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私有地を道路と認めるか?

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運転レベル向上委員会が何度も判例を改竄してフェイクニュースにしている件。
覚えているだけでも全然違う内容に改竄しているのは7、8件あった気がしますが、

運転レベル向上委員会より引用

最高裁第三小法廷 昭和44年7月11日判決(刑集 第23巻8号1033頁)は小学校の校庭を道路と認めたものだとする。
しかしこの日、第二小法廷では確かに私有地を道路と認めた最高裁判例がありますが、この判例は小学校の校庭ではないのよね。

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

 原判決が維持した第一審判決が確定した事実は、被告人は、農耕作業用自動車の運転業務に従事しているものであるが、昭和四〇年一一月一四日午前一一時五分頃農耕作業用自動車(以下農耕車という)を運転し、福島県岩瀬郡a町大字b字cd番地A方宅地内を右斜に進行し須賀川市からe町へ通ずる道路に出るに際し、右道路の右方は右A方住家のため見通しが困難であるので、自動車の運転者としては道路の手前で一時停止して安全を確認すべき業務上の注意義務があるのに、被告人はこれを怠つて右道路上に進出した過失により、折柄右方道路から軽二輪自動車に乗つて進行して来たBの左膝辺等に自車前部を接触同人を路上に転到させ、よつて同人に対し側方動揺性屈曲制限荷重痛の後遺症を残す開放性骨折(左膝蓋骨大腿骨外顆)左膝外側々副靱帯損傷兼半月枝損傷の傷害を負わせた、というのである。
ところで、第一審判決が証拠として掲げている第一審検証調書、証人Cの供述および第一審裁判所が適式に証拠調をした被告人の検察官に対する供述調書ならびに第一審第二回公判期日に証人として取り調べられた巡査部長Dの証言によれば、被告人が本件事故直前に進行していた場所は、Aの私有地ではあつたが、道路との境界を区画するものはなく、むしろ道路状をなして何人も自由に通行できる状態にあつたというのである。そうすると、右部分は、被告人の進行していた農道と、被害者の進行していた道路とが丁字形に交わる北東角にいわゆるすみ切りが施されている状態と同様であつたとみられないことはない。そして、道路交通法は、二条一号で「道路」の定義として、道路法に規定する道路等のほか、「一般交通の用に供するその他の場所」を掲げており、たとえ、私有地であつても、不特定の人や車が自由に通行できる状態になつている場所は、同法上の道路であると解すべきであるから、右部分は、同法上の道路であつたと認めるべきである。

最高裁判所第二小法廷 昭和44年7月11日

Aの邸宅内で私有地であっても、「道路との境界を区画するものはなく、むしろ道路状をなして何人も自由に通行できる状態にあつた」ということから道路と認めたもの。
なぜに「小学校の校庭」だと偽るのかわからん。
そしてもう1つ謎なのは、「刑集 第23巻8号1033頁」って全然違う判例なのよ。

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

「刑集 第23巻8号1033頁」は救護義務違反についての判例。
これはいったい…彼は何をしたいのだろう?
運動レベル向上委員会が判例解説すると、全く違う内容に変えられてしまうのは本当に謎が多い。

 

ところで、彼が挙げている「小学校の校庭を道路と認めた判例」は高松高裁昭和27年3月29日判決。
なぜに最高裁判例だと偽るのか謎ですが。

道路交通取締法は道路における危険防止及びその他の交通の安全を図ることを目的とするものであり(同法第1条参照)、本件運転の場所は小学校校庭であること所論の通りであるけれども、道路交通取締法第2条第2項によれば同法に所謂「道路」とは道路法による道路、自動車道のみならず一般交通の用に供するその他の場所をも包含すること明かであるから、学童その他一般公衆の多数出入する小学校校庭の如も道路交通取締法にいう「道路」の中に包含されるものと解するを相当とする。従て被告人が法令に定められた運転の資格を持たないで原判示小学校校庭において本件貨物自動車を運転した以上かかる所為もまた道路交通取締法第7条第1項第2項第2号、第28条に該当するものと謂うべきであつて、原判決には法律の解釈適用を誤つた違法はなく、論旨は採用し難い。

 

高松高裁 昭和27年3月29日

高松高裁判決は小学校の校庭で無免許運転して事故を起こしたことについて、業務上過失傷害罪と無免許運転罪(道路交通取締法違反)に問われたもの。
被告人は校庭は道路ではないから無免許運転罪は成立しないと主張したものの、高松高裁は道路と認め無免許運転罪を肯定。

 

この判例が法曹界で論争を呼んだことは以前にも取り上げてますが、

「道路」であるか否かの見解の対立。
例の事故から離れて法律解釈の話。小学校の校庭を道路交通法上の「道路」と認定し無免許運転罪が成立するとした判例がありますが、一 道路道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第二条第一項に規定する道路、道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第二...
38条2項「対向車問題」と県警本部の本音。
こちらについて。路側帯通行自転車も信号無視になるか?(路側帯は交差点に含まれるか)のついでに、「38条2項でいう停止車両に対向車を含むのか?」についても質問してまして。38条2項でいう停止車両に対向車を含むのか?これについても数日掛けて検討...

横井・木宮と法総研は、小学校の校庭を道路と認めた場合、運動会をするのに道路使用許可が必要になり不合理だとする。
しかし東京地検や法曹会はその解釈に異を唱える。

ところが、この判例については、前記第四の観点からする有力な学説の反対がある。すなわち、その趣旨は、この解釈を前提にすると、学校が校庭を使用する場合にも、必ず警察署長の許可を要し(法77条)、あるいは校庭で遊戯・体操等をする学童が、法76条4項3号違反に問われるおそれも生じ、不合理である。このような不合理を避けるためには、右の罰条との関係では道路ではないと解することになるが、このように、同一の法律の中で同一の用語が区々に解釈されるというようなことは、法の正しい解釈態度ではない、というのである(横井・木宮・前掲書41頁。なお、法総研前掲書45頁も、校庭を道路と解するのはこの点から疑義があるとする)。たしかに傾聴すべき批判ではあるが、法76条、法77条をいますこし合目的的に弾力的に解釈することもあながち不当ではないのではなかろうか(同旨、藤井一夫、判タ284・133)。

法曹会、道路交通法 : 例題解説 改訂版 (法曹新書)、1976

横井・木宮氏や法総研は、学校の校庭などを道路と認めると、77条(道路使用許可)なども適用しなければならなくなり不合理であるということなどを根拠に道路性を否定しているが、もともと、学校の校庭や工場の敷地などは一般交通の用に供する場所として設けられたものではなく、道路としての形態も備えていない。したがって、そのような場所で運動会を行ったり、工事をしたり、工作物を設ける場合に使用の方法や形態などについて警察署長の許可を得なくても道路交通の安全や円滑を損なうおそれはなく、77条の適用などはその必要がない
これに反し、64条(無免許運転の禁止)や65条(酒気帯び運転などの禁止)の規定などは、当該場所が現に公衆の通行の用に供されている以上その交通の安全を図るためにその適用が必要とされるのである。
かように、道路交通法の目的・諸規定の立法趣旨にたちかえって考えれば、道路交通法の道路と認定された場所について、ある規定が適用され、ある規定が適用されないという結果が生じても不都合ではない。

東京地方検察庁交通部研究会、最新道路交通法事典、東京法令出版、1974

判例タイムズ284号「道路(東京地裁判事補 藤井一夫)」でも「道路使用許可に関してはある程度合目的的、弾力的に解釈可能」としてますが、横井・木宮、法総研の解釈だとコンビニ駐車場で露店を開くにも道路使用許可が必要になり、コンビニ駐車場の通路を道路と認めた判例と整合しなくなる。

道路交通法72条1項にいう「車両等の交通による人の死傷又は物の損壊があつたとき」とは、道路上における車両等の交通に起因する事故があつたときをいい、その道路とは、同法2条1号に定める道路をいうことは明らかであり、更に、所論ミユキ観光駐車場又はその一部が道路法に規定する道路又は道路運送法に規定する自動車道でないこともまた明白であるから、要は、所論場所が同条にいわゆる「一般交通の用に供するその他の場所」すなわち、現に不特定多数の人ないし車両等の交通の用に供されているとみられる客観的状況のある場所に該当すると認められるか認められないかにある。
ところで、記録及び当審における事実取調べの結果によれば、被告人が原判示第三の(二)で報告義務を履行しなかつたとされた事故を惹起した場所は、同原判示のとおり、岐阜県海津郡海津町馬の目103番地の1所在のミユキ観光駐車場内であるが、右駐車場は、同敷地内にあるミユキパチンコ店及びミユキ喫茶店の附属の駐車場で、右敷地は、東西約54メートル、南北約36メートルのほぼ長方形(但し、その東北角部分において約17メートルにわたつてすみ切りが施され、該部分が県道津島南濃線に接している。)の土地であり、右土地の東端にミユキパチンコ店の建物が、また南端にミユキ喫茶店の建物が建てられているが、その余の部分はアスフアルト舗装の広場であつて、その東側及び西側はいずれも水田に、南側は農道に、北側は排水路に面していること、右土地の正規の出入口は、前記東北角部分一か所のみであり、同所に門戸の設備はなく、守衛等も置かれていないこと、その駐車場の部分は、自動車一台ごとの駐車位置を示す白ペイントの区画線によつて仕切られているが、右駐車区画は、右広場の北側及び西側に接した部分、ミユキパチンコ店及びミユキ喫茶店の各西側部分等の周辺部分、更にそれら周辺部分から各通路部分を隔てた広場の中央部分にそれぞれ設けられていて、特にその利用者の制限等を示す標識等はなく常時一般に開放使用されていて、もとより管理人等も置かれておらず、前記パチンコ店及び喫茶店を利用する不特定多数の客が自由かつひんぱんに右駐車場内の駐車区画外の道路部分を通行して車両を駐車区画内に駐車させ、あるいは右通路部分を歩行して通行し、ことに、前記喫茶店を利用する客にとつて右通路部分は唯一の正規の進行路であるばかりか、右通路部分は、前記県道津島南濃線と南側の農道との連絡通路として付近の店舗等に赴く者や近隣の者の通行利用に供されることも稀でないこと、以上の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。以上認定の事実状態に徴すると、なるほど本件駐車場のうち駐車位置を示す区画線によつて仕切られた各部分は、これを前記「一般交通の用に供するその他の場所」ということが困難であり、これを道路と認めるべきではないが、駐車位置区画線のない通路部分は、同駐車場の一部としてこれを利用する車両のための通路であるにとどまらず、現に不特定多数の人ないし車両等が自由に通行できる客観的状況にあると認められるから、前記「一般交通の用に供するその他の場所」に包含され、したがつて、道路交通法にいわゆる「道路」に該当すると認めるのが相当である。所論引用の判例は本件と事案を異にして適切でない。

名古屋高裁 昭和56年7月14日

こういう見解の対立は古い解説書や判例を全て統合してはじめて見えてくる。
例えば下記最高裁判例をどう捉えるべきか?

ところで右駐車場は、公道に面する南側において約19.6m、川に接している北側において約14.1m、南北約47mのくさび型の全面舗装された広場であつて、そのうち東側および西側部分には、自動車一台ごとの駐車位置を示す区画線がひかれ、南側入口には、県立無料駐車場神奈川県と大書された看板があつて、その広場の全体が自動車の駐車のための場所と認められるところであるから、駐車位置区画線のない中央部分も、駐車場の一部として、該駐車場を利用する車両のための通路にすぎず、これをもつて道路交通法上の道路と解すべきものではない。ホテルなどの利用客等のうちには、右駐車場を通行する者があるとしても、それはたまたま一部の者が事実上同所を利用しているにすぎず、これによつて右駐車場中央部分が、一般交通の用に供する場所となるわけのものではない

最高裁判所第二小法廷  昭和46年10月27日

これらからみえてくるのは、以下。

・私有地であっても道路と認められることはある。
・横井・木宮/法総研が主張した「道路使用許可との整合性」は、「道路と認めること」と「道路使用許可を必要とすること」は別問題と捉えるべきで、東京地検交通部の見解が納得しやすい。
・私有地を道路と認めるには、解放性のみならず「一般人が自由に通行している実態」が必要と考えられる(最判昭和46年10月27日)ため、捜査に当たり実情を調べる必要がある。
・そのため、「駐車場だから」とか「校庭だから」という属性のみで考えるものではない

私有地を道路と認めるか?については、確かに横井・木宮/法総研の指摘する「道路使用許可との整合性」は「たしかに傾聴すべき批判」(法曹会)。
私としては東京地検交通部の見解が納得ですが、運転レベル向上委員会の人って38条2項の件でもそうなんだけど調べ方が浅いのよね。

 

そもそもなぜ、判例を全く違う内容に改竄して紹介するのかはわかりませんが、彼が判例を改竄したのは今回初めてではないので…あまりにも嘘が多いけど彼は何をしたいのか謎。

 

さて。
校庭を道路と認めるかについては、横井・木宮/法総研が主張した「道路使用許可との整合性」は確かにその通り。
しかしそもそも各規定の立法趣旨に立ち返れば、東京地検交通部が主張する「それはそれ、これはこれ」のほうが実情に合う。

 

条文に固執する人が陥りやすい罠なんだけど、そもそも法律は人間が作ったのだから、特殊なケースでは矛盾が出ちゃうのよね。
例えば運転レベル向上委員会はツールド北海道について「道路使用許可を出した場所は道路ではない」という珍見解を力説してましたが、道路だから道路使用許可を出したのだし、少なくとも道路左側には警察署長規制として一般車両の通行を制限しているのだから、道路ではない(道路交通法の適用はない)という見解は取り得ない。

 

そもそも道路使用許可を出した一般道について「道路」と認めて無免許運転罪を肯定した東京高裁 昭和42年5月31日判決とも整合しない上に、

道路使用許可がある場所で道路交通法違反が成立するか?
個人的にはそもそも論点がおかしいと思っているので、どうでもいい話になります。ツールド北海道事故について、被害者さんが対向車線にはみ出したことを道路交通法違反だと考える人もいるのが事実。個人的にはそこは論点になり得ないというか、集団落車などト...

北海道警も「道路」と認めたから交通事故として処理しているわけでして。

北海道警察 交通事故情報マップ

じゃあなぜ、道路として道路交通法の適用がある場所なのに「並進違反」等が成立しないかというと、東京地検交通部の見解に全て答えがある。

 

「レースとして許可を出したのだから、レースとして通常認められる範囲であれば具体的規定を適用する必要がないでしょ」

 

レースとして認められない範囲、例えば大会運営車両や中継車両が酒気帯び運転や無免許運転をしたなら当然道路交通法違反として検挙する。
しかし選手について並進違反や速度超過を適用する必要はないのだから適用しない。

 

何のために設けてある条文なのか?という部分を理解しないとわからないのよね…

 

きちんと理解するにはとにかくたくさんの資料や判例を集めてから検討する必要がありますが、運転レベル向上委員会の場合は元ネタに当たる資料や判例を改竄して持論に繋げてしまう。
法や事実を正しく理解しようとする姿勢は見受けられない。
そういうことを繰り返すと、いつか矛盾が出てしまうし、矛盾が出ても無視してゴリ押しするしかなくなるけど、ツールド北海道についても「道路か否か?」は問題追及する上で主要論点にはなり得ないのだからどうでもいいところを力説する必要はないし、彼が今回取り上げた事故にしても、事故防止(安全確認)と道路交通法の適用があるかは関係ないのだから、そこに着目する必要がないのよね。

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