先日取り上げたこちら。

より詳細な初公判の様子が報道されている。
裁判で事故当時の状況が明らかになった。母親は男児を後部座席のチャイルドシートに乗せ、午前7時過ぎに一宮御坂インターチェンジから中央道に乗った。笹子トンネル内でアクセルを踏んでも加速せず、ハザードランプを点灯して非常駐車帯に車を止めた。ランプを点灯したまま再発進した直後にトラックが追突。軽乗用車はアクセルを踏んでいたのに減速しており、衝突時は時速7キロしか出ていなかった。
一方、田所被告は4日午前3時過ぎに勤務先を出発し、午前6時前に山梨県内の工場に到着。荷物を下ろして会社に戻るため、時速90キロでトンネル内を走行していた。考え事をしながら約19秒間運転し、非常駐車帯から出てきた軽乗用車に気づかずに衝突した。
検察側によると、母親の軽乗用車は無段変速機(CVT)に不具合が生じた可能性がある。事故前日もブレーキを踏んでいないのに時速20キロから10キロに減速し、エンジンを切って再始動したという。母親の供述調書には「止まるところを探していて気づいたら病院だった。警察から状況を聞き、非常駐車帯を発進したことを後悔している」との言葉が並んだ。
田所被告は起訴内容を認め、被告人質問で「本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」と謝罪。免許取り消し処分を受け、勤務先の内勤に異動した。自家用車も手放し、自転車で通勤している。「重大な事故を起こして運転する気にはなれない。免許は要らないです」と吐露した。
検察側は、前方を注視していれば車線変更などが可能だったと指摘。「職業運転手の適性を欠いた危険なものだった」とし、禁錮2年6カ月を求刑した。弁護側は「一瞬の気の緩みが原因で、車線外から入ってきた車がとどまり続けるのは想定しにくい」と述べ、執行猶予付きの判決を求め、結審した。
中央道1歳死亡事故 「19秒考え事」で減速車気づかず追突 初公判 | 毎日新聞山梨県甲州市の中央自動車道上り線笹子トンネルで昨年4月、大型トラックが軽乗用車に追突した事故があり、1歳の男児が死亡した。男児が乗った車に不具合が生じ、速度が上がらなかった可能性がある。自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた男性運...
要はこれ、被害車両からすると異常を感じて非常駐車帯に入った以上、再発進すべきではなく救援を呼ぶべきだった。
一方の加害車両は、最高速度を遵守して前方注視していたら回避可能だったところ、19秒間考え事をして前方注視しなかったために衝突した。
両者に過失がある事故だったといえますが、過失運転致死傷罪は被告人の過失と致死傷の間に因果関係があれば成立し、被害者の過失は量刑で判断するもの。
被告人も弁護人も過失運転致死傷罪の成立は争っておらず、事故の態様からみて情状酌量の余地があるから執行猶予が相当と主張し即日結審したと。
判決言い渡しは5月15日です。
おそらく執行猶予はつくと思われますが、被害者は再発進したことを後悔していて、加害者は前方不注視のまま漠然運転したことを後悔していると。
結局、教訓としては車体に異常を感じたらそれ以上運転すべきではないし、制限速度を遵守して前方注視し運転することがいかに大事なのかということだけなのよね。
若干疑問があるとしたら、検察官が主張した回避可能性は「車線変更などが可能だった」という点。
これは「非常駐車帯でハザードランプをつけている駐車」を発見した時点での注意義務ではなく、被害車両が再発進して合流した時点での話だと思われますが、被害車両が合流した時点での両者の距離がどうだったのかは気になった。
けど被告人側は過失運転致死傷罪の成立を争うことなく即日結審したことからすると、判決文にはそのあたりの詳細は出なそう。
結局事故って不注意の積み重ねなのよね。
被害者からしても、前日に時速20キロから10キロに減速した後にエンジンを再起動させたら直っていたと思われるので、「非常駐車帯で再起動させたら直るんじゃないか?」と軽信したのかと。
一方の被告人は、トンネル内で駐車している車両があるとは頭にないだろうし、高速道路は全ての車両が同じようなスピードで進行しているという前提で軽信していたのかもしれない。
ただまあ、いまだに過失運転致死傷罪を「どっちが悪いか?」の裁判だと思っている人がわりといるんだなと思った。
どちらにも過失があると考えられますが、双方ともに後悔している事案なのよね。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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