ちょっと興味深い内容。
群馬県高崎市の国道の穴に自転車のタイヤがはまって転倒し、重傷を負った同市の男性(43)が、道路を管理する県に計約335万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、前橋地裁であり、小川雅敏裁判長は県に約201万円の支払いを命じた。
判決によると、男性は2020年10月18日午前11時5分頃、同市剣崎町の国道406号で自転車を運転。道路に開いていた長さ27センチ、幅7センチ、深さ4センチの穴に前輪がはまって自転車ごと転倒し、股関節の骨を折るなどの重傷を負った。
裁判では、男性は道路の安全性を欠いていたとして、道路管理に瑕疵があったと指摘。県側は、定期的に道路の状況を確認しており、穴に安全上の支障はなかったなどと主張した。
判決では、穴が転倒の原因で、県が安全性を欠いていたと認定。一方で穴の周りには多数の亀裂があり、注意して走行すべきだったとして男性にも過失があったとした。
国道の穴に自転車のタイヤがはまって転倒し骨折、群馬県に賠償命令…前橋地裁判決「安全性欠いていた」【読売新聞】 群馬県高崎市の国道の穴に自転車のタイヤがはまって転倒し、重傷を負った同市の男性(43)が、道路を管理する県に計約335万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、前橋地裁であり、小川雅敏裁判長は県に約201万円の支払いを
さて。
今回これを取り上げた理由ですが、国賠法による道路管理者の瑕疵について。
◯国家賠償法
これの解釈はこうなる。
国家賠償法二条一項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国および公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としないと解するを相当とする。
最高裁判所第一小法廷 昭和45年8月20日
判断基準はたったこれだけで、「通常有すべき安全性を欠いているか?」がポイントになる。
だから個別具体的な事情をみて裁判所が判断するわけで、揉めます。
例えばこういう事件もある。
ところで、国家賠償法2条1項にいう道路の管理の瑕疵とは、道路がその用途に応じ通常備えるべき安全性を欠いている状態をいうのであるが、常に道路を完全無欠の状態にしておかなければ管理に瑕疵があるというわけのものではなく、その整備すべき程度は、当該道路の位置、環境、交通状況等に応じ一般の通行に支障を及ぼさない程度で足りるのであつて、通行者の方で通常の注意をすれば容易に危険の発生を回避しうる程度の軽微な欠陥は同条項にいう道路の管理の瑕疵に該当しないものと解するのが相当である。
前記認定によれば本件のくぼみは道路の未舗装部分からアスフアルト簡易舗装部分に向つて半円形にくいこんで存在し、その底辺の長さは0.8m、底辺から半円形の頂点までの距離は0.3m、深さはほぼすり鉢状に中央部に向つて順次深くなり、一番深いところで0.1mであつたが、本件道路の事故現場付近は、京都市北部の山間地帯で、交通量も少なく、付近に人家もなく、道路の両端に未舗装部分を残して中央部がアスフアルト簡易舗装されていたにすぎないのであり、このような簡易舗装道路においては、アスフアルト簡易舗装の側端の未舗装部分に接する部分の舗装アスフアルトが間間剥離し右の程度のくぼみを生じでいることがあることは通常予想されるところであつて、自転車も歩行者も道路の中央寄りを通行することが通常であり、例外的にバスとの離合の必要上やむをえず舗装部分の側端に寄る場合には舗装の剥離によるくぼみあるいはくぼみの推定される水たまりの有無に注意し、危険を生じないような方法で通行する義務がある(自転車に乗つている場合は停止するのが最も安全である。)。本件道路における右の程度のくぼみの存在は、通行者の方で通常の注意をすれば容易に危険の発生を回避しうる軽微な欠陥の範囲を出るものではなく、国家賠償法2条1項にいう道路の管理の瑕疵に該当しないものというべきである。大阪高裁 昭和55年7月25日
個別具体的な事情を元に判断される以上、同様の大きさの穴であれば必ず道路管理者の瑕疵が認められるわけではない。
実際のところ、道路管理者の賠償責任を全く認めなかった事例もありますが、賠償責任を認めた事例でも被害者に過失があれば過失相殺する。
結局のところ、自転車を運転する人は道路状況を確認しながら進行する注意義務があるのは当たり前なので、やるべきことはしましょうねとしか言いようがないのよね。
こういう事例は、「賠償責任を認めた判例」と「賠償責任を認めなかった判例」を対比させながらそれぞれの判断を見たほうが理解しやすいかも。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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