊くらいは読んで法律家の見解を確認したほうがはるかに有益だと思われますが、なんでこのような独自論を唱える人が出てしまうのかは不思議です。
わりとややこしいのは、法律表現ってちょっと独特なのよね。
「X」って根拠がない脳内独自道路交通法が横行しがちだけど、条文読んで理解できるような内容になってないから専門書が必要なのよね。
調べを尽くしてからインターネットに投稿するか、調べもせずテキトーなことを投稿するかに人間性が出る気がしますが…間違いは誰にでもあるのだから間違いを訂正できるかできないかに本当の人間性が出るのかもしれません。
(なお私の人間性は劣悪です)
ただまあ、このレベルだとそもそも法律解釈に向かない人なんじゃないかと疑いますが…
支離滅裂な話をしていることに気がつかないとなると、訂正する性能がある人なのか疑わしい。
例えばこれ。
「許可することができる。この場合において、警察官は、許可証を交付しなければならない。」
許可することができるけど許可してない場合に許可証を公布しなければならないなんて解釈は無理だよね。https://t.co/zUSIB1lahn— あにす / 100🚲🔋🛴⚡🛵 (@anis0755) November 16, 2024
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
いつもお世話になっております。
同一通行帯内での追越しの可否については冒頭のあにすさんのツイートと全く同じ解釈/考えでいたので、結構衝撃を受けています。
「しなくていい」と言われたことをしたら怒られが発生した(「不必要」かと思ったら「禁止」の意味だった)ときと似た気分…
「よらないことができる」と「しなければならない」という文言の組合せは、
A「□□しなければならない。」
B「Aの規定にかかわらず、△△しなければならない。」
という書き方をする代わりに
A.1「□□しなければならない。」
A.2「Bの規定により△△するときは、前項によらないことができる。」
B「△△しなければならない。」
という書き方をしているだけで、両者の意味は同じということでしょうか?
すなわち、第20条第3項のうち追越しをするときの例外規定を抜き出すと、「前2項の規定にかかわらず、追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない。」という意味になるのでしょうか?
P.S. 交差点の右側にある自転車横断帯についてのコメントに対し、またまた記事を書いてくださりありがとうございました。
コメントありがとうございます。
要は1、2項で「しなければならない」と義務付けしているところ、3項で追い越し時には「よらないことができる」としているので、結局追い越し時においては1、2項の義務が「無い」ことになります。
義務がない状態であらためて「しなければならない」としているわけですが、「X」の投稿者は「1、2項の義務があるけどしてもしなくてもいい」という発想。
そうではなく、1、2項で「しなければならない」としているのを「追い越し時にはよらないことができる」としているので、追い越し時には1、2項の義務が「ない状態」と捉えないといけないわけで、「義務がない」と「義務があるけどどっちでもいい」では意味合いが違うわけです。