自転車が信号無視してひき逃げをしたわけですが(報道では「当て逃げ」としてますが用語の使い方としてはビミョー。どうでもいい間違いですが笑)、
これが救護義務違反にあたることは当然ですが、その前に信号無視するなと。
ところでこの事故を被害者救済の観点から見たときに、ややこしい問題が起きる。
仮に加害車両が「違法モペット」や「特定小型原付」であれば、加害者が特定できなかったとしても「政府保障事業」により自賠責保険同等の賠償金を受け取れます。
少なくとも被害者は最低限の医療費等が補填されることになりますが、国が支払った分は国が加害者に請求する。
ところが自転車による事故は政府保障事業や自賠責保険の対象ではないから、加害者が特定できなかった場合には自らの保険を使うしかない。
まあ、最近の自転車保険にはケガにも対応しているでしょうけど。
「違法モペット」なら被害者は最低限の救済があり、「合法自転車」(あくまでも存在が合法という意味で、プレイ自体は信号無視という違法行為ですが)であれば最低限の救済すらない。
これはある種の捻れ現象とも言えるのでして…
じゃあ自転車による事故も自賠法の対象にすればいい、というほど単純な問題でもないのよね。
自転車に自賠責保険料を負担させることが妥当か?という話でもあるけど、
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
仮に自転車による事故も自賠法の対象にした場合、「自転車を貸した」という場合には運転者ではなく持ち主にも賠償責任が生じる可能性がある。
「運行供用者責任」の問題ですよね。
あと、無過失の主張をする際に「構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明」できるのか?という疑問も。
違法モペットと自転車では他害性に差があるから、という考え方があるんだろうけど…
ちなみに最近、このような事態に備えて人身傷害特約をやたらプッシュする人がいますが、わざとやってるのか知らないけど「弁護士基準」の賠償金を過失相殺無しで受け取れるかのような解説になっている。
人身傷害特約は弁護士基準よりだいぶ下がることを伝えないのは業法の趣旨からすると誤認を招くリスクがあるしいかがなものかと思いますが…そもそも弁護士基準が適用されない事案も弁護士基準のシミュレーション結果を載せているし、何を考えているのだろ。
ひき逃げするモラル、信号無視するモラル、誤認惹起するモラル…モラルの低下なんですかね。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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