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フリマサイトで購入したクルマの名義変更がなされてないときに、名義人は運行供用者責任を負うか?

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フリマサイトで購入したクルマで事故を起こしたときに、名義変更未完了だと販売者が「運行供用者責任」(自賠法3条)として賠償責任を負う可能性があるとして様々な判例を紹介してますが、

運転レベル向上委員会より引用

ほぼ関係ない判例ばかり並べて誤解を生んでいるので、ちょっと解説しておこうと思う。

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運行供用者責任

自賠法によると、人身損害については運行供用者に賠償責任があるとしてますが、

(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

「自己のために自動車を運行の用に供する者」の解釈ですよね。
フリマサイトで購入という時点で赤の他人からでしょうし、売買契約が完了しないと引き渡しされませんから、この事実関係では名義変更が未完了でも売主が運行供用者責任に問われる可能性はないでしょう。
なにせ、民法上の所有権は既に買主に移転している上に、売主はそのクルマに対し何ら支配が及ばない。

 

ところで、彼が挙げている判例を見ていきます。

最高裁 昭和50年11月28日

この判例はいわゆる「名義貸し」の話。

 自動車の所有者から依頼されて自動車の所有者登録名義人となつた者が、登録名義人となつた経緯、所有者との身分関係、自動車の保管場所その他諸般の事情に照らし、自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上自動車の運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にある場合には、右登録名義人は、自動車損害賠償補償法三条所定の自己のために自動車を運行の用に供する者にあたると解すべきである。
原審の適法に確定した事実によると、被上告人B1は、昭和四四年三月ころ、本件自動車の所有者である被上告人B2から、その所有者登録名義人となつていることを知らされ、これを了承するに至つたのであるが、被上告人B2は、被上告人B1の子であり、当時満二〇才で、同被上告人方に同居し農業に従事しており、右自動車は同被上告人居宅の庭に保管されていたというのであり、右事実関係のもとにおいては、同被上告人は本件自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にあつたというべきであつて、右自動車の運行供用者にあたると解するのを相当とする。

最高裁判所第三小法廷 昭和50年11月28日

要はこれ、知らぬ間に同居家族が名義人になっていて、名義人はそれを知らされて了承した。
そしてクルマが保管されていたのは「名義人の庭」であり実質的所有者と同居関係にあるのだから、クルマの運行支配と管理下にあると判断したもの。

 

フリマサイトで売買した事案とは何らカスる点はありません。

最高裁 昭和53年3月30日

これについてはそもそも、この日に運行供用者責任についての判例はありません。
過去にエア判例を創作してきた実績もありますし、

私有地を道路と認めるか?
運転レベル向上委員会が何度も判例を改竄してフェイクニュースにしている件。覚えているだけでも全然違う内容に改竄しているのは7、8件あった気がしますが、運転レベル向上委員会より引用最高裁第三小法廷 昭和44年7月11日判決(刑集 第23巻8号1...

残念ながらエア判例の可能性が高い。

名古屋地裁 平成17年12月21日

この判例はローンが組めないXに代わり、同棲していたYがローンを組み名義人になった(名義貸し)。
同棲解消後に当該車両が起こした事故について、名義人であるYが運行供用者責任を負うか争われたもの。

 

ローンの性質上、名義人であるYの口座から代金が引き落とされていましたが、その支払いはXがしていたことと、Yは当該車両を運転したことがなく数回同乗しただけの事実関係においては名義人に運行支配や運行利益はなく、運行供用者責任を否定しました。

東京地裁 平成11年12月27日

この判例はちょっとややこしい。
姉が購入したクルマを結婚をきっかけに実家に預けたところ、弟が使用するようになった事案。

被告Xは、昭和63年ころ、被告車を新車で購入し、通勤等のためこれを使用していたこと、被告Xは、平成2年に結婚した後は、被告車を名古屋市内の実家に預けていたこと、被告Xの弟である被告Yは、同3年2月ころ普通自動車免許を取得し、同年3月ころ、大学入学に伴い被告車を右実家から千葉県野田市内に移し、その後継続してこれを使用していたこと、自動車税及び車検時の費用については、当初被告Xが負担していたものの、同被告が結婚した後は被告Yの父であるZが負担していたこと、被告Yは、大学を卒業した同8年4月以降は、父であるZに現金を交付して同人に自動車税の支払を依頼していたこと、被告Xは、本件事故前には被告Yに対して所有名義の変更手続をするように申し入れたことがなかったこと、被告Xは、本件事故後、被告Yに対して所有名義の変更手続をするように申し入れたこともあったが、被告Yがこれに応じなかったため、この現状を黙認し、現在も被告Yが所有名義人となっていることなどが認められる。

2  以上の事実関係にかんがみれば、被告Xは、被告車の使用及び運行に対して事実上支配、管理を及ぼすことが可能であり、社会通念上その運行が社会に対して害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にあったものというべきであるから、本件事故により原告らに生じた損害につき、自賠法3条の運行供用者としての責任を免れない。

東京地裁 平成11年12月27日

「被告Xは、被告車の使用及び運行に対して事実上支配、管理を及ぼすことが可能であり」とありますが、要はYは弟なんだからそりゃそうだと言える。
しかも両被告の父が自動車税の支払いを代行する状況だったのだし。

最高裁 昭和46年1月26日

この判例はローンで購入したクルマの話ですが、ローンで購入すると名義人はローン会社になる。
ローン会社が運行供用者責任を負うか?という問題です。

所有権留保の特約を付して、自動車を代金月賦払いにより売り渡す者は、特段の事情のないかぎり販売代金債権の確保のためにだけ所有権を留保するにすぎないものと解すべきであり、該自動車を買主に引き渡し、その使用に委ねたものである以上、自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者ではなく、したがつて、自動車損害賠償保障法三条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」にはあたらないというべきである。

最高裁判所第三小法廷 昭和46年1月26日

そりゃそうだと。

 

ちなみに裁判所名が伏せられた「平成5年4月6日」というものが何を指すのかはわかりかねますが、わざわざ裁判所名を隠すというのはそもそも判決文を読んでいないのかと。

 

ところで自賠法3条は「名義人は」ではなく「自己のために自動車を運行の用に供する者は」と規定するのだから、運行支配と運行利益を有するか?という観点で考えないといけない。
フリマサイトで販売した人は、いくら買主に対し「名義変更しろ」と言ったところで買主が名義変更しなければ名義は残る上、赤の他人なのだから関係性も薄い。
そのような者に運行支配や運行利益があるとは考えにくく(なにせ所有者は運行に関し何らの制御は及ばない)、仮に運行供用者責任を負うとしたら単なる理不尽なのよね。
不可能なことを可能にしろという話と変わらない。

 

なので相手方がフリマサイトで販売した名義人に対し運行供用者責任を追及する訴訟を提起しても敗訴するのは目に見えていて、それを止めない弁護士がいるのかすら疑問。

 

何ら関係ない判例を並べて「認められる可能性がある」と解説してますが、論点は「運行支配・利益の有無」であって名義の有無ではない。
論点を取り違えているのだろうか。
ちなみに謎の雛型で契約書を交わしたとしても、運行供用者責任の有無とは基本的に関係がない。
あくまで実態がどうなのかの問題なので。

 

ところで、もし名義変更をしてくれないなら素人解説を鵜呑みにするのではなく、プロの弁護士に相談するべきもの。
フリマサイトで売買したという赤の他人の関係では、おそらくほとんどの弁護士は運行供用者責任については心配ないと答えるでしょうけど(なにせ何ら運行支配は及ばない)、それ以外のケースでは事実関係次第では話が変わりうる。
要はどのような事実関係があるかが問題なので、どのような事実関係で下された判例なのかを解説しなければ誤解を招くのは当たり前。

 

なぜ具体的事実関係に触れずに判決結果のみを示すのか疑問なのよね。

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