「違反と過失は別、という概念がわからない」とご意見を頂いたのですが、

こちらで取り上げた内容を元に解説してみます。
Contents
道路交通法の義務
題材は「歩行者を追い越しする場合」。
前提条件は直線路で見通しがよく、対向車はいない。
歩車道の区別がない道路とする。

道路交通法17条5項によると、歩行者を追い越しするためにセンターラインをはみ出して通行することは認められていない。
そして歩行者の側方を通過する際には「安全側方間隔又は徐行」(18条2項)としている。
①センターラインを越えない範囲で右に寄り徐行した(歩行者との側方間隔は40センチになりました)

②18条2項は「安全側方間隔又は徐行」なのだから、徐行すればOKと考えて右に寄らずに通過した(歩行者との側方間隔は10センチになりました)

③センターラインを越えて1.5mの間隔を確保し、さらに念のため減速しました

④センターラインをこえて1.5mの間隔を確保しましたが、18条2項は「安全側方間隔又は徐行」なのだから減速しませんでした。

まとめるとこうなる。
| 17条4項/5項 | 18条2項 | |
①![]() |
違反なし | 違反なし |
②![]() |
違反なし | 違反なし |
③![]() |
違反 | 違反なし |
④![]() |
違反 | 違反なし |
で。
あなたが歩行者の立場だったときに、最も安全に感じるのはどれよ?という話になるのでして、普通に考えたら③なのよ。
しかし③はセンターラインをはみ出したのだから通行区分違反になる。
逆に②は道路交通法上は違反にならないけど、
②18条2項は「安全側方間隔又は徐行」なのだから、徐行すればOKと考えて右に寄らずに通過した(歩行者との側方間隔は10センチになりました)
歩行者の立場からしたら「バカなのか?」と疑うレベルなわけ。
で。
②については歩行者がわずかに右にズレただけで接触することは明らか(接触することが予見可能)。
なので事故を起こしたならば、道路交通法上は違反ではないにせよ注意義務違反(過失)になる。
過失というのは予見可能性と回避可能性なのだから、この場合でいえば多少センターラインをはみ出し安全側方間隔を保ちながら減速すること(③)が最も安全と言えるわけ。
むしろ③の態様で歩行者が突如ノールック横断して衝突したとしたら、回避可能性がないとして無罪になりうる。
道路交通法違反がなくても、予見可能で回避可能なら過失として評価され有罪になるし、道路交通法違反があったとしても注意義務を果たしていたと評価されることはある。
言いたいこととしては
そもそも見通しがよく対向車がいない状況でこのようにセンターラインをはみ出して安全側方間隔を保ちながら減速して通過したときに、

たまたまパトカーが見ていたとしても、取り締まりすることはまずあり得ない。
要はこの状況を非難して「センターラインを死守すべき」と指導するほうが事故リスクがあるからなのよね。
道路交通法上の話は、現実世界に落とし込んで考えないと机上の空論化するわけよ。
そもそも、対車両のときにはセンターラインをはみ出して追い越しすることが一定の条件下で認められているのに、

はみ出し通行距離が短くなる「対歩行者」の時には認められていないと解釈することが本当に妥当なのか?という疑問すらある。
法律は人間が作ったのだからどこかに矛盾が起きてしまうのも当たり前。
条文には規定されてないにせよ、対歩行者の場合はセンターラインはみ出しの除外とみなす解釈もあるわけです。
道路交通法違反がなくても過失は成立するし、道路交通法違反があっても過失は否定される。
そもそも両者は関係ないのよね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。






コメント