読者様から質問を頂きました。

笑。
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「お先にどうぞ」と譲られて路外に右折横断
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。
対向車から「お先にどうぞ」と譲られて路外に右折横断することが「正常な交通を妨害するおそれがあるのに右折した」として違反になるか?ですが、

では判例を。
札幌高裁 昭和51年8月17日から。
この判例は渋滞停止している対向車の間を右折横断して道路外に出ようとした被告人が、
このように対向車の左側に二輪車が来ないか確認するため、少し頭を出して一時停止。
一時停止して確認した後に進行したところ、前方不注視の二輪車が突っ込んできた事故。
被告人は、同地点で右外側線に沿つて左方(東方)約6、7m先まで見通し、その限度で本件車道部分を直進して来る車両の存在しないことを確認したうえ、時速10キロメートル以下の微速で自車を前進させ、自車前輪を歩道上に乗り入れて本件車道部分をほぼ横断し終ろうとした矢先に、右車道部分を前記外側線の外側に沿つて時速約28キロメートルで西進して来た被害者運転の第一種原動機付自転車が同所の歩道北端から約80センチメートルの地点において被告人車の左側後尾(後端から約30センチメートルの個所)に衝突
対向車から譲られて右折横断した部分については、以下の説示がある。
被告人が、第一停車地点において、本件対向車線上を右折、横断して道路外の場所である前記被告人方まで進入しようとするに際し、「他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるとき」は、右折、横断してはならず(道路交通法25条の2第1項)、右折、横断するにあたつては対向車線上を直進して来る車両等の安全確認に十分意を用いる必要のあることは、論をまたないところである。ところで、前認定のように被告人は、対向車線(幅員8m)上を二列に渋滞している車両の各運転者からそれぞれ右折、横断を促す合図を得て、右二列の対向車両に対する関係においては十分安全を確認したうえ第二停車地点まで右折進行したものであるから、被告人が対向車線上を第一停車地点から第二停車地点まで右折、横断した措置は、前記法条に違背するものとは解しえない。
25条の2第1項は「右折時に正常な交通を妨害するな」ではなく「正常な交通を妨害するおそれがあるなら右折するな」という規定ですが、その意図は十分な安全確認をするまでは右折横断することを禁止しているところにある。
対向車が「どうぞどうぞ」と言っているのでもちろん違反ではない。
この判例のメイン部分は第二停車地点からの部分ですが、
被告人は第二停車地点で停止し、クルマの頭を少し出した状態で左側端を通行する2輪車がないか確認していた。
そこに前方不注視の2輪車が突っ込んできた事案なので、被告人に過失がなく無罪とする。
そして、被告人が右第二停車地点を発進し、本件車道部分を横断するに際して、被告人車が、すでに前述のようになかば以上対向車線の横断を終え、さらに本件車道部分の安全を確認するため一時第二停車地点にボンネツトが右車道部分に約70センチメートル出た状態で停車したことにかんがみれば、条理上すでに本件車道部分を直進して来る車両に優先して同所を横断することのできる立場にあつたものと解するのが相当である。
さらに前認定のように当時第二停車地点から左方(東方)にも西方交差点の青信号を待つて渋滞する車両が何台も続いており、被告人が一たん下車して左方を見通した時点から再び乗車して自車を発進させ横断を完了するまでにすくなくとも数秒を要するものと解されるところ、その間における左方車両の安全をあらかじめ見越すことは実際上極めて困難であるうえに対向車線上の車両の通行にも多大の支障をきたすおそれがあつたものと認められる。また関係証拠によれば、被告人は当時外出先から自宅に帰る途上であつて、格別自車に同乗する者もなく、したがつて車外で左方の安全を確認し被告人車を誘導する適当な第三者も見当たらなかつたことが認められ、被告人の下車ないしは他の者の誘導による左方の安全確認がいずれも期待しがたい状況にあつたことが明らかである。右のように被告人車に本件事故に直結する交通法規の違反を見出すことはできない。
札幌高裁 昭和51年8月17日
二輪車がこの状況ですり抜けするには、大幅に減速する義務があったと認定。
(二) 被害車の運転態度
他方前認定によれば、被告人は、第二停車地点において南側の渋滞車両の側端から本件車道部分に自車のボンネツトを約70センチメートル突き出して停車しており、右車道部分を直進してくる車両に対し、横断中の車両があることを示していわば警告を発していたのであるから、被害者は被告人車の動向、ことに被告人車が同所を横断しようとしているものであることを十分認識しえたはずである。しかも、当時本件事故現場は車両が二百数十mにわたつて二列に連続して渋滞しており、停止車両の陰から横断車両ないし歩行者が出現する可能性を予測しうるところであり、また、南側渋滞車両と歩道の間にはわずか1.7mの間隙が残されているにすぎなかつたのであるから、被害者としては、減速ないし徐行しかつ進路前方を十分注視して、安全な速度と方法で進行しなければならなかつたものといわねばならない。
また関係証拠によれば、被告人車が第二停車地点から衝突地点まで約4.2mを時速約5ないし10キロメートル(秒速1.389ないし2.778m)で進行するのに約1.5ないし3秒の時間を要することおよび被告人が左方車道部分を確認したうえ発進するのにすくなくとも1秒程度を要するので逆算すると、時速約28キロメートル(秒速7.778メートル)で進行して来た被害車は、被告人車が第二停車地点に立ち至つた段階では、同所から約19ないし31m東方(左方)にあつたものと認められ、しかも本件衝突は、被告人車が本件車道部分を横断し終る寸前にその後端からわずか約30センチメートルの左側面に被害車前輪が衝突したかなりきわどい事故であつたことに徴しても、被害車の側で、前方注視、徐行等の措置により被告人車との衝突を避けることはきわめて容易であつたといわねばならない。
しかるに、関係証拠によれば、被害者は、自車の速度を落さないで約時速28キロメートルのまま、しかも進路前方二百数十メートルの交差点にある対面信号に気を奪われ前方注視を怠つた状態で漫然と進行し、わずか5m位手前に至つてはじめて被告人車に気付いたが、すでに間に合わず被告人車の後尾に自車を衝突させたものと認められるから、被害者の運転態度に相当性を欠くものがあつたというほかなく、被告人において被害車の右運転態度を予想すべき特段の事情のなかつたことも明らかであり、同人の運転態度が本件事故の原因となつたことは否定しがたいところである。
現実にはここまで安全確認して右折横断する車両は多くはない。
今回のメインテーマは「譲られて右折横断したことが違反か?」ですが、裁判所は違反ではないとしている。
当たり前ですが。
注意すべきは
お先にどうぞと譲られて横断する車両は、左側端の安全確認を怠りがちになること。
今日目の前で事故が起きそうだった。
マジで危ない。 pic.twitter.com/dd6XUPUO4K— ぷるぷるプリン (@mogmogtime8) April 8, 2024
正解はここで一時停止して確認。
まあ、こうなるからすり抜けは推奨しないんですけどね…

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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