最近?「片耳イヤホンや骨伝導はOKになった」みたいな話をする人がいて日本語能力を疑うんだけど、
「ヘッドフォンは””全ての都道府県で禁止””です。」に変わりました。
しかし片耳や骨伝導はOKになりました。 https://t.co/Qs4ShtLymI pic.twitter.com/36encAcoZl— YTK-system (@ytksystem) September 7, 2025
要はこれの件ですよね。
ただし、イヤホンを片耳のみに装着しているときや、オープンイヤー型イヤホンや骨伝導型イヤホンのように、装着時に利用者の耳を完全には塞がないものについては、安全な運転に必要な音又は声が聞こえる限りにおいて、違反にはなりません。
https://www.npa.go.jp/news/release/2025/rulebook.pdf
「安全な運転に必要な音又は声が聞こえる限りにおいて」をすっ飛ばして「骨伝導がOKになった」と語る方々の読解力には疑問しかない。
ところでこれについて警察庁が解釈を示したのは今回が最初ではない。


1 指導取締り上の留意事項
法第71条第6号の委任を受け、公安委員会規則において定めている規定の趣旨は、自転車利用時のイヤホン等の使用そのものを禁止することではなく、イヤホン等を使用して安全な運転に必要な音又は声が聞こえない状態で自転車を運転する行為を禁止することであると承知している。
この点、イヤホン等を片耳のみに装着している場合や、両耳に装着している場合であっても極めて低い音量で使用している場合等には、周囲の音又は声が聞こえている可能性があるほか、最近普及しているオープンイヤー型イヤホンや骨伝導型イヤホンについては、装着時に利用者の耳を完全には塞がず、その性能や音量等によってはこれを使用中にも周囲の音又は声を聞くことが可能であり、必ずしも自転車の安全な運転に支障を及ぼすとは限らないと考えられる。
これらを踏まえ、イヤホン等を使用した自転車利用者に対する指導取締りに当たっては、イヤホン等の使用という外形的事実のみに着目して画一的に違反の成否を判断するのではなく、例えば、警察官が声掛けをした際の運転者の反応を確認したり、運転者にイヤホン等の提示を求め、その形状や音量等から、これを使用して自転車を運転する場合に周囲の音又は声が聞こえない状態となるかどうかを確認したりすることにより、個別具体の事実関係に即して違反の成否を判断すること。2 指導取締りに従事する警察官に対する指導教養の徹底
自転車利用者に対する指導取締りは、地域に密着した活動の一つであり、交通部門だけでなく地域部門の警察官も従事することが多いことから、部門を問わず、自転車利用者と接する機会のある警察官に対して幅広く、前記1の留意事項に関する指導教養を徹底し、誤った理解に基づく指導取締りが行われることがないようにすること。
3 広報啓発活動等の実施
自転車利用時のイヤホン等の使用について、SNSやウェブサイト等の各種広報媒体や現場における警察官の説明等を通じて、広報啓発活動や交通安全教育を行う際には、規定の趣旨が国民に正確に伝わるよう留意すること。その際、周囲の音又は声が聞こえない状態で自転車を運転することの危険性についても併せて周知するなどして、規定に違反するような自転車の利用が行われないように留意すること。
4 規定の趣旨の周知徹底に向けた規定の見直し
前記1から3までに掲げる取組を推進してもなお、規定の趣旨の周知徹底に当たって支障があり、各地域の自転車の利用実態等を踏まえて必要性が認められる場合には、規定からイヤホン等を例示する文言を削除することも含めて、所要の見直しを検討すること。
https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/shidou/iyahonryuuijikou.pdf
条文から検討しましょう。
イヤホンに関する規定は公安委員会遵守事項(道路交通法71条6号、各都道府県の規則)によりますが、表現に差はありますが全都道府県で内容は同じ。
警視庁(東京都)をみてみます。
法律の読み方を理解しているかが問われるんだけど、この規定、義務は「安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと」。
その例示として高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等を挙げている。
| 違反になる内容 | 安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両を運転 |
| 違反になる例示 | 高音でカーラジオ等を聴く、イヤホーン等を使用してラジオ等を聴くなど |
| 除外事由 | 難聴者が補聴器を使用する場合又は公共目的を遂行する者が当該目的のための指令を受信する場合にイヤホーン等を使用するとき |
条文からすると、「安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえている」なら片耳イヤホンや骨伝導に限らず、ヘッドホンでも違反ではないことになる。
ただし、イヤホンを片耳のみに装着しているときや、オープンイヤー型イヤホンや骨伝導型イヤホンのように、装着時に利用者の耳を完全には塞がないものについては、安全な運転に必要な音又は声が聞こえる限りにおいて、違反にはなりません。
https://www.npa.go.jp/news/release/2025/rulebook.pdf
逆にいえば骨伝導や片耳イヤホンでも、安全な運転に必要な音又は声が聞こえてないと判断されれば違反なのよ。
なんで最も大事な「安全な運転に必要な音又は声が聞こえる限りにおいて」をすっ飛ばして「骨伝導がOKになった!」などと曲解するのかわからない。
ところで、「安全な運転に必要な音又は声が聞こえる状況」とは法的評価であり客観的評価になる。
例えば緊急車両のサイレンは「安全運転に必要な音」ですよね。
緊急車両が接近してきたときには避譲義務があるのだから当然。
それ以外だと「警察官の指示事項」として6条2項や63条の4第1項柱書きがあるのだから、警察官の呼び掛けに反応しないのは「安全運転に必要な声が聞こえてない状態」となり71条6号(公安委員会遵守事項)に違反する可能性がある。

で、実務上はこれらをチェックするために、骨伝導イヤホンだろうと警察官が声を掛けて停止させるのよね。
その結果、聞こえてないもしくは危険性があると判断されたなら指導警告になり、指導警告に従わずイヤホンを継続使用するなら青切符もあるかも。
ところで、なんで「イヤホンなら全面禁止」みたいな規定ではなく、「安全運転に必要な声が聞こえない状態が禁止」としているかを考えると、そもそもこの規定は自転車に限定したものではなく、クルマも適用される条文。
クルマの場合、カーステレオやラジオの音により「安全運転に必要な音が聞こえない状態」なら違反になるが、節度を持ってボリュームをコントロールして使い「安全運転に必要な音が聞こえる状態」なら違反ではない。
クルマと自転車で同じ条文の解釈が違っていたら大問題だから、解釈を整理したに過ぎない。


1 指導取締り上の留意事項
法第71条第6号の委任を受け、公安委員会規則において定めている規定の趣旨は、自転車利用時のイヤホン等の使用そのものを禁止することではなく、イヤホン等を使用して安全な運転に必要な音又は声が聞こえない状態で自転車を運転する行為を禁止することであると承知している。
この点、イヤホン等を片耳のみに装着している場合や、両耳に装着している場合であっても極めて低い音量で使用している場合等には、周囲の音又は声が聞こえている可能性があるほか、最近普及しているオープンイヤー型イヤホンや骨伝導型イヤホンについては、装着時に利用者の耳を完全には塞がず、その性能や音量等によってはこれを使用中にも周囲の音又は声を聞くことが可能であり、必ずしも自転車の安全な運転に支障を及ぼすとは限らないと考えられる。
これらを踏まえ、イヤホン等を使用した自転車利用者に対する指導取締りに当たっては、イヤホン等の使用という外形的事実のみに着目して画一的に違反の成否を判断するのではなく、例えば、警察官が声掛けをした際の運転者の反応を確認したり、運転者にイヤホン等の提示を求め、その形状や音量等から、これを使用して自転車を運転する場合に周囲の音又は声が聞こえない状態となるかどうかを確認したりすることにより、個別具体の事実関係に即して違反の成否を判断すること。2 指導取締りに従事する警察官に対する指導教養の徹底
自転車利用者に対する指導取締りは、地域に密着した活動の一つであり、交通部門だけでなく地域部門の警察官も従事することが多いことから、部門を問わず、自転車利用者と接する機会のある警察官に対して幅広く、前記1の留意事項に関する指導教養を徹底し、誤った理解に基づく指導取締りが行われることがないようにすること。
3 広報啓発活動等の実施
自転車利用時のイヤホン等の使用について、SNSやウェブサイト等の各種広報媒体や現場における警察官の説明等を通じて、広報啓発活動や交通安全教育を行う際には、規定の趣旨が国民に正確に伝わるよう留意すること。その際、周囲の音又は声が聞こえない状態で自転車を運転することの危険性についても併せて周知するなどして、規定に違反するような自転車の利用が行われないように留意すること。
4 規定の趣旨の周知徹底に向けた規定の見直し
前記1から3までに掲げる取組を推進してもなお、規定の趣旨の周知徹底に当たって支障があり、各地域の自転車の利用実態等を踏まえて必要性が認められる場合には、規定からイヤホン等を例示する文言を削除することも含めて、所要の見直しを検討すること。
https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/shidou/iyahonryuuijikou.pdf
ところで、個人的には自転車乗車中に音楽を聴くことはリスクがあると思っていて、例えばメカトラブルに繋がる異音を聞き漏らす可能性もあれば、注意散漫になるリスクがあると思うから使わない。
しかしグループライドのような場合に、マイクとイヤホンを使って「安全な運転に必要な情報を伝えながら乗る」こともありうる。
例えば、先頭から後続自転車に対し「前方に路面の荒れがあるから注意」みたいに伝えるとか、後続自転車から先頭に「後方からダンプカーが接近。一旦先に行かせよう」みたいに情報を共有する使い方もありうる。
それらは安全運転に役立つ使い方なのだから、一律禁止にしちゃうとむしろ不利益なのよ。
で。
条文も警察庁も、「安全な運転に必要な音又は声が聞こえる限りにおいて」違反ではないとする。
警察庁の解説を読んだときに、「安全な運転に必要な音又は声が聞こえる限りにおいて」をきちんと読み取れずに話を飛躍させる人が多いので心配になる。
理屈の上では、骨伝導イヤホン使用中に警察官から呼び止められて、反応しないなら違反になりうるのよね。
骨伝導イヤホンなら絶対セーフであるかのような話をする人が絶えないのは日本語教育の失敗なのだろうか。
なお、検査のために呼び止められることは当然なので、それが嫌なら使わないほうがよい。
けど、警察庁の文言をみて「骨伝導OKになった」と読み取る方々が多いことをみると、残念ながら未来は暗い。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。



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