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点滅信号と双方の義務。その事故は防げた。

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点滅信号の交差点で自転車とクルマが衝突し意識不明の重体だそうですが、

サイクリング中の10代男性が意識不明 未明に車と衝突、点滅信号の交差点 福島・いわき市 | TBS NEWS DIG (1ページ)
20日未明、福島県いわき市の交差点で、車とサイクリング中の自転車が衝突する事故があり、自転車に乗っていた10代の男性が意識不明の重体となっています。事故があったのは、いわき市平泉崎の県道で、警察によりま… (1ページ)

自転車が赤点滅、クルマが黄色点滅なのでこうなる。

自転車 クルマ
信号灯火 赤点滅 黄色点滅
信号の意味 停止位置において一時停止しなければならない 他の交通に注意して進行することができる
その他 見通しがきかない交差点の徐行義務(42条1号) 見通しがきかない交差点の徐行義務(42条1号)

問題になるのは徐行義務。

(徐行すべき場所)
第四十二条 車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。

点滅信号は「交通整理」には当たらないため、左右の見通しがきかない交差点であれば徐行義務がある。

 なお、道路交通法三六条二項、三項にいう「交通整理の行なわれていない交差点」とは、信号機の表示する信号または警察官の手信号等により、「進め」「注意」「止まれ」等の表示による交通規制の行なわれていない交差点をいい、本件交差点のように、一方の道路からの入口に黄色の燈火による点滅信号が作動しており、他方の道路からの入口に赤色の燈火による点滅信号が作動している交差点も、これにあたるものと解するのが相当である。

最高裁判所第一小法廷 昭和44年5月22日

要は自転車側には一時停止、クルマ側には徐行義務があり、相対的優先関係はクルマ側にあるものの、徐行義務を果たしていたら事故発生を防げたと評価されればクルマのドライバーは過失運転致傷罪が成立するのよね(フロントガラスの破損具合からすると徐行していたようには思えない)。

 

これってあまり知られていない気がするし、某YouTuberも一年くらい前までは徐行義務を全く理解してなかったけど、このような事故について「どっちが悪いか」を論じているうちは事故は減らないと思う。

 

双方の義務を確認することと、その意味を理解することが大事。
というのも、たまたま自転車は被害者になっただけで、加害者になっていたかもしれない。
自転車は交差道路の確認が不十分で交差点に進入したと疑われますが(一時停止したかは不明)、交差道路から来たのが二輪車なら、二輪車が驚愕転倒し加害者になっていたかもしれない。

 

そして徐行義務を怠ったと考えられるクルマについても同じで、たまたま加害者になったけど、交差道路から来たのがダンプカーなら被害者になるわけ。

 

双方見通しがきかないのだから、何が来るかなんて知りようがない。
どっちが加害者、どっちが被害者になるかは運次第だったことになる。

 

そうすると結局、それぞれ義務を果たそうねとしかならないのよね…

 

これを民事過失割合で表すと自転車30%が基本過失割合になりますが、民事の過失割合は金銭賠償上の概念でしかない。

 

ところで、以前紹介したけど「左右の見通しがきかない交差点に時速5キロで進入したけど回避できなかった事故」について無罪を言い渡した判例がある。

原判決に示された法律判断によれば、自動車運転者は、本件交差点を西から東へ進行する場合には一時停止又は徐行(最徐行)をして左右道路の安全を確認すべき業務上の注意義務があるとしているところ、本件交差点が前説示のように左右の見通しの困難な、交通整理の行なわれていない交差点であるから、車両の運転者に道路交通法上の徐行義務があることは明らかであるが(道路交通法42条)、さらに進んで一時停止の業務上の注意義務があるかはにわかに断定できず、本件交差点は一時停止の交通規制は行なわれていない場所であるから、業務上の注意義務としても特段の事情なき限り、一時停止義務はないものというべきである。けだし、道路交通法は交通の安全と円滑を調和せしむべく徐行すべき場所或いは一時停止すべき場所を決めているのであって、例えば車の鼻先を出しただけで衝突を免れないような交差点や優先道路との交差点などでは、別に一時停止の交通規制を行つているのが通常であり、規制のない場合には、業務上の注意義務としてのものであつても、一般的には一時停止義務を課することは相当でないというべきである。

(中略)

そこでさらに進んで被告人の徐行の注意義務違反の有無について考察すると、道路交通法上徐行とは車両が直ちに停止することができるような速度で進行することをいうと定義されている(道路交通法2条1項20号)が、具体的に時速何キロメートルをいうかは明らかではないとしても、前記認定の時速5キロメートル程度であれば勿論、時速10キロメートルであつても徐行にあたるものというべく、本件において業務上の注意義務としての徐行としても、時速5キロメートル程度のものであれば、これにあたると解するのが相当である。原判決は本件のような交差点に進入する車両には単なる徐行より一段ときびしい最徐行義務があるかの如き説示をしているのであるが、最徐行とは具体的にいかなる速度をいうのかの点は暫らくこれを措くとしても、前記のように被告人が時速5キロメートル程度の速度で進行していたとするならば、被告人において徐行(最徐行を含めて)の注意義務はつくしているものと認めるのが相当である。従つて、被告人には公訴事実にいう徐行の注意義務を怠つた過失はないというべきである。

 

大阪高裁 昭和59年7月27日

やることをしていたなら法律は理不尽に責任を負わすわけではない。
なお民事の基本過失割合にしても、クルマが徐行してないことを前提にしているので、仮に徐行して交差点に進入したなら理屈の上では基本過失割合が適用されない非典型例になりうる。

 

まあ、どこぞの人に語らせると「人身傷害特約車外型」をプッシュするだけになるでしょうが、事故防止という観点が全くないのも凄いよね。
裁判基準で算出した賠償額が人身傷害特約で支払われない(人傷基準は裁判基準より2割程度低い)のに、裁判基準で算出した賠償額が支払われるかのように解説するのもまずいけど、人身傷害特約で補償してもらうより事故を起こさないことのほうがはるかに大事よね。

コメント

  1. 元MTB乗り より:

    このケースは自転車が停止したのかよく分からんので、憶測になるからあまり言いたくは無いですが、停止と言う事を知らないような自転車は多いです。ブレーキが壊れてるなら、そもそも整備不良(本人含む)だし、停まる気が無いならそもそも自転車乗るなと言いたい事がしばしばあります。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      まあ、一番の原因はそこでしょうね。
      赤点滅の意味を知らない人もいますし。

  2. きゃばりーのらんぱんて より:

    シール類が多いバーエンドキャップの無いロードだけど、ヘルメットは被っていたようですね。
    意識が戻れば良いのですが。

    ところでこの交差点の横断歩道の扱いですが、横断歩道の道路標示のみで道路標識が無く、要件外ですが手前にダイヤマークもないけど、交通整理のない横断歩道とするのでしょうか?

    横断歩道の要件を満たしてないけど、どちらも優先道路でない、交通整理のされて無い横断歩道付き交差点?

    悩ましいけど、42条で徐行義務があるから38条は持ち出さなくても問題なしでしょうか?

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      施行令1条の2第3項1号によると「横断歩道等を設けようとする場所に信号機が設置されている場合 道路標示のみを設置すること」とあり、点滅信号は交通規制ではなくても信号であることには変わらないため、標識は不要になります。
      ちょっとややこしいんですよ…

      • きゃばりーのらんぱんて より:

        ほー

        さすが、お詳しい
        色々な法律が絡みまくっているんですね。

        ということは、点滅信号の時は交通整理のされて無い横断歩道だから、38条が有効と考えられる訳ですね。

        ありがとうございました。

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