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過失運転「致傷」なのか?過失運転「傷害」なのか?

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読者様からご意見を頂いたのですが、個人的には無意味な議論だと考えてまして。

読者様
読者様
過失運転致傷をマスコミは「過失運転傷害」と報道する件について某YouTuberがなにやら言ってますけど、管理人さん的には過失運転致傷と過失運転傷害のどちらが正解と思いますか?

結論から言いますと、どちらも間違いではありません。

 

そもそも交通事故については平成19年刑法改正以前は業務上過失致死傷罪として処罰されてきましたが、業務上過失致死傷の時代、死亡事故ではないケガの場合には「業務上過失傷害」とするのが一般的でした。

裁判例結果一覧 | 裁判所 - Courts in Japan

これは一応理由がありまして、

第二十八章 過失傷害の罪
過失傷害
第二百九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
(過失致死
第二百十条 過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。
(業務上過失致死傷等
第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

刑法28章は「過失傷害の罪」とし、209条は「過失傷害」とする。
従って211条も「業務上過失傷害」と表記するのが一般的でした。

 

平成19年刑法改正で211条2項に過失運転致死傷の罪が規定され、従来は業務上過失致死傷罪として処罰してきたものを別枠にしました。

法律第五十四号(平一九・五・二三)
◎刑法の一部を改正する法律
第二百十一条第二項を次のように改める。

2 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

現在の自動車運転処罰法5条と同じです。
その後、平成26年に自動車運転処罰法が制定され、刑法211条2項は自動車運転処罰法5条に移管された。

 

じゃあ刑法211条2項の時代、死亡事故ではないケガの場合にどう呼ばれていたか?
まずこちらの判例では「自動車運転過失傷害被告事件」とする(最高裁 平成24年9月18日非常上告事件)。

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

大阪高裁 平成27年8月6日判例も「自動車運転過失傷害」とする。

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

要は刑法の範疇にあった時代、28章のタイトル、209条のタイトルに合わせて「自動車運転過失傷害」と表記していたと考えられますが、自動車運転処罰法に移管して以降は「過失運転致傷」と表記することが多い。

裁判例結果一覧 | 裁判所 - Courts in Japan

刑法211条2項も自動車運転処罰法5条も、内容は同じなのよ。

(過失運転致死傷)
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

ところで、危険運転致死傷罪は平成13年に刑法改正で「208条の2」として新設された。

法律第百三十八号(平一三・一二・五)
◎刑法の一部を改正する法律
(危険運転致死傷
第二百八条の二 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で四輪以上の自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は十年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで四輪以上の自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。
2 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で四輪以上の自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で四輪以上の自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。

刑法208条の2は平成26年に自動車運転処罰法に移管されましたが、刑法時代から「危険運転致傷」なのよ。

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

刑法208条の2は28章ではないからあえて区別していたのですかね。
そして平成26年に自動車運転処罰法が制定されて以降は、「過失運転傷害」ではなく「過失運転致傷」と表記することが多くなった。

 

これは政府の統計でも同じでして、処罰法に移管して以降は「過失運転致傷」、刑法時代は「自動車運転過失傷害」や「業務上過失傷害」。

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律施行後の適用状況等について 新法施行関係〔制定趣旨及び適用(検挙)状況〕|平成27年交通安全白書(全文) - 内閣府
内閣府の平成27年版交通安全白書(全文)(HTML形式)を掲載しています。

危険運転については一貫して「危険運転致傷」になっている。

 

で。
マスコミが「過失運転傷害」とか「危険運転傷害」と報道するのは、要は警察のプレスリリースがそうなっているからなんだと考えられるし、過失運転致傷だろうと過失運転傷害だろうと中身が変わるわけではない。
ソープランドを特殊浴場と呼ぼうと中身は変わらないのだから、正しい/間違いの問題ではないと思うのよね。

 

むしろそんなしょーもないところを取り上げて「マスコミは間違っている!」と主張するほうがナンセンスだと思うし(揚げ足取りとはまさにこれ)、どうでもいい問題なのよ。
おそらく、過失運転傷害と呼ぶ理由は同処罰規定が刑法28章にあった時代の名残と思われますが、調べようと思えば詳しく調べることもできるけど、その時間はムダなのよ。

 

なにせ、どちらでも伝わる上に中身は何ら変わらないし、違うものとの混同を誘うわけでもないのだから。

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