PVアクセスランキング にほんブログ村
スポンサーリンク

自転車による妨害運転、やっと結審。

blog
スポンサーリンク

自転車による妨害運転罪として起訴された通称「ひょっこり男」の件。
昨年10月くらいから公判が始まっていたのに、その後は報道がなく不思議に思ってましたが、

自転車を走らせながら対向車の通行を妨げたとして、道交法違反(あおり運転)の罪に問われた千葉県柏市の無職成島明彦被告(37)の論告求刑公判が13日、千葉地裁松戸支部(向井志穂裁判官)であり、検察側は懲役1年4月を求刑した。弁護側は無罪を主張し、結審した。被告は「ひょっこり男」と呼ばれていた。

検察側は論告で、被告の妨害行為が常習的だとし「重大な事故を引き起こしていた危険性が非常に高い」と指摘。「規範意識が完全に鈍麻しており、再犯の危険が極めて高い」とした。

通行妨害で懲役1年4月求刑 「ひょっこり男」無罪主張 | 共同通信
自転車を走らせながら対向車の通行を妨げたとして、道交法違反(あおり運転)の罪に問われた千葉県柏市の無...

ようやく結審し判決待ちになったらしい。
被告人は過去、安全運転義務違反の妨害運転罪で有罪となっていますが(さいたま地裁 令和3年5月17日)、前回の判決文をみる限り起訴内容については争っていない。
今回は全面的に争っていて、「体重を移動しただけ」などと弁解してますが、

ひょっこり男「体重を移動しただけだ」←??
自転車ひょっこり男として有名な成島明彦被告ですが、なんと「体重移動しただけ」とか「反対側の歩道に渡ろうとしただけ」などと述べ妨害運転を否認した模様。自転車で車の前に飛び出す妨害行為を繰り返し、「ひょっこり男」と呼ばれた男が裁判で「反対車線の...

妨害運転罪については判例が少なく、しかも全面的に争った事案は皆無に近い。
したがって「通行妨害目的」の解釈について裁判所が何らかの見解を示す可能性もあるため、注目案件です。

 

というのも、あれだけやったなら「通行妨害目的は明らか」とも言えますが、構成要件にある「通行妨害目的」。

第百十七条の二の二
八 他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であつて、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者

立法府の説明によると、通行妨害目的には執拗性など積極的妨害意思が必要で未必的な認識では足りないとしてますが、同じく通行妨害目的を規定した危険運転致死傷罪では裁判所の解釈は違う。

(危険運転致死傷)
第二条
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
五 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為

ア 本件罪の立法経過等に鑑みると,本件罪が「走行中の自動車の直前に進入し,その他通行中の人又は車に著しく接近し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し」たこと(以下「危険接近行為」という。)に加えて,主観的要素として,通行妨害目的を必要としたのは,従前,業務上過失致死傷罪等で処断されていた行為のうち,極めて危険かつ悪質で,過失犯の枠組みで処罰することが相当でないものについて,故意犯と構成することによって,その法定刑を大幅に引き上げる一方,後方からあおられるなどして自らに対する危険が生じ,これを避けるために,危険接近行為に及んだ場合など,悪質とまでいい難いものについては,本件罪の成立を認めないとすることにより,処罰範囲の適正化を図ったものと解される。
そうすると,本件罪にいう通行妨害目的の解釈は,上記のような立法趣旨に沿うものである必要があると考えられるところ,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図して行う危険接近行為が極めて危険かつ悪質な運転行為であることはいうまでもないが,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行うのもまた,同様に危険かつ悪質な運転行為といって妨げないと考えられる。したがって,そのような場合もまた,通行妨害目的をもって危険接近行為をしたに当たると解するのが合目的的である。
ところで,本件罪は目的犯とされているから,通行妨害目的の解釈も,目的犯における目的の解釈として合理的なものである必要があるところ,目的犯における目的の概念は多様であり,各種薬物犯罪における「営利の目的」のように積極的動因を必要とすると解されているものもあれば,爆発物取締罰則1条の「治安ヲ妨ゲ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスル目的」のように未必的認識で足りると解されているものもあり,さらに,背任罪における図利加害目的のように,本人の利益を図る目的がなかったことを裏から示すものという解釈が有力なものもある。これを本件罪についてみると,本件罪において通行妨害目的が必要とされたのは,外形的には同様の危険かつ悪質な行為でありながら,危険回避等のためやむなくされたものを除外するためなのであるから,目的犯の構造としては,背任罪における図利加害目的の場合に類似するところが多いように思われる。そうすると,本件罪にいう通行妨害目的は,目的犯の目的の解釈という観点からも,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することのほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合も含むと解することに,十分な理由があるものと考えられる。
以上のとおり,本件罪にいう通行妨害目的は,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図して行う場合のほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合をも含むと解するのが,立法趣旨に沿うものであり,かつ,目的犯の目的の解釈としても,理由のあるものと考えられるから,結局,本件罪の通行妨害目的は,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図して行う場合のほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合も含むと解するのが相当である。
イ 原判決は,本件罪にいう通行妨害目的は,運転の主たる目的が人や車の自由かつ安全な通行の妨害を積極的に意図することになくとも,自分の運転によって上記のような通行の妨害を来すことが確実であることを認識して当該運転行為に及んだ場合にも肯定されると解するとして,東京高等裁判所平成25年2月22日判決・高刑集66巻1号3頁を援用しているから,同判決同様,そのような認識で当該行為に及んだ場合,自己の運転行為の危険性に関する認識は通行の妨害を主たる目的とした場合と異なることがないことを,上記のような解釈を採る理由としているものと解されるが,認識の程度が同じであればなぜ目的があるといえるのか不明であるし,なにより,そのような解釈を採ると,自分の運転行為によって通行の妨害を来すことが確実であることを認識していれば,後方からあおられるなどして自らに対する危険が生じこれを避けるためやむなく危険接近行為に及んだ場合であっても本件罪が成立することになり,立法趣旨に沿わないものと考えられる。また,原判決がいう「確実であることを認識して」とは,結局のところ,確定的認識をいうものと解されるが,確定的認識と未必的認識は,認識という点では同一であり,ただその程度に違いがあるにとどまるに過ぎない上,その判定は,確定的認識について信用できる自白がある場合や,犯行の性質からこれを肯定できる場合はともかく,当時の状況等から認識自体を推認しなければならない場合には,甚だ微妙なものにならざるを得ないから,そのような認識の程度の違いによって犯罪の成否を区別することが相当とも思われない。
検察官は,目的犯における「目的」の意義は多様であり,外国国章損壊(刑法92条)等のように,その目的が,構成要件的行為自体,または,その付随現象から,おのずと実現されるため,客観的構成要件該当事実を認識していれば,同時に,目的を有しているとも見られる犯罪類型にあっては,未必的認識で目的が充足されるとすると,故意とは別に目的を要求した意味がなくなり,そのため,このような場合の目的としては,目的の実現に対する未必的認識では足りず,目的が実現することを確実なものと認識することが必要であると解すべきであるとした上で,通行妨害目的は,まさにこのような場合であるから,相手方の自由かつ安全な通行を妨げることが確実であることを認識することが必要であり,このような認識がありながら,あえて危険接近行為に及ぶような場合には積極的な意図がある場合と同視し得るとして,通行妨害目的についての原判決の解釈に誤りはないというが,認識があることを前提としながら,その認識の程度によって犯罪の成否を区別するのが相当でないことは前記のとおりである。なお,検察官のように,「通行妨害目的」を肯定するためには通行妨害について確定的認識が必要と言い切ってしまうと,嫌がらせ目的で危険接近行為をしたが,通行妨害についての認識は未必的であったという場合,本件罪は成立しないことになりそうであるが,それが妥当であるかも疑問である。
一方,弁護人は,本件罪の立法過程では,行為者の主観的事情として,人の死傷に対する認識認容を求めないものとしたために,処罰範囲の拡大が懸念され,暴行や傷害等に準じた重い刑罰に見合った「極めて危険かつ悪質なもの」に処罰範囲を限定し,かつ,その範囲を明確にするために目的犯とされ,この点について,立法担当者が,「妨害する目的で著しく接近し」とは,「相手方が自車との衝突を避けるために急な回避措置を余儀なくされる」ことを「積極的に意図して自車を相手方の直近に移動させること」をいう旨明らかにしているから,本件罪では,客観的行為態様に加えて,主観をも考慮に入れて行為の危険性を判断しなければならないのであり,通行妨害目的が認められるためには,確実な認識が必要であるとともに,積極的意図も必要である旨主張する。
しかし,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図して行う危険接近行為が極めて危険かつ悪質な運転行為であることはいうまでもないが,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行うのもまた,同様に極めて危険かつ悪質な運転行為といって妨げないと考えられることは,前記のとおりである。
ウ 以上の次第で,本件罪の通行妨害目的には,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図する場合のほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合も含むと解するのが相当である。

 

大阪高裁  平成28年12月13日

道路交通法における「通行妨害目的」について何らかの解釈を示す可能性もある。
ひょっこり男と呼ばれた男にどのような刑罰になるかはあまり興味がないけど、解釈については注目。

コメント

  1. 山中和彦 より:

    記事中の、検察の論告で「規範意識が完全に鈍麻しており」に、不謹慎ながら笑ってしまいましたが、「車の通行を妨害する目的」を印象づけるためなのかもしれません。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      検察官が論告求刑するときは、やたら厳しい発言になるのはお決まりなんです。

タイトルとURLをコピーしました