PVアクセスランキング にほんブログ村
スポンサーリンク

無免許運転に同乗し、同乗者が負傷した場合。

blog
スポンサーリンク

中学生が無免許運転をして、同乗者である10代女性と女子中学生にそれぞれケガを負わせた上に逃走したそうですが、

男子中学生が軽ワゴン無免許運転で事故、同乗女性に頭部骨折の重傷負わせる…車を放置し逃げた疑いで逮捕
【読売新聞】 岐阜県警大垣署は18日、同県大垣市の男子中学生(14)を自動車運転死傷行為処罰法違反(無免許過失運転致傷)と道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで逮捕した。 発表によると、男子中学生は17日午後6時40分頃、大垣市河間町の

なんか不思議な論点を見かけた。
「自賠責保険が支払われるか?」とか「運行供用者責任」とか「人身傷害特約」とか。

 

運転した中学生が無免許であることは当然知っていたと考えられるわけで(中学生が免許を取得できないのは誰しもが知る事実)、それにあえて同乗すればケガしたり死ぬことは容易に予見できる話。
負傷した同乗者も無免許運転の幇助罪に問われかねない話なところ、保険の話よりも大切なことがあるのよね。

 

なぜ無免許運転を止めなかったのか?と。

 

たまたま同乗者が負傷して被害者になっただけで、無関係の通行人や他の車両の人が負傷又は死亡していたら同乗者も共同不法行為責任を問われかねない。
加害者扱いになるか被害者扱いになるかなんて結果論なのでして、他人を負傷又は死亡させる危険性がある中、たまたま自分たちが負傷しただけなのよ。

 

ところでこのようなケースで自賠責保険が支払われるか、つまり自賠法でいう「他人」に当たるかですが、

 

報道の内容だけでは判断できません。

 

というのも、場合によっては同乗者も共同運行供用者に該当し自賠法でいう「他人」には当たらないことがある。

無免許運転の代償は、同乗者にも及ぶ。
全員16歳とのことなので、運転者が無免許だと知っていたと見なせるかと。警察によりますと、岡山市の無職の少年(16)が運転する軽乗用車が右折車と左折車を分ける「交通島」と呼ばれる構造物に衝突したということで、少年は車外に放り出されていた状態で...

(要旨)
友人が窃取し運転していた自動車に同乗中右友人が起した事故により死亡した被害者において右友人の窃取及び運転を容認していたなど原判示の事実関係のもとにおいては、右両名の運行支配が本件自動車のそれに比較して、直接的、顕在的、具体的であるというべきであつて、右被害者の両親は右自動車の保有者に対して右被害者が自動車損害賠償保障法三条にいう他人にあたることを主張することができない。

最高裁判所第二小法廷  昭和57年4月2日

参考までに原判決。

本件乗用車の所有者である訴外会社の従業員及び社長がエンジンキーをつけたままドアに施錠することなくこれを公道上に駐車したことが、Aの本件事故に至る運転を誘発したということができる。このことと本件事故がAの運転開始後瞬時にして発生したことを併せ考えると、訴外会社が当時本件乗用車の運行を直接的、具体的に指示制御すべき立場になく、その運行利益が直接的、具体的には訴外会社に帰属しなくても本件事故当時訴外会社はなお本件乗用車の運行供用者であつたと認めざるを得ない(したがつて、本件乗用車による事故の被害者が全く第三者の通行人である場合には訴外会社は運行供用者として損害賠償責任を負う。)。
しかしながら、本件事故は、Aが同人らの自宅まで乗つて帰るために本件乗用車を窃取して運転中に生じたものであり、同乗者であるXもAと意を通じこれを容認していたのであつて、右両名が本件事故の原因となつた本件乗用車の運行を支配し、その運行利益も右両名に帰属していたものであるから、右両名も本件乗用車の共同運行供用者であつたと認めるのが相当である。もつとも、前叙のとおり、右両名による本件乗用車の運行は所有者である訴外会社の運行支配を全面的に排除してされたとは解されないが、そうだからといつて右両名の運行支配者たる地位が否定される理由はない。却つて訴外会社による運行支配が間接的、潜在的、抽象的であるのに対し右両名のそれははるかに直接的、顕在的、具体的であるということができる。
そうすると、自賠法3条にいう「他人」とは自己のために自動車を運行の用に供する者及び当該自動車の運転者を除くそれ以外の者をいうのであるところ、本件事故の被害者であるXは他面本件事故当時本件乗用車の共同運行供用者の一人であつたのであるから、Xの両親である被控訴人ら(このことは成立に争いのない乙第8号証によつて認められる。)は、Xが自賠法3条の「他人」であることを主張して訴外会社に対し同条による損害賠償を請求できないといわなければならない。

名古屋高裁 昭和56年7月16日

他の判例としてはリンク先に青森地裁判例を載せてますが、今回の報道からは詳細がわからない以上、自賠法でいう他人に当たるかかは全くわかりません。

 

そもそも、無免許運転に同乗すればケガ又は死亡するリスクが高いことくらいわかるのであって、無免許運転を止めなかったことの責任は重い。
その結果自らが被った被害について保険でカバーするという発想がわかりませんが、他人を負傷又は死亡させるくらいなら自らが負傷した分、マシなんじゃなかろうか?

 

結果論で解説する人にしても、どんだけ世間の常識からズレているのか心配になる。

 

ちなみにこのような場合、人身傷害特約に加入していても支払われないと考えられる。
理由は約款の記載内容。

被保険者が、契約自動車または他の自動車の使用について、正当な権利を有する者の承諾を得ないで契約自動車または他の自動車に搭乗中に生じた損害

これを「保険金を支払わない場合」として約款に載せている。
当たり前なのよね。

 

保険の解釈もおかしいけど、もっとおかしいのは論点なのよ。
無免許運転に同乗すれば事故る可能性があるのは当たり前。
そして、今回の件は防ぐことができる事故なのよ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました